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2013年12月01日

【AQUA260号】インドネシア エコシュリンプ生産者によるBMW関連施設の訪問

    インドネシア初のBMWプラントを導入したPT・ALTER TRADE INDONESIA社(ATINA社)では、エコシュリンプという冷凍エビを製造し、輸出しています。また、ATINA社は、エコシュリンプという事業を通じ、エビの生産者と日本の消費者を媒介するという役割も担っています。今回、その一環として、エコシュリンプ消費者との交流活動を目的として来日したホイルル・ウマム氏とムジャヒディン氏は、産地の一つである東ジャワ州シドアルジョ県でエビ養殖を営む、若手の生産者です。親やその前の世代から代々受け継がれてきた養殖池を守っている彼らですが、インドネシアの経済発展に伴う近代化の波の中で自然的・社会的な周辺環境も変わり、今後のエビ養殖事業に対して、危機感を抱いています。

 ATINA社との関わりの中で、二〇一三年四月より稼働した新工場に導入したBMW技術に関心を持った彼らは、今回の来日に際し、日本のBMWプラントや、生物活性水を実用的に活用している農家・生産者の話を聞きたいという強い願いのもと、来日予定を前倒しして、見学をすることになりました。

 最初に訪れた涸沼生態系再生プロジェクト代表の清水澄(BMW技術協会常任理事)さんのお宅では、涸沼とその周辺の土や水を守るための活動についてお話を伺った後、実際に涸沼の畔で水の浄化システムを再現する実験を行っている小屋で、現場を視察させて頂きました。小さい実験池には、砂地で育つ水草と泥地で育つ水草が。ホイルル氏曰く、同じく泥地であるエビ養殖池にも似たような水草が生えているとのこと。清水さんが仰った、「水草が一番大事である。水草があれば、そこに産卵できる場所が生まれる。稚魚が発生して増えることで、生態系が豊かになる。」という言葉は、まさに彼らのエビ養殖環境の維持改善に必要な考え方でした。また、「水草は元々そこに生えているものでなくてはならない」とのこと。やはり、その地域には環境にあった生態系が存在することを、改めて感じさせられました。小屋の外には色々な水草を生育しているタンクがあり、目で見えるほどにたくさんの微生物や小さい虫が泳いでいました。エビはそのような小さい生き物を捕食して育つため、水草の重要性を再認識。水草がきちんと光合成をするためには一定の透明度が必要ですが、彼らの養殖池は若干透明度は低いようです。養殖環境の改善に向けて、課題が見えてきました。

 ㈱米沢郷牧場とファーマーズ・クラブ赤とんぼでは、BMWプラント、飼料や堆肥の製造に加え、収穫前後の田んぼ、リンゴ、ブドウなどの果樹園も見させて頂き、BMW技術を中心として営まれている米沢郷牧場グループの農業風景全体を視察することができました。最初に見た飼料工場では、出来上がったエサがまるで醤油のような美味しそうな香りを放っており、原料となる米ぬかを見た二人は、「こんなに上質の米ぬかは見たことが無い」と驚いていました。BMWプラントに到着すると、まず周辺に多くの鶏が飼育されているにも関わらず、全く臭いがしない点が印象的でした。プラント内で「飼っていた牛の糞尿から生物活性水を作っていた」という話にも合点がいき、今はコンポストからであるにせよ、出来上がった茶色い生物活性水を飲んでみたムジャヒディン氏は、「全く普通の水と変わらない」と太鼓判。微生物の分解による浄化作用を体感しました。隣にある堆肥の製造施設では、鶏糞から堆肥になるまでの流れを視察。発酵熱で温かい堆肥の山、完全発酵した堆肥が全く臭くないことやそこにはハエが寄らないことなど、初めての体験ばかりでした。また、「各養鶏家が持ってきてくれた鶏糞を堆肥にして返す」という地域内でのヒトとモノの循環の仕組みは、まさにBMW技術の考え方を現場に応用したものであると同時に、それが地域に深く浸透し、生産者同士の信頼関係を成り立たせている軸になっていると感じました。

 生産から出荷までを一つのグループの中で行っているファーマーズ・クラブ赤とんぼのような形は、彼らに例えると、エビ生産者〜ATINA社までが一体となってエコシュリンプ事業を行う、ということになります。そのためには、まずエビ生産者同士が同じ方向を向き、より強い人間関係を築いていく必要がある、と二人は言いました。それと同時に、生産者とATINA社の関係性も、見直していくことも必要です。滞在中、ムジャヒディン氏から挙がった「どうやったら生産者同士が一つのグループとして分解せずに続けていけるのか?」という質問に対する、ある一人の生産者の方の答えが、とても印象的でした。曰く、「生産者一人ひとりは自分のやりたいこともあるし、基本的にはわがままなものである。ただ、農業を続けていきたい、という気持ちだけは皆同じであり、だからこそ同じ方向を向いて進んでいける。」とのこと。これは、今まさに「エビ養殖を続けていきたい」と強く願っている彼らにとって、大きなヒントとなりました。
 インドネシアと日本では国柄も違いますが、今回学んだこと、感じたことを、これからのエビ養殖の現場に生かしていくことで、今までより強い関係性を築くことができると思います。大変貴重な経験をさせていただき、本当に有難うございました。
  (報告:㈱ATJ 事業部 若井俊宏)

Author 事務局 : 2013年12月01日 14:06

 
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