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2015年02月01日

【AQUA274号】第四回アジアBMW技術交流会を終えて

アジアBM連帯会長 生田喜和

 日本、そして韓国においては、毎年おこなわれている全国交流会と共同開催という形で、「第四回アジアBMW技術交流会」を無事に終えることができました。これまで四年に一度の開催をしてきたアジアBMW技術交流会ですが、我々のBMW技術運動を中心とした農業問題を解決する取り組みをアジアに向けて発信して行こうということで、韓国の楊平郡でおこなわれた第三回の交流会にて「アジアBM連帯」という言葉が前アジアBM連帯会長の閔 丙采(ミン・ビョンチェ)氏によって提唱されました。今回は日本、韓国をはじめ、フィリピン、中国、タイ、インドネシアから二〇〇名以上の仲間が集い、共に学び、親交を深めることができ、まさに「アジアBM連帯」にふさわしいものであったかと思います。
 テーマは「アジアから共に未来へ」〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜、アングロサクソン流経済優先のグローバル化がアジアを含めて世界を席巻し、それぞれの固有の文化や社会の仕組みが規制緩和、優勝劣敗の競争原理等の導入で破壊されようとしている中、国家ではなく、もちろん国境もなく、アジアに広がってきたBMW技術と、そしてその仲間が中心となって、もうひとつの民衆レベルの繋がりを持てたことにとても大きな意義を感じました。これこそ、真のグローバリゼーションではないでしょうか。
 また、今回参加された皆さんは、アジアの稲作地帯で共に価値観を共有する者の集まりで、私たちはつい最近までは農民としての価値観で生きてきました。これは、昨年の新潟でおこなわれた「第二四回BMW技術全国交流会」からの延長線にもなりますが、私たちは本来、穏やかな地域で、米作りを主体とした、いわゆる稲作文化をベースに地域を作り、生きてきたのではないかと思います。田植え、稲刈り、水の管理など、みんなで一緒に行動し、一緒に仕事をするということがベースに在り、これが地域を作り、モノを作る人々を作っていったと言ってもいいのではないかと思います。

 さて、交流会の内容ですが、伊藤幸蔵理事長のBMW技術が進む方向についての基調報告からはじまりました。二〇一四年は国連が定めた「国際家族農業年」でした。二〇〇八年の食糧危機からさらに人口が増え、多くのグローバル・多国籍企業を推進したが、現状は問題が以前より深刻になっている。そこで国連は地域、水、文化を守るのは家族農業などの小規模農業だと認め、これらが飢餓や貧困の緩和、食料安全保障と栄養の提供、人々の生活の改善、自然資源の管理、環境保護、農村地域での持続へと導くのではないかと説いたとのことで、このことはこれまで我々が目指してきたBMW技術運動と共感できることであり、今後もしっかりと考えて行かなければならないことであるということでした。 
 BMW技術協会としては二〇一一年の協会法人化後、二つのキーポイント「BMW技術は技術と理念の両輪」、「次世代への継承〜未来の創造」として基礎セミナー、全国交流会、プラント巡回、アジア連帯、若手を中心とした生物活性水を使った実験などの活動を通して、BMW技術の基礎に対する理解を深めてきたと報告があり、これらをベースに今後は三つのキーポイント「地域を作り、地域と地域の仲間をつなぐネットワーク作り」「BMW技術の普及の見直し、もっと消費者に普及を目指す」、「生物活性水を科学する・BMW技術の見える化」を目指して活動していくとのことでした。
 続いておこなわれた基調講演は「韓国親環境農業の持続可能な発展と政策方向」として、韓国中央大学名誉教授・韓国元農林部長官(日本でいう農林水産大臣)の金成勲(キム・ソンフン)氏からありました。東洋の食文化哲学は「人は三六五日毎日良い食べ物を一定量(糧)必ず食べ、これを食糧という」という話にはじまり、農業の起源、人々の暮らしや自然界における関りの話しへと続きました。韓国では一九九八年に金大中(キム・デジュン)大統領が、持続可能な農業、環境保全に根差した「親環境農業政策」を導入し、その取り組みは韓国全土で広がりを見せ、BMW技術が親環境農業の中で重要な位置を占めているとのことでした。この政策を推し進めていたのが当時、農林長官であった金氏だったのです。
 世界は安全な食べ物が減少しており、そんな中、小農・家族農が世界の食糧の七〇%を生産しているとの説もあり、小規模家族農が大規模企業農よりも生産的、そして、大規模単一栽培より小規模多品目の方があらゆる気候変化に耐えうる可能性もある。持続可能な小規模農を推進させるような政策が必要になり、土地の収奪や毒性農薬に対する補助を停止させ、持続可能な農業直接支払制のような農産物の適正価格や種子、土着技術の保全等の小規模農を守る政策に優先権を置くべきだと。持続可能な農とは自然環境や農家を守るもので、安全な食べ物を消費者に提供することは農家の義務である。
 以上の基調報告、基調講演でBMW技術の未来と理念は語られ、「アジアから共に未来へ」〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜という今回のテーマの骨格がはっきりとしたのではないかと思います。
 その後は韓国、中国、フィリピン、インドネシアでのBMW技術の取り組み、事例報告があり、二年目となった日本の若手が取り組む「生物活性水を使った実験報告」、新たな取り組みである山梨大学教授の御園生拓氏の「生物活性水を科学する」とつながっていきました。BMW技術とは何か?という根本の問題、生物活性水がなぜ効果があるのかということを解き明かす根本の実験ということで、実験(分析)は、中途であることを前提に報告があり、まずは各地の生物活性水を取り寄せて、成分調査をすることにより「何が効果の要素であるのか」という要素還元的に推論を行ったが、結果的に良く分からない。今後は腐植酸やフミン酸などを含め、引き続き分析・推論をしていくことになるということでした。
 最後の講演は「地球の歴史、そして岩石と水とミネラルの循環について」として、岡山大学地球物質科学研究センター准教授奥地拓生氏からありました。奥地氏は毎年BMW技術全国交流会で現地の岩石や地層・成り立ちなどを調べて報告してきましたが、今回はその集大成ともいえる講演でした。日本列島はプレートが重なり合う不安定な場所に存在しているが豊かな水を生産できる地形にあり、BMW技術が誕生すべき場所であるということ、岩石(地球鉱物)と海水、私たちの体の元素組成が似通っていること、人体がそれらの物質を食物からバランスよく摂取する必要がある。また土壌は岩石を植物が少しずつ変化させ、作られてきたものであることがわかりやすく説明され、長い時間をかけて作られた岩石からミネラル、そして土壌へというプロセスをBMW技術は短期間に生み出すものであると解説され、日本列島の成り立ちからして、全国各地でそれぞれの地域の岩石を使って豊かにBMW技術を応用できることが説明されました。今回は特にアジア連帯ということもあり、韓国、フィリピン、タイ、インドネシアの岩石(地層)についても触れ、いずれもそれぞれの地で多様な岩石(ミネラル)に出会える豊かな土地であるということで話しを終えました。
 今回の交流会は若手幹事会を中心に実行委員会が構成され、実際の運営も都内の協会会員団体から選出された若手と一緒に取り仕切るという交流会でした。会場を移動するというリスクがありましたが、たいした混乱もなく、とてもよくやっていただいたと感謝しています。これもここ数年の活動が及ぶ中で、互いの交流を重ねてきた成果だと思います。この若手の頑張りが将来のBMW技術が進むべき道の舵取りとなり、「アジアから共に未来へ」〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜のテーマの通りに、農業、自然環境、地域と暮らしのこと、それぞれの国で抱えている問題の解決と、民衆の豊かな未来の創造に向けて、力強く踏み出す第一歩となったのではないでしょうか。
 ご参加いただいた皆様にはあらためて深く御礼を申し上げます。今後も一緒に手を取り合って歩んでいきましょう。

Author 事務局 : 2015年02月01日 17:14

 
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