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2014年10月01日

【AQUA270号】「TPP」学習会報告

〜オルター・トレード・ジャパン 政策室 小林和夫
 八月五日におこなわれた第四回アジアBMW技術交流会の実行委員会後に、元農林水産大臣で弁護士の山田正彦氏を講師に迎えて「TPP」学習会を開催しました。

○山田正彦氏講演〜概要まとめ
 TPP問題の本質は政府や国という主権、単位を超えて多国籍企業が自由に経済活動ができることを許し、「一%」と呼ばれるような一部の富裕層に富を集中させる一方、一般市民にとっては経済的メリットどころか基本的人権を脅かすことになる。TPPによって自国のほんの一部の産業が発展(国益にかなう)するかもしれない。だから、TPP賛成と論じる識者、市民も多数いる。しかし、山田氏が引き合いに出した北米自由貿易協定(NAFTA)の事例は、「安価なトウモロコシがアメリカから大量に輸入されたためメキシコの多くの小規模農民が倒産し、農民は職を求めてアメリカに安い労働力として流入した。その結果、アメリカ人労働者が次々と失業し、低賃金労働者、それ以下の生活を虐げられている。メキシコに残された農地は、多国籍企業に安く買い取られ、遺伝子組み換えトウモロコシが作付されている。突然、生計の糧を失うメキシコの小規模農民、アメリカ人の労働者が多く存在する。笑っているのは多国籍企業だけ。
 農業以外にも、医療、保険、労働、教育など生活の様々な分野で決して良いとは言えない影響をもたらす。医療・保険分野の国民保険の市場開放、特定医療の問題。最後は、裕福な人間しか健康保険に入ることができず、適切な医療を受けることや、きちんとした医薬品が購入できなくなってしまう。
 さらに、現在の日本では遺伝子組み換え食品の表示がされているが、TPPはその制度を撤廃する。企業に都合の悪いことが隠されるおそれもあり、消費者は安全な食品を選ぶことができなくなってしまう。堤未果著の「貧困大国アメリカ」でも書かれているが、「生存権」は保障されているとは言えない。TPPをめぐる闘い、論点は、もはや私達の生きる権利、国の文化の存続に関わる問題ではないか。多くの日本人に、この観点からあらためてTPPを考えてほしいと思う。自由貿易で豊かになるっていうのは幻想にすぎないと。
 最後に山田氏は、自ら先頭となって運動を起こすと。TPPに対抗するため、TPPは憲法違反であるという切り口からTPP差し止め訴訟を起こす準備をしている。その根拠として「知る権利」と「生存権」の侵害をあげ、TPPの交渉内容について国会議員でさえ誰にも知らされていない。その国会議員がTPPを国会で議決するのは、立法府の最高機関である国会に対しての侵害行為ではないかと。多くの国民に原告になってもらい原告団をつくる予定だ。
 TPPに関しては常々、問題を農業分野だけに矮小化していること、日本に国益があるかどうかの観点でその是非が議論されること、そして何より秘密交渉であることに疑問と憤りを感じていた私にとって、山田正彦氏の講演は学ぶことが多く、共感できる内容でした。一一月の交流会では、韓国の元農林長官・金成勲(キム・ソンフン)氏の基調講演が予定されています。韓国が結んだ韓米FTAの影響、諸問題についての話があるかと思います。明日は我が身、日本もその現状にきちんと重ねあわせて考えていかなければいけない。

Author 事務局 : 2014年10月01日 11:49

 
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