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2005年07月20日

■土壌からの精神性:バイオダイナミック農法が勢いを得ている

■土壌からの精神性:バイオダイナミック農法が勢いを得ている
  人智学創始の哲学者スタイナーが提唱した生命力の農業が
  生き続けている

 土壌からの精神性

 バイオダイナミック農業が信奉者を獲得している。しかし、それは健康な事か、それとも、単なる賑わいなのか?         報告者:ビビ・ヴァン・ダージィー

 ルドルフ・スタイナー(1861-1925)、オーストリアの哲学者、が、バイオダイナミック農業の基礎をなす8回の講義をして以来、80年が通過した。この精神的な農業運動は世界中に広がっていった。ドイツには1331のバイオダイナミック農場があり、カナダには約30の農場、ニュージーランドには42の農場、スイスには215の農場、イタリアには250の農場、英国には122の農場が存在している。

 バイオダイナミック食物は、主流の市場にゆっくりであるが、侵入しはじめている。それはまた例を抜いて品質が優れているという評判も得て来ている。であれば、バイオダイナミック農場とは何であるのか?それは総体として見られなければならないもので、地球惑星と宇宙が共に在り、動物や土壌に化学薬品を使わずに、ただホメオパシー薬品だけを使い、農場には、「調合されたもの」(7つのレシピがスタイナーによって伝えられている)、または植物と動物のコンポストを用いる。従って、バイオダイナミック農場は、できる限り自給自足的でなければならない。動物と作物の混在が好まれていて、植えつけと収穫は、月の軌道と星座を考慮にいれなければならない。土壌、ミミズ、地表下の微生物の活動--これらは農場の中で最も不可欠な面である。なぜなら、健康な土からこそ健康な食品が出て、健康食品からこそ健全な精神が生まれるからだ。

 スタイナーはまた、人智学(anthroposophical<anthropo人類+sophy叡智 )的な考えの運動とスタイナー学校も創立して、彼の人生を精神主義と科学のユニークな、時には奇妙な、合体に捧げた。彼は以下のような確信を持つようになった:貧弱な農業のやり方が、失墜していく栄養レヴェルを招き、植物と動物にある生命力を喪失してしまった、またそれが私達の衰退していく精神性をもたらしてきた。彼は彼の弟子達にこう述べた:「栄養は今日の状態では、物理的な生活に精神を表明させるのに必要な力を供給していない」

 インチキなのか、それとも科学的な根拠があるのだろうか?ほとんどの科学者達や農民がバイオダイナミック・テクニックを避けているのには、このテクニックの三つの固有な側面がある。バイオダイナミックテクニックの最も魅力的な異常な側面は、月と星に従って作物を植えて行く事である。毎週星占術に基づいたアドバイスがラジオ、新聞で提供されている現実の世界を見れば、このアイデアは全く容認できるものだと多くの人々は思うだろう。コーンウォルにあるかの有名なトレジリアン・ハウス(Tresillian House)の庭園も、同様な考え方の下で実際世話をされていた。それは月のガーデニングという魅力的な名前で呼ばれている。月の庭師やバイオダイナミックの農民は、その方法は多様な文化による数千年の観察に基づいているのだと主張する。例えば、シュメール人、マヤ人、中国人、ローマ人、古代ギリシャ人によってなされてきた観察に基づいているのだという。しかし、ほとんどの科学者にとっては、それは、名前を明かしたくない1人の農学者が言ったように、「全く戯言なのである」

 第二の問題がある所は、スタイナーの「調合」である。その中の「調合500番」は最も有名である:それは牛の角にマニュアを詰めて、一冬地中に埋めて置く。次にそれを水と混ぜて一時間、時計回りと反時計回りに攪拌する。これを大地に撒くというものである。別の調合では、葉にかける粉末にされた珪石がある。さらには、ノコギリソウ、カモミール、タンポポを含むハーブの調合したものを、最重要な堆肥に投与するものがある。

 1993年にワシントン州立大学のジョン・リーガノウド教授によってニュージーランドで実施された研究がある。それは、米国の科学誌、Scienceに発表されて、バイオダイナミックの堆肥は従来の農場の堆肥よりも実際によい品質を持っている。2002年には、有機農業に関するFiBL研究所からのスイスの論文がScience誌に発表された。FiBLは、おそらく最も信頼されている純粋有機農業に焦点をあわせたヨーロッパの調査機関であると、カルロ・ライファート博士、EU有機農業の最大調査主任、は、述べている。その論文はこう結論を出している。バイオダイナミック的に処理された土壌は、慣例あるいは有機農法に比べて、高い生物多様性と高いレベルの微生物活動を示している。多数の微生物は好ましい事で、土壌が忙しくしていれば、それだけよいのである。

 しかし、第三番目の論争の元はこれらすべての結果に他ならない。バイオダイナミック農業は実際により健康な食物をもたらすのだろうか?これに対しての多様な解答の全ては、表現は違うが、バイオダイナミック法の問題と魅力の両方を表現している。ドイツのカッセル大学で新しく生体力学教授に任命されたトン・バアーズ、はこう説明する:「バイオダイナミック農法を理解する為には、既定の思考枠を変えなければいけない。私は自分の学生にこう説明しているのです。重力や磁力のような力があり、それは従来の科学によって受け入れられているもので、私達はそれを「ハード・フォース/かたい力」と呼んでいる。しかし、バイオダイナミック農法は「柔らかい力」、生命の力、を扱っている。それで問題は従来の科学に、これらの柔らかい力を受け入れさせる事です。バイオダイナミック農法は世界を総体的(ホリスティック)に見ているものである。また我々の科学もこの見方を取っている。」

 バイオダイナミック方法で最も論争をまきおこしているものは、通常、「結晶化」として知られているテストである。これは、植物の液体や血液を塩化カルシウムと混合させて、そしてそれを紙に結晶させる事である。デイビッド・ユーニー、スコットランド農業大学有機農業学者、はこう言う:「数千も数千もの実験で明らかになっている事がある。それは、慣例的に育てられた、例えば、ニンジンと、バイオダイナミック法で育てられたニンジンによって形成された結晶には本当に「違い」があるのです。バイオダイナミック法を実施しているコミュニティは、こう主張しています:バイオダイナミック法によるニンジンの結晶は、主流の有機や従来農法での結晶よりもずっと複雑である。なぜならバイオダイナミック法によるニンジンはより多くのヴァイタル・フォース、ライフ・フォースを持っているからである。しかしこのテクニークの問題は、違いがあるという以外にはなにもはっきり述べられる事がないことです。誰もこれらの結晶を、真に客観的で、科学的な方法で解釈する方法を見出していないのです。」

 しかし、バイオダイナミック食物の高品質の可能な説明として一部の科学者が取り上げているバイオダイナミック農法の一つの面がある。それは、宇宙の放射線、または牛の角にも関係がないものである。それは単にバイオダイナミック農民が自分の農場に感じている情熱である。バイオダイナミック農場は居て楽しい場所である。木がり、花があり、犬や子豚がまわりにうろついていて、従来の農場とは違う臭いがする。バイオダイナミックのマニュアは、穏やかな、甘い芳香を持っている。それは強化農法の家畜からくる饐えた臭いとは違ったものである。レガノルドはこう述べている:「私が従来の農場を訪問する時、農夫は決して自分の土壌の品質について私には語らない。しかも私は土壌学者なのです。だが私がバイオダイナミック農場に行くと、農夫は土壌の事を延々と語る。彼等には土壌の話は語りつくせないのである。一人の農民が口にした、昔からの農業の言い伝えでは、「最善の肥料は農夫の足跡なんだよ」

参照:
Spirituality from the soil
Biodynamic farming is gaining converts. But is it healthy or just hyped?
Bibi van der Zee reports

The Guardian Weekly 2005-07-08, page 17

Author:事務局 : 2005年07月20日 11:19