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2008年05月26日

■米国は大手製薬会社を擁護してWHOを窒息させかねない

米国は、いくつかの情報源によれば、いっそうフレキシブルな知的財産システムを推進するWHOの能力を妨害する唯一の国である。この問題は、WHOの公衆衛生、革新、知的財産に関する政府間実務部会(Intergovernmental Working Group on Public Health, Innovation and Intellectual Property (IGWG))で交渉されている。

ジュネーブ(GENEVA)-第61回例年世界健康会議(World Health Assembly) が今週ジュネーブ(Geneva)で開催される。世界の多くの政府が闘っている主要問題は、医薬特許、厳しい特許システムから離脱する選択が国際連合世界保健機構(United Nations World Health Organisation)(WHO)によって支持されるべきかどうかである。

米国は、いくつかの情報源によれば、いっそうフレキシブルな知的財産システムを推進するWHOの能力を妨害する唯一の国である。この問題は、WHOの公衆衛生、革新、知的財産に関する政府間実務部会(Intergovernmental Working Group on Public Health, Innovation and Intellectual Property (IGWG))で交渉されている。

WHOウェブサイトによれば、「発展途上国は近代科学の恩恵から多くは除外されたままである」。公衆衛生、革新、知的財産に関する政府間実務部会/IGWGの必須任務は「不釣り合いに発展途上国に影響を与えている状況に対処する為欠かせない健康研究に関してグローバルな戦略と実行計画を準備する」ことである。

公衆衛生、革新、知的財産に関する政府間実務部会/IGWGはすでにその実行計画についてとっくに合意ができているはずであった。しかし知的財産の論争中の問題が意見の一致を妨げた、そして交渉が進行中のままでいる。米国にとっての問題は、希望する厳しい知的財産システムとその製薬産業の利益が希薄になる事である。

オックスファム(Oxfam)によって組織された「薬へのアクセス権」にかんするパネルで、タイの主任交渉者シュリペン・タンティヴズ博士(Dr. Shripen Tantives)はこう述べている:「我々は、諸国がいっそうフレキシブルな知的財産システムを要求するのを助けることに関し、WHOが介入すべきであるという事で、ある種の意見一致を持っている。

「我々は、先進国であろうが発展途上国であろうが多くの国がIP(知的財産)の領域でWHOが健康を改善するために何かすべきであることに同意する事が今回の鍵になる瞬間であると思う。我々はこれらの原則を合議案に入れている。不幸にも、完全な意見一致はたった一国のメンバーのために差し止められている。たった一国のメンバーアメリカがWHOの新しい役割に合意していない。」

国境なき医師団(Doctors Without Borders)のエレン・ホエン(Ellen T Hoen)は同じパネルでこう述べている:「製薬会社は今日高い値段を請求する。彼等が特許を持っているからである。この特許システムには2つの結果がある。1つは、研究と開発(Research and Development)がただ市場があるところにだけ向けられる。その2は、アクセス(薬への)はひどく高価である。」

特許が会社にその知識に関して独占権を与える。「もし我々がアクセスから独立して研究開発へ資金をあたえれば、我々はいい立場になるだろう。」

彼女は現在のシステムを「“blockbuster model”・超ベストセラーモデル」だと描いた、そしてそこでは製薬会社が少数の超ベストセラー薬や非常に高い売上高を獲得する薬の周りに彼らのオペレーションを作り出す。その結果は発展途上国の住民が苦しんでいる病気を看過する事になる。

「もし我々が1年で1薬品毎に15億ドル出せなければ、我々はベッドから出られない事になる。この超ベストセラーモデルは必ずしも行くべき道ではない。」

ホエン氏はまたこう述べている:2001年に出た「知的所有権の貿易関連局面と公衆衛生宣言」(The Trade Related Aspects of Intellectual Property Rights (TRIPS and the Public Health Declaration)が薬へのアクセスをしっかりと政治的題目にした。その際世界貿易機関(WTO)は知的所有権の貿易関連局面が公衆衛生の目的を妥協させてはいけないと宣言していた。

その時以来、HIVに対する第1世代抗レトロウイルスの価格は劇的に低下した。諸国は、タイとブラジルのように、特許取得済み薬のジェネリックバージョン(公共版)生産の強制ライセンスを発行し始めた。

しかし、「この進歩は主としてエイズ (AIDS)関連の治療に限定されている。他の病気と薬剤プロダクトはどうなっているのか?その後は「ケース次第」、「薬次第」ベースの上にあって、大いに市民社会の活動に依存している。」

これまでの2年で、タイは抗リトロヴィラル薬、そして癌と心臓病と闘う薬には強制ライセンスを発行した、そしてタイは米国からのかなりの政治的、そして経済的プレッシャーを受けた。

非営利薬剤開発組織、「無視された病気の薬」から来たニコレット・デンティコはこう述べている:一部うまくいった話はあるが、全体的な状況は陰鬱なままである。あの「10/90のギャップ」はまだ残ったままである。この「10/90のギャップ」というのは以下の状況を指す:先進国が世界的製薬の販売の90パーセントを占めている、だが他方1千4百万を越えるグローバルな死者のたった10パーセントにしか当たらない。発展途上国はこの1千4百万の死の90パーセントを代表するが、薬剤販売はほんの10パーセントにしかならない。

デンティコ氏はこう述べている:「死以外に代わりに何も持っていなければ、常識では、薬が特許登録していようがなかろうがかまわない。特許について話をするのは重要だろう、だが必要な事が欠落している過渡的局面を凝視すべきである」

WHOは、現在のシステムの危機を修正することで、主要なプレーヤーであり得るのか?このパネルの片側でIPSに話をして、オックスファム・アメリカのロヒット・モールパニ(RohitMalpani)はこう述べている:「WHOが効果的な釣合いの重りになっている。WHOは、発展途上国へ安全措置を利用するようにアドバイスしている、そして政府がより高いレベルの知的財産に加担するのを阻止するためWHOは見解を述べることができる。WHOは、例えばデータ独占権が公衆衛生の結果に及ぼす研究を提供することで、発展途上国を支援することができる。しかしそれには合衆国からの抵抗がある。」

マルパニ氏はこう付け加えた:「WTOはすでに諸国に特定の状況で特許に優先できる力を保証している。WHOがアドバイスと技術サポートを提供できるようにすべきである。すべての国がWHOのサポートを受けることができるようにすべきである。我々は初めからこんな(分かりきった)論議さえすべきではないのだ。」

Author:事務局 : 2008年05月26日 11:29