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2004年06月11日

■狂牛病に免疫がある牛の現実が近くなった

■狂牛病に免疫がある牛の現実が近くなった

 狂牛病に免疫を持つプリオンなしの雌牛を生み出す主要な進歩が米国と日本の企業の研究者によってなされた。彼等の主要な目的は、遺伝子組み替え牛を作りだし、そのミルクで薬剤を生産することである。しかし、これらの会社は、またBSE(牛のスポンジ化脳症)に抵抗力がある牛を作れば消費者が安心できるようになることを望んでいる。研究者達は、現在、スイッチが切られた雌牛のPrP遺伝子の両方のコピーを持っている細胞株種を創り出す難事業を達成した。このPrPたんぱく質は、変異したプリオンとの接触により伝染状態に切り換えられうる。

 このスイッチは、雌牛のBSE、人のvCJDのようなプリオンの病気を引き起こせる。これらの細胞ラインから生きている動物を作ることは、ドリー羊を作成した技術と同様なクローン技術を使用して、比較的複雑さのない作業であるだろう。これらの会社は、人に消費される運命になるプリオンなしの牛を生み出すつもりではないと言う。そうではなく、雌牛のミルクからとり出される薬剤について大衆の心配を緩和させたいと思っている。たんぱく質をミルクから取り出すために用いられるプロセスは、プリオン汚染を除去する事で既に知られているものである。

 消費者の選択
 日本のキリン醸造と研究を一緒にした米国バイオ企業の主任科学官、ジェームズ・ロブル、はこう述べている:「大衆の受け取りかたを考えると、さらなる恩恵は、動物が感染される可能性をその遺伝子を破壊して、打倒する事ではないかと、感じています。日本の消費者はBSEについ高い危惧を持っています。」何人かのエキスパートは、BSEを肉用の牛から取り除くために、プリオンなしの牛を作ることを提案した。しかし、消費者が、プリオンによって汚染される非常に低いチャンスよりも遺伝子組み替え牛肉を好むというのは明らかではない。今までのところ、世界全体で、vCJDの発病は約140ケースある。この人間への疫病が最終的にどんな範囲になるかはまだ不明である。

 さらに、プリオンなしの牛で肉用牛を置き換えるには、数十年が必要である。羊のドリーがクローン技術で生み出されたスコットランドのロスリン研究所のハリー・グリフィンは、「どういう規模の頭数であれそういう牛の群れを確保するのは極めて難しい。」と、述べている。もう一つの疑問は、PrPの両方のコピーを破壊する事がどんな効果を牛に及ぼすか、である。両方のコピーを欠いているマウスは正常であるようである。だが、一部の論争がある研究では、それらのマウスが睡眠パターンを破壊された事が示されている。

 低い生産性
 ヘマテック社とキリンの目的は、牛のミルクから人の抗体を獲れる雌牛を生み出すことである。これらは、ワクチンがない特定の伝染病に罹った人々を治療するのに使用されるだろう。2002年に、彼らは、人の抗体遺伝子を持っているミニ染色体を牛に加工した。しかし、その牛がまだそれ自身の遺伝子を持っていたので、人の抗体の生産性が低かった。彼等は、牛の抗体遺伝子の両方のコピーを除去した約150の雌牛の胚を現在何とか作りだしている。これらは2005年に誕生するだろう。また、人のバージョンを含んでいるものも一部は加工されている。両社は、高い生産性で人間の抗体を生み出すことを希望している。プリオンなしの細胞ラインは牛の抗体遺伝子の両コピーを欠いているが、ヘマテック社は、胚を生み出すために、これらをクローンで生み出す必要がある。PrP遺伝子の1つのコピーのスイッチが切られた羊は、ロスリン研究所で既に生み出されているけれども、生きている家畜で両方の遺伝子を切るのは、今まではずっと難しい事であることが判明している。

参考資料
Cows immune to BSE near reality
James Randerson
17:46 01 June 04
NewScientist.com news service

Author:事務局 : 2004年06月11日 11:14