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2015年03月01日

【AQUA275号】カネシゲファームからBMの皆さんへ

BMアジアから〜
「カネシゲファームからBMの皆さんへ」

NPO法人APLA フィリピン駐在員 寺田 俊

 はじめまして。NPO法人APLA フィリピン駐在員の寺田俊と申します、よろしくお願いします。
 私は今、フィリピン・ネグロス島にあるカネシゲファーム・ルーラルキャンパス(以下、KF―RC)という農場兼農民学校に駐在し、ここで循環式有機農業の研修をする同世代の研修生、スタッフと共に生活し、フィリピンの生活や農業に触れながら、研修生たちが、農民として自立できるように応援する活動をしています。カネシゲファームについては昨年の一一月におこなわれた第四回アジアBMW技術交流会にて、当農場代表のアルフレッドから報告があったかと思いますが、多くの若者が自立した農民へ向けての一歩を踏み出すという、人生の転機に携われていることを嬉しく思います。
 フィリピンと聞くと、多くの方は首都のマニラをイメージするかもしれませんが、ここネグロス島は、緑豊かで自然が溢れ、ゆっくりとした時間が流れています。そんなネグロス島にあるKF―RCは、五ヘクタールに広がる農場で、養豚を中心とした循環型有機農業を実践しています。豚以外にも、鶏、アヒル、七面鳥、ヤギ、水牛、馬、養殖魚など、様々な動物が暮らしていて、いつもにぎやかです。
 豚舎から出る糞尿を利用した循環システムとして、バイオガスプラントとBMW技術の複合設備を構築し、バイオガスプラントのメタンガスを利用した発電も行っています。その他にもメタンガスは料理用のコンロにも活用し、農場内のエネルギー自給が実現しつつあります。メタン発酵後の消化液は、有機肥料として畑に撒き、生物活性水は飲水改善プラントに約五〇倍希釈で投入、豚をはじめ、鶏、アヒル、七面鳥に与え、病気にほとんどなることなく元気に育っています。
 また私たちは「若者の農民の育成」と「循環型有機農業の普及」のために日々の活動を進めていますが、同時に農場としての自立運営も確立しなくてはいけないという課題があります。そのため、KF―RCのスタッフは日々、会計・マーケティング・野菜や家畜の生産性向上に向けて努めており、私はそのサポートをしています。そのなかで、今年度最も力を入れていることのひとつである、養鶏の生産性の向上についての話を今回はお届けします。
 ネグロス島の農村部では、必ずと言っても良いほど、どの家庭でも鶏を飼っています。しかし、それは“養鶏”ではありません。勝手にその辺の草や虫を食べてもらって、ご飯が余ったら残飯を与えて、卵を産んでくれたらラッキーといったスタンスです。鶏は、お金が必要になったときのための貯蓄やお客さんが来たときに料理として出すためのものなのです。そこに手間やお金をかけようとはあまりしません。当初は、KF―RCの農場でも同じでした。広い農場内で鶏を平飼いし、余ったご飯や売れない野菜が出たら餌として与える。いま何羽いるのかも、卵をどこに産んでいるかも分からない。お客さんが来る度に料理として出す。そうしていくうちに一〇〇羽以上いた鶏が二〇羽以下になってしまいました。立派な鶏舎があるにも関わらず、このままではいけないと思い、何度もスタッフたちに「養鶏にもっと力を入れようよ」「鶏をたくさん生産してKF―RCの収入を上げようよ」と提案しました。みんなその場では、「分かった、そうだよね」と言ってくれるものの、なかなか行動に移しません。そりゃそうです。鶏にお金をかける、しっかり管理する、という感覚がないのですから。そこで、みんなの養鶏に対する意識を変える必要があると思うと同時に、こちらから一方的に提案するのではなく、スタッフから自発的に鶏の生産性を上げたいと思ってもらうようにしなくては、と考えるようになりました。みんなが動かないならまず私が動けばいいのだと思い、養鶏担当になりました。もちろん、鶏に対する知識は全くのゼロです。でも問題ありません。知識はスタッフのみんながもっています。「餌は、○○や○○を混ぜてあげると良いんだよ。○○だけだと栄養が足りないからね」、「あの鶏は今卵を持ってるよ。だって○○だから」など、質問をすれば期待以上の答えが返ってきます。毎日質問をしながら世話をしていたら、みんなの意識も少しずつ変わってきました。「ひよこは寒さに弱いから、ひよこ用のケージを作って、夜はライトをつけて暖かくしてあげたらどうかな?」「みんな一緒のところで餌をあげると大きな鶏ばかり餌を食べて、小さな鶏は餌を食べられないから、小さな鶏は分けて飼育しようよ」など、スタッフから提案をしてくるようになりました。そこからは早いのです。みんなで協力して、一日、二日で鶏小屋を作りあげてしまいます。できあがった鶏小屋に嬉しそうに鶏を移し、それから毎日よく観察しています。鶏に関心を持ってくれたようです。
 私は昨年の一〇月に宮城県のBM産地へ視察に行かせていただき、宮城BM・大郷グリーンファーマーズの西塚さん、米沢郷牧場グループの伊藤代表(BMW技術協会理事長)から多くを学ばせていただきました。早速学んだことをKF―RCにも取り入れさせてもらうことにして、私からスタッフにいくつかの提案をしました。強い弱いなどの階級を付けたがる鶏のために、鶏舎内のとまり木を階段状にしました。それから鶏舎内にもみ殻をたっぷりと敷き、堆肥作りを同時に行うこと、飼料に生物活性水を混ぜて発酵させてから与えることなどを始めました。しかし、BM産地で学んだ全ての技術がKF―RCでも有効かというと、そうではありません。設備環境が整っていない中で、どの技術が有効なのか見極める必要があります。何よりネグロスの文化やKF―RCのスタッフの意識に合った技術を取り入れることが大切です。一つずつ、だんだんとBM産地で学んだ多くのことを取り入れていくよう努めています。
 現在はひよこの生産数も増えてきていて、鶏以外にアヒルの飼育にも力を入れています。しかし、まだまだ問題は山積みです。雨が多い日が続くときに、寒さでひよこや若い鶏が死んでしまうことがあり、鶏舎を修理したものの、やはり外で飼うことが習慣づいているスタッフにはまだ、ずっと鶏舎内で飼うことに抵抗心が抜けきれない部分もあります。
 今後は、これらの問題解決に加え、さらなる生産性の向上、そしてどのように販売して、常に何羽を維持していくかなどの計画を立て、実行していけるかが課題です。今日もスタッフたちは、ああでもないこうでもないと話し合いながら、養鶏はもちろんのこと、養豚や野菜などの更なる生産性の向上に向けて頑張っています。BMW技術協会の仲間の皆様には今後とも何かとご指導をいただきますよう、よろしくお願いします。

Author 事務局 : 2015年03月01日 13:45

 
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