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2005年03月16日

■遺伝子操作された森林の問題

■遺伝子操作された森林の問題

 GM森林の樹木、究極の脅威か? 

 遺伝子修正森林は遺伝子修正食品と同じ直接な健康への不安を引き起こしてはいない。だが実際には、GM食品より大きな脅威を生んでいる。なぜならわが地球の生存に欠かせない自然の森へ直接に衝撃を与えるからである。メイワン・ホウ博士とジョー・カミング教授が問題を分析する。

 GM森林の世界状況

 森林の殆どの遺伝子修正は、アグロバクテリウム社(Agrobacterium)が媒介したDNA転移によって行われている。しかしDNA塗布された粒子の投下、即ち「biolistic transformation」と言われるもの、も、また使われてきた。2003年末にリストにあがった205件の許可申請の内、米国起源が73.5%で、他のOECD加盟国(特に、ベルギー、カナダ、フランス、フィンランド、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、およびスウェーデン)の起源が23%で、その他の国(ブラジル、中国、チリ、南アフリカ、およびウルグアイ)の起源が3.5%になっている。これらの許可申請の80%を4つの特色が占めている:即ち、除草剤耐性(32%)、マーカー遺伝子(27%)、昆虫耐性(12%)、および木質修正(9%)、である。

 遺伝子操作された樹木の種類では、ポプラ、マツ、フウの木(モミジバフウ木)、およびユーカリノキが申請された樹木の85%を占めている。商業的な興味は、GM樹木開発の最初の10年間では低かったけれども、1990年代後期から利益への興味が着実に増大してきている。2003年末までには、提出された許可申請の45%は産業界から出されたものであった。その主流樹木は遺伝子操作ポプラであった。しかし、これまでの状況では、中国を除いては、GM樹木の商業化への協同推進はなかった。中国では、2002年に中国国家森林省行政局によって商業化が承認されて以来、100万本以上のGM樹木が「森林再生」イニシアチブで植え付けられてきた(参照論文「見失なわれたGM樹木」同シリーズ)。

 ウエアハウザー、シェル、およびモンサントを含むいくつかの会社がGM樹木研究に一時関係してきたが、それに経済的な魅力がなかったので、その後撤退していった。しかし、この動向を変える事が起きた。それは2003年12月の「気候変化に関する国連枠組関係国会議」の第九回大会で出た決議である。これは北半球の会社や政府が南部で「クリーンな開発メカニズム」のもとでGM樹木の大規模農場を設立する事を許可したものである。これはGM樹木を経済的に魅力あるようにさせるためにGM推進者達がまっていたもので、その後の推進力になったようだ。

 森林で何よりもまして重要な事

 森の樹木は長い生命を持って来たものである。樹木の根界のシステムは、広範で、土壌にある生物相の無数の生命体と相互に作用しあっている。その生物相は、森林生態系内の栄養分をリサイクルし、蓄え、保持することに決定的な働きを行っている。森の地上では、森の木は、シェルター、棲息、食物を、先住民、150万から200万種の昆虫、鳥、哺乳動物、植物、着生植物、菌類、バクテリアに、提供している。

  すべての人間は、清浄な水、生息地、食物、薬性植物を、何らかの形で、森林に依存している。さらにはレクリエーションや精神的な聖域として森林に依存している。わけても、森林、特に熱帯雨林、は、雨を作物にもたらす水の循環に必須なものである。そして、地球の温度を調整し、場所が熱すぎたり、または冷たすぎないようにする為にも森林は不可欠である。森林は二酸化炭素を吸収し、酸素を産みだす。その点では、森林は、生きている地球の「肺臓」である。(参照論文「ガイアになぜ雨林が必要なのか」Sis 20)GM木の大掛かりな植林で自然森林を失って行く事は、特に地球温暖化が速く進んでいる状況では、地球への生態的な破滅を孕んでいる。

 GM木は森林生態系にとって忌避されるべきもの

 GM木は、生物が多様な自然林の生態系にとっては、忌むべき大規模な単一類の植林をするようにデザインされている。産業用の大規模なGM養林についての地元の人々の呼び方が多くを語っている。「ユーカリノプタス」は「我侭木」である。なぜなら、このユーカリは大規模植林で多くの栄養分を土から取り去り、非常に多くの水を消費するので、近くの農民はその近くの畑地では米を育てることができないからである。チリのマプシェと呼ばれる先住民は、GM松の植林を「植えられた兵士」と呼ぶ、なぜなら緑の征服軍人の隊列が増大して行進しているようだからである。ブラジルでは、GM植林地は、「緑色の砂漠」と、呼ばれている。南アフリカでは綽名は「緑色の癌」である。

 世界の南半球を通じて、様々な組織とネットワークが、自分達の国土に産業用GM木を養殖する事に活動的な反対をしてきている。GM植林は産業用植林の問題と土着先住民の反対の両方を強める事になるだろう。世界雨林運動(The World Rainforest Movement (WRM)と地球の友国際( Friends of the Earth International (FoEI)が共同リポートを発表して、こう述べている:遺伝子修正によって、木を「改善する」と主張している科学者達は、実際には彼等の研究に出資している「ビジネスの収益性を高める」為に活動しているだけである。

 このレポートはさらにこう述べている:「けれども、生物学的パースペクティブ/展望からいえば、何も改良されたものはない。低い木質素を持たされたGM木が自然木よりよいとか悪いとか言える次元のものではない。それは明らかにより悪くなっている。GM木は構造的な強靭さが低いので風雨が激しい時に広い損害を受ける結果が出ている。除草剤耐性木は「改良」であると言えるのか?それは改良にはなっていない。なぜなら、それは広範な森林のGM木が立っている土壌を劣化させる除草剤を散布する事になり、それと同時に植物相に被害を与え、野生生物にインパクトを与えるからだ。花を付けない、果実が出ない、種子が取れない樹木が生き物達に有益であろうか。それは、無数の昆虫類に餌を提供しない、従って、昆虫類に生存を依存する鳥や他の生物に食物を提供しない。殺虫剤特性を持つ木は改良といえるのか?それは多くの種類の昆虫にとって危険を生むものであり、多様な昆虫自身はより大きい食物連鎖の一環である。

 GM木は国際会議に違反する

 WRMリポートはこう指摘している。GMO一般、また特にGM木は、「生物多様性協定(The Convention on Biological Diversity)」の明らかな違反である。この協定は、重大な損害を生物多様性に起こす恐れがあるGMOには「用心アプローチ」を取ることを世界の政府に義務づけている。GM木は、世界の森林を保護するため設定された「森林国連フォーラム(The United Nations Forum on Forests)」の精神にも違背している。あいにく、京都議定書の清浄開発メカニズムの枠組内にGM木を含める事は、気候変化協定が単一種木の植林の拡大をするだけでなく、よい炭素降下/シンクとして働くものとしてのGM植林を支持する事を意味する。WRMとFoEI国際の両団体は、全ての政府、特に「気候変化概括協定とその京都議定書への参与国に、GM木の放出を禁止するよう求めている。GM木禁止キャンペーンが、「フィンランド国民生物安全協会(The Finnish People’s Biosafety Association )と「エコ森林組合(The Union of Ecoforestry)」によって2004年1月に始められた。

 転移遺伝子汚染は必然的で不可避である

 森林にある樹木は空中に高く、長命であり、遠く広く運ばれる豊富な花粉と種子を生み出す。森林木はまた無性再生し、母植物から広範な距離を越えクローンを散布させる、従ってより一層の転移遺伝子の汚染を促進してしまう。GM木が昔からある土着の木を汚染する事はそれゆえ必然的で不可避である。

 木質素が低いGM木は森林と森林に依存する暮らしを破壊する

 木質素の木は風雨だけではなく、昆虫、菌類、バクテリアからの攻撃を受けやすい。(参照「低木質素GM木と飼料作物」Sis23)。土着してきた森林木に減少木質素の特質が拡大する事は、嵐や害虫の攻撃、苔類と細菌の病気に罹りやすくなる。

 疫害を及ぼす昆虫人口もまたその結果として増大するだろう。低い木質素にされたGM木の植林は製紙産業には役立つかもしれないが、他方それは、昔から自然林に依存していた地元の人達の生計を困難にして、移住を強制して、さらにそういった人達の一部は新しい森で耕作のため土地を切り開いていく事になる。大規模植林はしばしば原生森林の破壊の後に続いてくる。例えば、スマトラでは、広大な原生林が、パルプと製紙工場に資源供給するために伐採された。森林地帯が伐採されて裸にされてGMアカシア大規模植林にされてきている。

 成長が早いGM木を植林する事は、「少ない土地でより多くの木をつくっている」という主張は正しくなく、人に誤解を起こさせるものである。パルプ産業界のため多くの繊維を生み出すことは、高品質な装飾用熱帯硬質材木への建設業の需要を変えてはいない。その高級硬質材木は自然森林から取られているからだ。また材木への需要が森林伐採の唯一の原因ではない。道路建物、ダム、換金作物(ブラジルとアルゼンチンの大豆など)、蓄牛、採掘、石油採掘、も、土着森林の破壊を引き起こしている。さらにGM木の大規模植林は、自然森林破壊を抑制する事に何も寄与してはいない。急速成長GM木は、現在の植林産業よりずっと多量の水を消費し、すでに枯渇しつつある地下帯水層を水無しに変え、周辺の森林に被害を及ぼすだろう。

 南半球で生産されたパルプのほとんどは、北半球に輸出されている。国民一人当たりの紙消費量は米国が最大で、ドイツはその70%である。ベトナムは米国紙消費量の平均2%を消費している。だがこの紙消費量の差異にも関わらず、識字率は米国、ドイツ、ベトナムで、ほとんど同一である。紙の約40%は包装のために使われていて、米国新聞のスペースの60%は、宣伝に使われている。ストラエンソ( Stora Enso)は世界第二の紙、包装、木材製品の会社で、2004年には総販売額は124億ドルである。その社長、ユッカ・ハマラ氏、によると、紙需要が増大している主な要素は、新聞と雑誌に増える宣伝紙面である。そうであれば、森林と水に影響する紙消費量の増大は、人間の生存に必須な、また望ましいものとはいえない。

 速成GM木は気候変化を悪化させている

 GM植林が気候変化を元に戻せるという主張はまた虚偽である。日本の自動車メーカー、トヨタが、1993年に多くの炭素を吸収させるために遺伝子組替木の野外実験を始めた。あいにくな事だが、炭素吸収は増えたが、他方でそのため水の消費量が大増加した。GM植林は自然な森林の生態系ほど炭素隔離は効果的にはできない。生物多様性がある自然の森林生態系は有効な炭素を流せる仕組みを持っている。中央アメリカと南アメリカのネオ熱帯森林は、地上のバイオマス増大で、1ヘクタールあたり1年あたり最低1トンの炭素を隔離できると推定されている。さらに追加の炭素が土中で隔離されているだろう。これと対照的に、1ヘクタールの森林を破壊する事は、200トンの炭素を放出する事になる(参照「なぜガイアに雨林が必要なのか。SiS 23」。速成木質素減少GM林は、また、すぐに朽ちやすく、大気に二酸化炭素を戻しやすく、従って、状況を改善しないで、代わりに地球温暖化を悪化させている。

 研究者達は、1989年にオレゴン州で実験森林のエネルギー収支を査定するために、空中からのNASA熱赤外線マルチスペクトルスキャナを使用した。彼等は、伐採された森林区域が51.8Cの表面温度をしめし、50.7Cを記録した近くの採石場より温度が高い事に気付いた。成熟木があるベイマツGM植林地は摂氏29.9Cを記録したが、対照的に自然ベイマツ森林の再成長林は29.4度と低い温度を示した。他方24.7Cの最も低い温度は400年経っている自然林で見つけられた。自然林生態系の冷却効果は、地球温暖化を緩和するのに重要であるだけではなく、それは破綻なき持久力の重要なインジケータでもある。

 殺虫性GM木は生物多様性を破壊する

 殺虫性GM木が、多くの昆虫、標的害虫種と、非標的害虫種を殺せる事には疑いがない。だがそれも長くは続かない。なぜなら害虫が6年または7年以内に抵抗力を発展させるからだ。この昆虫の抵抗性の発展は中国河南農業省の科学者、リュー・シアウフェン(Liu Xiaofeng)の査定によるもので、彼は中国で植えられているGM綿に批判的である。(参照「世界中のGM綿の失策」SiS25)害虫が抵抗力をつけてくるとさらに多くの殺虫剤を使用しなければならなくなる。とくに新しい種類の害虫が出現してくるので、GM導入前よりも多くの殺虫剤を使用し、益虫を絶滅させる事につながっていく。

 生物多様性へのもっと大きな脅威は、自然林への殺虫形質の広がりである。実験室での給餌実験では以下の事が分かってきた。GM作物で作られたBt毒素が害虫を食べる益虫も損なうことができる事を示した。これは害虫自体が毒素により影響されない場合でも、益虫が死ぬ事がある。Bt毒素(Cry1A)の1つのクラスはチョウ、クサカゲロウ、鼠類に危害を与える事が分かった。Bt毒素の別のクラス(Cry3A)は、約28,600種を含んでいる甲虫類(かぶと虫、ゾウムシ、スタイロピッド(stylopids))に属する昆虫に被害を及ぼす事が分かった。Bt毒素は根から出て土壌に入り、土壌生物相へ潜在的に莫大なインパクトを与える事が知られている。昆虫人口が減少すれば、昆虫を食べる鳥と哺乳動物とに被害が広がって行く。

 除草剤耐性GM林は「緑の砂漠」を作っているGM木は、すべての他の植物を殺す広範囲除草剤に耐性を持つように作られている。さらに困った状況は、GM木は、人間を含むあらゆる動物種にも有害である。除草剤耐性GM木の植林地は、実際には「緑の砂漠」と言われるものであり、GM作物用農薬を散布する事は近隣の森林や作物への並行的な危害を回避できない。これは飲料水の汚染も引き起こしている。グリホサート剤は英国では最も頻繁におきている健康障害と中毒症状の主な原因になっている。身体機能の多くの障害例が、この農薬の通常使用による露出後に報告されてきている。それは自発性後期流産のリスクをほとんど二倍にして、この農薬ユーザーに誕生した子供の神経行動上の欠陥が高まっている。

 ラウンドアップ(モンサント社のグリホサート調剤農薬)は、人の癌と結び付く細胞分裂異常を引き起こす事が判明している。グリホサート剤は実験室のねずみに胎児骨格発達に遅滞を引き起こしている。グリホサート剤はステロイド類の合成を抑制し、哺乳動物、魚、カエルの遺伝子機能に毒性作用(genotoxic)を起こしている。グリホサート剤はミミズにとってはその毒性は壊滅的である。グルフォシネイトアンモニウムは、人間の神経、呼吸、胃腸、血液の中毒と出産欠陥とに結び付けられている。グルフォシネイトアンモニウムは、チョウや多くの益虫、ハマグリや牡蠣の幼虫、ミジンコ、ニジマスなどの淡水魚にとっても有毒である。それはまた、有益土壌バクテリアと菌類、特に、窒素固定菌類、に、有害である。

 健康への障害

 GM木の健康障害は他のGM作物のと共通性があるけれども、それらは誇張されるだろう。それらのうちの2つは特に言及する価値がある。アグロバクテリウムは、多くのGM木を作りだすベクトルシステムで使われているが、感染された植物に腫瘍を発生させる土壌細菌である。このアグロバクテリウムが動物と人の細胞に遺伝子を転移させる事ができる事が分かってきた。(参照「共通の植物ベクトルは遺伝子を人の細胞に注入する」http://www.i-sis.org.uk/Agrobacterium.php)。

 科学者達は以下の警告を発している。アグロバクテリウムは、作成された遺伝子転移植物から抜き出す事は極めて困難である、従って、意図しない水平遺伝子転移の運び役になる危険がある。転移汚染先はそのGM作物と接触する土壌細菌、また人間を含む全ての種になる。この危険がGM森林で特に大きくなるのは、樹林の地下土壌に深く広く広がる根界システムがあるからである。根圏の植物根システムは水平遺伝子転移のホットスポットである事が広く知られている。

 アグロバクテリウムが水平遺伝子転移を媒介する可能性、および抗生物質耐性マーカー遺伝子を病原菌に広げる結果になる危険;病気を起こす新しいバクテリアとウイルスを作る事;そして、人を含む動物に癌を発生させる危険は、ISPリポート11章に考察されている(www.indsp.org)。健康障害のもう一つの原因はBt毒素と他の転移遺伝子であり、それはGM木の花粉に乗って遠く広く拡散して事が分かっている。グリホサート剤耐性を与えている転移遺伝子だけでなく、転移遺伝子として使われる全てのBt毒素は、既知のアレルゲンに類似性を持っていることが発見されてきた。したがって、Bt毒素がアレルゲン自体であるという嫌疑が強まっている。

参照:
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Science Society Sustainability http://www.i-sis.org.uk
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Website/Mailing List
press-release@i-sis.org.uk ISIS Director
m.w.ho@i- sis.org.uk
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ISIS Press Release 28/02/05
GM Forest Trees ? The Ultimate Threat

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at http://www.i-sis.org.uk/GMFTTUT.php

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Author:事務局 : 2005年03月16日 16:19