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2012年07月01日

【AQUA244号】山口県柳井市河村農園

地域で広げる耕畜連携の輪〜山口県柳井市 河村農園

 五月八日~九日の二日間、山口県柳井市の河村農園の生物活性水プラントを巡回しました。今回の訪問は、プラントの稼働確認と約一年に渡る、パルシステムレインボー基金の事業取り組みの報告を受けることでした。また、西日本BM技術協会事務局の宮﨑氏と内山氏、匠集団そらの星加氏も同行しました。
 生物活性水プラントは五〇〇Lの農業用ローリータンク五つを使用したもので、貯留槽として別に一つのタンクを加え、全部で六槽です。原料はポークランドグループのBMコンポストの浸み出しです。
 畑での実験は一〇倍に希釈した生物活性水を潅水、散水(葉面散布)に利用、栽培品目は葉物を中心にキャベツや白菜、スイカなどです。また、自家製堆肥(落ち葉などが主体)の発酵促進には原液で利用しています。河村さんは「感覚的な部分もあるけども葉物のキャベツやホウレン草には効果があった。虫食いも少なく、しっかりとした美味しいものができ、直売所での評判も良かった、スイカや一口メロンなどは骨粉などの燐酸含有の多い有機肥料と組み合わせて使ったところ糖度が増し、かなり効果的だと思う」と、まだ実感としては薄い感触は否めないので引き続き、試しながらやって行きますとのことでした。今年は春先から実験ができるので稲作での取り組みも始めます。対象区を設け、育苗時の散水、代掻き時と出穂前の活性水の流しこみに利用し農協の食味テストで違いがでるかどうかを試すとのことでした。少しでも優位差が出れば、来年はさらに一歩踏み込んで取り組みたいと慎重な河村さんでした。

~耕畜連携、地元の資源活用~
 今回の訪問の理由は冒頭の二つの理由に加え、もう一つありました。河村さんは昨年からBMW技術の取り組みを始めるに際し、BMW技術の理念の本筋でもある、「地域未利用資源の活用」と「地域内での耕畜連携」の検討も始められていました。その「系」ができそうだとの報告を受けて、畜産農家と花崗岩の山を訪問しました。
 河村農園から車で二〇分ぐらいの場所に斎藤牧場というユニークな取り組みを行っている繁殖牛の畜産農家があり、そのユニークな取り組みの話を聞かせてもらうことになりました。斎藤牧場は黒毛和牛の親牛八〇頭(目標一三〇頭)、その取り組みは冬場に近隣農家へ妊娠中の母牛をレンタルし、田んぼ(畑)で放牧してもらいます。「この取り組みは祖父の代から始めています。身重の母牛を預けることは、多少のリスクがあるように感じられるでしょうが、ほとんどそのようなことはなく、餌代などのコスト削減、地域とのつながりと言う意味では大きいです」と斎藤代表。この他にも稲作二〇ha(うち飼料米八ha)、を作付け、近隣の田植えや稲刈りの請負などもこなしており、そのお陰でホールクロップや稲藁等が集まってくるとのことでした。
 その後に堆肥場(切り返し)を見学しました。堆肥は木材チップ(おがこ)と籾殻、稲藁を副資材に製造されていました。二〇haの自分たちの田んぼ以外にも地域の農家で利用され、足りなくて困っているとのことでした。足りないと言うよりは、利用する時はみんな一緒に利用するし、使わない時はみんな使わないので利用のバランスが良くないとのことでしょう。これは九州のプラントを巡回した時に清村養豚さんと熊本愛農会で出た課題と同じでした。堆肥の状態は、水分が少し足りないことと、もう少し発酵が進めば完熟になるかどうかというところで、宮﨑氏から「河村さんの生物活性水を利用して水分調整をすればどうでしょう、きっともっと良くなるのでは」と提案があり、早速始めることになりました。河村さんの生物活性水もここの堆肥を原料にして作る予定です。このように斎藤牧場では地域循環の系がなされているところでしたが、河村さんの取り組むBMW技術が加わることによって、より良質の堆肥ができることや、技術の地域普及にひろがりがでることに希望が持てます。
 次に訪れたのは河村家が代々守ってきた山です。柳井市は山口県の南東部に位置し、沿岸部、内陸部、半島・島嶼部からなり、総面積の半分以上が山地丘陵地で占められ、その山々(丘陵)は花崗岩で形成され、豊かな伏流水に富んでいる地域です。河村家の山は海岸に近く、標高は約一五〇メートル(河村農園は海抜〇メートルに近いとのこと)、花崗岩の山でした。傾斜の険しい山肌を上がること数十分、積り積った腐葉土の下に花崗岩がありました。この花崗岩は比較的軟らかくて、むき出しになっているところはボロボロとくずれるようでした。先程訪れた斎藤牧場のすぐ脇には真砂土(花崗岩がくずれて砂になったもの)が多く取れるとのことでしたが、ここは腐葉土に覆われていることが原因かどうかわかりませんが、しっかりと岩石が採掘できました。奥地先生(岡山大学准教授)に聞いたところ、四国の北部から中国地方にかけては「領家帯」という地層で、比較的若くて柔らかい花崗岩がその層をなしているとのことでした。
 BMW技術を広め始めた当初は、地域の岩石を採掘(調査)しによくみんなで歩いたと言う話を先輩から聞いたことがあります。地域未利用資源の活用、循環、人とのつながり=BMW自然循環システム、決して大きいな系でありませんが、逆に見やすくて、わかりやすい形でここ柳井市に広がる可能性があります。
   (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2012年07月01日 22:44

 
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