« 【AQUA274号】インドネシア〜生物活性水を利用した稚エビの繁殖実験報告 | メイン | 【AQUA274号】第四回アジアBMW技術交流会を終えて »

2015年02月01日

【AQUA274号】西日本BMW技術協会会員プラント巡回報告

 西日本BMW技術協会では二年前から会員のプラント巡回をしてきましたが、今年は豚のPED(豚流行性下痢)や鳥インフルエンザの流行もあって、巡回を見合わせていました。それで、今回が今年度の最初のプラント巡回です。巡回はプラントの状況を確認するだけでなく、取り組んでいることの確認や、会員がやりたいと思っていることなどの相談なども受けるようにしています。
 一二月一五日に清村養豚場、大矢野原農場、やまびこ会、那須ファーム、庄村養鶏場(以上いずれも熊本県)、一六日に糸島BM農法研究会の柴田さん、ヨコテ養鶏場(以上いずれも福岡県)を、BMW技術協会の秋山澄兄さん、永合耀さん、西日本BMW技術協会事務局の宮﨑と秦、グリーンコープ連合畜産部の大屋さん(一五日のみ)の五名で巡回しました。

清村養豚場にて
 清村養豚場の尿処理プラントはすでにAQUA二〇一四年九月号で報告しているように、新しく固液分離機と曝気槽を増設したことにより、状態はとても良くなっていることをBMW技術協会の皆さんとも確認しました。このプラントの処理水と堆肥を使っている熊本県愛農会野菜部の皆さんも来られていました。プラントは、とても良い状態で、臭いはほとんどせず、曝気槽の汚泥を鼻の先に近づけても全く臭いはありません。プラント全体としては全く問題ないのですが、困っていることとしては、汚泥が多くてプラントの運用が少し「重い」ということです。清村さんと秋山さんにご意見をお聞きしました。

――汚泥を引き抜いたりしているのですか。
清村:増設した曝気槽から二〇トンくらいを引き抜いたことがあります。作業としては、丸一日かかります。直後は、汚泥の量もちょうどよくなるのですが、二日くらいする汚泥の量も増え、もとにもどります。
――このまま、引き抜かずに運用していくということにはならないのでしょうか。
秋山:汚泥の一部は分解されていきますが、徐々に増えて行き、プラント全体にも悪影響を及ぼすと思います。尿処理プラントの場合は沈殿槽から汚泥を引き抜きするような設計にするのですが、このプラントは沈殿槽の大きさが少し小さいので沈殿槽からの引き抜きが難しいようですね。清村さんがやっているような曝気槽からの引き抜きが良いと思います。プラントの様子を見ながら年に数回汚泥の引き抜きをするというような感じでうまくいくのではないかと思います。

 尿処理水のEC(電気伝導度)は、固液分離機と曝気槽の増設以前は一二.三(ms/cm)でしたが、この日はEC六.一で透明感のある良い状態でした。リアクターの状態の点検なども行いました。
 続いて農場の中にある堆肥場を見学しました。堆肥場は全部で五ブロックで、夜間に下からエアを送れるようになっていますが、処理量と堆肥場の大きさの関係で、少し未熟気味のようです。

――堆肥はここでどれくらい滞留することになるのですか。
清村:約二ヶ月です。もう少し切り返しの出来るエリアが欲しいとは思っているのですが。
――秋山さん、状態はどうですか。
秋山:やはり三ヶ月は発酵するようにした方が良いですね。この最後のブロックの堆肥を一ヶ月ぐらい貯留できるような場所があると良いですね。そこではエアを送らなくても静置するだけで良いと思います。

 この後、清村さんと愛農会の皆さんと尿処理水と堆肥の活用について意見交換しました。愛農会のメンバーは全部で一〇名、そのうち五名が清村養豚場の尿処理水と堆肥を使っているということでした。愛農会は清村さんも含めた農畜産生産者のグループで清村さんの息子さんの徹さんも愛農会のメンバーとして野菜を作っているということです。

大矢野原農場にて
 大矢野原農場は若鶏の生産農場で、AQUA二〇一四年一一月号で報告しているように敷料の堆積発酵を一年前から始めています。敷料を鶏舎の中で堆積発酵するようになり、大掛かりな堆肥場が空っぽになっているということで現場を見せていただきました。堆肥場は農場から八〇〇m位離れていて、堆肥場にある生物活性水のプラントから生物活性水を運んで堆積発酵に使っているということでした。できれば農場のそばで生物活性水を作りたいということです。大矢野原農場の日永さんに話を伺いました。

――二か月前にも訪問しましたが、堆積発酵はうまくいっているようですね。
日永:うまくいっていますが、今から真冬になるので、そこを乗り越えることができるかどうかですね。
――敷料の補充にもみ殻を使うようにするのですか。
日永:もみ殻も確保して準備しています。鶏の糞で増えていく敷料を少し引き出して、代わりにもみ殻を補充するということにします。堆積発酵の際にもみ殻を入れて一緒に発酵させる予定です。これを順次繰り返すことになります。
――農場に生物活性水プラントを作りたいということですが、以前使っていたプラントが残っているのですか。
日永:以前は、大きなセメントの土管を六基つないだプラントでしたが、堆肥場の近くに本格的なプラントがあったほうが良いということで、堆肥場に土木槽で大きなプラントを作り、移設しました。再度、最初に使っていたプラントを復活させようと考えています。来春には工事をしたいと思っています。

 来春の工事に向けて、秋山さんと日永さんが打ち合わせをしました。現在のプラントで使っているリアクター塔を移設すること、使える散気管なども極力使うように相談しました。

やまびこ会にて
 やまびこ会は野菜の生産者グループで、生物活性水プラントは出荷場にあります。今回は那須ファーム(採卵鶏農場)、庄村養鶏場(採卵鶏農場)のお二人には生物活性水を持参いただきました。鳥インフルエンザの防疫のため、農場を訪問することは差し控えました。
 やまびこ会の生物活性水プラントは四槽で、堆肥は那須ファームの鶏糞堆肥を使っています。やまびこ会の生産者は、生物活性水をそれほど使わない時期であり、状態はとても良い感じでした。
 那須ファームと庄村養鶏場は、夏は鶏舎内の噴霧にも生物活性水を使っていますが、今の時期は飲水に希釈して使うだけですので、生物活性水はとても良い状態でした。那須ファームは生物活性水を九〇〇倍に希釈して飲水に添加、同じく庄村養鶏場は五〇〇〜六〇〇倍に希釈して添加しているということでした。

柴田邸のBMプラント
 糸島BM農法研究会の柴田さんは自宅のトイレの糞尿を原料にした生物活性水プラントを運用しています。二年前に巡回した際にpHが非常に低かったので(三程度)、石灰石をプラントの中にブラ下げてもらいました。今回pHが七.三程度だったので、少し石灰石を減らした方が良いのではないかということを相談しました。
 柴田さんはホウレン草や水菜をセルトレイで育苗して、畑に定植するということです。種の浸漬からセルトレイでの潅水に生物活性水を使っているということで生育が良いようです。またセルトレイから苗を外す器具や、畑の穴あけは自分で工夫してとても効率的に作業をしているところを見せていただきました。

ヨコテ養鶏場のBMプラント
 ヨコテ養鶏場は、飲水のプラントのタンクを増設するとともに新しく生物活性水のラインを作り直すという準備を進めています。その準備の様子を確認し、既存の生物活性水プラントの点検をしました。生物活性水の状態も数値も特に問題なく、とても良い状態でした。新しい生物活性水プラントは春先に作るということでした。すぐそばにあると鳥処理施設、GPセンター(集卵・パック詰め)も見学させていただきました。
(取材:西日本BMW技術協会事務局 宮﨑利明)

一二月一六日、西日本BMW技術協会役員会が開催されました。
 今回の役員会には、BMW技術協会の事務局長の秋山澄兄さん・永合耀さんにオブザーバーで参加いただきました。(プラント巡回を前日・当日行い、引き続き参加いただきました)

 まず、前日・当日のプラント巡回の様子を写真を見ながら確認しました。それから新規会員の加入状況の報告と脱退の報告を行いました。
 それから中村養豚場の生物活性水の提供が、全部で三〇トン強になっていることを報告しました。
 BMW技術協会常任理事会・匠集団そら株主総会の様子を秋山澄兄さんから報告いただきました。
 次に一一月開催の全国交流会の報告をAQUA一二月号と事務局の報告書に基づいて行いました。関連してこれまで西日本BMW技術協会としては、定例開催されているBMW技術基礎セミナーの運営にかかわって来れていなかったのですが、会員の若手で運営されているこのセミナーの運営に西日本BMW技術協会としても積極的にかかわるということを確認しました。主には東京で開催されるので交通費なども西日本BMW技術協会として補助することにしました。
 西日本BMW技術協会会報についてAQUAを活用するようにする提案を行いました。これまで総会直後の会報は発行していますが、それ以外の時期の会員の動向や役員会の様子などが会員に届けられていませんでした。そこで、BMW技術協会とも共同しながらAQUAに記事を掲載し、「AQUAに掲載されています。ご覧ください」という案内を行うことにしました。
 また、次年度の研修会・総会について相談しました。
(報告:西日本BMW技術協会事務局 宮﨑利明)

Author 事務局 : 2015年02月01日 17:13

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.