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2005年08月26日

■ブラジルは米国をしのぐ超大型農業を推進している

■ブラジルは米国をしのぐ超大型農業を推進している
 ブラジルが農業大国として台頭してきたが、犠牲も大きい

 世界の食料支給の「かご」になろうとするブラジル国民の推進力は、サン・フェルナンド渓谷の半分以上になる面積で綿と大豆を栽培するカルロス・オーギュスタンのような農民にかかっている。オーギュスタン氏の巨大な農園は、コットンジン(綿繰り機)、300人の季節労働者のための宿舎、300万ドルに値する綿収穫機械の陣容を備えているが、そのような施設のコンプレックスはただ1つの目標でデザインされている:オーストラリアからアメリカに及ぶ競争相手よりも多くの産物を生産する事である。その戦略はうまくいっているようである。最近5年間で、オーギュスタンや他の大規模農場のオーナーは、ブラジルを農業超大国に変えてきた。今では、世界の多くの農産物の最大輸出国になっている。現在この南アメリカの大国は、ナイジェリアの製パン業者に砂糖を、香港のレストランに鶏肉を、ドイツの喫煙者のためにたばこを、日本のためにコーヒーを供給している。
 中国の急上昇している需要はブラジルの成長に大きく貢献してきた。中国のオレンジジュース輸入の60%以上は現在ブラジルから来ている。ブラジルはまた中国の大豆とたばこの三分の一も供給している。ブラジルは、昨年で農産物の276億ドルを輸出し、32億ドル相当の製品を輸入した。ブラジルの農業貿易収支黒字幅244億ドルは世界最高であり、対外債務を支払い、経済好調を続けるブラジルの努力に決定的な力を果たしている。サンパウロのアグリビジネスブラジル協会会長、カルロ・ロヴァテリ、は、「アグリビジネスはブラジルの生き残りがかかっている問題である」と言っている。輸出作物を栽培するため大農場を作るブラジルの焦点は、その代価なしには進められていない。多くの小さな農民達が廃業に押しやられている。そして一部のブラジル人達は、世界市場のため綿や菜種油などのような商品に集中しすぎていて、実際に地元の人々によって消費される食料が軽視されている、と、ヴィセンテ・プハル、社会組織連合のリーダー、は、危惧を述べている。
 農業のブームはまた環境的に敏感なアマゾン地域で森林伐採の多くを引き起こしている。政府の官吏は、森林業者、大農場経営者、農夫が、アマゾンの熱帯雨林の1万88平方マイルを2004年の8月まで12ヶ月間で「食い尽くした」事を認めている。その面積はマサチューセッツ州の面積に相当する。ブラジルの土地無し労働者運動(Brazil's Landless Workers Movement)の代表者、また小規模農業の提唱者であるホセ・タダオ、は、「彼等の野心で自然が破壊されている」と言った。グリーンピースのような環境保護グループは熱帯雨林への侵食拡張を阻止しようとしている。他の人達は、森林伐採はブラジルの農業を最終的には限定あるものに貶めてしまうと主張している。アマゾン環境研究所(The Amazon Institute of Environmental Studies)の研究コーディネーター、パウロ・モウティンホ、は、熱帯雨林の伐採は、結局、ブラジルの、ひいては地球の、気候を変えてしまい、降雨の減少、農業への水資源の欠乏を引き起こす、と、信じている。
 森林伐採の半分近くは、ブラジル農業の拡大中心地であるマト・グロッソ州で起きている。そこはオーギュスタンが農業をしている場所の北部にあたる。6月に、グリーンピースは、マト・グロッソ州知事のブレロ・マッジに、「ゴールデン・チェイン」賞を授与すると発表している。この「賞」は、アマゾン破壊に最も責任があると投票された者に与えられる賞である。マト・グロッソ州知事は、約50万エーカーの大豆、綿、トウモロコシ栽培をコントロールしている商社の所有者でもある。今年早く、ブレロ・マッジ知事の環境部長、が、政府高官と伐採業者との癒着関係を調査しているブラジル当局によって逮捕された。マッジ知事、世界最大の大豆生産者、は、大規模農業関連ビジネスを推進する国の政策を弁護している。マッジ知事は、外国ジャーナリストとの最近の会見でこう述べている:「マト・グロッソの小規模農地は経済的に生存する力がないのだ。大規模な農意所有にしか残存することができないのだ」ブラジルは、いつも、土地と水、農業の二つの鍵になる要素、に恵まれてきた。しかし、ブラジルが農業大国に変わってきたのには、いくつかの出来事が重なって起きている。それは1990年代の経済政策の変化から始まり、ほとんどの農業輸出を失敗させてきた税金を廃止した事が大きい、と、農業大臣のロベルト・ロドリゲスは言っている。
 農業用機械、種子、肥料への輸入税も切り捨てられた。現在農民達は1998年の20%に比べて14%の関税を支払っている。そして、1999年にブラジルの通貨が実質切り下げられた時、輸出市場は急上昇した。農業は昨年国内総生産の約31%を占めていた。サンパウロに在るシンクタンク「ICONE」のシニア研究員、マリオ・ジャレス、は、こう述べている:「ブラジル農業の成長理由を本当に説明できるものは、企業精神、よい科学、よい土地とよい天候へのアクセスである」ブラジルは、乾燥したサバンナ低木地帯を高生産農地に変換するために数百万ドルを研究に使っている。ブラジルは、米国とヨーロッパの農業補助金とオープン市場に挑むために、国際貿易機関(WTO)や他の国際貿易協定を援用している。WTOは、ブラジルが提訴した不服を受けて、2004年6月に、米国政府の綿生産農民への補助金が、過剰生産を促進して世界価格を歪めているという採決を下した。米国は3月にこのブラジルの提訴に敗北した。ブッシュ政権は、その農業政策をWTOへの裁定に応じるよう現在議会に働きかけを行っている。
そして、今年4月にはWHOは、欧州連合国家が違法助成金を与えられた砂糖を輸出して、世界市場で価格を押し下げている、というブラジル、タイ、オーストラリアの意見に、同意した。ブラジルの貿易担当官吏は、米国の大豆補助金に反対する同様な行動を考慮していると言った。南アメリカの諸国家は以前だと工業化を経済発展の主要なエンジンと考えていた、と、エコノミストのメイルソン・ダノブレガ、元大蔵大臣、は言った。しかし、今では、「もしオーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、を見れば、それらの国は、強い農業セクタを持つ経済大国であり、私達は同じ事をすることができる」、と、彼は言った。ブラジルには農業成長を許す豊かな資源がある。ダノブレガ氏は以下の予測をしている。陸地の広さでは世界5番目に大きい国であるブラジルは、農業に適した土地の三分の一しかまだ使っていない。そして、大規模農業こそここでの合言葉である。数百人の農民が広大な地域をコントロールしている。例えば、ロンドノポリス市長アディルトン・サチェッティの一族は、17万エーカー以上の土地で綿、大豆、トウモロコシを栽培している。米国と比較すれば、アイオワ州ペリーの大豆農夫、ロン・ヘック、は、大型栽培者の1人であるが、彼の農場全体は3600エーカーである。ヘック達の地域では栽培者のほとんどは、3000エーカー未満で栽培をしている。
 ロン・ヘック氏は電話インタビューでこう言った。「私達は多くの大豆を生産しているけれども、私達の誰もブラジルの栽培者のスケールにはかなわない」ブラジルでの一部の成功は米国の農民に影響を与えている。米国は8月18日にブラジルから来る濃縮オレンジジュースの価格に最高60%増の関税をかけた。フロリダの栽培業者が、ブラジルの会社は適正市場価格以下で濃縮ジュースを販売しているという苦情を申し立てた後にこの措置が取られた。米国綿栽培業者は、ブラジルのWTOでの勝訴で自分達への連邦農場補助金が打ち切られる事を心配している。一部の米国農夫がこう述べている:アメリカの大豆生産者がブラジル政府の低利貸付と産業サポートに苦情を言っていないのは、大豆への需要が、両国の生産量を吸収するのに十分な急成長をしているからだ。
 今のブームがブラジルの農業を変貌させている。一部のブラジルの家族が広大な農作地のコントロールを収得して、数千人の小作農民を締め付けて追い出している。農業労働者国民連合(The National Confederation for Agricultural Workers)のスポークスマン、ルイス・ヴィセンテファコ、は、こう述べている:約430万人のブラジル農民は125エーカー以下の耕作地で農業をしている。小規模農民は、大豆、油、綿、砂糖の世界市場に関与するスケールには及ばない。そして、彼等は生き延びる事に精一杯で、大農場によって取り囲まれていて、土地を売ることを強いられるだろう。
 マト・グロッソ州のマッジ知事、大豆大生産者、は、小規模農民にはあまり未来がないと言う。もしブラジルが農民に補助金を出せば別だが、米国と欧州連合の農業補助金に対するブラジルの闘いを考えれば、それはありそうにない事である。ブラジルの大規模農業活動も、進んだインフラストラクチャー、クレジットへのアクセス、現代テクノロジーの有利さを持っている合衆国の生産者と競合する時には、障壁に直面している。キャノン・マイケルはカリフォルニアのロスバニョスの近くで6000エーカーの土地で綿を栽培している「ボールズ農業会社」の共同所有者であるが、こう述べている:「ブラジルでは改善がすすんではいる。けれども、私達の生産物はずっとよいので、品質で競争できる」 アグリビジネスブラジル協会(The Brazilian Assn. of Agribusiness)のロヴァテリ氏は、「悪いインフラストラクチャー」がブラジルの農業成長に制限をかける事があることに合意している。彼はこう言った:「私達が農作物を港に運ばなければならない時点で、問題が生じてくるのです」
 例えばトウモロコシを港に輸送するコストは、農産物価値の丁度25%を占めている。ブラジルは、約1億トンの農産物貯蔵能力を持っているが、それは、破損を減らし、価格変動での最有利条件を取る為に必要な収容能力には約4000万トン分が不足している、と、サンパウロ大学農業校の経済学者、ホセ・ヴィセンテ・セゼタ、は、述べた。カリフォルニアでは、ロサンゼルス港の進んだ港湾施設へ綿や他の農産品を一気に運べる多車線高速道路があるが、ブラジルでは、サントスとパラナグアの2つの主要港に到着するために、ブラジルの農産物は、でこぼこの、渋滞する道路で1200マイル以上も輸送されるのが普通である。アナリスト達は、ブラジルがその利益を護るためには、これらの問題を克服する事が必要であると言う。サンパウロシンクタンクのジャレスは、「実現されればその潜在力は巨大である」と言った。

■ブラジルは世界の主要作物を栽培している■

農産物はブラジルを世界的なキープレーヤーにしている

主要産物のブラジルによる生産比率

オレンジジュース:82% 大豆:38% 大豆粗挽粉:34% 砂糖:29% チキン:29% コーヒー:29% 大豆オイル:28% たばこ:23% 牛肉:20% 豚肉:16%

統計資料源:米国農務省、国連食糧農業機関、国際貿易協議研究所

資料:Brazil's Rise as Farming Giant Has a Price Tag
Los Angeles TimesWorld August 21
By Jerry Hirsch and Henry Chu, Times Staff Writers

Author:事務局 : 2005年08月26日 10:18