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『解抗免力』

健康を手に入れて放射線リスクを減らす知識と習慣61
土井 里紗 著 (講談社)

評者:岡田哲郎(NPO支援センターちば・理事)


 昨年三月一一日、マグニチュード九・〇という大地震が東日本を襲い、東北地方を中心に、地震と大津波で死者・行方不明者あわせて約二万人という未曾有の大災害が発生した。さらに追い討ちをかけたのが福島第一原子力発電所の事故だ。いろいろな情報が飛交い、事故の本当の状況・影響は不明のことが多く不安を掻き立てられている。外部電源が失われて水素爆発が起こり、格納容器も破損し燃料棒が溶け落ちてメルトダウンからメルトスルーに至り、核燃料が原子炉の外にまで漏れ出し、放射性物質は福島県だけにとどまらず、はるか二〇〇km離れた千葉県内や東京でも、放射線量が局地的に高い「ホットスポット」がいくつも観測された。東日本は、ほぼ福島第一原発由来の放射性物質を浴びたと見られ、残念ながら現在の日本で無防備に暮らしながら健康を保つことは難しい状況になったと見られる。
 長らく広島で被爆した多数の方たちを診てきた内科医の肥田舜太郎先生は、最近の著書「内部被曝(扶桑社新書)」の中で、今回の事故後の報告として、下痢、口内炎、のどの腫れなどの初期の被曝症状が、敏感な子供たちに現れている状況から、今後、広島・長崎で直接原子爆弾を浴びていない被爆者に現れた「原爆ぶらぶら病」の発症も現れるかも知れないとしている。さらに内部被曝は、「低線量被曝」ともいわれ、その被害はガンや遺伝的影響も有ると肥田先生は指摘している。しかし、内部被爆が原因で起こるという因果関係は、医学会は認めてない。
 さて、本書の著者、内科医の土井里紗先生も、福島第一原発の事故により環境拡散した放射性物質は、土壌、大気、水など私たちを育む生命の源を汚染した。福島県だけの問題でなく、何百kmという範囲で汚染が広がり、さらに、放射性物質を含む食品や焼却灰や瓦礫、肥料などが全国的に流通し、もう日本中どこに住んでいても、放射性物質と無縁でいられないのが現状であると指摘している。
 これまでの「自然界の放射能」に加えて、原発から出た「人工の放射能」とも向かい合わなければならなくなり、特に放射能の影響を受けやすい子どもたちは、汚染の少ない場所に避難させたり、安全な食べ物を確保するなど、これからは「放射能に負けない生活スタイル」の追求がより必要となった。低線量の被曝であれば問題ないとする専門家に反論し、「放射能に負けない体づくり」について、「解抗免力――健康を手に入れて放射線リスクを減らす知識と習慣61」の提言をしている。
 この「解抗免力」とは何のことなのか。著者によると、「解毒力」「抗酸化力」「免疫力」のことで、放射線によるがん化の防護においては、放射性物質をなるべく取り込まないことが大前提で、やむなく体に入った放射性物質をいち早く排泄するために、まず「解毒力」が必要で、排泄しきれないで体に残ってしまった場合、活性酸素を消去する「抗酸化力」と「免疫力」が細胞を守る働きをするので、この三つの力すべてを高めることが不可欠であると提言している。
 著書の内容は、序章として放射線による内部被曝(低線量放射線被曝)による人体被害と活性酸素のメカニズム、第一章は、解抗免力の機能を高めるミネラル、食物繊維、酵素、乳酸菌などの働きと効果、第二章解抗免力をアップさせる食生活の仕方や食素材、第三章は、解抗免力に効くサプリメントの種類と利用の仕方、第四章は、生活習慣で解抗免力を高める取り組みなど61の提言がされている。そして、この放射線リスクを減らす「解抗免力」を高める習慣は、すべての健康に通じる習慣であるといっている。


*土井里紗先生の講演が、六月二三日に、千葉BM技術協会・生活クラブ生活協同組合・生活協同組合パルシステム千葉主催による「くらしと放射能を考えるフォーラム」にて、行われます。詳細は6ページをごらんください。

Author 事務局: 2012年06月01日 09:28

 
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