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2008年10月10日

■世界金融危機が環境を歪め社会制度の再考を迫っている

バルセロナ発:世界の先進産業国での金融瓦解は、バルセロナで開催されている世界環境保護ユニオン会議に参加している主要な経済学者によれば、高利益をもとめる近視的追及を終わらせる新しい経済モデルへ向かう機会を、提供している。

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アレハンドロ・ナダル、この会議に出席しているメキシコの経済学者はこの会議でこう述べた:「今では、米国のジョージ・W.ブッシュやドイツのアンジェラ・マーケルのような先進工業国で最も保守的なリーダーが、破綻から銀行を救うために公金を割りあてている。経済情勢に於ける主役としての国家の役割のこの再発見、および国際金融取引の新しい規制の先の見込み、は、発展途上世界の「新自由主義」を再考する機会の窓を開いてくれている。」

「これは単に学術的な疑問ではありません。それは極めて政治的な問題です。さらにそれは環境上の次元を持つことができる」と彼が言いました。ナダル氏は、マクロ経済と環境政策をリンクさせる事で国家の役割を再考するため市民社会諸組織の間で世界全体の努力を組み立てるようにこの会議で督促した。

IUCN(国際自然保護ユニオン)、10月15日まで継続するバルセロナ会議の組織者、は、1,000を超える政府、NGO、の会員、さらに160か国以上から来たほとんど11,000人のボランティア科学者を抱えている最も古く最大のグローバルな環境保護のネットワークである。

「市民の集まりや環境保護組織が世界をとる時がきているのです。」とパヴァン・サクデヴ、インドの経済学者でまた「生態系と持続可能経済学」の共同執筆者は、IPSに述べた。

1987年の証券取引暴落、あるいはラテンアメリカ、東南アジア、ロシアの1990年代の通貨危機のような初期の危機とは異なり、現在の危機は、新自由主義(経済)の劇的な環境犠牲について新しい意識が目覚めた真っただ中に起きている、とサクデヴ氏が述べた。

「以前は、私たちのほとんどは、自然界に潜んでいる環境危機には考えも及ばなかった。しかし、今は、私たちは、生物多様性の破壊と人類のほとんどを悲惨な目に合わせる事に基づいたこの経済モデルを続けることができないことに気づいています。」

「今私たちは追い風を受けています。そして帆に風がある時は、船が走ります。新しい経済モデルに向かって進みましょう。それは自然と人間を破壊する今のものではなくて、自然と人間の両方を尊重するモデルに向かいましょう。」

ジョアン・マルティネズ・エイリア、バルセロナ自主大学経済学と経済史学教授、は、現在の経済危機が「過去数年間の二酸化炭素放出の全く持続できない増大に決別する歓迎すべき変革を意味する。」と言いました。

二酸化炭素は、科学者達によって化石燃料燃焼から発生する主要な温室効果ガスと考えられています。温室効果ガスは、地球温暖化を起こし、そして従って気候変化と生物多様性絶滅を引き起こすと考えられています。

この経済危機が、産業活動と(商品の長距離)輸送活動を減少させる事で、資材とエネルギー消費に関して異なる軌道に経済を乗せる好機を提供している、したがって、温室効果ガス排出を削減する支援をすることができる、と、アリエールは信じている。

「この危機は、経済成長という至上命令ではなく、よい生き方をするという目的で、産業先進国の社会制度を再構成する機会を提示しているかもしれない。幸福は、ある所得水準以上では、必ずしも経済成長の機能にはなっていない。」とアリエールが言いました。

しかし、発展途上国では、経済危機は逆の理由で環境を破壊するかもしれません。なぜならある所得水準以下では、幸福は経済成長に依存するので、政府は経済危機を克服するために、環境への犠牲にもかかわらず、経済活動を押しすすめるかもしれないからである。

アルゼンチンの経済学者アラン・シビルスは、IPSにこう述べている:「世界経済は金融危機の結果として、深い、長びいていく経済後退を蒙るかもしれません。この危機が進めば、優先事項は、気候変動を止める事をしないで、経済成長と雇用の回復、そしてインフレ抑制に置かれるでしょう。生物多様性、帯水層、土壌侵食の保護は非優先事項と見なされるかもしれません。」

アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、他のラテンアメリカの国々で1980年代後期以来採用された「新自由主義」経済モデルが、社会と環境上の犠牲にもかかわらず、マクロ経済政策を優先させた、それはインフレと財政赤字を縮小し輸出を増加させることを目指したものであったと、彼は述べた。

大豆用に耕作された土地面積は、アルゼンチンで2008年に、1997年の700万ヘクタールから2倍になり1600万ヘクタールになった。小麦耕作のための土地は変わっていない。

「大豆の栽培はアルゼンチンでは在来の森林を犠牲にして起こりました。周年で続く農業は厳しい土壌栄養素の消失、土壌侵食、生物多様性の実質消失を引き起こしました。」とシビリスは述べている。

Author:事務局 : 2008年10月10日 11:47