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2012年04月01日

【AQUA241号】九州プラント点検報告2

 先月号に引き続き、一月一七日(火)〜二〇日(金)に、西日本BM協会に所属するプラントの稼働状況確認と点検の報告です。西日本BM技術協会事務局・内山氏の運転で福岡県、佐賀県、熊本県のプラント八か所を訪問、伊藤理事長(一七〜一八日)、事務局・秋山、匠集団そら・星加氏が稼働状況の確認を含めた点検を行いました。生物活性水の点検はpH(水素イオン濃度指数)、EC(電気伝導度)、亜硝酸態窒素の数値を測定、透明度や色ツヤなどを点検しました。

■ドリーム野高(紅会・中村養豚場)
 一月一八日(水)の朝から中村さんの養豚場を訪問しました。中村さんは紅会の前会長で、昨年のBMW技術全国交流会の実行委員長を務められました。中村さんの養豚場は唐津市の中心部から車で三〇分ぐらい西へ向かった唐津市肥前町にあり、母豚三五〇頭、飲水改善プラントと簡易尿処理〜生物活性水プラントがあります。簡易尿処理プラントで処理された豚尿が生物活性水の原料となっています。中村さんの生物活性水はグリーンコープの耕種生産者にも多く利用されていて、ここから各生産者のもとへ運ばれています。プラントは土木槽で傾斜地に設置されていて、一槽の大きさは二〇tです。簡易尿処理プラントで処理した尿を、尿処理プラントの上側にある生物活性水プラントにポンプで送ります。最終槽からは敷地の下側にある貯留槽に移され、さらに貯留槽からはホースでトラックが入る場所まで生物活性水を送るシステムになっています。生物活性水プラントは途中曝気を止めている槽があり、その理由はこの槽でにごり(SS=残留浮遊物)を取るためとのことでした。中村さんのプラントに使用している岩石は、導入時に大きな花崗岩や地元の岩石を手に入れては自力で割って投入したため大変苦労したそうです。また、場内の各養豚舎に生物活性水をとりだせる蛇口がついていて、そこから豚舎内の噴霧などに利用するとのことでした。

■清村養豚
 一月一九日(木)に熊本へ移動し清村養豚さんを訪問。熊本市内から一時間ほど車で南東へ向かった御船町にあります。母豚は一一〇頭、簡易尿処理プラントがあります。すぐそばには熊本愛農会の集荷場と事務所があり、清村養豚さんも愛農会のメンバーでもあります。ここを訪れる前に愛農会の渡辺さんの圃場を見学させてもらいましたが、昨年の全国交流会での発表でもあったように、渡辺さんは清村養豚さんの簡易尿処理水を液肥として利用しています。また豚糞堆肥も同じように利用しています。愛農会の中で耕畜連携の系がなされています。しかし簡易尿処理水にしても堆肥にしても、耕種農家で使用するタイミングというのは季節を通して同じ時期に集中して必要となるので、簡易尿処理水も豚糞堆肥も年間通して一定の量を利用するということが難しい部分もあります。糞尿は毎日一定の量が出てくるので、使わなければ溜まる一方で集中して利用すれば処理も追いつかなくなる場合があるということでした。お昼に愛農会の事務所にて即席の学習会のようなものが開かれました。清村さん、渡辺さんをはじめ愛農会の生産者の方が集まりました。渡辺さんに続き、ほかの愛農会の方々も堆肥だけではなく、生物活性水を活用して行くために具体的にどうしていくかなどが話し合われました。

■大矢野原農場
 清村養豚からさらに東に行った山都町に大矢野原農場はあります。ブロイラーで総羽数は約四万羽。飲水改善と生物活性水プラントがあります。生物活性水の色が薄く、第一槽目(堆肥を投入している槽)のEC(電気伝導度)は低い数値でした。ここでは堆肥づくりに試行錯誤されているようで、生物活性水をどのように使っていくかを色々と考えているとのことでした。

■南阿蘇村
 一月二〇日(金)には、南阿蘇村を訪問しました。南阿蘇村の有機肥料生産センターには生物活性水プラントがあり、地域から出る牛糞を主体とした堆肥づくりに生物活性水が利用されています。原料はここで製造された堆肥です。プラントは五tのタンクを利用して生物活性水を作っていて、主に堆肥の水分調整用としての活用です。プラントはセンターの奥の方、堆肥舎の近くに設置されているのですが、センターの入り口付近には土木槽でできた貯留槽があり、最終槽から貯留槽へ生物活性水が送られるようになっていて、地域の生産者が持っていけるようになっています。ここでは匠集団そらの星加氏がリアクター塔充填材の交換の仕方を説明、またあらためてプラントの管理方法などについての説明をしました。センターでは、今後どのように地域で広めていけばいいかなどを検討しているとのことでした。

■まとめ
 前号においても書きましたが、今回訪問したほとんどのプラントで共通して言えることはプラントの管理方法についてです。例えばですが、浦養豚場の生物活性水プラントの例で言うと、プラントの大きさは一槽約二〇tの槽が全部で四槽あります。生物活性水を作る時は一槽の培養(処理)は七日間となっているので、二八日間で約二〇tの生物活性水が生産可能という計算になります。一日の生産量でいうと日量約二t、貯留槽があるため一日に二t以上使用しても問題はありませんが、例えば毎日一〇t使用した場合には生物活性水の生産が追いつかなくなるため、それを使用しても生物活性水としての効果は失われてしまいます。できれば洗浄用のタンクを別に設けて生物活性水を希釈して使うような形が良いと思い、そのような提案をさせてもらいました。次に熊本の清村さんのところでのことです。簡易尿処理としては少し泡が多く、ECも高く、処理が少し良くないような感じだったので清村さんに「このEC値と見た感じではもう少し処理がうまくいっても良いような気がするのですが」と聞いたところ、「そうですね。豚舎の規模に対して少しプラントが小さいかもしれません、また、植え付け前など耕種農家の使用が増えると集中して持っていかれてしまうのです。さらに貯留槽を入れた方がいいかと思ったりもしますが厳しいところでもあります。」と話されました。そこで「汚泥沈殿槽からの戻しを最初の槽にも入るようにした方が良いかもしれません、汚泥沈殿槽から最初の槽に戻し、活性汚泥を活用することにより少しは改善されるのではないかと。あとは厳しいかもしれませんが、別にタンクでも土木槽でもいいのですが槽を増やすといいのではないかと思います。」とアドバイスさせていただきました。母豚五〇頭規模における簡易尿処理についてBODは一〇〇ぐらいの数値になるのですが、清村さんのプラントではそれよりは数値が高めのような感じでした。また、清村さんの処理水を使用する、愛農会の耕種メンバーにもプラントの状況を理解してもらい、使わない時期も少しずつ引き抜いて、自分たちで保管するなどの工夫を皆さんでしてはどうかなどと提案させてもらいました。有畜複合(耕畜連携)が同じ組織の中で形成されているので、今後もお互いの状況を理解しながら取り組んでいただければと思います。
 ここでは二か所での例を書きましたが、他のところでもこれに似たケースで話すことがありました。全国各所に設置されているプラントは原料や槽の大きさがそれぞれに異なります。それにより、できあがりの成分なども大きく違う場合もあります。それぞれの現場に合わせた用途をあらためて確認する意味でも、基本的な管理方法、用途の確認などを共有する必要があるのではないかと思いました。
    (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2012年04月01日 22:12

 
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