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2012年03月01日

【AQUA240号】「九州プラント点検報告」

西日本BM技術協会会員のプラント点検を行いました

 一月一七日(火)〜二〇日(金)に、西日本BM技術協会に所属するプラントの稼働状況確認と点検を兼ねて訪問しました。西日本BM技術協会事務局・内山氏の運転で福岡県、佐賀県、熊本県のプラント八か所を訪問、伊藤理事長(一七〜一八日)、事務局・秋山、匠集団そら・星加氏が稼働状況の確認を含めた点検を行いましたので二回にわけて報告します。生物活性水の点検はpH(水素イオン濃度指数)、EC(電気伝導度)、亜硝酸態窒素の数値を測定、透明度や色ツヤなどを点検しました。

■紅会・浦養豚場
 ここには飲水改善施設、生物活性水施設が設置されています。母豚二〇〇頭で生物活性水はラグーン方式(注釈一)の尿水処理施設で処理された処理水を原料に作られています。生物活性水プラントの曝気槽・一槽の大きさは二〇トン、この容量に対しては日量二トンの活性水の生産(使用量)が目安となっていて、この量を大幅に上回って使用してしまうとプラント全体の系(培養状態)が安定せず、生物活性水はあまりいいものはできません。浦さんは豚舎の洗浄に使用する際に大量に使用するとのことでした。生物活性水を安定させるためにも、別途洗浄用の貯水槽を設け、水に生物活性水を希釈して洗浄水として使用することを提案しました。浦さんは洗浄用の貯留槽を設ける方向で検討するとのことでした。また、場内で作っている堆肥は地域の耕種農家が利用しているとのこと、時期により余ったり、足りなかったりと動きはあるものの、全体で考えると少し足りないくらいで、糞の処理としてはうまくまわっているとのことでした。

■紅会・井手養豚場
 浦養豚場から車で二〇分ぐらい、同じ糸島市内の畜産団地(団地中には井上ピッグファームもあるが事情により今回は点検せず)にあります。ここには飲水改善施設、生物活性水施設が設置されています。母豚は一一〇頭、生物活性水はオキシデーションディッチ方式(注釈二)の尿処理施設で処理された処理水を原料に作られています。生物活性水施設は五トンタンクを使用していますが、処理水を第一槽目に送りだすポンプの故障が原因で、現在、施設に処理水を入れることができないとのことでした。

■有限会社ヨコテ
 井手養豚場から車で一五分ほど、同じ糸島市内にある有限会社ヨコテ。横手さんの養鶏場は採卵鶏三万羽。横手さんの悩みの一つは、飲水改善プラントの水質検査でSS(浮遊物質)が多いと指摘されてしまったとのことです。原因を考えた結果、リアクター塔の曝気が強かったせいか(設置した時にはリアクター塔の充填材がちょうど半年で消えてなくなるように指導されていたが)、それがSSの原因ではないかと考えていました。あらためて、リアクター塔は弱めの曝気で少しずつ充填材を溶かしこんでいくということを確認しました。また、より安定した状態で生物活性水を作るために、現行の五〇〇リットルのタンクをやめ、新たに一トンのタンクで生物活性水施設を新設することになりました。飲水改善プラントも鶏舎の洗浄水にも使用できるように貯留槽を増やすので、今年の夏をめどに、二つのプラントを合わせて完成できるようにと計画しています。横手さんからは、今後もきちんとした指導、情報の提供をお願いしたいと要請がありました。横手さんは、ほぼ毎日、自らプラントを点検しているとのこと。日々、色々な工夫を加えられないかと考えているとのことでした。

■柴田農場
 横手さんのように日々考えている方がもう一人、糸島BM農法研究会の柴田農場の柴田さん。昨年の第二一回全国交流会の視察コースでもあったので、実際に視察された方もいるかと思います。米、ハウスでのミニトマト、ほうれん草などを栽培しています。ご本人曰く、「トイレにはじまりトイレに終わるBMW技術」の通り、自宅の便槽からのし尿を原料に生物活性水を作っています。全体の系が崩れてしまっているように感じるので、すべてのタンクの中身を抜いて、タンクを掃除する予定だということでした。生物活性水に臭いは無いのですが、ツヤや透明感がありませんでした。視察に訪れた方から色々な意見やアドバイスももらったが、実際どうするかを迷っているとのことでした。ツヤや透明感がないのはSSが多いからで(固形物が溶けきっていない)、既存のタンクより大きな容量のタンクで曝気をして、生物活性水を作るプロセス(滞留時間)を長くすることにし、タンクを一〜二本増設し、既存のタンクのうち一槽を沈殿槽に使用するという方向で改善するということになりました。(図一参照) また、柴田さんの生物活性水のpH値が低く(四・〇以下)酸性過ぎて、使いづらくなっていたとのこと。伊藤理事長からは酸性の生物活性水にも作物の整菌などに使い道があるのではないかと意見が出ました。かなり前に酸性の生物活性水を作る試みをしたこともあったが、なかなか作りづらかったとのこと。そこで通常使用する生物活性水は貯留槽に石灰岩などをつるしてpHを上げて使用し、酸性に傾いている生物活性水と二種類の生物活性水を使い分けるのはどうかということになりました。この後、柴田さんは一・二トンのタンクを増設、二種類の生物活性水をわけて貯留するためにタンクの設置を始めたとのことでした。
 今回の点検で感じたことは、プラントの「管理方法」をあらためて共有することが必要かと思いました。各所に設置されているプラントは槽の大きさも異なり、用途に大きな違いはないのですが、それぞれにやり方があります。それぞれの現場に合わせた用途をあらためて確認する意味でも、基本的な管理方法、用途の確認作業は必須ではないかと。また、目安となるpH、EC、亜硝酸態窒素、SSなどの数値も確認する必要があるのではないかと感じました。次号では、紅会・中村養豚、熊本愛農会、清村養豚、大矢野原農場、南阿蘇村での点検報告、そして今回最後に書いた課題点などを掘り下げて掲載する予定です。
      (以下、次号へ続く)
(報告:BMW技術協会 事務局 秋山澄兄)

注釈一、二:養豚場の多くで見られる尿処理施設で、施設にもよるがBOD数値(生物化学的酸素要求量:水の汚染を表す指標)を約一〇、〇〇〇ppmの数値から一〇〇ppm以下まで処理する施設。

Author 事務局 : 2012年03月01日 22:01

 
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