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2014年06月01日

【AQUA266号】第8回BMW技術基礎セミナー報告

 四月一日、第八回BMW技術基礎セミナーが、東京飯田橋にある「東京しごとセンター」四階にて開催されました。当初、二月に二日間での開催予定でしたが、関東甲信地方に起こった大雪害の影響で延期になり、四月に開催となりました。
 若手の生産者を中心に、約三〇名が参加しました。参加団体は、ポークランドグループ、やまなし自然塾、(株)FTPS、大川村ふるさとむら公社、山梨大学、米沢郷グループ、(農)和郷園、謙信の郷、夢産地とさやま開発公社、ファーマーズクラブ雪月花、NPO法人APLAなどでした。

 BMW技術協会伊藤幸蔵理事長から「BMW技術基礎セミナーは、毎年二回開催し、そのうち一回は生産者からの技術的な発表、もう一回は消費者を交えてのBMW技術の運動的なことをテーマにして行うという方針でやってきています。今回は技術的なことをテーマにする回ですが、どういう風な実験をしていけば、わかりやすくまた結果が見えやすいか、実験の結果だけでなく、途中の過程も追えるような科学的手法を山梨大学の御園生先生から学びたいと思っています。
 BMW技術協会では各地のプラントの生物活性水の調査も行っていくつもりです。生物活性水の効果はわかっていますが『なぜ効くのか』の部分の解明についてもこれから注力していきます。」と開会挨拶がありました。
 続いて、黒富士農場の向山洋平氏から、二月の山梨県での雪害の報告があり、倒壊したハウスの解体作業等を手伝いに全国からやってきてくれたボランティアの方々への謝辞も述べられました。
 次に「生物活性水を利用した実験報告」として、山梨自然塾の萩原貴司氏から果樹についての生物活性水実験報告がありました。去年の全国交流会での発表をふまえ、さらに進捗した内容でした。ぶどうの萌芽、着色、糖度、平均粒重量等に与える生物活性水の影響を、ぶどうの上部、中部、下部にわけて調べた報告で、今後も実験は継続していくそうです。
 次に「生物活性水の利用による、おからの腐敗防止実験の報告」として、(株)豆伍心の小西歩氏が行った実験について、代理で秋山事務局長が報告しました。(株)豆伍心から日量五〇〇キロ以上も廃棄されるおからに、発酵させた米ぬかを入れ、全体を発酵させやすくする実験で、腐敗臭やハエの発生を抑えられることが確認されました。今後の工夫によっては、おからを腐らせず、栄養価の高い畜産用のエサなどに再利用できるのでは、との展望も述べられました。

 山梨大学生命環境学部の御園生拓教授による特別講座「実験の基本、データの取り方の基本」は、まず、科学的方法、合理主義的科学像など、科学についての概論からはじまり、実験系の組み方とデータの取り扱い、研究目標の設定と研究の流れの作り方についての講義がありました。続いて、山梨大学生命環境学部環境科学科の五味直哉氏と、ワークショップ形式で「藻類バイオマス施肥試験」を例にとったデータの視覚化と分析、平均値やデータのバラツキの表示、有意差検定などをExcelを使って実際に全員で行いました。
 その後、今年度の生物活性水を使った実験に関して、野菜、畜産、果樹、米の四つの分科会に分かれ、グループディスカッションが行われました。各分科会の発表の後、まとめとアドバイスを御園生教授から受けました。これらの実験は、今年一一月に行われる全国交流会や今後のBMW技術基礎セミナーで発表が行われる予定です。
 最後に(農)和郷園の木内克則氏から閉会の挨拶があり、会場を移しての懇親会となりました。 (報告:BMW技術協会 井上 忠彦)


「第八回BMW技術基礎セミナーに参加して」 宮城BMW技術協会
   大郷グリーンファーマーズ  西塚 忠樹

 四月一日のBMW技術基礎セミナーは、本当ならば二月に二日間の開催予定になっていましたが、二月の広域な大雪害による影響で開催が四月に延期、一日のみでの開催になったものでした。八〇年ぶりとも言われる大雪の影響は甚大なもので、BMW技術の普及が進む山梨県では、多いところでの積雪は一晩で一八〇㎝にもなったとのことでした。道路や鉄道は断たれ、協会会員の運営する畜舎、ビニールハウス、その他多くの農業施設に大きな影響を与えました。セミナーの冒頭でこの被害の説明が山梨の向山さんからあり心を痛めました。この場をお借りして、一日も早い復興を願い、お見舞い申し上げます。

 今回の基礎セミナーの内容としては、全国大会の時に発表しきれなかった実験の発表と、特別講座として、山梨大学から御園生先生による「実験の基本、データの取り方の基本」、それを踏まえたうえでの、部会での今年の実験に関するグループディスカッションを行いました。
 前年度の実験の報告として、果樹部会からやまなし自然塾、萩原貴司さん、生活部会から㈱豆伍心、小西歩さんからの報告がありました。
 まず、萩原さんの発表ですが生物活性水を利用したブドウの萌芽率と着色具合に関する実験の報告がされました。萌芽率は濃度の濃い生物活性水の散布を行うと遅くなる傾向にあると言われているようですが、今回の実験でそのことをデータでも示唆するような結果になったとのことです。これは、栄養過多によるものが原因にあるのかもしれないとのことでした。
 また、着色に関しては大きな差はないものの、同時に計測した粒重量は無処理のものと比べて増加傾向にあったとのことです。
 いずれの実験も果樹での短期での観測では結果が出づらいようで、今後継続して実験を行うことでの有効活用の方法を模索していきたいとのことでした。
 小西さんからは、豆腐の製造時にでる、産廃となるおからの一時保管時の腐敗臭を抑えるために生物活性水の散布を行っているそうです。今回、その散布方法のパターンの実験を行ったとのことでした。組合せとして、おから、生物活性水、BM菌体、ヨーグルト、米ぬかを何種類か組合せ、傾向を調べたとのことです。
 結果は腐敗を抑えるためには、生物活性水単体よりも、その他の菌の媒体があるものとの組み合わせが、効果があるとのことでした。BM菌体や米ぬかが入ると堆肥のような臭いになり、ヨーグルトを加えるとヨーグルトの発酵が進んだ時の臭いがしたとのことです。
 現在は産廃として処分しているおからですが、今後はおからを有効利用してくれる処分の方法を検討していくと話していました。
 今回の基礎セミナーでは、前回の全国交流会の実験発表を踏まえ、より伝えることを重視する実験を行いたいという意見が多く上がりました。そこで、そもそもの実験とはなんなのか、また、その実験結果を発表するためには、データをどのように集め、そしてまとめていくのかを、山梨大学、御園生拓氏に講演をお願いしました。
 御園生氏は、科学とは現象を構成するものの究明であると最初に述べました。現代の科学は、現象を表す要素をつなぐ関係性を調べていくことにあると話し、実験を行い伝えることを目的としていかなければならないと話していました。伝えるためには、まず、行う実験の構成をしっかりたてること。理論があり、仮説をたて予測をし、得られた結果を分析、そして理論の再構築の流れが重要であると、実験の方法の説明をしていただきました。そのうえで、とるべきデータの選定、そのデータの視覚化と分析の方法、得られたデータの有意差の表示などを、ワークショップ形式で教えていただきました。実際に、方眼紙を使いデータのグラフ表示をやってみると、学生時の授業を思い出す感覚があり、楽しみながらできた気がします。
 講演で話されたことを踏まえながら、セミナーの最後には部会に分かれ、それぞれの今年の実験テーマと内容を話し合いました。実験方法を直前に話していただいたので、内容が密になり、細かなところまでも話し合う良い場になったと思います。ただ、内容が密になったため、時間がどの部会も足りないようだったのが、少し残念ではありました。しかし、実験方法についての講演を聞いた分、昨年の実験発表よりも、今年の発表は細かなデータの提示ができるのではないかと感じています。
 また、前年のそれぞれの実験の発表が今回の基礎セミナーですべて終わりました。実験から得られた新しい発見、可能性を皆が感じていると思います。前年の結果から、今年以降につながる、生物活性水の有効利用の方法をそれぞれが検討していき、情報共有することでさらなる技術の向上が得られていくと私は感じています。

Author 事務局 : 2014年06月01日 14:22

 
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