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2003年11月13日

■GM農場規模(実験栽培)評定・FSE (Farm Scale Evaluation)を検証する

■GM農場規模(実験栽培)評定・FSE (Farm Scale Evaluation)を検証する

 世界最大規模のGM実験栽培の結果が出て、世界中でGM農業の未来について震動が起きている。FSEの結果は菜種とテンサイで生物多様性に有害であると言う結果がでたが、GMメイズの「好結果」も報告された。これをGM承認の利点としようとする動きがでている。FSEの正しい位置づけが探られている。

GMメイズの「皮肉で不正直な」科学

 英国の農場規模評定(FSE)のメイズ/トウモロコシのトライアルは、「欺瞞的で」、「無価値である」、また「時間の完全な浪費」であるという、非難の攻撃を一斉に浴びている。ロバート・ビントとリム・リー・チンが調査報告する。農場規模(栽培実験)評定・FSEは、GM除草剤耐性作物と従来の作物で管理する場合の農地の生物多様性へのインパクトを比較したものである。3回の春季にまかれた複数の作物が検査された…テンサイ、菜種、トウモロコシであった。テンサイと菜種の場合は、農地の生物多様性への明らかな否定的なインパクトが発見された。(参照「GM作物は野生生物を傷つける」www.i-sis.org.uk)。しかし、GM除草剤耐性トウモロコシは、肯定的な効果があるといわれて、この主張が、メディアによって広く取り上げられた。

 しかしGMトウモロコシトライアルが糾問されている実験栽培での方法を分析したら、体系的な偏向がが明らかにされてきた―GM作物への環境のインパクトを少なく見積もる傍らで、未来の非GM栽培のありそうな環境インパクトを過大評価しているのである。GM作物の生産高を測定することをしなかった事で、GMの栽培方法が実行可能であったと確認することが不可能になっている。さらに、GM作物のための公表された生産高の数字は、違う除草剤を使った栽培から引き出されていたもので、さらなる欺瞞を生んでいる。

GM作物の環境への害は少なく見積もられている

農場規模実験栽培の評定で使われたGMトウモロコシは、Chardon LL (Liberty Link)と呼ばれ、Aventis社(Bayer―CropScience)により開発されて、その除草剤リバティ(グルフォシネイト・アンモニウム)に耐性があるように設計されている。従って、農場規模実験栽培評定のGMトウモロコシ除草剤による管理体制は、リバティ除草剤を使っていた。これは、二分されている非GM実験フィールドで使われていたものよりずっと力が弱い除草剤である(後を参照)。

 しかし、研究と農民の経験によれば、GMトウモロコシは、リバティ除草剤が強い攻撃的な除草剤と混ぜられない限り、無理をせずには、栽培されない事を示している。ブレント・ビーンとマット・ ローランドによる、テキサス農業拡大事業部のリポート、「リバティ・リンクトウモロコシ雑草コントロール 1996~1999」は、以下の結論をだしている。一回だけのリバティ除草剤使用だけでは、季節全体にわたる雑草コントロールは信頼できるものではなく、アトラジン剤の付加によって雑草コントロールが大いに改善された。同様に、ベルジェニなどによる1998年の論文はこう結論をだしている。ハンガリーでは、「現場実験の結果は、グルフォシネイトを使う雑草管理戦略は、複数回の使用、残りへの除草剤、またはメカニカルなコントロールを含む必要がある」。

 リバティ・リンクGMトウモロコシを育てている米国の農夫の内で、現在75%-90%がリバティATZ(より強力で、環境に有害なリバティとアトラジン剤のタンク混合液)を使う必要がでている。適正な雑草コントロールをして、生産高を維持するためには、普通のリバティでは効かないのである。Aventis/ Bayer社は、リバティ・リンクトウモロコシの使用のために米国で、リバティATZをマーケットに出している。これは、製品データシートに示されるているように2001年3月12日以来行なわれている。

 「英国殺虫剤行動ネットワーク」によると、英国のトウモロコシ農夫は、近年アトラジン剤をどんどん増量させて使っている。もし英国の農夫がGMトウモロコシを育てるならば、彼らが、米国の農夫と同じように混合農薬を望むようになっていくだろう。それは、アトラジン剤との混合液でないにしろ、他の強力な除草剤との混合液剤になっていくだろう。

 さらに、グルフォシネイトに耐性がある雑草の広がりは、数年間GMトウモロコシが栽培されている地域では、リバティATZの使用がほとんど不可欠になるので、潜在的な問題になるだろう。米国の研究者達は、高いグルフォシネイト(リバティ)使用の地域において、ライグラス、goosegrass、馬の尾、waterhempの中に、遺伝性のグルフォシネイト耐性の1996年以来の出現を記録している。雑草へのリバティ耐性について英国での研究がないので、これは、英国においても起りそうな問題であると予想しなければならない。もし英国でリバティATZか、リバティを基剤にした除草剤混合液の使用がライセンス化されるならば、それは、生物多様性へFSEが示唆するよりもずっと際立った被害がでるだろう。

 農場規模実験栽培評定のGMトウモロコシへ、リバティATZ、またはリバティと別の除草剤の混合剤ではなく、単一のリバティだけを使用するという決定は、商業用栽培の場合より、GMフィールドで多くの雑草と野生生物がでる事を保証する事になる。そして商業的に実行可能な生産高が得られることにはなりそうではない。それは、さらにGMトウモロコシ畑では、どんどん実状からずれていく除草剤管理体制に服従させている事も意味している。

 この欠陥は、「雑草は反撃する」というBBC のNewsnightのプログラムで、早くも2002年6月25日に、大きく取り上げられた。次いでは、タイムズ紙、農民ガーディアン紙でも取り上げられた。だが、FSEを監督している「科学運営委員会(SSC)」によっては、これを矯正する、またはせめてこの問題を議論する行動は何も取られなかったようだ。さらに、Aventis/Bayer社は、リバティは単独では、効果が無い事を知っていたにちがいない。同社は、他の国では、リバティATZをそのGMトウモロコシと一緒に使用するように督促していたからだ。

 続いて、ブライアン・ジョンソン、政府助言団体「イギリス自然」の生物工学アドバイザー、は、こう述べている。「皮肉な言い方をすれば、Aventis社は、多くの雑草が農場規模評定ではLL[リバティリンク]作物で生き残る事を希望をして、政府にGA[グルフォシネイト・アンモニウム]だけがこれらの作物に使われると言ったのです。もしそうなれば、これが正しいかはわからないが、同社は、GM作物は環境には良いと主張することができるのだ!同社は次に、LL作物のマーケティングへの同意を得ることができる。それは、自分の会社の為だけで、次には、殺虫剤の推奨をATZ-タイプのタンク混合物へ変更させるのです。」

非GM作物の環境への害は過大評定されている。

 FSEでの非GMコントロールされた作物は、販売用、または彼ら自身の酪農雌牛への飼料のために商業的に栽培された。圧倒的大多数の場合に、アトラジン剤、特に有毒で持続性がある除草剤、が従来のトウモロコシ畑地において使われた。しかし、アトラジン剤は、その環境へのインパクトのため、現在はEUで禁止される予定である。これは数年来予期されてきた決定である。それは、すでに、オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデンでは禁止されている。この事は、トウモロコシトライアルの妥当性を破壊する。もう、それらが、非GM作物が育てられている真の状況を反映していないからだ。アトラジン剤に取って換わる薬剤は、環境への有害さは少なくなりそうである。

 従って非GM作物へのアトラジン剤の使用は、GM作物が相対的にやさしいという感じを、間違って与えている。前環境大臣で、トライアルを委託した、マイケル・ミーチャは、こう述べている:『アトラジン剤の使用禁止がでるので、もうそのトライアルは、GMと従来のトウモロコシで使われた除草剤では真の比較になってなく、妥当性がない事を意味している。私には、どうして現在の政府がGM作物を、責任を持って、許可できるかが分らない。』

 GM作物の生産高は測定されていなく、商業的には成り立たないかもしれない。GM作物で使われた除草剤体制の適切さやその他の点は、収穫量が測定されなかったので、評価ができない。FSEは、建前では、GM作物での予期される未来の英国での商業的な栽培実施を再現するためにデザインされた。だが、FARM、独立農民組合、は、こう論じている。トウモロコシトライアルは、生産高については何も注意が払われなかったので、通常の商業の実際を反映していない。さらに、経営をしている農夫が雑草コントロールのレベルに、または出来てきた作物の澱粉や乾物生産高に、満足したかどうか、を、知る方法がない。

 FSEが研究した生物多様性の測定は、複雑で、時間がかかる仕事である。しかし、生産高の測定―作物または穂軸の重さを測る―は簡単に速くできる事だが、これらの550万ポンドのトライアルにおいては試みる事さえされなかった。トライアルを引き受けた農夫は、証拠は何も出さずに、作物の成功を「評価する」ように依頼された。

 FSEの独立した観察者達は、GMトウモロコシ畑地での低い生産高といっぱいの雑草を報告している。これは、GM作物は、野生生物への悪い効果を制限するために、そして商業的な生産高は最大にしないように操作されたという疑惑を起こしている。従って、この結果は農民達には無関係である。彼等はそのような生産高への犠牲を受け入れないからだ。生産高の計測を実行しなかった事は、そこで選ばれた除草剤体制の商業的な不成立を隠蔽するため故意な試みがなされたという疑惑をさらに増大させる。

 GM作物の報告された生産高は、実験とは違う除草剤体制に基づいたものである。Chardon LLのための生産高と乾燥物の主要な計測数字は、非GM変種と共通して、アトラジン剤を使って栽培された「全国種子リストトライアル」からきている。しかし、これらの数字は、Chardon LLがリバティ剤と一緒の使用のために設計されたので、関連性がなく、確かに誤解をうむほどに高い。GMトウモロコシトライアルのほとんどがリバティを一回だけの散布で処理された。その割合は、平均で、1ヘクタールあたりちょうど3.5リットルのグルフォシネイトを使い、雑草が茂るようにされていた。他方1ヘクタールあたり8リットルのグルフォシネイトの最大使用量が、有効なトライアルでは、雑草を効率的に殺すために使用されていた。

GMトウモロコシへ青信号はダメ。

 ジョン・シェレル、FARMの設立メンバー、南西部の酪農業者はこう言った:「これらのトライアルは、働いている農夫には完全に無益である。今は禁止されている除草剤アトラジン剤をつかっているので無効であるだけではなく、実際の商業条件のもとで、これらの作物がどう機能するかという証拠も全然提供していない。政府が、農民が必要な情報を提供せずにこれらの作物を農民に栽培することを強制しようとする有様は驚異的である。

 「 GM無しキムル」は、FSEを監督したSSC、環境・食物・郷土省(DEFRA)、その科学アドバイザー、環境放出諮問委員会、に対して、GMトウモロコシ実験栽培で科学的な詐欺をしているといって非難している。GM無しキムルの見解では、SSCは、トウモロコシトライアルが商業的な管理体制を再現していないと気づくとすぐに、それらの取消しを推奨すべきであった。

 言うまでもなく、今度のトウモロコシトライアルは、有機や他の非GMトウモロコシ作物を脅かす花粉汚染、またはリバティ耐性雑草の出現率など他の重要な問題には評定をだしていない。これらの諸欠陥は、一緒になって、GMトウモロコシのFSEを、誤解を招く、価値がないものにしている。「GM無しキムル」のイアン・パントン、はこう述べている:『もし政府が、この皮相で、非正直な科学に基づいて、GMトウモロコシの商業化を認可すれば、それは、あくどい無責任と怠慢の行為になるだろう。』

参考資料

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Author:事務局 : 2003年11月13日 14:07