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2014年08月01日

【AQUA268号】フィリピン訪問報告

BMアジアより〜 「フィリピン訪問」
 六月一〇日〜二〇日、フィリピンを訪問しました。今回の訪問の目的は、第四回アジアBMW技術交流会への召致、フィリピンにある三カ所のプラント点検、フィリピンBMW技術協会設立に関する打合せ、カネシゲファームの卒業生の産地訪問、ATC社でのBMW技術基礎学習会、NPO法人APLAの案内で、伊藤幸蔵理事長、生田善和常任理事、事務局・秋山が訪問しました。

①北部ルソン・イザベラ州カワヤン/農業生産組合法人CORDEV(コルデヴ)
 昨年五月にリニューアルされた生物活性水プラント、二tのステンレスタンク×五槽、日生産量二〇〇リットル。順調に稼働していました。プラントが設置されているのは、CORDEVが今後、ネグロスのカネシゲファームのような農学校開校を目指すためにカワヤン市から借り受けしている土地で、堆肥製造施設があります。生物活性水は堆肥製造の水分調整、発酵促進に使用、生産者もここに生物活性水を取りに来て利用しているとのことでした。

②北部ルソン・イフガオ州アルフォンソリスタ/SABAPA(バナナ生産者共同体)
 アルフォンソリスタ地域の二三名のバランゴンバナナ生産者が集まって設立した共同体です。主に日本の生活協同組合などで販売されているバランゴンバナナを出荷しています。
 SABAPAの生産者代表のジャニー氏は「CORDEVの生物活性水を、バナナの育苗や野菜作りに潅水、葉面散布で利用した。使っていないものと比べると、葉の厚み、葉の色の違いなどがあり、BMW技術には期待ができると思っている。」とのことでした。しかし、この地域からプラントがあるカワヤン市までは、片道一時間半と遠いこともあり、定期的に取りに行くのが難しく、できれば自分達のプラントを設置したいと考えています。
 この地域はバンチートップ病と言うバナナの疫病が流行った地域で、昔はバナナの生産も盛んにおこなわれていましたが、疫病の影響で生産をやめる人が増え、遺伝子組み換えのトウモロコシの生産に移行していきました。ここイフガオ州とCORDEVのあるイザベラ州は、遺伝子組み換えトウモロコシの巨大産地でもあり、多くの農民は、シンジェンタ社やモンサント社の術中にはまり、体は病み、借金づけの生活をしているとのこと。ジャニー氏はこのような状況もふまえ、自分達はバランゴンバナナの生産を頑張って続けていきたいと願っています。
 この地域の農家は、遺伝子組み換えトウモロコシを生産するか、バナナを生産して食いつないでいくかという二つの選択肢しかありません。しかし課題も多く、バナナの生産は手探り状態でおこなっている部分もあり、生産技術の向上を含め、土作りなどの基本的な事をもっと学んでいかなければ、道は険しいです。

③北部ルソン・ヌエバビスカヤ州・マラビンバレー/ギルバート農園
 約二年前に生物活性水プラントを導入、約三tの土木槽×五槽(+一tの自然石槽)で日生産量は約三〇〇リットル。ギルバート氏は柑橘生産者で、生物活性水はみかんの苗木作り、豚の飲水添加、豚舎の洗浄に利用しています。豚舎の洗浄排水はメタン発酵→液肥(スラッジ)として利用、生物活性水の原料にもなっています。
 昨年から、これまでにいなかった害虫被害が地域全体に広がっていて、みかんの生産に大きな打撃を与えているとのことで、この影響で生産をやめる人も出てきています。ギルバート氏は「なんとかこの問題を克服して、生産を続けていきたい。これまでに使用してきた防除の在り方や、土作りを考え直さなければ未来はない、そのためにもBMW技術を実践していきたい。」と話していました。

④ネグロス島/カネシゲファーム
 生物活性水プラントは五〇t×三槽+二槽、バイオガスのメタン発酵槽が連結されています。プラントは順調に稼働、雨季に入ったということもあり、農場は緑が豊かに生い茂り、作物の生育状況も良かったです。
 ここ数年、スラッジ(液肥)を畑に利用することによって、以前に比べると土の状態はかなり良くなっているが、今度は逆に過剰施肥になっていないか、亜硝酸態窒素などの蓄積の心配があるとのことでした。そこでスラッジを施肥しないで作物を作ることを試していました。近々、検査機関に土壌検査を依頼する予定です。

⑤ネグロス島・パンダノン/カネシゲファーム卒業生の産地
 カネシゲファームはバランゴンバナナやサトウキビ生産地などの農家の担い手が、農業を学ぶ学校として開校されています。半年から一年の研修を終え、自分達の地域に戻り、カネシゲファームで学んだことを実践します。
 小規模ですが、養豚→糞尿をメタン発酵→スラッジ(液肥利用)→耕作の有畜複合型の循環式農業の実践です。豚はカネシゲファームから子豚を仕入れ、肥育してから売ります。ここパンダノンは、古くから日本にバランゴンバナナを輸出している地域で、ここに昨年卒業した二人の卒業生(マイケル君とマージョン君)が頑張っていました。

⑤ATC(オルタートレード)社での学習会
 ATC社は、BMW技術協会会員でもある日本のATJ社(オルタートレードジャパン社)の現地パートナー会社で、バランゴンバナナやマスコバド糖を日本やヨーロッパに輸出しており、日本では生協協同組合を中心に販売されています。同時にATC社は、各生産地で生産者支援、地域開発などもおこなっています。
 今回、ATC社での学習会は初めてのことでした。ATC社スタッフ、生産者を含めて約四〇名が集まりました。この学習会をきっかけに、カネシゲファームの取り組みを含めて、皆で協力し、一緒に生産者の自立を支援していけるように、あらためて考えていくことを期待しています。
    (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年08月01日 08:55

 
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