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2013年06月01日

【AQUA254号】インドネシアATINA社竣工式と視察報告

 三月二四日にインドネシア・シドアルジョにあるATINA社において同社のエビ冷凍加工の新工場竣工式が行われました。BMW技術協会からは伊藤幸蔵理事長をはじめ、清水澄常任理事、生田喜和常任理事、協会法人会員である生活クラブ奈良の立石昭彦理事長、㈱匠集団そらの星加氏と秋山の六人が出席しました。竣工式が終わった後はエビの養殖池や稚エビの生産場、山間部にある有機農家等を視察しましたので報告します。

 インドネシアのATINA社へのBMW技術の導入計画は二〇一〇年から始まりました。その間、インドネシアと同社の視察、現地スタッフとの意見交換などを繰り返し、二〇一一年四月に第一計画案を完成させました。これを盛り込む形でATINA社は新工場建設を開始し、計画開始から約二年半の月日を経て新工場が完成し、BMW技術も導入されました。

◇三月二四日 〜竣工式
 竣工式にはエビの生産者、ATINA社スタッフ、工場の従業員、取引先関係などを含め、およそ二〇〇名が出席、地元のスラバヤ県知事も出席していました。
 式のはじめは、日本とインドネシア間でのフェアトレードを始めるに当たり、そしてその後の取り組みを進めて行くにあたって多大な貢献をされ、奇しくも前日の三月二三日に逝去された、村井吉敬氏(上智大学名誉教授・NPO法人APLA共同代表)への黙とうから始まりました。続いて、ATINA社代表取締役(ATJ社前代表取締役)の堀田正彦氏の挨拶から始まりました。「インドネシアとのエビのフェアトレードを始めてから約二一年。二〇〇三年にATINA社ができ二〇〇五年に旧工場での稼働が始まってから約一〇年。この新工場の完成は新たなスタートとチャレンジ。スタッフの皆にとってこの新工場の稼働が大きな励みとなることを願っています。(中略)」。その後は日本のATJ社役員代表として行岡良治氏、エビ生産者代表としてホイルル・ウマム氏(通称:イルル氏)、スラバヤ県知事の祝辞挨拶があり、伝統舞踏、祈祷と続きました。出席者の中でも、嬉しそうな顔をした同社のスタッフや従業員さん達の笑顔が印象的でした。

◇三月二五日
   〜エビ養殖池の視察(シドアルジョ)
 朝からエビの養殖池を視察。船着場まで新工場から車で三〇分ほど移動し、そこから船でゆっくり川を下って行きます。海岸から近く、海水と淡水が混ざる「汽水」で養殖されるのがブラックタイガーです。訪れた養殖池は前日の竣工式で祝辞挨拶をした若き生産者の星・イルル氏の圃場。まずはじめに、イルル氏による説明がありました。「パランロノと呼んでいる(池ごとの呼称)この養殖池は、総面積一〇ha、五つの池にわかれている。養殖するのは四つの池、川との水門がある一つの池は調整池になっている。伝統型粗放養殖でエビとバンデン(ミルクフィッシュ)を混合して養殖している。年に一度水を全部排水し乾干しを行います。ここでの収穫量は一ヘクタールあたり平均約四〇kg。池にはガンガンという水草を発酵させて投入し、そこに発生するプランクトンがエビの餌となる。抗生物質等は一切使用しない。収穫は昔から使われている「罠」を使用して行われ、この罠はできるだけエビに傷をつけずに最小限の労力で収穫するための巧みな知恵が詰まったもの。」
 続いて、ATINA社スタッフによる稚エビから養殖池に放流されるまでの過程の説明がありました。「エビは卵から孵化後約二〇日間、四つのステージに分けてハッチェリーと呼ばれる稚エビ生産場で生育し養殖池に入れられる。養殖池に入ってから約三カ月で収穫。」一通りの説明の後には収穫しているところを視察し、昼食には獲れたてのエビを食すなどしました。
 また、清水常任理事を中心に、河川の汚染に悩む生産者と池の水の浄化方法などの意見交換を行いました。このことに関しては後日あらためてお互いの意見をまとめ検討して行くこととなりました。

◇三月二六日
〜稚エビ生産場(シトゥボンド)
 シドアルジョから列車で約三時間移動し、ジェンバーという町の到着。そこからさらに車で一時間半、シトゥボンドという場所にある稚エビの生産場、通称ハッチェリー(意味は「孵化させる」とのこと)を視察しました。親エビはお隣の島、スマトラ島のアチェというところから月に一度仕入れて、ここで産卵させます。エビは一度の産卵で五〇万〜八〇万個の卵を産みます。まず親エビ、メス三〇尾、オス二〇尾を同じ水槽に入れ交配させます。メスは片目を切り取って産卵を促すそうです。卵を抱いたエビから別の水槽に移され産卵をさせます。孵化した稚エビは三つのステージに分けられて生育され、かなり小さい状態で池に放流されます。ここでの生育率は多少のバラつきがあります。人工餌や抗生物質を使用しないため、手間もかかりますが、なかなか安定させるのは難しいとのことでした。協会からは生物活性水を利用した実験を提案し、その場で急遽学習会を行いました。ハッチェリーの責任者と生産者のイルル氏に伊藤理事長がBMW技術の基礎、考え方や理念などを説明しました。通訳をされたATINA社GMの津留歴子氏の丁寧な通訳の手助けもあり、彼らはだいぶ理解を深めてくれたようでした。今年の秋には日本に来日する予定があるので、是非、BMW技術の実践現場を訪問をしたいとのことでした。
生物活性水を使用した実験は六月か七月に開始されます。

◇三月二七日
〜マラン高原の有機農業生産者との交流
 ジェンバーから車でマラン高原へ向いました。途中、東ジャワ島で一番大きな火力発電所を通り、この発電所敷地内に積み上げられている大量の石炭を見ると資源を持つ国のある意味での豊かさに溜息がでました。インドネシアのエネルギー資源は、石油をはじめ、天然ガス、石炭、水力、地熱などがあり、日本へは天然ガス、石炭を輸出しています。石油に関しても輸出国であったが、生産量が低下してきたことで二〇〇八年九月にOPEC(石油輸出国機構)を脱退し輸出は少ない。なお、ウラン資源に関しては、一九七一年からフランスや旧西ドイツの協力などで西カリマンタン地区のカリン(Kalin)地区に埋蔵量二万四千トンのウランがあり、三〇〇万kW級原子力発電所を一一年間稼動できるとしている。
 標高約一〇〇〇mのマラン高原に到着、海のちかい平場に比べるととても涼しくて過ごやすい場所でした。ちょうど日本で言うと夏場の高原地域のような気候が一年中だそうです。東ジャワ有機農業組合代表のフランス氏と組合のスタッフ、生産者数名との昼食を交えた交流会と圃場の視察行われました。この地区では一人当たり約二〇a〜五〇aの畑、総面積で二・三haの有機認証圃場で野菜の生産がおこなわれているとのこと。レタス、トマト、ほうれん草、セロリ、クレソンなど冷涼な高原の気候を活かした生産がなされていました。フランス氏の話によると、インドネシアでの有機野菜の販売価格はほうれん草一キログラム、日本円で五〇〇円くらいになるとのこと。一人あたりの栽培面積が少なくても「生業」にはなることに皆さん納得。有機米生産の取り組みも行っているとのことで、反収も一〇俵弱〜とのことでした。インドネシアは米の生産量も東南アジアの中では高かったのですが、最近はハイブリッド米の導入、おそらくアメリカからでしょうが化学肥料の多量投入の影響で生産高はかなり落ちてきているとのことでした。
 
◇今後の取り組み
 BMW技術協会としては、ハッチェリーでの稚エビの生育実験への協力、池の浄化の提案などをしていく予定です。また、現地の生産者たちとの技術交流も行っていきます。(報告:BMW技術協会事務局・秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年06月01日 20:18

 
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