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2015年09月01日

【AQUA281号】第25回BMW技術全国交流会テーマ「いま問い直す、持続可能な農業」

第二五回BMW技術全国交流会  実行委員長 石澤 元勝(根釧みどりの会)

 第二五回目となるBMW技術全国交流会は北の大地、北海道で初の開催となります。全国のBMW技術協会会員及び関係者の皆さんに北海道の農業の現状や歴史を、また、北海道の協会会員の取り組み、魅力を知ってもらうことで、今年の北海道での開催は大きな意味を持つのではないかと思います、そしてこれを機会に北海道での新たなネットワークが生まれてくることへの期待もあります。
 北海道に導入普及されているBMW技術プラントは、道東の大酪農地帯、根釧地域の酪農家グループ「根釧みどりの会」の石澤牧場、三友牧場、岩崎牧場、渡辺牧場、川畑牧場の五箇所と、道央の稲作地帯、雨竜郡妹背牛地域の稲作と花卉農家グループ「ファーマーズクラブ雪月花」に一箇所、札幌近郊、恵庭市の野菜の施設栽培農家「高松農園」に一箇所と全部で三地域、七箇所に導入されています。広い北海道に点在しているBM会員農家は、それぞれの農業形態や生産品目が異なり、この全国交流会の実行委員会の設立をきっかけに初めての出会いとなりました。
 さて、今年の交流会開催テーマは「いま問い直す、持続可能な農業」に決まりました。市場経済優先主義に立ち向かい「持続可能な世界」を創造する。でも「持続可能な……」というフレーズは多くの人達に使われ中味も様々、何が持続可能なのか意味がぼやけてきている感じがします。そこで「持続可能な世界・農業」をあらためて皆で見つめ直し、現在の農業、社会に「問い直す」、そんな交流会を目指して今年のテーマは「いま問い直す、持続可能な農業」となりました。この開催テーマを決めるにあたり実行委員会では伊藤理事長を含め、皆で激論を交わしました。私の所属する「根釧みどりの会」は、約三〇年続けてきた「マイペース酪農交流会」を母体にできた組織です。マイペース酪農の理念とBMW技術の理念の根本的な考え方や経済観など、共通点はどこなのか、どこか違うのではないかというところから議論がはじまりました。根釧みどりの会、そしてマイペース酪農は適地・適作・適量を柱に、牛一頭につき一ヘクタールが適正規模を原則としてきました。この考えは三〇年間ぶれていません。そして、いわゆる自然農といっていい、農業というよりは哲学、そういった生き方を目指してきています。それは、いわゆる持続可能な世界・環境を作り、それあっての農業と暮らし、社会の成立があると考えているからです。酪農でいうと全国的に、酪農家も牛の頭数も減ってきていますが、根釧地域では農家戸数は減っても、牛の頭数は増えていました。牛の頭数がどんどん増えるということで「ゴールなき規模拡大」と言われてきています。牛は増えても土地は増えませんので、草地から生産される草には限りがあります。草が不足するので高価な輸入穀物で牛乳をたくさん搾り、搾乳効率も上がるので餌はどんどん輸入されていく。餌のほとんどはアメリカから船でやって来るので、帰りの船に糞尿を積んで返し、アメリカで散布してもらえれば循環もできるのでしょうが、それは成り立ちません。糞尿がどんどん溜まっていき、環境に悪影響を及ぼしている現実もあります。
 皆さんは北海道の酪農を思い浮かべる時、広くて雄大な草原に牛が放牧されている風景を想像されるかと思います。しかしその風景はいまの根釧地域ではほとんどといっていいくらいに見えなくなっているのが現状です。牛舎内だけで飼われ、工業生産的な農業になってしまっています。規模拡大という大きな渦に巻き込まれ、借金まみれになってしまう、あるいは離農して行く酪農家を多く見てきました。行政などが規模拡大を推進する時は多額の補助金が投入されます。この補助金は税金から拠出されるわけですから、これは生産者だけではなく消費者の方にとっても大きな問題であると言えます。市場経済主義が優先している今の世の中は、作る方にとっても、食べる方にとっても、得なこともロクなこともなくなってきています。このような現実に「大きな違和感」を抱えているのは私たちだけではないはずです、日本の農業全体の深刻な問題ではないでしょうか。是非、皆さんこれらの問題を共有し、未来に向けて少しでも明るく元気に進んでいけるように、真の豊かな農業、暮らしを創造していきたいと思います。
 BMW技術は自然という壮大な背景と循環があって生まれた技術だと思います。そしてこの技術が持続可能な世界を作ること、守ることにどれだけ貢献できるのか、寄与できるのかが重要でないかと考えています。むしろそのことを今回の機会に色々な人に聞いてみることができればと期待しています。BMW技術協会会員の皆様には多様な考え方やユニークな方達がいると聞きました。それぞれが生きていく意味での経済は必要と考えているけれど、それは生産するということを軸にそれぞれの地域で、その地域に適した農業を目指していると、実行委員会で交わされた激論をダイレクトにお伝えできないのはもどかしいですが、私たちは生産者として「大きな違和感」が共通意識にあるとわかり、アンチテーゼとして出されたキーワードは「持続可能な世界・社会・農業を作る」となり今回の開催テーマ決定に至ったわけであります。
 最後になりますが、北海道で開催される「第二五回BMW技術全国交流会」が生産者、消費者の皆さんをはじめ、多くの関係者と共に考え、共に学び、交流をする機会として、有意義なものになりますよう心より願っています。

Author 事務局 : 2015年09月01日 12:25

 
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