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2008年03月12日

■グローバルな貯蔵庫に集められる種子と農民の種子への権利

インド、バンガロー発-インドや他の地域で活動している農業の非政府組織(NGO)が、ノルウェーのスバルバル(Svalbard)に新しく設置された「グローバル種子貯蔵庫」(Global Seed Vault)に対し、その目的が基本的に不正であるとして、批判している。

バルセロナに本拠がある農業ロビー団体、《GRAIN》「グレイン/穀物」は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの主要な発展途上国に支所を持っている。《GRAIN》「穀物」はこう述べている:この種子貯蔵庫の重大な欠陥は、それが、この種子バンクに寄託する国と私的組織に根本的に対応していて、それによってこれらの種子を入手できない貧しい農民の権利を除外している。

《GRAIN》「グレイン/穀物」は、この「グローバル種子貯蔵庫」の現場外の貯蔵システムは、ユニークな種子を元々作って、選んで、守って、そして共有した農業共同体からそのユニークな植物品種を取り去ってしまうものである、と、述べている。農民達は、このシステム設定に関連する、科学的な、制度化された枠組み(フレームワーク)へのアクセスの仕方を知らない、そして、除外されていると、《GRAIN》は、主張している。

「このシステムは、農民達が世界の独創的な、進行中の、植物栽培者であることを忘れている」と《GRAIN》のアジアプログラム役員(AsiaProgramOfficer)で、ニューデリーに本拠地を置くシャリニ・ブウタニ(ShaliniBhutani)が「IPS」通信に述べた。

元来農民によって保存されていた種子に対する知的財産や他の権利を交渉することが、政府と種子産業自身の仕事になってしまっていると同氏は言う。

「グローバル種子貯蔵庫」に関する決定はノルウェー政府によってなされ、現在は信頼できると見なされているが、その方針が変わるという保証はない。それは種子寄託者と10年間の合意を持っている。それには以下の条項が含まれていて、もし方針が変化するなら、彼等はその同意を終了させられるとしている。

「グローバル種子貯蔵庫」のマネージメントは、ノルウェー政府、「グローバル作物多様性トラスト」(The Global Crop Diversity Trust)、北欧諸国の協力である「ノルディック遺伝子資源センター」(The Nordic Genetic Resource Center)三者間の合意書に詳しく記述されている。

《GRAIN》はこう主張している:「グローバル種子貯蔵庫」に関する決定事項は「グローバル作物多様性トラスト」と共有されるだろう。「グローバル作物多様性トラスト」は私的な組織で、強力な企業資金と結びついているので、世界的な農業バイオダイバーシティへのアクセスと恩恵に関して「ひどい論争」を最前線に引き出す事になってしまう。

多国籍種子会社(複数)が現在、300億USドルに上る世界種子市場の半分以上をコントロールしていて、多くの公的な植物育種プログラムを買い占めている。そのプログラムは多くの政府がそのコントロールを放棄しているものである。《GRAIN》の発表された文書はこう述べている:「したがって、究極の受益者は、作物多様性破壊の根底にあるのとまさしく同じ大企業である」

「グローバル種子貯蔵庫」は、北極から約1,000キロ離れた、マイナス摂氏6度の自然温度で、北極永久凍土層に作られていて、3つの寒い部屋を持っている。さらにマイナス摂氏18度に冷やす事ができて、種子の450万バッチ(batches/集合分)を貯蔵することができる。

万が一何か大災害、例えば核戦争や自然災害、が世界の農業を襲った場合、国々は人々が「最後の審判日の貯蔵庫」と呼んでいるこの貯蔵庫に身を向けて、種子を取り出し、そして食糧生産を再開する事ができるだろう。

しかし、農業保存の科学面から「グローバル種子貯蔵庫」が存在を継続する事に納得していない多くの人達がいる。

インドのバンガロール(Bangalore)に拠点がある《GREEN Foundation》(緑財団)は、種子バンクネットワークを通じた種子保存の業績で2004年国際連合赤道賞(the United Nations’Equator Prize)を獲得した。この組織は主に女性によって運営されているが、こう述べている:遺伝子バイオダイバーシティを守るという「グローバル種子貯蔵庫」の主張は「現実ではなくずっと幻影である。

《GREEN Foundation》(緑財団)の創始者で理事長の「VanajaRamprasad」はこう述べている:「リオデジャネイロにある《UNCED》と「生物多様性コンヴェンション」が、遺伝子バンク自体に限界がある事を悟ってからもう10年になる。それは主要な電力破綻から始まり、これらのバンクアクセスに農民を除外したり、冷凍状況で保存された種子が変えられた環境条件下で栽培されるとき進展しないと悟ったりした。それは、世界の食物がフリーザーの中で確保できるという仮定の後ろにある科学への悲しい批判である」

《Green Foundation》、《GRAIN》、また《DeccanDevelopment Society》のようなNGOはこう信じている:農民達が自分の畑地で種子を栽培することに携わって、保存して、そしてこれらの種子を他の人たちと交換する事が、遺伝子の多様性と資源を保存する最も確実な方法である。

《GRAIN》は以下の事を推奨している;各政府は、国際的な遺伝子バンクより、むしろ最初に自分の国の農民と市場を守り、種子は地元の農民の手中に残して、農民が革新的な農業をして種子交換する習慣を維持すべきである。農事バイオダイバーシティ資産を持っている発展途上国では、政府は企業のコントロール下にある農業協定に同意する前に、農民の利益を保護する必要がある。

Author:事務局 : 2008年03月12日 11:29