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2015年05月01日

【AQUA277号】BMW技術ベーシックNo.2

 ときに難解ともいわれるBMW技術を、初心者もわかりやすく理解するために「BMW技術ベーシック」として、過去の記事や講演記録から抜粋してご紹介いたします。
 今回は、理学博士 川田薫先生のAQUA連載「生命活動とBMW」 (一九九一年)を抜粋して掲載いたします。

 生命はなぜ海から生まれたのでしょうか。生命が生まれてから三〇数億年がたちました。生命体を分析してみると、ミネラルがそのすべてに含まれています。それは岩石に含まれていた成分なのです。

「岩石は溶液のなかに溶けたときに際立った違いがあらわれる」
 地球科学では岩石を見るとき大きくは地殻とマントル層に分けて考えます。地殻をさらに、地殻上部(三五キロ)と地殻下部(五キロ)に分け、マントル層を上部マントルと下部マントルに分けます。私はその代表的な岩石を集めて分析しました。その結果わかったことは、岩石からミネラルを抽出した水は、その岩石が存在した場所によってその性質が大きく異なっているという事実です。
・地殻上部…生体活性を活発にする(たとえば、この液を切り花の瓶に注ぐと、通常の二倍も日持ちがよい。また、木の枝を差し込んでみると、水道水の場合は二週間で枯れてしまうのに、ミネラルを抽出した水の場合は新芽を出し、やがて発根して成長を開始します。)
・地殻下部…界面活性剤の働き。つまり、水の中に色々なものを溶かし込む力をもっています。強制的に構造水を作る力と言い換えてもよい。(有機物が分解浮遊している水の中にこの液を注ぐと、浮遊していた有機物が直ちに分解して完全に溶け込み、もとの水道水と同じ透明な水に変わります。)
・上部マントル…構造水の破壊。つまり、水の中に溶け込んでいるものを析出させる力。これは水処理に利用できます。(この液を水道水の中に注ぐと、水の中に溶け込んでいた有機物が直ちに反応し、水の分子から分離されて、浮遊物として水中に凝集してきます)
 たとえば地殻下部と上部マントルは接しています。岩石も似ているように思えるのに、溶液に溶かすとまったく際立った違いがあらわれます。通常の分析をすると、いわゆるエレメントに差は見られません。しかし溶液にするとなぜこれほどに差が現れるのか。私は、その際立った違いがあらわれるのは、岩石を構成している鉱物が違い、溶液が鉱物の性質を反映しているからなのではないか、と考えたのです。

「鉱物の性質を反映した溶液とはなにか?」
 超微結晶が溶媒中に一様に分散したもの。これを私はクラスターと呼んでいます。鉱物の結晶構造をそのまま保ったもので、それは岩石のときの性質を記憶しています。大きさはたかだか五〇オングストロームくらい。微生物よりも小さく、微生物に食べられてしまう大きさです。地殻上部の岩石が生理活性を持つというのは、この超微結晶が大きな役割を果たしていると考えられます。といいますのは、触媒能をもっているからです。触媒に関する学問では、超微粒結晶の触媒について研究されています。その成果によると、一番活性が高いのは一〇オングストロームの超微粒子だといわれています。つまり、岩石も五〇オングストロームくらいの超微粒子にまで細かくしていくと、この重要な触媒能をもってくるのです。
 触媒の世界では、個々の元素がばらばらに存在しているより、こうしたクラスター(結晶構造をもった状態)のほうが、大きな能力を発揮することがあるといわれています。。ある結晶を絶えず変化しながら保っている。それが、水の持つ構造(これもクラスターと呼ばれている)を変化させて、小さなクラスターに変化させ、生体に取って有用性を持つ水にかえていくと考えられます。

 生理活性を活発にする地殻上部の岩石でいいますと、その代表的な岩石は花崗岩と安山岩でしょう。ただこれらの岩石が、過去、どんな地殻変動を受けてきたかが重要です。たとえば石英(水晶)ですが、X線写真をとりますと、完全なストラクチャー(結晶構造)をしていることがわかります。それが動力や熱などの地殻変動を受けると、構造が歪んできます。しかし、触媒能からみると、この歪みが重要で、機能を高める働きをしてくれるのです。
 珪素の四面体構造が重要なのですが、実際には完全な構造をしているものはありません。ボルトアングルのねじれや変化があり、それが触媒の機能を果たしてくれます。
 日本列島は二千万年ほど前、プレートの動きで日本が大陸から離れ、さらに太平洋から移動してきたプレートがドッキングしてできたものです。このように過去に大きな変化を受けてできあがっただけに、地殻上部の岩石の種類は非常に多くなっています。

「今日の農業の現状」
 二千万年前に日本列島ができたといわれていますから、仮に一年に三〇数日雨が降ったとすると二千万年X三〇数回の雨が地表をたたいたことになり、土壌のミネラルや微粒子は溶脱されてしまいました。いまの畑は抜け殻といってもよく、その上で農業を営まなければいけないのですから、今の農家はじつにかわいそうなのです。
 しかも、これまでの農業が、土の構造を考えずに発展してきたことも大きな誤りです。抜け殻の土の上でも、これまでは化学肥料を施すことで作物がとれてきました。一方では、それまで守られてきた輪作が消え、単作化が進みました。そのことも土壌環境をさらに悪化させてきました。チッソ、リン酸、カリ、それにせいぜい限られた微量要素だけしか施されてこなかったのです。
 土壌病害が蔓延しているというのは、土壌が悪化し、その環境に合った菌がふえたということです。それに対して農薬を使用することが、さらに土の悪化に拍車をかけています。生物というものは、種を変えてもでも生き残ろうとします。それが耐性菌です。これまでも、なにかの急激な異変に遭うと、生物は自らの種を変えて生き残ってきたわけですから、今の状態というのは、同じ事を人工的に短期間に引き起こしているということです。自然の中ではきわめてゆっくり進んでいたことが、短期間に進んでいる。そのことを今の科学は見抜けないでいる、と思います。
 さて、そんな畑に対して、どうすればよいのか?抜けたミネラルを土に戻してやればよいのです。

ミネラルの六大効果
一.土壌のイオン化促進
 土の中にミネラルがあったとしても、酸化物の形をしています。ですからそのままでは生物はそのミネラルを吸収することはできません。酸化物の形では水に溶けないからです。吸収させる形にするためには、酸化物の形のミネラルから酸素を切り離したり、イオン化しなければなりません。普通は、この働きを土の中で生きる無機栄養をエサにする微生物がしてくれていました。また、作物の根が出す根酸(他種類の有機酸)によっても行っていました。ところが、今の土壌はきわめて悪くなっており、微生物は貧困。それに作物もひ弱に育って光合成も弱々しいため、弱い根酸しかだすことができないでいるのです。
 あらかじめミネラルをイオン化してある液を入れると、酸化状態にある土の中のミネラルを一部イオン化し、水に溶けるようにしていきます。そのことにより、植物の吸収を高めることになるわけです。

二.ミネラルバランスがとれる
 病理学からみた微量要素はたかがppm(一〇〇万分の一単位)までの分析です。これでは、せいぜい一六〜一八種類の元素しか特定できません。しかし、実際の生態系はそんなものではありません。
 岩石から抽出した液をppt(一兆分の一)のオーダーで分析してみると、六〇〜七〇元素が含まれています。おもしろいことに、ppm単位の微量要素を試薬でつくって植物に施してみても効果が現れません。ということは、単に微量要素が影響しているというわけではなく、構造(クラスター)が大切だったということの証明です。
 戦前は、農業が輪作を基本として営まれていました。ということは、微量要素のppm単位が保証されていたということです。つまり、作柄によって、作物が出す根酸が違っているので、イオン化するミネラルの種類と量が違っていたのです。しかし、戦後は、単作化が進んで、土の中の使うことのできるミネラルが底をつきました。作物が自分自身で行っていたことをミネラルバランスをとって、補ってやるということです。

三.土壌のソフト化
 土壌構造の基本となるのは粘土鉱物ですが、これらは層状をなしています。マイナス・プラスに帯電しているのですが、そこにカチオン(プラスのイオン)やアニオン(マイナスのイオン)がくっついていて、電気的には中性を保っています。ところがイオン化されたものが入って土が本来のイオン化された状態(ppt単位まで調整された)に置かれたときには、粘土そのものがもっていた本来の電気的反発によって反発しあい、粘土鉱物のすき間が広がるのです。それがミネラルを入れると有機物などを大量にいれたわけでもないのに土が柔らかくなり、膨らんでくる理由です。そしてそこに微生物がすみつき、急速に増殖します。土の中にいる微生物を調べてみると、微生物の数が五倍に、しかも、その種類が変化しています。一般の畑は細菌が九〇%以上、残りがカビ。ところがミネラルを入れた畑を調べると、細菌が七〇%弱、カビが七%弱、酵母が七%弱、放線菌は一五%弱という結果でした。

四.水のクラスターを変える
 水は一個の分子で存在しているわけではありません。数個あるいは数百個と集団をなして存在しています(これを水のクラスターと呼んでいます)。
 水は物を溶かし込む性質が大きいのが特徴です。その水に有機物を溶かし込みますと、水のクラスターは大きくなります。このクラスターが大きくなった水は有機物をくっつけた状態で構造を大きくし、植物の根っこに張り付いて呼吸阻害を引き起こす原因になっていきます。根腐れ、発芽したばかりの時に雨などにあたると植物がやられるのもそういう理由でしょう。もし、水のクラスターが小さい水であったら、こうした障害はでません。
 ところである物質が水に溶けているという状態とはどういうものなのでしょう?
 物質のまわりには、図のように何種類もの水が何層も取り囲んでいます。Aの部分の水は、生体のなかに約一〇%あり、この水は零下一九〇度で凍ります。Bの水は約八〇%を占めており、零下一五度以下で凍ります。Cの部分の水は約一〇%あり、零下数度で凍り、フリーウォーターに近いものです。我々が零度で凍るといっている水はこのフリーウォーターです。そして、この物質のまわりにできた水の分子層を「構造水」と呼んでおり、生体内の水の約九〇%はこの構造水で存在しています。
 ところでミネラルが含まれている水は構造水になりやすいのです。だから根腐れが起きにくいのです。また、零度以下でも凍ることがありませんから、冷害や霜害に強かったり、植物生理をアクティブにしたりします。
 構造水は、温度に対して鈍感になります。植物は外気の温度の影響を受けにくくなるようです。

五.光合成の促進
 光合成とは、光によって炭酸ガスと水からデンプン(多糖類)をつくる働きですが、この作用に大きく関わっているのがミネラルです。
 光合成にはふたつの働きがあります。ひとつは、作物のからだ・根や茎、葉や子実をつくる働き。もうひとつは、根酸をつくり、それを根から分泌して、土の中の栄養分・肥料やミネラルを溶かす働きです。
 私は、光合成は光と炭酸ガスと水だけの問題とは考えていません。もっと大きく考えています。例えば根酸の働きから考えてみましょう。
 植物は根酸によって土の中の酸化物をイオン化し、必要なものを吸収します。この根酸は、植物の種類や生育時期によって変化していきますが、すべてのアミノ酸、有機酸、ホルモン、核酸(つまり自分の体を作る物質すべて)などが含まれています。そして、その物質が微生物のエサになっていきます。土の中では微生物が水を変え、その水が必要な栄養分を含んで植物に吸収されていきます。ですから、私は、光合成は植物と微生物と水と土の共同作業があってはじめて成立すると考えています。
 そのメカニズムについて私は、いまの光合成の考え方では説明がつかないのではないか、と思うようになりました。といいますのは、植物の生長スピードを考えると、これまでの光合成の考え方(葉緑素のところで、光によって炭酸ガスと水の分子をばらばらにして、酵素の力でデンプンを合成する)ではとても追いつけないスピードではないかと思うからです。私は、根の先端部分に、植物の体細胞の前駆物質がつくり出されていると考えると、驚異的な植物の成長の秘密が解けるような気がします。

六.酵素の活性化をはかる
 酵素は生体内の酸化還元反応に関係しています。植物や動物が生きていることができるのは、生命活動といわれる糖の合成・分解、細胞の造成、酸化・還元(代謝活動)などの複雑な化学反応が、低温の植物や動物の体内で活発に行われているからです。植物では一五〜三五度、ある種の植物は五度前後。動物では三七度前後。こんな低温状態のなかで、これだけの複雑な化学反応を起こすことができるのは、酵素の存在があるからです。
 酵素の数は、現在発見されているもので約二三〇〇。その構造の多くは、タンパク質にミネラルといわれている微量元素が結びついてできています。これを金属酵素と呼んでいます。そして、ほとんどの酵素が、あるひとつの反応にしか関わっていません。多様なミネラルがなければ、生体内の反応を促進する酵素を作り出すことができないことがおわかりだと思います。私がミネラルの大切さを話すのもそういう理由からです。

Author 事務局 : 2015年05月01日 15:13

 
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