「ORGANIC」で世界を養えることが証明される

 米国のミシガン・アン・アーバ大学(University of Michigan Ann Arbor)のキャサリン・バッジリ(Catherine Badgley)によって率いられた科学者チームが「有機農業では世界を養えない」という俗説を打破した。この研究班は、293件の実例を挙げて、有機農業と従来農業の生産性を比較し、そして先進国と発展途上国での異なる食物カテゴリー間で、有機対非有機農業の平均生産高比率を具体的に査定した。平均生産高比率では、この研究班は、現在ある農地基盤で有機的に栽培される世界的食料供給を基にモデルを立てた。その結果は、農地基盤を増やさないで、有機農業方法が現在の世界人口の食を支えうる十分な食物を産出できることが明らかになった。この科学者達はまた間作作物としてのマメ科植物(legumes)による窒素固定から潜在的に獲得できる窒素量を計測した。温暖地域と熱帯地域の「アグロ・エコシステム(agroecosystmes)≒農業生態尊重体系」から取り出したデータでは、現在使用されている化学肥料のすべてに取って代われる十分な窒素を固定できる事が示された。その報告書はその結論をこう述べている:「これらの調査結果は有機農業が、従来型農業の環境への悪影響を削減させて、十分に世界の食料供給に対応できる可能性を持っている事を示している」

《緑革命(Green Revolution)の代価》
 穀物収穫の現在の減少は、何十年に及ぶ緑革命の持続不可能な慣行が環境悪化を招いた事に起因している。それは、大規模な土壌侵食、土壌肥沃度の損失、塩分化による農地の喪失、地下水枯渇、害虫の増大する抵抗力、をもたらしてきた。緑革命の他の環境コストは、地上と地下の水汚染、温室効果ガス放出(特に山林伐採と森林の農地転用)、そして生物多様性の喪失、を含んでいる。多くの人達が、食糧生産ではもっと持続可能な方法が不可欠であると論じてきた。

《有機農業が持つ多様性》
 今回のミシガン大学のチームによって調査された有機農業の実例は、「アグロ・エコロジカル(agroecological)≒農事生態尊重」に依拠した多様な農場を取り上げていて、必ずしも「認定」に制限された有機農業だけではない。有機農業の実例は自然界の栄養素が循環するプロセスに依存していて、化学合成された農薬を排除し、土壌質を維持したり、蘇生させている。その有機農作業は、間作農作物(cover crops)、マニュア使用、コンポスティング、輪作、相互間作(intercropping)、生物利用害虫コントロール、を含んでいる。293の実例研究には、有機農業と慣習農業を比較した160件、有機農業を「低強化法農業」とを比較した133件が含まれている。多くの研究はすでに発表されている科学論文からの引用がされている。

《有機食物は世界を食べさせるに十分である》
 有機と非有機産物の生産率は先進国では大体同じである、しかし有機農業における主要な利点が最も明白なのは発展途上国である。発展途上国では、多くの食物には切実な需要があり、農民が高価な合成化学肥料や殺虫剤に対して支払う余裕がないのも実状である。有機農業の従来農業に対する生産率はおよそ1.6から4.0までに及んでいる。世界での全食料の平均生産率は1.3である。毎日のカロリー摂取量の面では、現在の世界の食料供給は一日につき2786キロカロリーを供給している。健康な成人の平均的な必要摂取量は2200から2500の間にある。有機農業で設定された「モデル」では一日2641キロカロリーになるので、推薦されたレベルを上回っている。別の「モデル」では一日4381キロカロリーも生み出している。これは現在獲得できる量の157.3パーセントにあたる。このように、有機農業による生産は、現在存在しているより実質的に多くの人口を養っていける可能性を持っている。

《生物による窒素固定で充分以上の硝酸塩が獲得できる》
 有機農業には充分な有機肥料が無いという批判がある。農業生産に対して主要制限力がある「マクロ栄養素macronutrient」はほとんどの地域では窒素である。有機農法の窒素補修は、作物残余、動物肥料、堆肥、そしてマメ科植物(legumes/緑肥料)から生物によって固定された窒素から獲得される。熱帯地方では、他の農作物植えつけの間に栽培されるマメ科植物が、40日から60日で窒素の相当量を固定させることができる。2001年では、合成窒素肥料の世界使用量は8千200万トンであった。まめ科作物によって固定された窒素の肥料としての査定量は1億4千万トンである。これは1ヘクタールにつき102.8キログラムの平均窒素獲得可能量を基準にしている。温暖地帯と熱帯地域の平均窒素獲得量は1ヘクタールあたり各95.1キログラムと108.6キログラムである。これは合成窒素がグローバルに使われている量の171パーセントにあたる。

《ORGANICの未来と課題》
 ミシガン大学によるこの研究は波及効果を広げている。その研究結果は、もし我々が有機農業に切り替えて、生物学的に獲得可能な窒素が現在使用している化学合成窒素肥料に取って代わることができれば、世界を養う食物を栽培するのに土地を増大させる必要がないことを意味している。また米国では工場型農業による国民の健康と環境への加害額は年596億ドル以上になると発表されているが、有機農業への転換でこの環境汚染に起因する被害を回避できる。しかし有機農業への移行がどんなに有望であるとしても、その遂行には多くの挑戦が控えている。土壌肥沃と害虫管理に関する「アグロ・エコロジカル」方法に貢献する研究機関の支援、「ORGANIC」伝播の強いシステム、そして覚醒した市民の支援は欠かせないものである。


参照論文:
Scientists Find Organic Agriculture Can Feed the World and More
06/09/07 Press Release by The Institute of Science in Society

Author 事務局 : 2008年02月03日13:47

「有機ネットやまなし」設立

やまなし自然塾が呼びかけ
~県の推進計画に有機農業関係者の声を反映~

 山梨県で協会メンバーの「やまなし自然塾」及び「白州郷牧場」と、「山梨有機農業市民の会」の三団体が中心となり、「有機ネットやまなし」が設立されました。その設立総会が昨年一一月二六日、甲府市の県JA会館で、関係者約一〇〇人が出席して開催されました。
 「有機ネットやまなし」は、国の有機農業推進法に基づき、県が策定することになっている「有機農業に関する推進計画」に、県内で有機農業を実践・推進してきた有機農業者、消費者、関係者の意見を反映させることを目的に設立されたものです。やまなし自然塾が中心となって、県内の関係者に呼びかけ、前述の三団体や個人約一五〇人が有機ネットやまなし設立に参加しています。
 活動内容は、県内の有機農業の現状調査や課題整理を実施し、県の推進計画に提言を行う他、有機農業推進法施行後、同様な目的で立ち上げられている各県、国レベルでの有機農業団体との連携や、情報交換を進めることになっています。また、県試験場と生産者による有機農業の実証試験をスタートさせ、将来的には、食育に関する活動にも取組んでいく方針です。
 設立総会には、山梨県農政部を始め、県関係者も出席し、農林水産省生産局農産振興課の中島潔課長補佐の「有機農業の推進について」と題した講演会や、意見交換会、各団体のメンバーが生産したハムやブドウのジュースなどを味わいながらの交流会も行われました。

「有機ネットやまなし」設立にあたって
  やまなし自然塾 事務局長 高野美夫

 私がやまなし自然塾に入会して約一〇年が経ちますが、入会当初、有機肥料を使用し、農薬を五〇%減らす努力さえすれば経営が成り立つ、このように思っていました。塾の仲間や先輩、講師の方々や色々な学習の中から、農業経営とは何か、このことについて真剣に考えるようになりました。農業は会社経営とは違うようだ、もう一度、塾のスローガンの、水、土、それに空気、環境問題を中心に考えるようになりました 
 農業者は経営者である前に地球人でもあります。人が地球を守る、このことこそ農業の基本ではないのか。昨今の食品の偽造問題は日本の食文化の低迷を反映しています。今回の有機農業推進法の施行は、やまなし自然塾の長年のテーマに国も取組みを始めたということでもあります。まさしく今、機が熟した良いタイミングでも有りました。有機ネットやまなしは、やまなし自然塾が地道な活動から手に入れたものです。単に会のためと言うことではなく、将来の子供たちのため、美しい地球を守るための第一歩かもしれません、この事がやまなし自然塾の方針です。
 有機ネットやまなしの設立によって、山梨県での有機農業は、やっとスタート地点に立ったと言えるかもしれません。日本はもともと雨の多い国です。有機肥料栽培に関しては、難しいこととは思いませんが、無農薬栽培については技術面で幾つかのハードルがあります。昨年、一〇月にスローフードの発生の地、イタリアの食科大学に見学に行って来ました。食の安全については、日本より、はるかに関心が高く、広い農地、見渡す限りの葡萄畑、農業大国を目の当たりにして来ました。年間降雨量が三〇〇~四〇〇ミリ、わが国の台風一回分の降雨量と同じ位です。それと比較すると気候面で特に果樹栽培では、日本での有機栽培は非常に難しいところがありますが、今度は有機ネットの仲間がいる、情報も以前より多いはずだ。やりがいのある仕事と考えています。
 有機栽培の認証については、県内で全国レベルの認証ができることを期待しています。県の農業試験場には、有機栽培の研究に積極的に取組んでもらうとともに、以前から有機栽培に取組んでいる農家との連帯も進めてほしいと期待しています。そして、一般の方にも有機栽培に関心を持ってもらうアピールを積極的に行っていくことが重要と考えています。

Author 事務局 : 2008年02月03日13:46

BMW技術が本領を発揮するのは今

食料の値上げがもたらすBM的生き方のすすめ

BM技術協会 理事長 石澤 直士

 会員の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年、一一月に宮城県・松島で開催されたBMW技術全国交流会は、BM技術協会会員の懐の深さ、そして、参加して頂いた会員の皆様の泰然自若とした姿が、際立った交流会でした。特別講演を引き受けて頂いた畠山重篤先生には大変貴重なお話をしていただき、誠にありがとうございました。紙面を借りてお礼申し上げます。
 さて、昨年を象徴する漢字一文字が「偽」でした。次から次へといろいろな偽装が出てきました。その原因の大半が、もったいない(商品の中身まで偽っている物は論外)から来ています。しかし、すべての根本は、いくらかでも他と違うのだといういわゆる差別化が占めています。つまり優良誤認を生産する側が作り出しているのではないでしょうか。
 しからば、BMの世界には、優良誤認はないのでしょうか。家畜を健康に飼育する条件を整え、畜糞尿を活性化させ、それを再び畜産や耕種農業に再利用することにより畜糞尿が変わり、出来た農畜産物が変わっていきます。BMW技術をきちんとやると通常では考えられない現象が起こります。例えば、卵の白身と黄身を同時に掴めるという事実があります。いくら良い餌、良い雛、良い管理でしかも産みたてのほやほやでも出来ませんでした。しかし、BMW技術による飲水改善を雛からやると掴める様になるのです。ところが、すべての卵がそうなるかというと、そこではじめて良い餌、良い雛、良い管理が必要になってくるのです。この辺をきちんと説明していかないとBMW技術も優良誤認を招く恐れがあります。
 つまり、「BMはすごい=良い物が出来る=良い物を作るのが当たり前=良い物を使っている=良い物が出来る=BMはすごい」の循環が出来ているように思います。BM技術協会が出来た本来の目的、いわゆる原点とは何でしょうか。
 そこで、原油の高騰から始まった昨今の飼料の高騰と併せて考えてみたいと思います。もともと畜産の始まりは、農耕用から始まり家畜は家族同様に大切にされて来ました。また、人間の残り物を粗末にしないようにする為と人間の食料と競合しないで良質のたんぱく質の供給源となるように、大切に飼われて来ました。それが変わってきたのはいつからでしょうか。私自身は、映画「三丁目の夕日」の翌年に生まれましたが、その翌年に地元では養鶏業への取組みが始まったと聞いています。高校に入るまでは、卵は、風邪を引いたときに食べる物で早く風邪を引きたかったものでしたが、なかなか引くことが出来ず、家族に風邪引きが出たときに少しだけおすそ分けしてもらいました。しかも、我が家では魚肉類は、朝は禁止、夕方でないと食べれませんでした。それが、海外余剰穀物の利用推進を目的に国が畜産振興をはかり、今は、毎日のように卵をしかも二個ずつ食べることが出来るようになり、隔世の感があります。
 こうした畜産振興を背景に、家畜はもともと、自分の所で取れた農産物や近隣で取れたものを中心に育てられていたのに、海外から輸入される穀物を中心に畜産が行われていった為、畜糞尿がその地域で過剰になってきました。それが畜産公害をもたらして来たのです。そこに現れた技術は、たくさんありますが、BMW技術は(成り立ちについては、諸先輩にその論をお譲りします)出来るだけ早く畜糞尿を宝物に変え、しかも、地域の耕種農家との結びつきをはかる事と、ミクロコスモスという今では当たり前の概念にいち早く取り組んできたのです。
 さて、年頭に当り、もう一度畜産本来のあるべき姿とは、そしてBMW技術の本来のあり方について考えていかなければなりません。そこで次の三つの原点を検討し、具体化したいと考えます。
① 食べ物(及び飼料)の自給率の向上についてBMW技術は、どこまで貢献できるのかの検討(耕作放棄地の再生、農産物の多収に向けた具体的取組、未利用資源の活用、醗酵飼料等)
② 肥料自給率の地域間格差及び会員格差の是正を行う為の検討(良質の堆肥製造技術の確認、肥料過剰地域の解消等)
③ 農薬及び化学肥料使用量の低減(あるいは無・無)について具体的対策の検討(技術の確立及び資材の発掘)
 この他にも、まだまだたくさんの検討及び取り組まなければならないことがありますが、以上の三点を基に、人間の生産・生活活動で汚してしまった土と水の再生を通じて河川流域の環境問題に取り組んでいかなければ、BM技術協会の存在価値が問われることになるでしょうし、ミクロコスモスの実現は不可能ではないでしょうか。

Author 事務局 : 2008年02月03日13:45

「有機認証取得がはじまりました。」第4回 【193号】

第4回 ㈲ファーマーズクラブ赤とんぼ
山形県・高畠町  星 浩さん

有機認証取得日 二〇〇〇年七月
有機認証面積  一三六アール
有機認証団体  ㈱アファス認証センター
 
 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。
 有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、どう捉えているかインタビューを行っています。第4回は、山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼの星浩さんです。 (まとめ:礒田有治)

―――有機農業をはじめられたきっかけをお聞かせください。
星 自分には子供が三人いるが、子供達がみなアトピーになってしまった。特に今、二四歳になる長女のアトピーが子供の頃ひどかった。昔はアトピーなんてなかったのに、何故だろうと色々考えた。結局、最後は食べ物じゃないかと思った。周囲の環境も勿論あるが、人の健康というのは、まず食べることから。食べ物というのは、まず安全安心が第一。どんなものが含まれているのか、その成分だって、よい成分とかを考えると、自分が農家をしていて、最低限できることは、昔ながらの有機農業を進めながら、まず安心なものという考えで初めたのが最初のとっかかり。
―――その頃、地域で農薬は、どうように使用されていましたか。
星 空中散布が多くて、その他にリンゴを始め果樹があって、皆さん消毒する。多収穫に向かって一生懸命やっていたから、病気が出る前に予防的に農薬を使っていた。どうしても消毒をすると、男の人はさほど感じないのだけど、女の人のほうが、農薬に最初にまいってしまう。頭が痛かったり、めまいがしたり。女の人に症状がでやすかった。
 また、労力不足で、川の周辺に除草剤とかをふってきた経過があるわけで、ドジョウやフナに肌がはげたものだとか、背骨が曲がったものが、一杯いた。それだけ農薬を使っていた。その当時は、はっきり目に見えたから、これは危ないと思った。今は、農薬会社の謡い文句は、人には、まず安全じゃないけど、そこそこ安全だよ、使用して食べ続けても大丈夫みたいなこと言う。でも、濃度が低くても、長くやられると、年取って、体の抵抗力が弱くなったときに出てくるっていうからね。だからそれが怖い。
―――そういうことに気づかれて、いつ頃から、農薬を減らすとか、有機農業に取組まれましたか。
星 もうその頃だから、二十何年も前になる。リンゴとかも消毒しないから、自然に良い物にならなくて、木を切ってしまった。ブドウも切ってしまった。それで、一つの作物に絞っていき、米を始めた。やはり、米っていうのは毎日食べるものだし、三度三度、食べて、それが、人の体をつくるものだから。
 米は、最初から無農薬ではじめた。昔から高畠町は米の栽培技術も進んでいたし、無農薬や有機栽培でも先駆者がいたので、比較的抵抗無く、始められた。ただしその頃は、肥料は完全無化学肥料という訳にはいかなかった。昔の有機というのは幅広いというか、有機肥料と書いたものに二%くらいは化学肥料が入っているというのが主流だったから。堆肥も、ここらは、牛の糞だけというのが主流だった。その頃、それは堆肥じゃなく、産業廃棄物を、ただ田んぼとか畑とかにまいているにすぎないのじゃないかと言われた。
そうしている時に、米沢郷牧場さんに、堆肥施設や、BMW技術が導入され、その堆肥や生物活性水を使い始めた。
―――有機認証を取得した動機をお聞かせください。
星 販売面とか、農業の経営にプラスになるとか、いろいろ考えて、取得した。今、テレビとかで偽装とか騒がれているように、安心だと信じていたことが、違うかもって、一杯あるでしょ。やはり自分のしていることをきちんと打ち出していくには、それじゃだめだって思う。いくら言っても、世の中で認めてくれないからね。きちんとした認証機関で認めてもらい、そんな中で、農業とか有機とかを世の中で訴えていきたい。
―――大手スーパーが、有機認証農産物の取扱いの拡大を進めていく動きがありますが、どうように捉えておられますか。
星 有機農業で栽培したものを、大手スーパーとかで扱われるのは良いことなのだけど、みんながその価値を認めてもらって、正当な価格として購入してもらえるかということだよね。だけど、地域格差があるので、地方のスーパーで販売する場合は、そこそこの値段でないと難しい。東京では、ある程度余裕があって、色々買ってもらえるが、東京にだけ広まっても、何のために自分は、安心安全なものつくっているのかと思う。東京人だけに食わせるためにやっているのかと。やはり、地域の人にも、いいものを食べながら、食に対して考えを持ってもらえるようになってほしい。そこのところは、はがゆいところが一杯ある。地元のスーパーに地場野菜のコーナーを設けているところがあり、たまに買い物に行ったときに、黙って見ていると、みんな手にとってみたりしているのだけど、カゴの中に、なかなか入らない。
―――本当は、地域の方々にもっと理解してもらいたい。
星 うちの田んぼの先に高畠高校がある。その生徒も田んぼに来るのだけど、有機をやっていると言うと、生徒に与える影響も強い。高校の総合学科に、田んぼの授業がある。授業を通じ生徒の中には農業を学びたいという女の子がよくいる。そういう食物を学びたいって。どうしてかと聞くと、やっぱり食べ物に関心がある。先生も、高校の周辺では有機栽培をやっているということを、授業で教えている。そういう有機栽培や、食べ物の安心安全っていうことも、小さい子供のうちから、教育の一環として進めてもらえれば、地域の取組みを、頭で考える勉強となって、良い授業になるのではないかなと思う。やっぱり小さい頃から、そういうことを教えたり、食べさせたりすれば、全然違うのじゃないかな。
―――消費者に対しては、どういうことを理解してほしいと思われますか。
星 一番は、日本の食べ物は安全だって思い込んでいることだよね。そういうのが一番問題ね。中国のものは危ないって日本人は思っているのに、日本のものを危ないと思わない。多分、そこの違いだね。やはり、これから消費者が、JAS有機が表示されているのを見て、良いものだってことを思ってもらうような努力をしないといけない。そうでないと、有機だとか書いても駄目だと思う。そういう運動とかをしないと、前に進まない。
―――有機農業推進法ができましたが、行政に対してどのような要望がありますか。
星 行政に対して、一番要望したいのは、まず長期のビジョンを持ってもらいたい。それさえあれば、今の農家もそれに対応しながら、一〇年後、一五年後の農家っていうのを打ち出せるって思う。

Author 事務局 : 2008年02月03日13:43

自然学を実践する「土と水の学校」有機栽培講座報告

 ~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が、昨年一二月、長崎県の南高有機農法研究会と、西日本BM技術協会研修会で小祝政明先生を講師に開催されました。それぞれの開催内容を紹介します。  (報告:礒田有治)

長崎県・南高有機農法研究会
 一二月四日、長崎県の南高有機農法研究会(荒木隆太郎会長、BM技術協会常任理事)で、同研究会メンバー一五人が参加して、今年四回目となる~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が開催されました。
 前回の講座では、ジャガイモ栽培でのそうか病や、トマトの色がよくのらないとの課題が生産者から挙げられ、その対策としての微生物の活用法や、ミネラル先行型施肥設計方法を検討しました。
 今回の講座は、その成果の確認と、来年度に向けて、各生産者自らが土壌分析に基づいた施肥設計を行えるように、パソコンを利用しての実習を行いました。
 講座では、最初に小祝先生から、これまでのおさらいとして、土作りの基本として、土壌の物理性、生物性、化学性の改善方法と有機栽培における土壌分析の方法が解説され、この視点を持って、現場を見ることが重要との示唆を受け、参加者全員で、圃場に向かいました。
●ジャガイモのそうか病対策で大きな効果
 最初に訪れたのは、そうか病に悩まされていたジャガイモ圃場で、七月の講座で対策を練り、乳酸菌の導入とミネラル先行の施肥設計を導入した圃場です。すでに霜が降り、周囲のジャガイモ圃場は、ほとんど葉が枯れた状態になっていましたが、対策を施した圃場では、まだ葉が生きており、明らかな違いが見られました。
 まず、物理性の確認として、土を踏んで、団粒構造を持った土壌であるか確認しました。これまでに堆肥を長年投入してきた圃場であり、これについては良好と判断。続いて、課題となっている生物性の確認として、そうか病の発生があるか、ジャガイモを掘り起こして見ると、そうか病の発生はまったく見られませんでした。化学性の確認として、葉の状態や、玉揃いの状況を確認しました。葉はつやがあり、周囲のジャガイモが既に枯れているのに、まだ葉茎が生きているのは、ミネラルバランスが良好だったために、光合成が充分に行われ、セルロースの合成が充分にできたと考えられます。また、イモの玉揃いも良好でした。これは初期成育が良好だった結果を現すものと考えられます。ただし、生育途中で雨が降らない時期があったことと、窒素量がやや少なめだったために、イモの大きさは、やや小さめでした。
●ミニトマトの色・味も良好に
 ジャガイモ圃場の次は、ミニトマトのハウスを訪れました。昨年は、実は成るものの赤く色がのらない圃場でした。これについては、土壌分析で赤い色のもととなっている鉄不足となっていたため、鉄成分を圃場に施肥したことや、まめに土壌分析を実施した上での追肥の実施により、今年は、実の色ののりも非常によく、味も良好です。また、トマトの木そのものも生育良好で、申し分のない状態でした。
 圃場での確認の後は、来年度に向け、各生産者が自ら、土壌分析と、分析にもとづいた施肥設計が行えるように、グループに分かれて、パソコンを利用しての施肥設計実習を行いました。小祝先生から、施肥設計ソフトの使用方法が説明された後、参加者は現在使用している堆肥や肥料のデータをそれぞれのパソコンに入力。土壌データ例の課題が出され、このデータに沿って、タマネギとジャガイモの施肥設計実習を行いました。
 実習終了後は、まず、「自分の畑の状態を知るためにも、自ら土壌分析をして、把握することが重要です。是非皆さんでトライしてみてください」との小祝先生の挨拶で、講座を締めくくりました。

西日本BM技術協会研修会
「土と水の学校」有機栽培講座基礎編を開催

 一二月五日、西日本BM技術協会研修会で「土と水の学校」有機栽培講座が福岡県福岡市で開催されました。今回は、有機栽培講座の基礎編として行われたもので、西日本BM技術協会メンバーの福岡県・糸島BM農法研究会、熊本県・愛農会及びやまびこ会から生産者一五人と、生活協同組合連合会グリーンコープ連合から事務局三人が参加しました。
 研修会では、冒頭、グリーンコープ連合の野口雅彦商品本部長(協会常任理事)から、「皆さんと一緒に学んでいきたい」との挨拶が行われ、続いて、「土と水の学校」講師の小祝政明先生から「BMW技術による有機栽培、高品質・多収穫栽培のしくみ」と題して講演が行われました。小祝先生からは、植物生理や土づくりの基本、有機栽培による高品質・多収穫栽培に必要な技術・知識、堆肥や生物活性水を持っているBMW技術の優位性などが図や分子記号等を使って、解説が行われました。
 次いで、協会事務局の礒田から、~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座の目的や概要、各産地の取組み成果や使用している生物活性水の分析データ等の説明後、BM堆肥や生物活性水の応用方法等、今後の研究課題について報告が行われました。
 参加した生産者からは、「土壌分析はどのようにして行うのか」「水の性質によって栽培に影響はあるのか」「ネコブ病対策はどうやると有効か」「生物活性水の倍率による効果の違い」等、熱心な質問が相次ぎました。
 西日本BM技術協会では、今回の有機栽培講座でも重要なポイントとなっている水と、地域のミネラルをテーマに、三月に熊本で~自然学を実践する~「土と水と学校」岩石と水講座の開催を予定しています。

Author 事務局 : 2008年02月01日13:48

 
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