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2004年12月27日

■鳥インフルエンザ:大災害が控えでまっている?

■鳥インフルエンザ:大災害が控えでまっている?

 この疫病は依然として主要には鳥の病気である。2004年1月以来で、まだ32人の人間しか殺していない事が分かっている。しかし、H5N1という鳥インフルエンザ菌株は2004年に、東アジアを席捲して数百万匹の家禽を殺していき、数量だけでは語りきれない暗雲が人間の健康の上に覆いかぶさっている。専門家達は、このウイルスが新しいインフルエンザの大疫病を生み出しかねない事を恐れている。潜在的には壊滅的な通常の規模を超えた公衆衛生の大惨事になるかもしれない。今年2004年ではアジアの人達は自分達の生きていく手段が破壊されていくのを見てきた。科学者達は、このウイルスについて次々と怖い発見をしてきた。さらに公衆保健衛生当局は地球全体でこの危険を深刻に考えはじめた。だがそれで分かって来たことは、この疫病が万が一明日にでも暴発すれば、哀れなほどに世界はその準備が十分にはできていないという事であった。

 2004年の早い段階では、一部の人達はこう思っていた:この病気の勃発は、2003年の後期に起きたのだが、感染した鳥や危険にさらされた鳥の大量処分だけで押さえ込める。この戦略は最初の知られているH5N1の勃発ではうまく行った。1997年での香港での抑制、さらに2003年の別の鳥インフルエンザ菌株H7N7がでたオランダでもうまく抑制できた、と、思われた。この希望は今消えてしまった。なぜならこのウイルスはあまりにも深くもぐりこんでいて、さらに感染地域が拡大しすぎていて、根絶する事が現実的な見込みに合わなくなってきている。研究者達はまたアヒルに類する鳥は、アジアでの小さな農場では、鶏と混りあう事が多いが、病気にならずに多量のウイルスを体内保留し、放出できる事を発見している。これは深刻な対抗処置が取り難い保菌場所が存在している事になる。

 H5N1が消えずに停滞するという事を悟った事によって、戦略面でのいくつかの変動がおきた。その一つは、予防接種を通じて家畜を保護するという考えを受容する事が増えている事である。伝統的には、動物健康のエキスパート達は、多くのウイルス病の場合と同じで、鳥インフルエンザを根絶する事を良しとしてきた。なぜなら、予防接種は、ウイルスがレーダー網をかいくぐって循環し続けて、新しい勃発を点火させる事がありうるからである。それはまた損出が高い輸出制限をもたらす場合が考えられるからである。しかし、予防接種は、いくつかの国でH5N1と戦うための武器庫に現在追加されてきた。

 人の健康については、H5N1が長期的に存在する事は、新しい疫病のリスクを科学的なそして政治的な課題に加える事になった。これは36年間これまでになかった現象である。誰にも免疫性がない、新しいインフルエンザ菌が、人の間で容易に複製される方法を発展させる時には怖い疫病が生じる。理論的には、これはどんな数の菌株の場合でも起こりうるが、H5N1は転移のすごいスケールだけでパンデミック(汎発疫病)の主要な候補になっている。この恐れに加えて、H5N1の異常に広範な保菌ホストの範囲がある。例えば、マウス、猫、虎を感染させる事も明らかにされてきた。さらにすでに出ている人間の犠牲者の高い死亡率があり、またタイでは人から人への感染の1つの明白なケースが出ている。

 誰にも、この疫病がどうなっていくか、その結末がどうなっていくのか、は、分からない。過去の経験からみてもどう対処すべきかをあまり教えてくれない。1957年と1968の汎発疫病は相対的には穏やかなものであった。他方、1918年から1919年の「スペインかぜ」の死亡者数は二千万人から一億人までだと推定されている。(当時の世界人口は19億未満であった。)

 世界保健機構は、諸国に対してこの問題にどう対処するか計画を作成することを要求している。それで、一部の国は、ほとんどは先進工業国であるが、そうしはじめた。しかし、この挑戦は巨大である。新しいワクチンを開発して、量産するには多くの月日がかかるが、ほとんどの国はその能力を持っていない。年間の人間用インフルエンザワクチンの生産体制すらもろいもので、英国のプラントでの不具合により今年米国向けの風邪ワクチンの供給が半減して、すぐさま品不足と混乱を引き起こしている。抗ウイルス薬剤は、当初の期間に橋を架けるのに役立つかもしれない。しかし、ほとんどの国は抗ウイルス薬剤を備蓄してはいない、多くの国にはそのオプションを持つ経済的な余裕もない。エキスパート達は、2004年が問題転換の軸の年、危険が増大して覚醒した年、であればよいのに、と言っている。時だけが世界が長い間まどろみすぎたのかどうかを示す事になるだろう。

マーティン・エンセリンク(Martin Enserink)
Science 2004-12-17

参照:
Science 2004-12-17
BREAKTHROUGH OF THE YEAR:
Areas to Watch in 2005

Author:事務局 : 2004年12月27日 15:32