« ■ホンコンでイルカの不審死や漁獲被害が増大 | メイン | ■ブラジルで足口病/口蹄疫が再発している »

2005年10月07日

■EUに南米から安い予防接種肉が浸透

■EUに南米から安い予防接種肉が浸透しているが、
  消費者は南米の安い食品の生産状況と環境への負荷が知らされていない

英国牛肉農場の凋落の背景と責任

予防接種肉の浸透する中、牛肉産業は落ち目だがその近視眼的な態度で自業自得である

 伝統的な英国の農作物のすばらしさを推進する運動が賑やかだが、英国の牛肉産業は深刻な凋落のなかにある。国中で農民は、牛の群れを売り払って、大衆市場を、大食品会社チェインの意のままに任せている。大規模店は、その埋め合わせと価格を低く抑えるために南アメリカに顔を向けている。ブラジルからの輸入だけで、今年20パーセントの上昇があり、英国市場への牛肉供給国の中で3番目に大きい国になっている。牛肉の品質は低く、第三世界の基準下で育てられている。またその生産のため熱帯雨林が伐採で侵食されている。しかし、それは1つの魅力を持っている。安いのである。そして、凄まじいマーケットの競争下では究極の利点である。

 安い食物は多くの反対論を打ち負かせる。それには、輸入される病気の脅威さえ含んでいる。2001年の口蹄疫勃発の後には、家畜に予防接種した国から肉を買うことによって起こされる問題への強い警告が、全国農民組合から出されていた。同組合の会長、ベン・ジルは、予防接種した家畜は病気を感染させる潜在的な媒体になるかもしれない、と、警告を与えた。彼はこう述べていた:また英国の主婦は決してその肉を買わないだろう、と言った。予防接種は、英国、EU、世界で、牛の市場と貿易に直接影響するかもしれない。消費者組織が予防接種をした国からの産物を避けるリスクがあり、また2層になった食物市場が発展するだろう。予防接種する地域の農民を商業的な苦境に置くだろう。

 こういった反対があったので、トニー・ブレア首相は大量屠殺にかわる代案として予防接種するオプションを探究するのは無駄だと考えた。彼は口蹄疫(FMD)を根絶するためのキャンペーンを引き継いだ時に、羊と牛を抹殺処分しないで、予防接種するのは無駄だと判断した。予防接種した家畜が疫病を運ぶという証拠は何も示されなかった。だが、英国の農業と観光業へ膨大な犠牲を強いて、約600万頭の家畜が抹殺処分された。

 この措置への最終的な費用は一度も完全に確定されたことがない。「環境食物郷土省」が支出された総額を秘密にしようとしたというだけの事ではなかった。現在で1年になるが、カンバーランド地方の家畜処分した様々な契約業者に2千万ポンドを同省が支払う責任があるという法廷の裁定は秘密にされてきた。この裁定は先月暴露されたばかりである。いくつかの顕著な未定ケースがあり、全体的な決済はこれからだが、最終的な総経費は数十億ポンドに上がっている。

 この間、ブラジルとアルゼンチン、は、家畜は伝統的に定期的に予防接種されていて、ヨーロッパへの輸出を増大させてきた。これらの国の牛肉産業は、商業的に苦境におちいるどころか、繁栄している。それらの国のどの地域で家畜が接種処置をうけているのかはあまり明確ではない。英国の環境省は、牛肉が入国する地点で肉が完全に検査されていて、無FMDゾーンだけから輸入されている、と、強く主張している。しかし、コントロールは、最初その肉を輸入した国までに範囲が限られている。

 いったん輸入の荷物がEUの境界を抜けたら、それ以上のチェックなしで動き回ることができる;どれくらいの予防接種された量の肉がEUや英国に入ってきているかを示す信頼できる数字もなく、そして、南アメリカの牛肉がどういう条件下で生産されているのかについて英国の消費者に入手可能な情報はないままである。英国政府には、消費者にどのくらい予防接種が実施されているのか、どこでそれが実施されているのかを伝え、接種された家畜の肉には表示ラベルをつけ、消費者に真に安全であるかどうかを保証する義務があるのではないか。

 私は英国の牛肉産業へ疫病危機の対処を見てきたので同情心をほとんど持っていない。牛肉産業は2001年に予防接種の議論を撃退した時に市場を盾や防御に利用してきた。そして現在市場がその産業界に背を向けていれば、その責任は彼等自身にしかない。その農民達は、屠殺処分家畜の補償に過剰な支払いを受け取って、外国からの競争にたいする対策をほとんど取らなかった。もし彼等が残存したいのなら、政府、小売店、そして最終的には消費者一般大衆に、英国の牛を維持するのに恩恵があることを説得させなければならない。だが彼等はこう指摘するだろう。彼等は高級な肉を生産するだけでなく、その産業は環境に欠かせない部分である。牛がいなくては、田舎は空疎な原野である。

安い食物への長期的なコストについて起こされる深刻な議論がある。その議論に適切な対応がなければ、安い肉を生むために熱帯雨林は伐採され続けて、経路が明確でない輸入産物からくるリスクが増大するだろう。そして伝統的な英国食物の恩恵の掛け声がむなしく響く時がくるだろう。

THE SUNDAY TIMES

Author:事務局 : 2005年10月07日 10:44