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2006年09月04日

■米国農業の水資源枯渇と農業の未来

アラバマ州からはじまり、ダコタ、アリゾナまでに及ぶ旱魃は、農民の命の元、水の問題に焦点が集まっている。合衆国で消費される全淡水の80パーセントは、食物生産のために用いられている。しかし、何年も続く旱魃、増大する都市地域への優先配水、さらに最近では地球温暖化の危惧、が、水への不安を深めている。

特に、農民達の恐れは、米国の大平原が、長期水不足のため、小麦、牛肉、植物オイル、他の作物の世界的な生産地としての限界に直面しているのではないかという事である。水資源のエキスパート達は、水不足は米国だけではなく世界の農民にとって大きなジレンマになっていくだろうと述べている。

CHICAGO(ロイター発)米国は1930年代に黄塵地帯で苦しんだ時以来、最も熱い夏の灼熱のさなかにある。アラバマ州からはじまり、ダコタからアリゾナまでに及ぶ干ばつは、農民の命の元、水の問題に焦点が集まっている。合衆国で消費されるすべての淡水の80パーセントは、食物を生産するために用いられている。しかし、何年も続く旱魃、増大する都市地域への優先配水、さらに最近では地球温暖化の危惧、が、水への不安を深めている。特に、農民達の恐れは、米国の大平原が、長期の水不足のため、小麦、牛肉、植物オイル、他の作物の世界的な生産地としての限界に直面しているのではないかという事である。 エド・バーチフィールド、灌漑用具を生産している「Valmont産業」の施設ディれクター、は、こう述べている:「農民達は、世界に食糧を供給するだけの食物を生産する事ができなくなるでしょう。なぜなら、世界には限定された量の水しか残っていないからです。多くの人々が、次の戦争は金や銀や土地を争って起きるのではなく、水を争っておきるだろう、と、言っている」

米国国立測候所(The U.S. National Weather Service)の今年10月までの予測は、衰えを見せない旱魃が続くというものである。その範囲は、東モンタナからミネソタ州、さらにネブラスカ、カンザス、オクラホマ、テキサス州までに及んでいる。これらの地域は、合衆国の春期小麦と冬期小麦の主要な生産地であり、また主要な畜牛と牛肉生産地であるのは言うまでもない。米国国立測候所の旱魃予報はこう述べている:「給水救援体制の待機が、早くとも、来冬の降雪季節まで、必要になるだろう。それは雪の融解が西部地域での主要な水源になるからである」

-農地に水を引く-

最大の苦境は、《The Great Plains・グレイト・プレインズ》と呼ばれる、ノースダコタからテキサスに至る広大な地域に起きている。この地域は植民地早期の探検家によって、「大アメリカ砂漠」とも呼ばれた所であったが、一つの灌漑革新のおかげで、前世紀中に、「ガーデン・スポット」に変換された場所でもある。しかし、ネブラスカから北部テキサスに至る農民達は現在もっと多くの水を要求する作物、例えばトウモロコシのような作物の栽培に転換している。それはエタノールとバイオディーゼル燃料ブームへの「流行」が起きて、現金収入が高い作物になったからである。この動きは地上水の枯渇を加速させていて、降雨がその補給ができる限界を超えている。ある場所では、水を保存するために、すでに農地が休耕状態に置かれている。

水の政策を分析するマサチューセッツ、アマーストにある研究団体、《The Global Water Policy Project》のサンドラ・ポステルはこう述べている:「これらの問題を20年間見ている私の感じでは、我々は農業では水の生産性を少なくても二倍にしなければならない。いくぶんでも環境的に持続可能なやり方で食料の需要に応じるとすればそうなるのです」

-米国の問題だけではない食料生産-

エキスパート達は、水不足は世界の農民にとって大きくなるジレンマになっていくだろう、と、述べている。ほとんどの予測では世界人口を2025年までで約80億人に置いている。すなわちさらに20億人への食が必要になる。しかし、それらの人々もまたその産業に多くの水を必要としている。《The International Food Policy Research Institute》国際食物方針研究所の2002年の研究では、農地の潅水で世界中の農民の水使用量は1995年から2025年までで、4パーセントだけしか上がらない。その理由の一部は、入手可能な水がないからである。他方非潅水での水使用量は62パーセント上がるかもしれない。

この研究はこう述べている:「水不足に直面して、農民達は、過去と同じようには収穫量を早く上げる事ができない事が分かっている。そして2025年までには、彼らの潅水される穀物生産は、水が十分にある場合に比べて、3億トン減少することになるだろう。この差異は2000年の米国の穀物生産とほとんど同じ量になる」しかし、米国の水の問題は世界の食物供給に最大の影響を及ぼす事になる。米国は、数十年間地球の「食物備蓄地」であり、小麦、トウモロコシ、大豆、の第一の輸出国であった。また他の諸国にとって食物援助で最大の単一のプロバイダー国であった。米国農場への水量の締め付けは、技術革新を推し進める事になっている。たとえば洪水型潅水から離脱し、センターピボット散水装置、最先端技術利用、地域化された点滴潅水、へ技術関心が向かっている。

潅水協会(Irrigation Association)の常務取締役、トーマス・キメル(Thomas Kimmell)は、「潅水技術を変える事だけで、多くの水を節約する事ができる。それは最初に始めるべきでところです」、と、述べている。そのようなテクノロジーは、不毛なテキサスが、作物生産を維持する事で頼りにしているものである。しかしずっと北部では、水の値段と、広大だが、縮小している、オガララ(Ogallala)帯水層を巡って紛争がおきていて、灌漑への制限措置がすでに取られている。オガララ帯水層は、テキサスからサウスダコタに延長している、長さが1287kmになる地下の貯水層であり、合衆国で潅水される全体の土地の五分の一に水を与えている。しかし、ネブラスカ州は新しい井戸を掘って水を取る事を禁止して、オガララ地下水からの取水を制限して、プラット川渓谷(PlatteRiver Valley)で農業生産ができなくなっている。

マイケル・ジェス、ネブラスカ州水資源省の元ディレクターは、こう述べている:「この土地で 20年前潅水用井戸を作った農民達は、自分が掘った井戸が規制される破目になるとは考えたこともなかった。ルールを変える事は農民の状況を悪化させることになるだろう」

Author:事務局 : 2006年09月04日 09:08