« 【AQUA282号】BMアジア〜フィリピン&インドネシア | メイン | 【AQUA283号】西日本BMW技術協会会員訪問 »

2015年10月01日

【AQUA282号】第11回BMW技術基礎セミナー開催

茨城県で開催、のべ74名が参加

 八月二〇日、二一日と二日間にわたり第一一回BMW技術基礎セミナーが開かれました。場所は茨城県水戸市の京成ホテルにて行われ、茨城BM自然塾の皆さんをはじめ、日本各地からも多くの方々が参加されました。一日目は座学を中心とし、BMW技術の基礎講座「BMW技術の基礎と活用」、BMW技術活用事例報告として「茨城BM自然塾の取り組み」、基調講演として川田研究所の川田肇先生より「農産物の品質向上とミネラルの重要性について」を伺いました。二日目は茨城BM自然塾の米川農場と清水牧場にて見学会が行われました。
 講座の最初はBMW技術協会の秋山澄兄事務局長より「BMW技術の基礎と活用」についての講座でした。参加者の中には初めてではない方も多くいらっしゃったようですが、私も以前に一度新潟での基礎セミナーに参加した時にくらべ、より多くの情報が得られました。特にリアクターのしくみと肥溜めの原理の類似点について、生物活性水の農作物への利用による具体的な効用など、発展的な内容に生物活性水の可能性を感じました。
 そして次にこれらのことを実践した結果を茨城BM自然塾の方々に発表していただきました。最初に茨城BM自然塾栽培研究会副会長の方波見洋一さんから、アールスメロンに生物活性水を用いた栽培と生物活性水+竹パウダーを用いた栽培による比較について報告されました。収穫時にサイズが大きくなること、また病気率の低下を目的に、竹パウダーに含まれる乳酸菌を活用できるのではないかという仮説のもとに実験を行ったそうです。実験結果としては病気率に若干の優位性と重量にも優位性が見られ、特に小さい玉のメロンの割合が減ったとのことでした。竹パウダーの添加により、肥料中のセルロース分が増えたことによる結果ではないかと方波見さんはいっておられました。質疑応答では生物活性水無添加の栽培対照区や竹パウダーは乳酸発酵させて利用をしてみると面白そうだなど、次につながる意見交換が行われていました。
 二人目は今年の二月に新規就農された茨城BM自然塾若手のホープ、市毛祐司さんの生物活性水を用いた小松菜の栽培試験の計画発表でした。市毛さんは耕作放棄地の再生から始められ、現在では八〇aの畑でホウレンソウ・小松菜・レタスの栽培をされているそうです。肥料成分や有機物質のほとんどない畑に、茨城BM自然塾の清水牧場さんの牛糞たい肥や生物活性水を用い、機能性をもった野菜の生産、気候条件に左右されない栽培方法の確立を目指しているそうです。生物活性水と太陽熱養生処理を用いた土壌改良による農法で地下二m以上の土壌を形成する計画です。実験の内容は一平米の畑を五つの条件に分け、①無施肥②肥料③生物活性水④たい肥⑤たい肥+生物活性水で栽培試験を行い、栽培状態、味、成分などについて調査をされるとのことです。市毛さん本人はたい肥+生物活性水の試験圃場に期待されているようで、この結果は第二五回BMW技術全国交流会にて発表されます。私もこういった比較栽培試験には興味があるので、結果が非常に楽しみです。
 茨城BM自然塾最後の発表は塾長の清水澄さんから、「涸沼の生態系再生プロジェクトについて」の発表でした。清水さんは二〇年前から涸沼の魚や渡り鳥、水生植物の減少に危機感を感じ、地元にある資源を有効に使い、涸沼を含めた生態系全体のデザインを目指し、涸沼の生態系復活に尽力されています。涸沼には多くのヘドロが堆積しています。ヘドロには岩石の粉や有機物の未分解物質が堆積しています。そのヘドロにBMW技術を活用することで、有効な資源として生まれ変わると清水さんはおっしゃいます。そういった活動の結果、涸沼はラムサール条約の条約湿地として登録されたそうです。今後は条約登録のモデルとなるようにしていきたいとのことでした。
 一日目最後の基調講演では川田肇先生よりミネラルと水の関係、ミネラルとバクテリアの関係について科学的知見からそれらがもたらす土壌環境、植物への作用を伺いました。川田先生のお話から、ミネラル=鉱物という考えがBMW技術に通じるところを多く感じました。川田先生が配合するミネラル資材による土壌改良や、生物活性水を用いた土壌改良事例をみると、生物活性水を散布した圃場で、土壌に棒を刺したところ二m以上あっさりと棒が吸い込まれてしまったり、ミネラル資材を使ったイチゴの根が三m以上深くまで伸びていたりと、驚くことばかりです。ミネラルがもたらす土壌改良の力はすごいと感じました。
 二日目、私たちはホテルからバスに乗り、米川農場、涸沼湖畔、清水牧場の順に現地視察を行いました。米川農場では家庭雑排水を利用したBMWプラントで生物活性水をつくり、さつまいも栽培に利用しています。約六haの無農薬のさつまいも畑には生物活性水を散布してあり、散布機も自前で製作されたそうです。
 次に向かったのは涸沼生態系再生プロジェクトの実験をしている涸沼湖畔でした。再生プロジェクトのメンバーが私たちを案内をしてくださり、涸沼湖畔に生息する水生植物や水生生物を見学し、涸沼の自然体系の一部を学びました。
 最後に向かった清水牧場では、清水さんが作った完熟たい肥や生物活性水を散布したハウス内の土壌を見学しました。この二日間のセミナーの集大成ともいえる土壌の耕盤の深さを実際に棒を刺してみて確かめたのですが、片手で持った棒を刺してみるとずぶずぶと刺さってしまうのを実感しました。みなさん驚きを隠せないようで、セミナー一番の盛り上がりだったのではないでしょうか。
 清水さんのほ場では今後、川田先生と共同で、BMW技術で使われる鉱物を様々な組み合わせによる試験を開始されるそうです。橄欖岩や雲母、石英、輝石などの割合を変えることで、より高栄養の農作物の栽培が可能になるかもしれないからだそうです。さらなるBMW技術の発展や可能性の開拓がBMW技術を使う人たちの力によって進められているということに、会員の皆様のよりよいものを作りたいという熱意や意欲を感じた二日間となりました。
(報告:日本農業経営大学校二期生 米森 淳)

地球農学の構想
  〜ミネラル畑にいのちはあふれ〜
      著者:川田薫・川田肇

 本書はミネラル=「鉱石」という考えに基づき、自然界に存在する様々な鉱石より抽出したミネラル液を中心に、ミネラルと水の関係・ミネラルと生物の関係・ミネラルと土の関係について、著者本人の体験から導き出した仮説と科学的検証を元にミネラル=「鉱石」といのちの関係性を解き明かした科学の書。ミネラル液の理論から農業現場での作物栽培の実践を通した解説書でもある。
 旧科学技術庁の「さきがけ研究21」に端を発した著者のミネラルを用いた生命体発生実験より、生命とミネラルの因果関係を深く追求する本書では、地球といのちの関連性を解明する手段として様々な角度からミネラルを分析する。
 ミネラルの研究を進めるにつれ、著者はミネラルを通した様々な体験をする。それらを元に、仮説と検証を繰り返し、鉱石と生物の因果関係を解明していく。特筆すべきはミネラル液を散布した土壌と作物への影響であろう。化学肥料・農薬散布によって病んだ田畑も小さい小さいミネラルの粒子の働きによっていのちを蘇らせる。土が盛り上がり、耕盤が消えた。そこで育つ作物は生命力をこれでもかと感じさせるほどに強く逞しく根を張り、大きな、味の良い、持ちの長い作物ができる。
 今までには無かった、ミネラルという観点から地球の農学を紐解く「地球農学」の基礎から応用までが詰まった一冊。これまでと違う観点から土壌・作物を考えたいというあなたにお勧めします。
 (日本農業経営大学校二期生 米森 淳)

Author 事務局 : 2015年10月01日 10:03

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.