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『「食品の裏側」-みんな大好きな食品添加物―』

安部 司 著(東洋経済新報社) 
評者  BM技術協会 常任理事 山本 伸司

安部司さんの講演会の波紋
 実は、パルシステム連合会で安部司さんの講演会を企画する商品企画部に対して、品質保証部が噛み付いた。安部さんは、「たんぱく加水分解物」を問題にしている。しかし、パルシステムは化学調味料こそ使っていないが、たんぱく加水分解物を使用しているのだから困ることになると。確かにそうだった。
 しかし、講演会は実施され大勢の組合員が参加した。大盛況だった。当然、たんぱく加水分解物の扱いについて、質問や意見が集中した。ところが、指摘されたように加工食品からこれを抜くのは簡単ではない。野菜も肉も原材料というのは、本来、味にバラツキが自然に有る。これが、実はクレームの原因にもなる。それだけではなく、多くの加工食品メーカーは、これを抜くと売れないと考えており、この排除は製品の買上げリスクも伴うのだ。パルシステムの独自のプライベートブランドから徐々に抜いているがまだ数点抜けないでいる。この講演会を受けて、たんぱく加水分解物の使用管理をすすめて改善に努力することとなった。
魔法の粉
 講演会の圧巻は、実演だ。白い粉を何種類も小さじで溶かし、あっという間にジュース、ラーメンスープを作ってみせる。そのたびに、驚きの声が上がる。
実は、以前ある香料会社を訪問して、驚いたのは有名食品メーカーと取引しており、匂いや味を合成していることだった。これがすごい。瞬く間にどんな匂いも味も作ってしまうのだ。食べ物というより化学薬品による合成。これを目の当たりに見ると、加工食品への素朴な信頼が音をたてて崩れる。なんだ、これはと恐ろしくなる。
七五%の人が添加物を支持している
 ところが、安部司さんはこうも指摘する。財団法人福岡都市科学研究所の調査による消費者アンケートを分析し①積極型②健康志向型③無関心型④分裂型の集計で、③と④の合計が七五・四%にも上ることを紹介している。七五%が安全性に無関心だということだと結論付け、逆の見方をすれば農薬や添加物を支持していることだという。
 「メーカー=加害者」VS「消費者=被害者」という図式は成り立たない。簡単便利、安さに引きづられる消費者もまた添加物蔓延の片棒をかついでいると言っていい。というのだ。
 添加物で蘇る漬物、くず肉が化ける特売ハム、安くて簡単な練り製品などなど。その裏側を見ること、台所に無いものの使用に疑問を抱くべきだと提言する。
どう行動するか
 食べることは命をいただくこと。簡単には食は手に入らない。育て、料理し、片付けることを推奨している。
 そのうえで、小さな選択のひとつひとつが、日本の豊かな食文化と日本人の心を取り戻す大きな流れにつながるのだ。つくる人、売る人、食べる人―その三者に「つながり」を取り戻したい。それが切なる願いですという。
 一見、食品添加物をセンセーショナルに取上げる本のように見えるが、実に真面目な主張の本だと思う。
 そして本来、真の贅沢とは、農を営み、食を育て、頑健な身体を育てることだと思う。残念ながら多くの人たちがそうした暮らしから遠ざけられている。今、こうした暮らしのあり方に疑問が呈され、こうした主張の著作に多くの支持が集まってきている。ここに、本物の農と食、暮らしを提案、実践するBM技術協会の果たすべき役割が見えてくる。

Author 事務局: 2008年06月01日 15:24

 
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