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2014年06月01日

【AQUA266号】インドネシアATINA社を訪問

インドネシアATINA社を訪問、11月のアジアBM大会の招致をおこないました。

 四月二七日〜二八日、インドネシア・スラバヤのエビ冷凍加工工場・ATINA社(オルター・トレード・インドネシア社)を生田喜和アジアBM連帯会長(BMW技術協会常任理事)とBMW技術協会事務局の秋山が訪問、今年の一一月に開催を予定している「第二四回BMW技術全国交流会・第四回アジアBMW技術交流会」への招致をおこないました。アジアBMW技術交流会ではATINA社のBMW技術の取り組み、実験などの報告をしてもらうようお願いし、発表内容に関しての打合せに併せて、プラントの稼働状況の聞き取りや、ATINA社として今後どのようにBMW技術の取り組みを進めて行くかなどの話し合いを時間をかけてじっくりとおこなうことができました。
 ATINA社では、二〇一三年三月よりBMW技術排水処理プラントと生物活性水プラントが併設して設置され稼働を開始しましたが、昨年の秋頃から、工場の作業工程の都合上、生物活性水の製造タンクも排水処理槽として利用されるようになり、生物活性水の製造は一時停止していました。そこでプラント管理するスタッフよりプラントの処理フローの変更と生物活性水プラントの再稼働について提案と相談がありました。工場排水は一日の排水量が予想以上に増減するとのことで、通常期は現状のフローでも大丈夫ですが、ピーク時には流量調整がギリギリになってしまうとのことで、生物活性水の製造タンクを別のライン(タンク)で製造し、既存のタンクは排水処理用として使用したいとのことでした。匠集団そらの星加氏に相談し、ATINA社スタッフの提案を受け入れることにし、生物活性水は別途のタンク(一槽五二〇〇リッター×五槽)を使用して、生物活性水を作りなおすことになりました。
 また、エビ生産者の生物活性水利用に関しては、量があまりにも足りないこともあり、排水処理水を利用してもらうことになりました。これはプラントを管理するATINA社のシニアディレクター・アブラハム氏が処理水を利用して、魚や稚エビの飼育をしてみたところ、何ら問題もなく生育できたことを受けての提案でした。アブラハム氏はプランターでの野菜の栽培実験もおこなっていて、実験区を三つにわけ、普通の水と排水処理水、生物活性水の三種類で潅水をし、それぞれの成長具合を比べていました。今のところは処理水を潅水したものが成長の具合が早いですが、今後の実なりなどの経過を見ていきたいと話していました。生物活性水については別のタンクにて作り直し、当面はハッチェリー(稚エビの養殖)での利用実験に活用して行くことになりました。ハッチェリーでは大量の水と海水を混ぜながら、生育ステージにあわせて塩分濃度を変えて飼育しますが、生物活性水を塩分濃度に影響のない一〇〇〜二〇〇倍に稀釈して使用し、実験用に小さいロットで親エビの産卵率や稚エビの生存率を比較していく予定です。これらの取り組みが一一月の交流会で事例報告として発表されることが楽しみです。


ATINA社で開催された学習会に参加!
 また、エビ生産者とATINA社スタッフが設立したNGO団体「KOIN」が、環境をテーマにした学習会を開催しました(ATINA社とNPO法人APLAとの共同開催)。学習会の内容はこれからの地域を担っていく若者を対象にということで、生産者やスタッフの子どもたち(中高生)を集めて丸一日おこなわれました。インドネシアで環境問題に取り組むNGO団体「エコトン」や地元スラバヤ県の水産局職員を講師に迎え、スラバヤをはじめインドネシアの環境問題、特に水質汚染とゴミ処理の問題についての講義がおこなわれました。BMW技術協会事務局の秋山も講師として参加、BMW技術協会の日本の各流域での取り組みなどをBMW技術の理念を交え説明し、海外から見た眼でのインドネシアの汚染状況、特に河川に投げ捨てられるゴミの多さには驚愕しているというような感想を交えながら話しをしました。インドネシアでは基本的な生活用水はミネラルウォーターです。各家庭に貯水タンクがあり、タンクローリーが水を配達に来ます。このような風習があるからか、自然の水への意識、ありがたみが薄いのか、あるいはゴミを処理するという意識がないのか、河川は庶民のゴミ箱と化しています。これがエビ養殖へもたらしている影響は大きく、生産者にとっては死活問題となっています。KOINではBMW技術の考えを応用して河川浄化の取り組みを進めようとしています。その第一歩が今回の学習会となったようです。

○番外編〜東ティモール
 今回のインドネシア訪問の際に、少しだけ足を延ばすことにして東ティモールを訪問しました。NPO法人APLA事務局の野川さんの活動に同行する形で、二つの村(コーヒー産地)を訪問。村には電気、水道、ガスも通っていない、とても質素な暮らしが営まれている場所でした。夜は簡易型のソーラーパネルで蓄電された電力を電球一つに利用、あとはローソクと満点の星の灯り。水道は山からひいた湧水を貯水しながら利用、ガスはもちろん間伐材など。文明が入り込み過ぎていない村は、景色も人もとても美しい。
 一六世紀からのポルトガルによる植民地支配にはじまり、第二次世界大戦中の日本軍による占領、その後の不条理なインドネシア支配、独立運動を経て二〇〇二年に独立したアジアで一番新しいこの国は、国内産業がほとんど育っておらず、石油・天然ガスなどの天然資源を除くと、主な産業はコーヒーのみ。
 国自体のシステム、教育や産業についてもやっと自分達のルールを作り始めているところとのことで、この国の美しさや純朴な農民の暮らしを守るため、世界各国から多くのNGO団体が活動をしています。APLAではATJ社(オルター・トレード・ジャパン)のコーヒー産地にて、東ティモールのATT(オルター・トレード・ティモール)と一緒に農民たちの自立を支援しています。地元のNGO団体であるパーミティルの協力を受け、生産作物の多様化、生産者協同体の設立など、これまで他の「支援」が実現してこなかったことを実現する=人と人との交流・学びあいをベースに、人(コミュニティ)が変化していくプロセスに寄り添う形で、主体はあくまでコミュニティの人たち(農民)であり、「支援する・支援される」関係を生み出さないというスタンスで活動を続けています。現在は二つのグループと共に「コーヒーだけに頼らない地域づくり」をめざした活動を進めることを決め、対話を重ね、交流プログラムの実施などを通じて、各地域にある資源・労働力を生かしながら、「コーヒーだけに頼らない豊かな暮らし」を共に目指しているとのこと。ティモールでのBMW技術の普及はということになると、それはまだまだ先…というよりは、必要のないくらい恵まれた環境でした。 まだまだ自然の治癒能力が働く範囲内で在る姿でした。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年06月01日 14:20

 
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