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2015年02月01日

【AQUA274号】インドネシア〜生物活性水を利用した稚エビの繁殖実験報告

 昨年の第四回アジアBMW技術交流会の二日目に、インドネシアのATINA社(オルタートレード・インドネシア)のハリー・ユーリ氏より、同社におけるBMW技術の取り組みの報告がありました。
 ATINA社は、パルシステムやグリーンコープなどBMW技術協会会員を含む、日本の生活協同組合向けのエコシュリンプ(ブラックタイガー)の冷凍加工工場で、二〇一三年にBMW技術排水処理プラントと生物活性水プラントが導入されました。
 導入から二年もたっていませんが、同社とエコシュリンプの生産者にはBMW技術が深く浸透しはじめています。これは排水処理プラントの処理水を池に放し、魚やエビの養殖を実現することで、水の浄化が目に見えてわかること、エビ生産者が積極的にこの処理水をエビ養殖池で利用し始めていることなどが功を奏しているとのこと。さらに昨年の九月より、同社が運営する稚エビの孵化場(ハッチェリー)では、稚エビの孵化から出荷まで、生物活性水を利用した実験を開始しました。
 一二月七日から一一日までインドネシアを訪問し、この稚エビの繁殖実験の途中経過の確認と、今後についてなどの話し合いをおこないました。

〜ATINA社のBMW技術プラント〜
 排水処理プラント、生物活性水プラントが設置されています。専任スタッフによりきちんと管理がされており、順調に稼働していました。排水処理水が流れる調整池(インディカトル)には、食用淡水魚のティラピアがたくさんいました。排水処理プラントと池の周りは、公園と遊歩道が整備されていて、パパイヤやバナナ、ナスやトウガラシなどが栽培されていました。池の水際にはマングローブが植えられ、そこを赤とんぼが飛び交うなどしていました。
 生物活性水は処理水を原料に作られています。微生物の餌が少し足りないため、一槽目に発酵鶏糞堆肥を毎週五kgほど投入しています。EC(電気伝導率)は三・五ms/cm、pHは七・九、亜硝酸態窒素、大腸菌群の検出はありません。

〜稚エビの繁殖実験〜
①はじめに
 稚エビは孵化後、大きくわけると三つの生育ステージにわけられ、生後二一日で生産者へ引き渡されます。その間はずっとハッチェリーの中の水槽で生育します。大きくなるにつれて水槽の水の塩分濃度を下げていきます。ブラックタイガーは産卵を海でしますが、エビを養殖をする池は、海の水と川の水が混ざる汽水で育つため、エビ養殖池の塩分農度に合わせます。そうすれば放流された時に稚エビのショックが少なく、早くエビ養殖池に慣れるためです。※海水の塩分濃度:約三.四%、エビ養殖池の塩分濃度:約一.四%(乾季と雨季、または生産者のエビ養殖池の状態によって変化させる)

②実験までの経緯
 ATINA社では抗生物質などの薬品を一切使わずに稚エビを繁殖させているため、同業他社に比べると生存率(出荷される稚エビの数÷産卵数)が低く、生産コストも厳しい状況が続いています。そこで親エビの水槽をはじめ、稚エビの二一日間の生育ステージの水槽に生物活性水を希釈して投入し、生存率を上げることができるかどうかを実験することにしました。これは、親会社である日本の㈱オルター・トレード・ジャパン(BMW技術協会会員)の前代表である堀田正彦さんが予てから発案されていたものであり、ATINA社にBMW技術を導入する目的の一部でもありました。

③実験方法
 生育ステージごとに一〇〇倍希釈で生物活性水を水槽へ投入し、生物活性水を投入しない通常のものと生存率、生育状況などを比較する。但し、今回の実験に関しては一五日目以降、水槽の水の一部六tを入れ替えるたびに水槽全体の水量に対して生物活性水を一〇〇倍希釈で投入していったため、二一日目には倍率は上がっている。母親エビは一回の産卵に五〇万〜百万の卵を抱える。卵の数は水中の密度で換算し、稚エビは二一日目の出荷時に一匹ずつカウントする。ステージの途中でのカウントは難しい。

④実験結果
 表を参照にしていただければわかりますが、これまでに四回の比較実験がおこなわれ、一回目の生存率はBM(生物活性水投入)が一二%、通常が四%、二回目はBM二六%、通常二八%、三回目はBM二八%、通常八%、四回目は表にはありませんがBM二二%、通常一五%という結果となりました。二回目以外はBMの方に優位性が見られました。
 また、生存率以外の違いとしては、「親エビの糞やエサの食べ残しからの悪臭がない」、「孵化後の稚エビ、特に〇日〜三日目までの成長が早い」、「稚エビの出荷後のプールやタンクが無臭」などと目に見える結果が出ているとのことでした。「水槽内では自然のプランクトンの増殖も見られるため、今後は人工飼料の使用量も通常より少なくて済み、コストカットにつながるのではないか」との見方もありました。
 
⑤今後について
 今回は、BM実験区の方の生存率が良い傾向にあることはわかりましたが、データにバラツキがあるため確証を得たわけではありません、今後も引き続き実験を続け、より多くのデータを収集していくこととなりました。一五回分のデータが集まった時点で、再度、現場責任者やATINA社の責任者などと相談し、全面的に生物活性水を使用するかどうかを再度検討します。そのために、より多くのデータを集めるためには実験をもっと効率よくできないか、現場の生産に合わせて進めていけるような方法はないかなど、アイディアを出し合いながら話し合いは続きました。
(報告:秋山澄兄BMW技術協会事務局)

Author 事務局 : 2015年02月01日 17:12

 
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