« ■モンサント社の経営動向 | メイン | ■トルコに続きギリシャエーゲ海の島でインフルエンザ勃発が確認される »

2005年10月17日

■インフルエンザウイルス治療薬と薬品耐性の問題

■インフルエンザウイルス治療薬と薬品耐性の問題
 実験室からのH5N1ウイルステスト詳細報告

治療薬剤に抵抗力があるH5N1ウイルスを分離させる

多くのアジアの国でのH5N1鳥インフルエンザウイルスの執拗な蔓延、また人への致命的な感染を起こす能力は、グローバルなインフルエンザパンデミック/広域大悪疫を(注1)起こす深刻な不安を生んでいる。ここでは、私達は、薬剤のoseltamivir (2)に抵抗力があるベトナムの女子からのH5N1ウイルスの隔離を報告します。この薬剤は、ウイルス酵素ノイラミニダーゼの抑制剤であり、インフルエンザに対する保護と治療のために現在使われている。この薬剤で治療されている患者の間で、oseltamivir剤に抵抗力があるH5N1ウイルスがどのくらい蔓延しているのかを確定するより一層の検査が必要である。

H5N1インフルエンザウイルス、A/ハノイ/30408/2005、は、2005年2月27日に14歳のベトナム人女子(患者1) から分離された。彼女は、2005年2月24から27日までoseltamivir剤の予防服用( 1日一回75mg)を与えられて、さらに2月28日から7日間、治療服用(75mg1日2回)を与えられた。 oseltamivirの増大投与後にウイルスは見本から分離されなかった。この患者は回復し、2005年3月14日に退院した。

2005年2月27日に集められた標本から分離されたウイルスのポリメラーゼ連鎖反応による増幅後の直接遺伝子配列は、以下の事を示していた:ウイルス人口の一部は、そのノイラミニダーゼたんぱく質に於けるポジション274(H274Yと標示)でヒスチジン・チロシンへの置換をしていた。これは、oseltamivir剤に抵抗を与える変異である(3、4、5)。従って、私達は、「oseltamivir carboxylate」(6)(この薬剤のアクティブな形体)へのウイルスの感応をテストして、以下の発見をした。分離したものに於けるノイラミニダーゼ活動(IC50)の50パーセント抑制のために必要な投与は、90 nMであり、これは、oseltamivir敏感ウイルス(0.1□10 nM)(7)へのIC50を越えている。私達はそれからこのウイルスを「溶解斑洗浄」した。

結果で出てきた溶解斑の内から任意に取った10のウイルスクローンが、oseltamivirへのその反応に従って3グループに分類された:6はこの薬剤に非常に抵抗力があり(IC50 = 763 nM)、3は少し抵抗力があり(7.1から12.5nMでIC50)、1は非常に敏感であった(IIC50=0.6 nM)。非常に抵抗力があるウイルスはそのノイラミニダーゼのポジション274でチロシンを持っていて、他方わずかな抵抗を示したウイルスは、ポジション294でセリンを持っていた。

患者1は家禽とは何も直接的な接触を持っていなかったが、21歳の兄(患者2)の世話をしていた。他方この兄はH5N1ウイルス感染があり記録されていた。私達は、この兄のウイルスのノイラミニダーゼ遺伝子がこの女の子のウイルスのクローン7と同一である事、を、発見した。また兄のウイルスのhaemagglutinin遺伝子は、ポジション271のヌクレオチド変化を除いて、女の子のウイルスのクローン2と9と同じであった。これらの2人の患者の感染タイミングは、この女の子が家禽との知られている接触がない事とあいまって、このウイルスが兄から妹に感染させられたという可能性を示している。

私達は、高いoseltamivir抵抗力があるクローン(H274Y、クローン9)、およびフェレット(8)のoseltamivir-感応クローン(H274、クローン7)の成長を査定した。ウイルスの滴定濃度は、oseltamivir感応ウイルスに感染した動物でより高かった。Oseltamivirの治療は、薬感応ウイルスに感染した動物のウイルス滴定濃度を減少させたが、薬剤対抗ウイルスに感染した動物の場合はそうならなかった。しかし、このウイルスのクローンは、oseltamivirに非常に抵抗力があるものを含み、すべてが、zanamivir (9、10)(IC50 = 0.5□3.1 nM)、別のノイラミニダーゼ抑制剤、に敏感であった。フェレットにおいては、私達は以下の発見をした:zanamivir 治療は、oseltamivir感応ウイルスまたはoseltamivir-抵抗ウイルスに感染した動物のウイルス滴定濃度を減少させた。

私達は以下の調査をした:このウイルスがどのように「sialyl glycopolymers」の異なった形態に試験管内でバインドしたか。これはホストの細胞表面受容体(11)と同様なものである。私達は、ウイルスのクローンの二つ(クローン7と9)によるバインディングを、鳥インフルエンザウイルス(A/アヒル/モンゴル/301/2001)および別の人インフルエンザウイルスによるバインディング、と、比較した。私達は以下の発見をした:H5N1クローン両方が、2と3のリンク重合体、そして(不効率的に)2、6リンク重合体にバインドした。また、アヒル/モンゴル/301/2001ウイルスもまた、2、3重合体にバインドしたが、2、6重合体には全くバインドしなかった。カワサキ/1/2001ウイルスは、2、6リンク重合体には強くバインドしたが、2、3リンク重合体へは弱くリンクしただけであった。問題のH5N1ウイルスクローンの広いバインディング特性は、人のホストではある程度の適応性を反映しているのかもしれない。

私達の発見した事項は単一の患者から取ったウイルスに基づいているけれども、それらは、H5N1インフルエンザがパンデミックになった場合に、oseltamivirだけでなくzanamivir薬剤も備蓄することが有益であるかもしれない可能性を提起している。それらは、ノイラミニダーゼ抑制剤で治療された患者のH5N1分離媒体における薬剤抵抗の出現を監視する重要性も強く示している。

注参照:References
1. Enserink M. Science 2005; 309: 370�1.
2. Treanor JJ, et al. JAMA 2000; 283: 1016�24.
3. Gubareva LV, Kaiser L, Hayden FG. Lancet 2000; 355:827�35.
4. Gubareva LV, Kaiser L, Matrosovich MN, Soo-Hoo Y, HaydenFG. J Infect Dis 2001; 183: 523�31.
5. Zambon M, Hayden FG. Antiviral Res 2000; 47: 1�17.
6. Potier M, Mameli L, Belisle M, Dallaire L, Melancon SB.Anal Biochem 1979; 94: 287�96.
7. Hurt AC, Barr IG, Gunter H, Hampson AW. Antiviral Res2004; 62: 37�45.
8. Toms GLR, Bird RA, Kingsman SM, Sweet C, Smith H. Br JExp Pathol 1977; 57: 37�48.
9. Varghese JN, Laver WG, Colman PM. Nature 1983; 303:35�50.
10. Varghese JN, McKimm-Breschkin JL, Caldwell JB, Kortt AA,
Colman PM. Proteins 1992; 11: 49�56.
11. Shinya K, et al. J Virol 2005; 79: 9926�32.
©2001 International Society for Infectious Diseases

Author:事務局 : 2005年10月17日 14:06