一日目(二月一九日)
はじめに、BMW技術基礎セミナーの開催・運営を担っているBMW技術協会若手幹事会の新座長である謙信の郷の金谷氏の開催挨拶でスタートしました。
まず、秋山事務局長から、BMW技術の基礎と実際の活用事例についてです。BMW技術の基本的な考え方からBMプラントの種類、そしてこれまでの実験報告からBMW技術の活用方法についての説明がありました。
次に西尾道徳氏による講演です。西尾氏は農林水産省に入省後、各機関の農業部門を歴任されており、有機栽培や土壌微生物、環境汚染など日本だけでなく海外の農業事情に精通されており、農業関係の著書も多数執筆されています。講演のテーマはヨーロッパ(EU)と日本の農業の違いから見る今後の日本の農業についてです。ヨーロッパ(EU)では、生産物の高い価格保証などの制度で農業を振興したため、過剰施肥による水系の硝酸汚染が深刻化し、その影響は作物の生育阻害や地球温暖化による異常気象などにも繋がるそうです。また、この過剰施肥は私たち日本においては世界のワースト三位に入るほど多肥農業国であること、EU(ヨーロッパ)では施肥制限を設けて対策しているのに対して日本では施肥制限がなく、それは慣行栽培物だけでなく特別栽培農産物や有機JAS農産物も同様であるなど環境保全に対する考え方、また有機農業そのものの考え方にも違いがあることなど、今まで知らなかった国内外の情勢や情報を知ることができました。
基調講演後は、五つのグループ(果樹・茶、米、畜産、野菜、生活)に分かれて、「日本の農業のこれから」というテーマで話し合いました。同じグループ内でも栽培・生産している種類が異なるのでなかなか意見がまとまりにくい中、環境保全とこれからの有機農業など基調講演を受けた意見が多く出されました。
最後に伊藤理事長による一日目の総括があり、その後別会場で懇親会が開かれ、親睦を深めて一日目が終了しました。
二日目(二月二〇日)
二日目は昨年の全国交流会の発表事例を参考に、山梨大学の御園生先生による今年の実験に向けての計画やデータの採取・処理方法などについてのワークショップでした。
これまで、御園生先生によるデータの採取・処理方法などの説明は何度かありましたが、今までの実験報告では結果の測定数(検体の数)や実験結果を平均値で表現したりと、実験する方それぞれのやり方で報告されていました。それを、実験結果の測定数は多い方がよいが最低でも三例以上実施する、データの表し方は統計手法に則って意味のある比較ができるようにするなど、実際に昨年の全国交流会での発表事例を基に具体的な説明がありました。
その後は、一日目と同様に各グループに分かれて、今年の実験についてのグループディスカッションが行われ、各グループからは今までの実験を引き続き行いつつ、今回のワークショップで学んだことを反映させるというまとめになりました。
最後に米沢郷牧場グループの横山氏による閉会挨拶で、二日間の基礎セミナーが終わりました。今年の全国交流会は仙台で開催されます。セミナー終了後には実験を継続している方を中心に、実際の実験データを使い、パソコンでの入力、データグラフの作成などの実践講座が実施されました。
(報告: 生活協同組合連合会グリーンコープ連合 農産本部農産部 秦 武士)
今年の「生物活性水を使用した実験」について
第一二回基礎セミナーの二日目に話し合われた実験については、米・野菜・果樹・畜産・生活の各部門にわかれて毎年おこなわれています。例年は、この場で課題などを話し合いながらテーマを決め、その後に実験内容を組んでいくことをしてきましたが、今年は少しやり方を変えました。
今年は前もって実験する人と実験内容について決めておき、その目的や方法などについてお互いに意見を交換し、実験方法やデータの出し方についてこだわることにしました。これまで様々な実験を皆さんにおこなってきてもらいましたが、全国交流会の発表が可能な限り科学的な実験方法を取れているかどうかが課題となっていました。
そこでこの日に学んだ、御園生先生の実験方法とデータ処理方法を基に、
・実験の目的〜何を調べたいか
・仮説〜どうなっていればよいか
・方法〜どのようにやるか
対照区をどう選択するか
・結果〜どのようなデータで表すのか
これらを明確にして実験に入っていくことにしました。実験する人が直接、御園生先生と連絡を取り合いながら実験を進めることにもなっています。このようにして実験の内容、発表の精度が上がっていけば良いかと思います。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)
●村上園 (二月一三日)
静岡市清水区の村上園にて、老朽化したブロワーの交換とプラント点検、圃場の視察を行いました。プラントは順調に稼働、その後に茶畑と堆肥場を視察しました。堆肥は魚の骨をカルシウム源で入れるほかは全て植物性で作られており、放線菌の菌層は二〇cm以上もあり、高品質といえる堆肥になっていました。
●石井養豚センター (二月一五日)
徳島県阿波市にある、石井養豚センターへプラント点検とプラント増設のための打ち合わせに行きました。石井養豚センターは、母豚一〇〇〇頭の一貫経営をされていて、臭気等の改善のため、一昨年に生物活性水プラントを導入しました。主に、飲水への添加に使用していて、プラント導入以後豚の事故率も減少したとのことです。原料は堆肥の浸み出し液です。一槽一tのバルクタンクが一〇槽と堆肥浸み出し槽からなり、日使用量一〇〇Lまでとなっています。しかし、飲水の使用量が多いため、現在は一〇〇〇倍以上の希釈で使用しています。濃い倍率での添加をし、さらに生物活性水の効果を高めたいとのことで、三月に一槽一t×一〇槽をもう一系列増設する予定で打ち合わせをしてきました。
既設のプラントでは、EC・pH・亜硝酸態窒素の測定を行いました。石井養豚センターは阿波市の山間部にあり、少し冷え込んでいました。そのせいか、微生物の活動が若干緩やかになっていた印象がありましたが、処理は行われていました。三月上旬にもう一度訪れて増設一系統の施工・調整と既存プラントの点検を行う予定です。
●岡山県 (二月一六日)
①岡山県高梁市
〜高梁市堆肥供給センター
堆肥センターの生物活性水プラントの点検とJA美星食肉加工センターの排水処理プラントに行きました。プラントの維持管理を担当している㈱三美産業の妹尾相談役と伊達専務に案内をして頂きました。
堆肥供給センターのプラントは一槽五tのホーロータンクが四槽からなります。原料は堆肥センターの牛糞堆肥となっています。稼働状態は良好でECは〇・八五mS/cmでした。pH・亜硝酸態窒素も正常値となっていました。
できあがった生物活性水は一次撹拌発酵時に散布して使用しているとのことです。堆肥の製造は撹拌発酵を二カ月、堆積発酵を四カ月と、通常の堆肥製造より一・五倍近い六ヵ月の時間を要しています。できあがった堆肥はアンモニア臭もなく良質な完熟堆肥となっていて、農家の方への堆肥供給はトラックのバラ積みと、二〇kg袋の「きじまる堆肥」をホームセンター等にて販売しているそうです。
②JA美星食肉加工センター
排水処理プラントは定期的に㈱三美産業が点検を行っているので、良く管理されていました。二月一六日より数日前の冷え込みにより、屋外配管が凍結したとのことでしたが、訪れた際は既に回復しており、問題なく稼働していました。一日五〇〇L程度の排水を処理しているとのことで、EC・pH・亜硝酸態窒素共に問題なく処理されていました。処理水はそばの河川へ放流されています。
●㈲広島自然学研究所(二月一七日)
広島県広島市にある㈲広島自然学研究所の生物活性水プラントの点検を行いました。旭鳳酒造の排水処理(生物活性水)プラントは日本酒の原料となる米のとぎ汁を原料として、冬場の仕込み作業中は排水処理施設として稼働し、二月中旬に酒の仕込みが終了してから生物活性水づくりに入ります。排水処理時のときは、処理水は水路へオーバーフローします。プラントは三六tの処理槽一槽からなり、できた生物活性水はホーロタンクへとポンプアップして貯蔵しています。製造した生物活性水はグリーンコープ連合の組合員へ出荷しています。旭鳳酒造は代表取締役が濱村洋平氏へと世代交代をして間もない時期でしたが、お忙しいなか対応していただきました。世代交代に伴い改めて生物活性水プラントの維持管理についての説明をしました。堆肥の投入や、リアクターシステムの仕組みなど、現場での説明も交えて説明し、実際にリアクター塔の充填剤の交換や堆肥の投入、点検、一部配管部品の改修を行いました。
(報告:BMW技術協会事務局 永合 耀)
●藤野屋商店にて (一月二八日)
二八日に大分県竹田市の藤野屋商店を訪問しました。BMプラントは採卵鶏の養鶏場に設置されています。以前は飲水改善と生物活性水プラントの二つがあったのですが、二年ほど前にウインドレス鶏舎にする際に生物活性水プラントは撤去したということです。鶏舎は三万羽×二群×三棟で、一八万羽の飼育ということです。
甲斐昇一郎副社長と農場の石田賢一さんに様子をお聞きしながら、飲水改善のプラントを点検しました。飲水改善プラントは別棟で地下タンクになっています。少し離れた鶏舎の近くから地下水を導水し、また元の場所に返して鶏舎に配水する仕組みです。このプラントは、別の業者が管理していた時期もあったので、リアクター塔を引き上げて管理方法を改めて説明しました。ペレットと軽石の量と入れ方、エアの量、調節の仕方などを説明し、匠集団そらからペレットをお送りすることにしました。
※後日、匠集団そらからペレットをお送りし、リアクター塔の管理がわかるような写真もお届けしました。
●南阿蘇村有機肥料生産センターにて
(一月二八日)
宮田鉄雄センター長の話によると、数日前の大雪が生物活性水プラントに大量に入り、プラント内の水が雪で薄められた状態になっているということで、いつもよりECは相当低い数値でした。この状態からの復帰方法について、第一槽から順次定常状態にしていく方法を秋山氏から説明しました。それから宮﨑より、「今年は西日本BMW技術協会総会を七月に熊本で開催するので是非参加をお願いしたい、合わせて会員活動の報告をいただきたい」旨を説明しました。
たまたま熊本県の阿蘇地域振興局職員の方が訪問されており、BMW技術や生物活性水プラント・堆肥センターの運用などについて一緒に話をしました。
●久川養鶏場にて (一月二九日) 熊本県菊池市の久川養鶏場は、つい最近(一か月ほど前)に飲水改善のプラントを設置し、新たにBMW技術協会・西日本BMW技術協会に加入いただくということで訪問しました。社長の久川英昭さんに、BMW技術について少し事例で説明するとともに、西日本BMW技術協会総会を七月に熊本市で開催するので、農場の皆さんも含めて参加を検討いただくことにしました。飲水改善のプラントについては、農場の臭気等の様子を見ながら次のステップを相談しようということになりました。
久川さんから、隣に養豚場があり、畜産という意味では地域との関係で臭いなど一緒に解決したいというお話があり、次回訪問時に養豚場の方にBMW技術を使った尿などの処理についてお話もできるし、また七月に西日本BMW技術協会総会では基礎講座としてBMW技術の話もあるし、養豚場の実例の話もできるということで参加の検討もお願いしました。
(報告:西日本BMW技術協会 事務局長 宮﨑利明)
]]>◆㈱秋川牧園・南関第一農場
〜熊本県南関町
飲水改善プラント
一〇月二五日から四日間、飲水改善プラントの設置工事を行いました。秋川牧園・南関第一農場は秋川牧園の直営農場、若鶏(ブロイラー)が常時六万羽、年間出荷羽数は約三〇万羽になります。プラントは約二〇tの土木槽が一槽、リアクターシステムと岩石を投入しています。原水は井戸水を汲み上げています。ここの鶏は主にグリーンコープに出荷される鶏肉として大事に育てられています。秋川牧園には平成三年に山口県山口市の本社農場に初めてプラントを設置してから、平成一二年には篠目農場、平成一三年に三谷農場にも飲水改善プラントが導入されています。
◆角坂牧場
〜新潟県糸魚川市
簡易尿処理・生物活性水プラント
糸魚川市にある角坂牧場は、搾乳牛五〇頭規模の牧場です。代表の園田輝一さんが昭和四五年二七歳のときに始めた牧場です。牧場は翡翠で有名な姫川のすぐそばで日本海にそそぐ早川沿いの山間地にあります。現在は息子さん夫婦も一緒に作業しています。
園田さんは、上越市の井沢牧場でBMW技術による尿処理施設と生物活性水施設を見学し自分の牧場でも尿処理をする場合は、BMW技術で処理をしたいと考えていました。八月二八日に井沢さんに同行していただき現地調査のため牧場を訪問し、園田さんとプラント導入に向けた打合せを行いました。
実際のプラントの設置工事は、一一月六〜一〇日で設備工事を施工しました。一一月の初めに九トンと五トンのホーロータンクを搬入、設置してあります。当初は牛舎の外にある堆肥置き場にタンクを設置する計画でしたが、冬場一mくらい積雪があるところなので建屋の建設費がかかることなどを考え、園田さんから牛舎内の空きスペースを使う提案があり、レイアウトの検討を重ねました。
九トンのホーロータンクを三槽、五トンを三槽、三トンを一槽設置しています。ロストルで糞と分離された尿をポンプで九トンの第一タンクへ送水します。送られた尿は九トンタンク三槽のなかで二四時間ばっ気処理されていきます。沈殿槽のあとの二次処理部は五トンのホーロータンクが三槽あります。
一一月一〇日に設備工事が完了した後すぐ微生物培養調整作業に入り、一一月一九〜二〇日に原尿を第一槽へ投入し、処理を開始しました。
現在、尿処理は順調に稼働しています。
◆肥後鶏卵・久川養鶏場
〜熊本県菊池市
飲水改善プラント
一二月二二日から三日間、飲水改善プラントの設置工事をおこないました。久川養鶏場は採卵鶏一二万羽、開放式の低床のゲージです。プラントは古い鶏舎を撤去した後に建屋を作り、内部に五トンのホーロータンクで井戸からの受水槽を設けた後に同じく五tのホーロータンク×三本を二列に並べて設置してあります。原水は新たに約九〇mの井戸を掘って地下水を汲み上げています。それぞれの第一槽目にリアクターシステムを設置してあり、軽石と花崗岩を投入しています。農場で生産される卵は熊本県宇土市の肥後鶏卵㈱を通して、九州各地のスーパーで販売されています。
◎その他、定期点検など
匠集団そらでは大型のBMプラントを所持する会員産地などと定期点検契約を結び、それぞれのプラントにおいて、毎月・隔月・半年に一回など定期的に点検をおこなっています。
①パルシステム埼玉の物流センター
・蕨センター
・三芳センター
・白岡センター
②パルシステム岩槻センター
③生活クラブたまご
④ナカショク中条離乳農場
⑤グリーンコープ連合の物流センター
・福岡青果センター
・若宮センター
(報告:匠集団そら 星加浩二)
広い北海道の実行委員会の大変さ
北海道の道東の根釧地方、道央の雨竜郡妹背牛、恵庭市と点在するBMW技術の生産者による実行委員会運営の大変さは本州ではわからない。それぞれむしろ東京へ行く方が交通の便がいいからだ。そんな普段お付き合いのない生産者が北海道大会の実行委員会ということでこの交流会の運営を担ってくださった。これもBMW技術協会ならではの縁である。本当に感謝である。
根釧みどりの会が拓く酪農の未来
私の視察先は、根釧みどりの会の三友盛行さんと今回の実行委員会石澤元勝委員長の酪農牧場であった。
根釧みどりの会は、未来の酪農のあり方において持続可能な酪農の世界を示してくれる未来モデルと言える。今、北海道の酪農は危機に瀕している。TPPだけでなく大量生産、低価格販売のために大規模化大量搾乳化に邁進している。そして輸入に頼る穀物飼料の投入。多頭飼育のための生産設備投資の借金。草地の疲弊と農薬汚染など。こうした先のない酪農の現状を突破するあり方が、根釧みどりの会である。
その基本が牛一頭に一haの草地である。そして無肥料無農薬で草地の更新無し。夏季は昼夜放牧でまさに自然に近い形の牛の楽園である。これを見た時に、イギリスで牛に牛海綿状脳症(BSE)が発症し続いて日本でも二〇〇一年に発症が確認された際に調査視察に訪問したことが思いだされた。この時、発症した牧場は全て飼料に濃厚飼料と肉骨粉が投与された大規模多頭飼育の大量搾乳であったこと。逆に発症しなかった牧場は放牧型の適正規模でオーガニック牧場であったことが思い出された。
国内畜産の危機がTPP等グローバル市場化の中で深刻となっている。市場価格の乱高下での一喜一憂の向こうに破綻の断崖が迫っている。そうした危機は、むしろアメリカなど大規模畜産に実はある。自然生態系を無視した経済動物としてしか捉えない飼育方法は、やがて人間に牙をむいて襲ってくるに違いない。それを予感しつつ、根釧みどりの会の実践モデルをこそ消費側から理解と共感と適正価格購入の運動に取り組む必要があると痛切に感じた。
北海道とBMW技術
実行委員会では事前に道東根釧地方と中部石狩川と雨竜川流域を岡山大学奥地拓生先生のご指導で調査を行っている。
農業は大地と共にある。その大地の歴史によって土壌が作られる。ミネラルが変化していく。これまでBMW技術で考えてきたのは水がミネラルを媒介していくことであったが、今回の根釧地域の調査で「火山の活動により空から降ってくるミネラル」ということを、私たちのBMW技術はこの地球の大変化と活動からつながっているということを意識することができた。そして生命の生き生きとした躍動を、人間の技術として再生産せんとするものである。科学の力が真の生命活動を知り、それに生かされるものとしてこそ意味がある。この技術の理念を北海道のフィールドワークで体験し共有することとなった。今後の北海道でのBMW技術普及を見守っていきたい。
二〇一六年 元旦 BMW技術協会 理事長 伊藤幸蔵
]]>歓迎の挨拶
韓国BM協会理事 槐山郡・雪雨山農場
チョウ・ヒブ
去年に引き続き農家の方、関係者の方、そして北海道の皆さんにお会いでき嬉しく思います。
私は二〇年前に米沢郷牧場でBMW技術に初めて出会い、そして宮崎県で開催された全国大会に参加しました。それから日本の有機農業、産直、生協などのことを一生懸命勉強してきました。そしていろいろな地域をみて先輩、後輩と出会い嬉しく思っています。
韓国では気候の変化が激しくなってきました。暑くそして水不足になり来年の農業が心配になるほどです。日本もそうだとお聞きしています。そして、FTA・TPPにより農業は大きな打撃を受けた今、持続可能な農業を改めて考えていきたいと思い参加しました。皆さんと一緒に学び良い交流会にしたいと思います。
基調報告
「BMW技術の基礎・BMW技術協会活動報告」
BMW技術協会理事長 伊藤 幸蔵
BMW技術の基本的な考え方は、健康的な農産物は生態系本来の機能を持った健全な土と水で育つ、ということです。自然の浄化作用がスムーズに働き、結果として生態系の保全・再生が可能になるのではないかと思います。私たちはそこで有機農業などの持続可能な農業や活動を行えるのです。
BMW技術がモデルとする自然循環で重要なのは、水は巡っているということです。汚れた水は雨や雪として戻ってきたり、地下浸透してある程度浄化されたりはしますが、結局完全に綺麗になることはありません。汚れた水はそのまま地球を廻ると言うことです。そのため浄化しながら下流に流すのが望ましいということです。そしてその活動が海や森を守っていくことに繋がって行きます。私たち生き物、そして地球は自然治癒力を持っていましたが、様々な原因により生態系本来の治癒力が失われつつあります。それを再生していくのが技術であり、運動です。私たちはBMW技術を技術ではあっても地域や環境を守る運動としてやってきました。
バクテリアの力を使ってミネラルを含んだ生き物にとっていい水を作る。微生物は本当に色々な働きをしてくれますがわからないことも多いです。手作業な部分もありますがBMW技術では発酵菌を選択的に使っています。次にミネラルです。BMW技術で主に使う石は軽石です。軽石は主にケイ素などを含み、且つ微生物の住みかになりやすいです。それと花崗岩です。花崗岩と人体はミネラルバランスが似ていることが分かっています。BMW技術は山の湧水の様な綺麗な水を再現しようと作っています。二〇年前に生協の方々が生命の大部分を占めている水に注目し、私たちは土を変えることを考えました。土と水を変えていくこと。それがBMW技術の基本です。
BMW技術のプラントは色々なものがありますが、基本は一緒です。自然生態系のバイオリアクターシステムを再現し、腐敗ではなく発酵の方に向けていく。プラント内に有機物由来の物質を投入しそれを使って微生物を培養します。そして最後には、岩石から溶け出したミネラルと微生物の代謝物が残りこれが生物活性水となります。
現在、畜産では臭いやハエの発生を抑えていますし、菌体の培養やバイオマスへの応用などにも使われています。また、堆肥を作るときなどにも使われています。
耕種農家ではまず土づくりに堆肥を使います。健康に育ち、病虫害に強くなるという効果が挙げています。様々な実験を生産者の方々に行ってもらっています。また、生協の配送センターなどには中水利用プラントということで利用していただいたり、家庭の中にBMW技術を取り入れてる方もいます。そして、都市の方にも生物活性水や菌体、堆肥などのBMW技術を使っていただこうと、取り組んでいます。
BMW技術は最初、技術運動でした。最近の社会では技術や経済に走りがちですが、それが本当に幸せなのか。経済=金儲けではなかったはずです。経済を使って何をするかが重要でそれを支えるのが理念です。そういったことからBMW技術は技術と理念の両輪であるとしてきました。このようなことを克服しようと、地域協会や、地方での基礎セミナーなどネットワークを強めてきました。それと、消費者の方々にも理解を深めていただきたいと活動してきました。今まで都市生活者と農村はどんどん分断されてきました。しかし今日の様に生産者と消費者がこんなにも交流できる場は他にないと思います。
生物活性水を科学する事にも取り組んできました。生物活性水のことを科学し、成分分析などから「見える化」していこうと思います。そのことによって実験や応用に繋がって行き、環境保全などにも繋がって行くものだと思います。
活動としては、基礎セミナーを開催し、技術だけでなく、遺伝子組み換えや放射能など色々な面からアプローチしたり、地方協会主催で勉強会や岩石調査を行ったりしています。韓国をはじめとしたアジアBM連帯で国内外での交流を試みたり、プラント巡回などを行っています。
最後になりましたが、TPPやFTAのことも含めて激動の時代を歩むなか、どうも考えることを先おくりにしている気がします。より良い未来をつくるのは今を生きている人たちだと思います。人任せにはできない。それを可能にする地域や人が大切だと思います。BMW技術協会では技術を学び、地域、全国の仲間とまっとうな未来にしていきたいと思います。そして、消費者の方に近くで見守ってほしい、できれば農作物でけではなく色々なものを一緒に作ってほしいと思います。
基調講演「北海道の岩石とミネラル、
その起源と歴史と循環について」
岡山大学 地球物質科学研究センター
准教授 奥地 拓生
大会に先立ちまして、北海道の石を見てきました。ミネラルは「鉱物」という訳し方が一般でして約三〇〇〇種類ほどあるとされています。今でも多くの鉱物が新たに発見されています。今回は北海道の根釧地区と妹背牛地区のミネラルがどこから来たのかということを考えていきたいと思います。根釧地区と妹背牛地区に広がる鉱物は大変新しい時代にできた岩石といえます。雨竜平野には非常に広い地域に田んぼが広がっています。この地域は新しい時代の岩石の上に圃場が広がっていて、その岩石がどこから来たのかを考えていきます。雨竜平野は周りに山地が広がっています。石狩川は北海道で一番大きい川ですがカムイコタン渓谷を貫いてきています。それからもう一つ雨竜川と言うこれも大きな川が手塩山地から流れています。そして開けているところが雨竜平野になっています。雨竜平野にある新しい岩石は川からやってきたわけです。川の上流を見ることによってその平野のミネラルを知ることが出来ます。カムイコタン渓谷には緑色でうねうねとした模様のついた岩石があります。これは地球の内部で作られゆっくり地表に上がってきた岩石で北海道の土台の岩石と考えてもいいと思います。雨竜川では花崗岩を見つけることが出来ます。この花崗岩もゆっくり地表に上がってきた岩石と言えます。これらの岩石が削られて川を流れて平野を作ったということです。
根釧地区には一〇〇〇平方キロという広大な大地が広がっています。その大地の周りは山に囲まれています。大きな川がない根釧地区は川がミネラルを運んだとは考えにくいわけです。どこから来たかというと、空からきたわけです。根釧地区を囲んでいる山の全てが活火山なのです。これらの火山が長い年月の中で噴火を繰り返し、風下にある根釧地区に火山灰が降り積もったわけです。空から来ても川から来ても地層としては非常に新しく、同じような層と言えます。根釧地区の崖のある所では火山灰が層になっているところを見ることが出来ます。この火山灰の層は火山灰が降ってそこに植物が生え、火山灰を土に変え、動物が住み着いたところにもう一度火山灰が降って。一度動植物は死に絶えるんですけど、また植物が生えて、このくり返しでできています。
川からのミネラルは丸くなったり、ややくすんでいたりします。それに対して火山灰というのは傷みやすいのですが、できたては非常に綺麗で粒は宝石の様です。しかし、やってくるミネラルとしては同じような種類、微量元素がやってきます。ミネラルを考える上では量が大事になります。ここでいうミネラルは微量元素としてのミネラルになります。特徴として多い物は多く少ない物は極端に少ない。一〇億倍や一兆分の一の比率で入っていたりしますが、少ないから意味がないと言うわけではないのが不思議なとこですね。もうひとつ不思議なことは火山灰と地殻の元素存在度のパターンが非常に似ていることです。なぜ、このようなことが起きるかというと、どちらも供給元は同じ地球の中ということです。北海道はすぐ側に海溝がありその下をプレートが通っているわけです。プレートが地球の中に沈み込むとき海水も一緒に入って行きます。この海水はある所でプレートを離れ地球のミネラルと一緒に上昇していきます。この時に深いところで固まったのが花崗岩、一度溶岩として地表に噴出したものを安山岩と言います。そして、もっと上に行き、粉になって撒き散らかったものが火山灰です。川から来るミネラルは地中深くで固まり露出してくる、空からくるミネラルは火山灰を経由してくるわけですけど、元は同じということです。
栄養素としてのミネラルを見ると人体と岩石のミネラル濃度を比べると、やはり全体的に良く似ています。この理由となるものは栄養素つまり食べ物になるわけです。いつから食べていたかというと生命の最初であるバクテリアも食べていたということになります。バクテリアもミネラルを食べて生きてきたということです。どうやって食べていたかということも明らかになっていて、三八億年前の最初の生命は海の底で生まれ、海水のミネラルを食べて利用していました。二七億年前になりますと最初の植物が生まれまして、やはりミネラルを利用して光合成を実現したわけです。そして、栄養を作ることを可能とした生き物は四億年前に陸地に上がります。地表には水に溶けたミネラルがないので岩石中にあるミネラルを溶かして使うことを選択しました。さらにこの結果が進展しますと細かく砕けたミネラルの粒子と、地表の生物が作った有機物が混ざって腐植という物質を作りました。この腐植が海にかわるミネラルの貯蔵庫となり植物が安定して吸収できるようになりました。そのことは今日においても行われており、雨竜川の上流にある岩から生えた植物を通して見ることが出来ます。
このことは生き物を通したミネラルの循環の話ですが、直接の移動もあります。花崗岩から川の水へ溶け込んでいく様子も見ることが出来ます。
自然循環系のバイオリアクターシステムとは、今の様な事が起きているということなんです。今日に至る生命の進化ですけども、最大の課題の一つが岩石の中のミネラルをどの様に取り出して使うかということにありました。BMW技術では花崗岩や軽石の中のミネラルを取り出してやれる。生き物の糞尿というのは生き物の残骸ですから、これらは非常に大量のミネラルが含まれています。これらを再利用してやるのが一点。もう一点は、岩石から水へ自然に溶ける速度より早く溶け出させることができること。技術的な位置づけとしてこの二点が非常に分かりやすいと思います。そして、海に存在するミネラルでもなく、地中に存在するミネラルや腐植でもない、独立した位置づけが出来るのではと思います。
ミネラルには大小二つの循環があります。大循環は地球の内部から外部に出ていく循環で、プレートの運動に伴い動いて、火山のタイムスケジュール、何万年、何億年という数字で循環します。とても長い時間の積み重ねでこの北海道にも豊かな大地があることがわかりました。その上に乗っている小循環は土と水が媒体で生き物にミネラルを移していく循環であります。これは自然界でも起きていて、あるいは庭先でも起きていることです。このことは農業にも深く関わっていまして、自然に負荷をかけないよう、どの様にしてミネラルを植物に移していくか。日本全国の生産者の皆さん、あるいはアジアの地域地域で、考え交流しお互いにいい物を作っていくことが出来るのではないかと思います。
基調講演
「いま問い直す、持続可能な農業」
根釧みどりの会 三友 盛行
小さい頃に埼玉の浦和で農業と触れ合い、よいなと思ったのが農業との出会いでした。そこから、時間が経ち縁があって根釧原野に出会いました。僕が根釧原野に来たのは昭和三九年の時で高度経済成長期に入って行くような時でした。華やかな東京から比べると北海道は何もないようなものでしたが、人の心を潤す何かがありました。最も印象的だったものの一つが作業の終わりに見る星空でした。そこで中標津にあった開拓募集に応募して二三歳の時に現地に入りました。
北海道に入ってからの四七年間を振り返ると「持続可能な農業」に繋がって行く気がします。「いま問われる」農業とは慣行農法に問うわけです。都市に追いつこうと融資を受けて規模を拡大し、生産性を上げようとしてきました。このことは日本全体の農業に大きな波となって押しよせているのです。
今の時代は将来の不安が常に残る社会になっています。そのかわりに何を望むかといえばその反対、平安で安定した社会です。それを構築するには食糧の生産が必要不可欠になってきます。当然それは、農業が関わってくる話で安心・安全な農産物が求められます。
わたくしたちのマイペース交流会の経過と実りを話していきたいと思います。私たちは行政に振り回されない、マイペースな酪農を経営していこうと思い、できた組織です。この根釧原野に私が来た時は牛一頭につき一ヘクタールを基準とし夏は放牧していました。冬は乾燥わらを使っていました。なぜなら一番投資が少ないからです。そんな時にマイペース酪農の方が研修にきました。そこから交流会は発足し、毎月第三水曜日に集まることを決め今日まで一日も流れた日はありません。そこの場では奥さんも積極的に意見交換をし、家では一緒に経営していくのです。
経営の在り方とすると、一ヘクタールで一頭を適正にしようという動きをしました。増やすのは楽ですが、減らすのはとても苦労します。大規模化に向かっていたところから減らすと、収入が減ってしまうのではないかと、そんな気になるのです。また、借金で大変なのは金利だけなわけです。もし金利がゼロでも赤字になるようならそれは経営の仕方が悪いわけです。そんなことをお互いに公開し、客観的に見ていきました。
マイペース酪農をやって行くうちに、風土に生かされた酪農に気づきました。風土とは何かと考えた時に土・草・牛だと思い、これらのペースに合わせた農業がマイペース酪農だと改めて実感したのです。
我々が今、市場経済優先の慣行農業に対してできることは、立ち止り考えることです。農と業を分離し、農の営みを優先し業という経済を後に置くことも大事なのではないかと思います。そうすると次第に、コストは下がり、安定・熟成していくのだと思います。
マイペース酪農の具体例として、草地は更新しない、熟成堆肥のみを散布する。草は早刈りをしない。そして、自分の足で草地を歩いて観察することです。牛の場合は、牛の特性を優先して最大限に生かしてやること。また、穀物を多給しないで高泌乳を求めないことです。
私は消費者の方にも、もっと勉強して欲しいと思います。色々な物を優先して、食糧費が下がったりすることがあると思います。しかし、本来食糧は生きるための物で一番に優先するべきだと思うのです。そして、これが出来れば世の中が変わると思います。BMW技術に出会い、勉強になったことがあります。それは岩石が生命の営みと深く関わっていることです。地球の自然循環に則った農を営み、経済がそれをどう支えるかだけなのです。農と経済の順番を入れ替えてやればいいだけなのです。消費者は安全な食生活を構築する。我々農民は経済に振り回されない農業を構築する。そして、農業の楽しさと大事さに気づいてもらえれば、持続可能な農業になって行くのではと思います。
二日目(発表要約)
「生物活性水を使用した実験・
活動事例報告など〜BMW技術普及状況」
BMW技術協会事務局 秋山 澄兄
BMW技術は内水先生が発見した排水処理過程に腐植を関与させて、急速に処理を進めることから始まりました。そこから生物活性水が生まれ、環境保全、土と水の再生をしていくことを基礎に今まで発展してきました。有畜複合を理想とし、ひいては環境保全活動をその地域で一緒に進めていくことが出来るものだと思います。水源から海までを守って行こうということです。
プラントの種類には主に飲水改善プラント・簡易尿処理プラント・生物活性水プラントの三つがあります。原料も様々で家畜の糞尿から、家庭の雑排水まで多岐にわたります。他にも中水利用プラントなどもあります。
具体的な利用方法として、堆肥製造への利用、作物や田畑への利用、またバイオマスへの利用もしています。今年の目標として、生活の中にもBMW技術をつかってもらおうと、生物活性水や堆肥、生ゴミ用のBM菌体などの商品も取り揃えています。
現在国内には一一六か所、一五三のプラント、韓国では一五四か所、一七三のプラント。中国では二か所、四つのプラント。フィリピンでは四か所、五つのプラント。インドネシア、タイに一つずつ設置されています。北海道では根釧みどりの会に五つ、ファーマーズ・クラブ雪月花に一つ、高松農園に一つの合計七つのプラントが設置されています。また、今年は新設プラントが二か所ありました。最近では一槽が一〇〇〇Lのタンクを何槽か利用して、日量一〇〇Lのミニプラントを設置さてもらうことも増えてきて、韓国ではパネル組立式のプラントも開発されて、新しい試みも行ってきました。
BMW技術は技術と理念の両輪ということで、普及してきました。生産者と消費者が一体となって環境を守っていきたいと思っています。また、来年には新しい会員が増えることもあり、より一層皆で知識や関係を深めて、地域や環境に貢献したいと思います。そこから、持続可能な農業・社会が見えてくるのだと思います。
●実験報告
①生活「暮らしの中のBMW技術」
生活クラブ大阪 文野 裕子・山本 登志子
私たちが所属している、環境委員会では持続可能な循環型社会を目指し、様々な活動を行っています。瓶の再利用などをし、ゴミを軽減するグリーンシステム。節電の削減などを目に見える形で行っていく、エコライフ家計簿。瓶や消費材の再利用やゴミの削減、節水などをしながら料理していくエコクッキング。他にも様々な持続可能な循環型社会を目指し活動しています。そして「BMW生物活性水を暮らしの中でどう使うか」ということも行っています。
具体的な使用方法として、洗濯機に入れ、汚れや臭いがどうなるか。お風呂に入れて、肌や残り湯がどうなったかなどです。またそれらについてアンケートを取り、これからに役立てることなどをしています。他にもサロン・ド・BMWを開催して、講師を招いて説明していただいたり、利用者どうしでディスカッションを行ったりしています。アンケートやディスカッションの中で、臭いに効くという声があがり、実用性のあるものだと思っています。これからもBMW生物活性水をより気軽に、そして身近に活用してもらえるよう活動していきたいと思います。
②稲作「生物活性水を使用した
実験報告・水稲」
ファーマーズ・クラブ雪月花 市川 智
ファーマーズ・クラブ雪月花は妹背牛町にあり広い平野の中で農業生産を行っています。メンバー所有の耕作地総面積は二〇三ヘクタールとなっています。
今回私は、生物活性水を使用した葉面散布実験を行いました。目的として、高品質米の栽培技術の確立などを掲げました。利用資材は生物活性水、木酢液、バイクロン、エコライス八五三です。それを乗用型散布機で葉面散布しました。
結果は、数値を見ると優位差はなかったですけども、一〇〇gを一〇〇tと考えるとあながち小さい数字ではないとも思います。生物活性水・木酢液・バイクロンを使用した区が製品率が高く、屑米が少ない結果となりました。また、葉面散布した区はしてない区と比べると、粒が多少大きくなる傾向も見れました。
今回は、優位差が確認できませんでしたが、実験を継続し技術として確立していき、より品質のいい米を生産していきたいと思います。
③花卉「花卉の水揚げおよび、
日持ちに与える影響についての検証」
ファーマーズ・クラブ雪月花 田村 昌之
私は花卉農家として、六ヘクタール、そのうち二ヘクタールがハウスで五五棟作付しています。圃場には籾殻、牛糞堆肥、生物活性水を利用しています。また、農薬の使用量は八割減となっています。私たちがいる妹背牛町は稲作地帯でありながら、三〇〇戸もの花卉農家が存在し日本有数の花卉の産地でもあります。
北空知の花卉生産の実情として、二〇一一年に生産量が落ちて以降ほぼ横ばい。七月から一〇月までの出荷量が全体の八〇%にも及びます。課題として、生産者の高齢化が進み、若い世代が少なくなってきています。
実験の目的としては花卉栽培において最も重要な日持ちに着目しました。通常は延命剤を利用するところを、生物活性水で行い、花卉収穫後の調整前後の処理剤として利用した場合、日持ちにどの様な影響を与えるか、を検証しました。
前処理として、慣行区、延命剤使用。一区生物活性水五〇〇倍使用。二区水道水使用の三区を設け二四時間吸水させ生菌数を調べました。結果は、慣行区が吸水率が良く、生菌数が一番少なく、花持ちも良い結果となりました。他では生菌数は測定不能な値です。
後処理では、全区で前処理の段階で延命剤を使用し、後処理時、慣行区は生物活性水一〇〇倍。一区で生物活性水二〇〇倍。二区で生物活性水五〇〇倍。三区で生物活性水一〇〇〇倍と全四区を設け、吸水量、生菌数を調査しました。結果は二区の花卉が花落ち、痛み等の減少が一番遅く見ることが出来ました。吸水量、生菌数に関しては全区で違いは見られませんでした。
痛みなどは菌による導管のつまり、空気中のエチレンによる痛みなどが挙げられますが、今回は生菌数が増えてしまい、実験として結果が得づらいことになってしまいました。次回の実験に繋げられるものになったと思います。
④野菜「小松菜栽培における
生物活性水と堆肥の使用実験」
茨城BM自然塾 市毛 祐司
市毛農園は今年から経営を始め、露地栽培が二五アール、ハウスが六棟で作付しています。土づくりに清水さんの堆肥を使用し、太陽熱養生処理を行いました。
今回の実験目的は収穫量の増大、収穫日数の短縮、品質の向上を上げました。この目的を達成するために生物活性水と堆肥を使い、堆肥の有無による変化、生物活性水の濃度による違いを調べました。
実験圃場は全六区、堆肥なしで一区、生物活性水使用原液使用。二区、生物活性水二〇〇倍使用。三区、生物活性水なし。それから堆肥ありで四区、生物活性水原液使用。五区、生物活性水二〇〇倍使用。六区、生物活性水なしの全六区画です。比較項目は、発芽率、生育度合い、重量、硝酸態窒素濃度、・糖度・根はりを比較しました。
仮説として、堆肥と生物活性水を使用する事によって、見た目、食味、生産性等が向上するのではないかと考えました。
結果は、発芽率が悪く、その後の重量は測れませんでした。また、生育度合いはどの実験区でも差異はみられませんでした。食味として、硝酸態窒素濃度の一番低い区は堆肥あり、生物活性水なしの区で、ビタミンCは堆肥あり、生物活性水ありの区が一番高くなりました。糖度はどの圃場も高い傾向がみられました。
今回の実験では試験圃場が狭く、間隔も狭かったと感じました。次に実験をする時には計測しやすいプランターなどで行いたいと思います。
⑤果樹「ぶどう(デラウェア)の
ジベレリン処理の実験」
米沢牧場グループ 森谷 安兵衛
私の経営は水稲、一・七ヘクタール。果樹が一・五ヘクタールの複合経営で行っています。また、私の家は代々猟師をやっていて、山菜や、きのこ、くま等の猟を行ってきました。
今回、地域の自然と共生し地域の資源を使い、資源の循環、低コスト、また、高品質を目指し実験を行いました。内容はジベレリン処理の省力化と薬剤の低減の実験を行いました。実施品種はデラウェアで、生物活性水で希釈したジベレリンに浸漬することで、通常二回のジベレリン処理を行うところを、一回で処理できないかを今回は調査しました。圃場は通常区(ジベレリン処理二回)、対象区(通常ジベレリン処理一回)、実験区(BMジベレリン処理一回)の三区にわけ、最終的に製品の粒はり、糖度を比べました。
結果は三区全体的に差異は見られませんでした。差異が見られないので実験として成功したのかと思いましたが、ジベレリン処理一回とBMジベレリン処理一回でも差異がないので、生物活性水の効果があったとはいえませんでした。
今後は気候や仕立て方によって糖度が変わるので粒はりに注目したデータをとって行きたいと思います。
⑥畜産「微細藻類バイオマス培養用
生物活性水の生産」
やまなし自然塾 向山 洋平
私は「微細藻類バイオマス培養用生物活性水の生産」についての実験をしました。黒富士農場では微細藻類を培養して鶏の飼料に添加しています。そのため、微細藻類を培養するのに最適な生物活性水の環境を調べました。
実験材料に、黒富士農場のBM堆肥を使い精製した生物活性水を培養液として、クロレラの培養を行い、微細藻類に対する堆肥の濃度の影響を調べました。一〇〇Lタンクを二つ用意し、堆肥を段階的に投入していき、その時のECやpH、亜硝酸態窒素、生育速度等をその都度計測しました。一か月培養後、三tタンクに移し、沢水で満水にし、さらに一週間以上曝気してから、クロレラの培養を行いました。
計測結果は、亜硝酸は投入時には高い値を示すが、三tタンク投入時には殆ど計測できない値となりました。ECは堆肥投入時は高くなりますが段階的に下がって行き、pHは投入時は弱アルカリ性ですが次第に中性に近くなっていくのを計測する事が出来ました。
結果は、堆肥投入量が四L〜六Lの濃度が最もいいスコアになり、微細藻類の培養に適していることが分かりました。今後はこの範囲の濃度をより詳しく調べることで効率のよい藻類バイオマス生産が期待できると思いました。また、この研究を継続し技術の向上などを目指したいと思います。
山梨大学大学院 医学工学総合教育部
生命環境学部 教授 御園生 拓
「生物活性水の成分および
微細藻類培養培地としての評価」
生物活性水を科学するということで去年からやってきました。今年は成分分析を詰めて、微細藻類培養培地への評価をしました。そして、畜産廃棄物などの再利用をキーワードにし、生物活性水を使い循環システムを作ることをメインテーマにしました。
そこで全国、海外の生物活性水がどのような効果を藻類バイオマスに及ぼすかを調べました。生物活性水の原料、原水は産地によって様々で色々な組み合わせがあります。今回は集めた生物活性水の成分を調べました。
結果は、成分の数値は規則性がなくばらついてるものが多いです。今回私が調べた生物活性水は非常にばらつきがあり、これはBMW技術協会がいっている通り、その地域にあった使い方で使うというのが大きいのではと思います。よって原料、原水による何かしらの傾向は見られませんでした。
次に、その生物活性水を使い微細藻類を培養しました。培養具合を見ますと、どこの産地の生物活性水は増殖して、あるいは増えずに横ばいなのか、ということが見えてきます。これを調べた成分と比較しますと、ナトリウム濃度が一つのファクターとして効いているのではないかということ、カリウムや硝酸以外にも藻類の生長に関与していることも見えてきました。これからはこの様に、どの成分がクロレラの培養にどの様に関与しているかをもっと詰めていきたいと思います。
「生物活性水を科学する・
有機果樹栽培の実験について」
もう一つ、果樹に対して付加価値を付けると言うことで、大学の圃場で有機果樹栽培の実験も行っています。鶏糞堆肥をBM技術で処理し散布、それと藻類バイオマスの施肥を行います。完全有機の栽培の桃とブドウを定植から行い、実験しました。これらの実験と同時にコンパニオンプランツの検証もしました。
一年目は、対照区と比べると実験区の方が成長度合いがいい気はします。しかし優位差があるといえる数字ではありませんでした。枝の長さも長い気はしますが、同じく優位差があるとはいえませんでした。また、コンパニオンプランツの作物にはハーブ類を使用し、このおかげなのか、病害虫の被害は見られませんでした。
去年のデータは、一年目と同様成長度合い、枝の長さ、桃とブドウともに優位差がある気はしますが、そこまでの数値ではありませんでした。ただ、コンパニオンプランツの効果があるのか二年目も病害虫の被害がありませんでした。
そして、今年になって果実が取れたので果実の評価も入れました。桃の果実を対照区と比べると、重さについて九五%の確率で優位があると言える結果が得られました。しかし、摘粒によって重さが変わるので、それにより影響を受けないであろう糖度でも比較しました。糖度はもっと凄くて、九九%の確率で優位がある。甘いと言える結果になりました。コンパニオンプランツの方は三年目にして病害虫の被害が見られましたが、樹勢にそれほど影響がない程度には見受けられました。それから、ブドウは、一〇粒で重さ糖度を比較した結果、こちらも優位差があるといえる結果になりました。当然実験区の方が甘いということです。
来年にはやはり、土壌成分も調べることにしています。そこで生物活性水や藻類バイオマスがそこでどの様に効いてるのかを見れるのではと思います。それと、光合成活性と、できれば、抗酸化活性も測りたいと思います。コンパニオンプランツの効果はやはり定量化しなければ見えてこないので、害虫の専門家の方と病害虫の定量化を進めていければと思っています。
(報告:BMW技術協会事務局 永合 耀)
ファーマーズ・クラブ雪月花 加藤 学
この全国交流会の実行委員会の立ち上げにともないまして、道内で活躍されているBMW技術協会の会員の方々との初めての出会いがありました。
交流会では、一年ぶりの再会に話が弾み、心までもが弾む局面もありました。その出会いが、人との関わりがつくり上げるモノこそBMW技術の本来の姿だと信じて止みません。
北海道での初めての開催となりました今回の全国交流会。この時期、例年であれば雪がちらついていても不思議ではない北海道。穏やかな冬の始まりに少し物足りなさを感じつつの開催でした。
根釧みどりの会代表の石澤実行委員長の開催の挨拶から始まり、伊藤理事長のBMW技術に関する基調報告。基調講演では、岡山大学地球物資科学研究センターの奥地准教授。『北海道の岩石とミネラル、その起源と歴史の循環について』と題し、視察予定地で事前に行った調査結果を事細かに説明いただきました。
根釧みどりの会の三友さんの基調講演では、「持続可能な農業」についての明確な提示があり、すっかり会場中を虜にする術は『流石』の一言に尽きました。
懇親会では各産地の食材が生かされた料理が提供され、バリエーションの多さとおいしさでお皿を何枚も交換していただきました。さらには余興の「よさこい」の踊りが舞台に花を添え楽しい時間を過ごすことが出来ました。
二日目の実験報告は、様々な分野での報告をいただきました。なかでも「暮らしの中のBMW技術」ということで、実生活の中でも環境・健康に配慮した「持続可能な社会」を実現する取り組みが紹介されとても印象的でした。
交流会閉会後、オプションである視察では時間の許された方々限定ではありましたが、A・Bコースそれぞれにバスで移動し、車窓から見える風景の広大さに参加された方々は驚かれていました。
私自身は二回目の全国交流会参加であり、実行委員会構成団体の一員として、参加者の皆様への配慮不足など至らない点が多々ありましたことを深くお詫び申し上げます。
今回、全国各地でのBMW技術の様々な導入事例の発表を聞き、また懇親会等で多方面の方々と接する機会がありとてもよい刺激を受けました。
最後となりましたが、全国の皆様のご協力のおかげをもちまして無事に全国交流会を終えることが出来ました。この場をお借りしまして改めて感謝とお礼を申し上げます。次回、第二六回全国交流会は宮城県での開催となります。また皆様とお会い出来ますことを楽しみにしております。