« 【AQUA269号】BMプラント動向 | メイン | 【AQUA269号】第9回BMW技術基礎セミナーが九州で開催されました! »

2014年09月01日

【AQUA269号】中国・常熟訪問報告

 七月八日〜一〇日、中国・上海から北西に約一〇〇kmの向った常熟市にある「米豆犁(みどり)農場」を訪問しました。訪問の目的は、一一月二〇日〜二一日開催の第四回アジアBMW技術交流会(第二三回BMW技術全国交流会と同時開催)への召致、交流会での発表依頼と内容の相談、米豆犁(みどり)農場に設置されているBMプラントの巡回です。
 七月八日に㈱華和の上海工場を訪問、翌九日は米豆犁農場の視察とプラントチェックをおこないました。一〇日には米豆犁農場の上海オフィスにて、生田善和アジアBM連帯会長(BMW技術協会常任理事)が㈱華和代表の徐企釗氏と米豆犁農場代表の戴海燕氏に、今年の第四回アジアBMW技術交流会の詳細を報告し、事例発表の依頼をしました。両氏には快く承諾していただき、発表の内容についての打合せもおこないました。

①米豆犁農場について
米豆犁農場はBMW技術協会会員である株式会社華和が運営する農場です。総面積は二.七ヘクタール、平飼いの採卵鶏を約四千羽、ナス、トマト、かぼちゃ、キャベツ、にんにく、玉葱、豆類など、多品目の野菜を栽培しています。すべての野菜は平飼い鶏舎から出る完熟鶏糞と、そのほかの有機堆肥を使用した無農薬無化学肥料栽培です。
 米豆犁農場はBMW技術を中国国内に普及していくことを目的とした、有畜複合型循環式農業のモデル農場として二〇〇九年に設立されました。生物活性水プラントと飲水改善プラントは二〇〇九年末に設置され、鶏の飲水をはじめ、鶏舎への散布、野菜栽培、堆肥づくりに利用しています。茨城BMのメンバーである田中一作さんと方波見等さん、米川さんが、昨年から指導に入り、農場の様子が変わり始めていました。ハウスと路地でのトマト、ナスの栽培を軸に、栽培管理がしっかりしてきた印象を受けました。
 また、販路等も増え始めているとのことでした。これまでに野菜や卵の行き先は、会員制の野菜BOXと㈱華和の工場の社員食堂(社員食堂は工場が二四時間稼働のため朝昼晩と三食提供。)が主でしたが、今では地元の料理店や市場、上海市内の伊勢丹やCITY’ SUPER(注釈①)などで販売され始めました。販売は上海市内にある事務所を起点に、営業を積極的におこなっているとのことでした。
 今後は農場の栽培技術・管理の向上、特に栽培計画をしっかりと作り、消費側のニーズに応えられる生産をしていくこと、BMW技術・生物活性水の野菜栽培での活用を体系化することが課題としてあげられます。BMW技術協会としては今後も引き続き、米豆犁農場に指導を含めて協力をしていきます。

注釈①CITY’ SUPER(シティ・スーパー):香港資本の食品スーパーで、日本でいうと紀伊国屋や三浦屋のようで、ソニープラザのような今時のポップな要素も含んでいる。日本の食品スーパーで買える調味料や加工品の多くがここで入手できる。

②米豆犁農場のBMW技術
 生物活性水プラントは一槽二tの樹脂タンクが五槽、日生産量二〇〇Lです。飲水改善プラントは一槽一tのステンレスが三槽。鶏舎には生物活性水の散布ラインが設置されています。生物活性水はEC〇.九四ms/cm三、pH八.七、亜硝酸態窒素の検出なしと数値的にはまずまずですが、原水のECが〇.七ms/cm三と元々高く、活性水としては色も含めて薄い状態でしたので、原料堆肥(鶏舎の発行鶏糞)を増量するように、また、リアクター塔の充填材の交換の方法など、プラントの基本的な管理方法を指導しました。
 生物活性水について、養鶏での利用は充実していました。一方、野菜栽培の方ではこれからという感じがしました。苗作りなどの潅水、畑へ潅水、葉面散布に利用しているとのことですが、野菜栽培での活用をもう少し体系化していけると、活用の幅も拡がってくるのではないかと思います。現場では、新しくスタッフになった徐建農さんと張海凡さんが、米豆犁農場の中心として頑張っています。戴海燕氏は、この二人に日本でBMW技術や栽培技術を学んでほしいと前々から願っており、今年の五月に徐建農さんが茨城県の茨城BMと山梨県の白州郷牧場を訪問し、短い滞在でしたがたくさんのことを学ぶことができたと話していました。徐建農さんは帰国後、早速、自分の目で見たこと、現地で教わったことを取り入れ、鶏舎の改造や畑作りに活かしていました。今後の活躍に期待します。

③上海のマーケット
 米豆犁農場の上海オフィスで、農場の販売アドバイザーをされている安藤孝裕氏に、上海における有機野菜を中心とした食品のマーケット事情を伺いました。安藤氏は、主に衣料品関係のトレーダーとして、香港と台湾をはじめ、現在は中国・上海で仕事をしています。
 上海での有機野菜のマーケットは、食品スーパーやデパートはすでに飽和状態で、新規参入することが非常に難しくなっているとのこと。各農場自体が独自に販売する野菜BOXも数多く、マーケット全体としては今後、より信頼性の高いものや特徴的なものが生き残っていけるのではないか。
 また、東日本大震災以後、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカなどたくさんの国々は、日本からの食品、飼料の輸入を禁止しました。中国はいまでも福島、宮城、茨城など一〇都道府県すべての食品、飼料の輸入を禁止し、その他の都道府県も放射性物質検査証明書などが必要とされています。中国に工場があり、日本原料を輸入しながら製造していた数多くの日本の食品加工メーカーは撤退、あるいは倒産しているとのこと。逆に中国国内で安心安全の原料を捜していたり、農場と提携して栽培したりするケースが多くなってきています。実際に米豆犁農場にも、ある企業から加工原料としての野菜、卵生産の引き合いが来ているという。今後はこういった形のマーケットが延びてくるのではないかとのことでした。
(報告:BMW技術協会 事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年09月01日 11:33

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.