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2015年10月01日

【AQUA282号】「新潟BM自然塾」第3回学習会

「新潟BM自然塾」第三回学習会
   〜上越・謙信の郷で開催されました。
      報告:新潟BM自然塾事務局 高橋 孝(新潟県総合生協)


 新潟BM自然塾の第三回目となる学習会が七月二三日に、新潟県上越市三和区の自然体験交流館で開催されました。
 今回のテーマは「俺の根」。第一回「俺の稲作」、第二回「苗八分作の稲作」に引き続き稲作に焦点をあてての学習会となり、水稲圃場の視察をはじめ、稲の根っこ数、長さ、色、毛根の数など、圃場条件や栽培方法によっても異なる「根」の生育状況を皆で見てみようということで、稲作生産者が各々の株を持ちより「根」を比べて見ることになりました。
 参加者は、謙信の郷、JAささかみ、食農ネットささかみ、新潟県総合生協、妙高産ブランド米生産者会、伊藤理事長含めBMW技術協会から総勢二六名となりました。
 また、今回から学習会の内容を稲作に集中せず、野菜や果樹、畜産にも学習の幅を広げていこうということで、野菜生産者の山崎農場の視察と、畜産農家と耕作農家の連携、上越地方の畜産農家の現状として謙信の郷代表の井沢輝雄さんの話しを聞きました。

①圃場視察
 謙信の郷のメンバーの金谷農場、秋山農場、富永農産の三つの有機栽培の水稲圃場を視察しました。有機栽培ということで圃場での意見交換の中心は除草対策でした。除草機、合鴨など、除草の方法の違いで生え残る草、綺麗に除草できる草などの違いがあり、同じ有機栽培でも除草方法やタイミング、管理方法の違いが目に見えてわかることができました。
金谷さん「田んぼの面積は五反、有機栽培で一七年目。田植えは五月二二日、米糠を反当たり一〇〇㎏散布しながら田植えをする米糠除草をします。初期の除草が一番大事なので、米糠除草と苗が活着したら、ビニペット除草機をかけます。これでコナギはだいたい潰せますが、オモダカは残ってしまうので、これは手取りで頑張ります。一反あたり四時間ぐらいで除草します。後は一〇日おきにアメンボ除草機でヒエなど中心に除草し残りの草は稲に大きな影響がなければ気にしません。
 目標収量は一二俵といいたいところ、九俵を最低ラインに考えています。今はちょうど二回目の追肥の最中で、自家製の肥料を撒いています。生物活性水の流し込みはしてないですが、育苗の時に籾の浸漬から潅水など五〇〇倍稀釈程度の生物活性水をふんだんに使い、強い苗をつくることを心がけています。カッチャクの良さや、深水、草負けしないために強い苗をつくることが大事だと思います。合鴨をやる場合も同じで、しっかりとした根張りのよい苗を作ることが大事です。」
富永さん「有機栽培で一七年目、面積は金谷さんと同じ五反です。田植えは五月一五日で、同じく米糠除草をします。田植えの三日後、少し早いのですが合鴨を一ヶ月くらい放します。ひえ、こなぎは多少目につきますけど、これは手取りでおこない、後は合鴨で何とかやれています。私も追肥の時期ですが、追肥したあとには生物活性水を一反あたり二〇リットルを流し込んでいます。去年は反当たり八俵でしたが、今年はその上を目指したいと思っています。」
秋山さん「田植えは二人と同じ時期です。二人と一緒で米糠除草をやっています。田植え後に合鴨を放すのですが、草はだいたい合鴨でやれます。オモダカが増える時期もありましたが、多少の手除草でまかなっていますが、年々、少なくなっています。
 最近は合鴨狙いの狐の獣害が多くて手を焼いています。酷い時は全羽やられたこともあります。今は電柵を付けて何とか防いでいます。目標収量は反当たり一〇俵です。」
 水稲の後は山崎農園の野菜の圃場を視察しました。農薬と化学肥料を一切使用しない圃場。このところの天候の不順もあり、果菜類はこれからという感じでしたが、新鮮なトマトやトウモロコシを生で食べさせてもらい、野菜そのものの甘さに感動しました。
 生物活性水は常に五〇〇倍希釈で潅水に使用、施肥後の圃場にも反当たり一t程度散布しているとのこと。元肥は自家製で、屑米、大豆粕、酒粕、米糠を混ぜて発酵させています。追肥は発酵鶏糞を使用して、収穫ごとに撒きながら追いかけていくとのこと。

②BMW技術基礎講座 
 BMW技術協会の秋山事務局長を講師にBMW技術の基礎を学びました。新潟BM自然塾の学習会では毎回のように基礎講座をおこなっていますが、何度も聞いて行くうちに理解が深まって行くことを実感しました。

③畜産農家と耕作農家の連携、
   上越地方の畜産農家の現状
 謙信の郷の井沢代表から上越地方の畜産農家の現状を伺うことで、日本の畜産農家の現状を知ることができました。
井沢さん「上越市ではここ三〇年で酪農が約一六〇軒から二〇軒に減り、採卵鶏は約二〇〇〇軒から二軒に、養豚も同じように減少している。謙信の郷のメンバーにも昔は養豚を営んでいた人もいましたが今はいません。私は酪農ですが、上越の仲間の話を聞いていると、おそらく一〇年後には二軒になりそうです。そのため、有畜複合の取り組みを進める以前に、畜産業が成り立つか、成り立たないかの問題にぶちあたっています。
 原因は主に餌の高騰と言われていますが、根本的な問題は、無理な規模拡大の煽りが根底にあると思います。就農した数十年前は乳牛二〇頭ぐらいで生きていけると思っていました。餌は地域からかき集めていました、萱だって食べさせていました。今でも妙高地ビールの絞り粕や大豆粕など地域の未利用資源を集めて、一〇〇%ではないけど自給飼料の割合がうちは高いです。でもそういうことを昔は皆やっていたのですが、段々と乳量のあがる購入飼料が主体となってきている。平成に入ってから、『ゴールなき規模拡大』と言われる時代に入り、昭和五四年から始まった生産調整の影響もありますが、乳価が乱高下、ミルカーなどを含めた機械類の更新などで経費がかさみ、しょうがないから牛を増やして乳量を増やして収入を増やす、そうしたら今度は餌の高騰が待っていた。牛が増えた分、餌も増えるわけで、かといって乳価が上がるわけではないのでさらに経費はかさむし、借金も増えていく。牛もガタガタになっていくのが早い。そんな理由で辞めて行く人や息子たちには継がせたくない人が出てきているのが現状です。このままいけば有畜複合は地域から無くなって行く。餌とか化成肥料やミネラル資材は外から持ってきて、それが日本の農業の疲弊につながっている、まさに搾取されっぱなしの農業。食べる側にも責任は充分にあると思います、安かろう良かろうを求めて、結果、自分の首を自分で締めてしまっている。農政に使われる補助金だって皆からの税金ですからね。
 うちは米も作るので、米の状況も良くない、本当にきつい時代なのだと思います。でも何とか謙信の郷という仲間で、生物活性水や堆肥を使ってもらって、有畜複合で地域を作っていくことを続けていくことができています。こうやって皆さんに話を聞いてもらうだけで、何だか違ってくることもあるし、違った見方も出てきます。」
 参加者のほとんどは稲作農家が多く、このような話をあらためて聞く機会があまりないとのことで、皆さんはじっと聞き入っていたのが印象的でした。

④「俺の根」
 各々持参した稲株の「根」を比べました。新潟BM自然塾の共同代表の峯村代表と石塚代表、謙信の郷の金谷さん、富永さん、秋山さん、JAささかみからは江口さん、田村さん、妙高産ブランド米生産者会の石山さんらが、根の色、長さ、量を見ながら、お互いに意見を交換し合いました。根の色が赤茶けていたり、白かったり、長かったり、毛根が多く出ているものがあったりと本当に人によって全く違う状態で驚きました。

Author 事務局 : 2015年10月01日 09:59

 
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