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2015年12月01日

【AQUA284号】第25回BMW技術全国交流会 基調講演にあたって

  根釧みどりの会・マイペース酪農 三友 盛行

 生産者、消費者を問わず多くの国民が市場経済優先の農業に、疑問を持ち、また将来に不安を感じている。食糧自給率の低下、遺伝子組み換え、農薬、化成肥料等の多用による生産物の劣化、経営難による離農、廃業、高齢化等による地方の衰退がある。一方、大都市への一極集中化がより進み、再び高度成長経済の旗の下、より効率を求める経済競争が激しくなり、表面的な繁栄の下で進む階層格差社会がある。このような将来への不安を払拭し、これからの農業のあり方を示すことが、この大会の大きな意義と考える。

現行農業の延長上に未来はない。
◎現行農業が辿った道
 自然を利用し自然から学ぶ農業から自然を軽んじ、自然を収奪する農業へ移行した。
 市場経済優先であり、生産資材の多投入、エネルギーの大量消費により生産量の増大を実現したが低価格、高コストとなり農家経済、農村を疲弊化した。
 さらに化成肥料、農薬等の多用により土壌の衰退、環境汚染を引き起こし、また、食糧の安心安全からも乖離した。
 たとえば、人力だけが頼りの農耕社会では農夫一人のエネルギーで一二倍の食糧エネルギーを確保できた。近代農業による、一九七五年時点の米生産では投入エネルギーと獲得エネルギーは一対一となっている。
 また、同様にみると農業の機械化は人力の三分の一以下という不効率になる。
 一九六〇年代から始まったアジアでの「緑の革命」は日本にも大きな影響を与えた。
 生産物の増収を実現したがより多くのものを失った。
①伝統農法が持っていた農民の知恵や生態系との共生という芽をつぶした。
②化学肥料や農薬への依存を強め、経済的自立の基礎を壊した。
③外部から持ち込まれた技術体系で、農民の内発性、自主性を押しつぶした。
 そしてこの「緑の革命」の実践者はノーベル平和賞を受賞した。
 今日から見れば平和への貢献に価値はなく多くの弊害をもたらした。

◎これからの農業とは
 大宇宙、太陽系、地球そして生物の誕生に至った理に適った大原則の延長上にある農業を実践すること。
 BMW技術は自然を背景にした循環であり、マイペース酪農は風土に生かされた循環型、適正規模農業である。自然と風土は同義語であり求める方向、方策は共通している。
マイペース酪農の実践を通して持続可能な農業の構築への提言をする。

◎持続可能な農業に向けて
・市場経済優先の慣行農業に対して、立ち止まり考えること。
・持続可能な農業の基本は足るを知ること。
・農と業を分離し、農の営みを優先し、業という経済を後に置く。
・業は生産拡大、追加投資を毎年求められ、安定性に欠け、高コスト、労働過重となり将来不安を増長させる。
・農は毎年同じことの繰り返しのように見えるが、安定、習熟、進化するので低コスト、適量生産となり安心して暮らせる。

◎消費について
 人間を養うものは口から入る食料であり、それが全てである。消費者は生産現場の仕組み、食材の購入方法、価格、調理、食事までの過程についてもっと自分達の問題として学ぶ必要がある。食料は目に見えない微生物の生命から作物と言う形の生命の連鎖によるものである。その生命を食するとき人も命を得ることが出来る。月々の家計の中で残ったものが食費になるのが一般的であるが、食に関する項目が第一とならない限り安心、安全はなく、期待に応えられる農業も育たない。
 生産者も消費者も命をよりよく全うするためにお互いに持続可能な農業の実現のため、共に学び活動する時代となった。

 地球は岩石の塊でありそのミネラル要素の様々な働きにより命を誕生させ、その原理に沿って今日に至っています。
 農業は風土の自(おのず)然(からなる)と言う特性と制約を受けるものです。この制約を克服、支配することが農業の進歩としてきたが現在では行き過ぎてむしろ、農としての業(なりわい)を壊している。自然の制約を地域特性と受入れ、適地、適作、適量に励めば自(おのず)と暮らしが然(な)るものです。
 持続可能な農業は健康な命の連鎖の具体化であり、BMW技術やマイペース酪農の実践がその確立のための一翼を担うことになれば幸いである。

Author 事務局 : 2015年12月01日 17:44

 
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