【AQUA249号】「遺伝子組換えナタネ自生の現状と問題点」

河田昌東 (遺伝子組換え食品を考える中部の会)

「第二二回BMW技術全国交流会にて、特別講演として河田昌東先生に「遺伝子組み換えの問題について」のお話しをいただきました。遺伝子組み換え植物がすでに日本の生態系へ深い影響を与えている事実は交流会参加者に衝撃的に受け止められたようです。今号では、特別に、河田先生の講演時添付資料を掲載いたします。」
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はじめに
 一九九四年六月に茨城県鹿島港周辺での遺伝子組換え西洋ナタネ(以下、GMナタネ)の自生が判明してから八年が経った。以来、遺伝子組み換え食品を考える中部の会(以下、中部の会)はじめ全国の生協や消費者団体が連携して、国内のナタネ輸入港周辺でのGMナタネ自生の調査を行い、毎年報告会を行ってきた。その結果、GMナタネ自生の原因や責任問題について、様々な問題点が明らかになった。

(一)GMナタネ自生の背景
 従来、ナタネ油は国内各地の畑で栽培されたナタネを近くの工場で搾油し利用してきた。因みに、一九五七年当時は二六万ヘクタールあったナタネ畑は、現在八〇〇ヘクタールにまで減少している。生活に使われる年間二〇〇万トンを超えるナタネ油のほとんどは、カナダ産のキャノーラ油である。キャノーラはカナダで開発された食用油用の西洋ナタネで、本来非組換えであったが、一九九六年に遺伝子組換えキャノーラが商業栽培されて以来、次第にその割合を増加させてきた。現在カナダ産キャノーラの九五%は除草剤耐性である。こうして消費者が気付かないままにGMナタネの輸入が増加した。こうした現状をもたらしたもう一つの原因は日本のGM食品表示制度にある。日本では食用油などの加工品は、原料の一〇〇%がGMでも表示する必要が無く、消費者がそれと知らずに、GMキャノーラ油を使わざるを得なかった。もし、日本もEU並に加工食品にも表示義務があれば、これほどまでGMナタネの輸入が拡大したかどうか疑問である。日本はカナダ産GMナタネの約四分の一を輸入する世界最大のナタネ輸入国である。日本の表示制度の欠陥がカナダのキャノーラのGM化を促進したともいえる。

(二)GMナタネ自生の原因
 直接の原因は、ナタネ輸入港から搾油工場までの輸送中のこぼれ落ちである。ナタネの種子は極めて小さく、トラックによる輸送途中でこぼれ落ちたGMナタネが発芽し自生するに至った。それは、輸入港から搾油工場までの往路にGMナタネの自生が多く、復路には少ないことからも明らかである。
 これまで、GMナタネの自生が報告されたのは、茨城県鹿島港、千葉県千葉中央港、神奈川県横浜港、静岡県清水港、愛知県名古屋港、三重県四日市港、大阪府大阪港、兵庫県神戸港、岡山県水島港、福岡県博多港、鹿児島県鹿児島港などである。これらの港周辺でのGMナタネ自生の情況は様々である。GMナタネ自生の原因がトラック輸送によるこぼれ落ちが原因であることから分かるように、輸送距離が長いほど自生頻度は高い。現在、三重県四日市港から運ばれるGMナタネは国道二三号線を南下して約四〇Kmもの距離にある古くからの搾油工場に運ばれるため、全国で最もGMナタネの自生が多い地域である。さらに、二〇一〇年には名古屋港の南の知多半島から四日市に至る国道二三号線沿いにも小規模ながらGMナタネの自生が見られ、伊勢湾を取り囲む約一〇〇Kmに及ぶ沿線がGMナタネで汚染されていることが明らかになった。原因は不明だが名古屋港から水揚げされるGMナタネが国道二三号を通って三重県に運ばれている疑いがある。
 中部の会のこれまでの調査の結果、別の意外な原因も明らかになった。ナタネ加工の殆どは食用油の製造だが、最近、例えば「事故ナタネ」の処理工場への輸送もこぼれ落ちの原因であることが分かった。愛知県豊川市内のO産業は、ナタネを輸送して来た船舶の船倉で湿気のためにカビが生えたり、埃などで汚染して食用にならない、いわゆる「事故ナタネ」を全国から集め、機械加工のための切削油を作っている。そのために、GMナタネの自生は、ナタネ輸入港周辺にとどまらず、内陸部でも起こっているのである。こうした事故ナタネ処理工場は全国で他にもあると推察され、輸入港周辺でなく、内陸部でのGM汚染を今後注意深く調査する必要がある。こうしたことは、政府がGMナタネの輸入を認可した一九九六年には予想されたことであり、その責任は重い。

(三)GMナタネ自生の現状
 GMナタネの多くは輸送路の近辺に自生している。我々が調査を開始した当初の二〇〇四年には、三重県四日市港のベルトコンベアーやサイロ周辺をはじめとする、陸揚げ施設周辺にも多数のGMナタネの自生が見られたが、問題が新聞などで取り上げられるようになってから、港湾施設周辺での除草は徹底的に行われ、港内では現在殆ど自生を見ることが出来ない。他方、港から搾油工場までの道路周辺には、現在も多数のGMナタネが自生している。我々は二〇〇六年から年一回~二回、市民参加による大規模な抜取り作業を行ってきたが、依然として絶える気配は無い。その原因の一つは、GMナタネの国内における世代交代である。輸送中のこぼれ落ちを回避するために、我々は工場側と話し合い、トラックの構造改善や、積載量の減少などこぼれ落ちを防ぐ対策を講じて来たが、以前にこぼれ落ちたGMナタネは、自ら結実し周辺に種を散布する結果、新たなこぼれ落ちが無くても、自生が続く結果となっている。当初見られた、多年草化し巨大化したGMナタネは減少したが、季節を問わず開花結実するGMナタネは、抜き取りをもっては、対処しきれない情況である。二〇〇四年には約四〇%だった自生ナタネのGM化率は年を経るに従い増加し、現在は約七〇%を占めるに至っている。GMナタネには、モンサント社のラウンドアップ除草剤耐性のもの(以下RR)とバイエル社のバスタ除草剤耐性(以下、LL)のものとがあるが、当初から比べるとLLの割合が増加傾向にあるが、カナダでの栽培面積は圧倒的にRRであり、自生GMナタネのLL増加原因は明らかでない。国土交通省は現在、道路管理に除草剤を使っておらず、その原因が除草剤散布でないことは明らかである。

(四)世代交代の結果起こったこと
 GMナタネの国内世代交代による自生の結果、新たな事態が発生している。はじめはRR耐性とLL耐性のGMナタネは別々に発見されたが、二〇〇八年以降、数は少ないもののRRとLLの両方に耐性を持つ多重耐性、いわゆるスタックGMが見られるようになった。これはRRナタネとLLナタネが混在して自生する結果、お互いの交雑によって、両方の除草剤に耐性の性質を持つに至った、と考えられる。
 さらに、二〇〇八年以降、試験紙による簡易試験では陰性であるが、PCR法によるDNAのチェックでは除草剤耐性の遺伝子を持つナタネが発見されるようになった。モンサントなど開発企業は勿論このようなGMナタネは販売しておらず、これは、国内での世代交代が進んだ結果、遺伝子(例えば、RRやLL遺伝子のプロモーターなど)に突然変異や化学的修飾がおこり、遺伝子はあるものの除草剤耐性蛋白質を作らない性質を持つようになったと考えられる。これらは、見かけ上、非GMの「隠れGM」とみなされ、調査の結果をゆがめるだけでなく、遺伝子汚染がより見えにくくなってしまう危険を示している。

(五)様々な交雑種の発生
 GMナタネの自生は、国内農業と環境への影響が大きいことは明らかである。アブラナ科の植物は、その特殊な進化の結果、異種の植物同士の交雑が起こりやすく、容易に雑種が出来ることが知られている。事実、カナダ政府はRRナタネ(Brassica napus)の栽培認可に当たって、他のアブラナ科植物である西洋カラシナ(Brassica juncea)や、我々が在来ナタネと呼ぶBrassica rapa種との種間交雑が起こりうることを認めている。アブラナ科ゲノムの構造から、キャベツやブロッコリー(Brassica oleracea)とも交雑可能である。実際、我々は事故ナタネ処理工場のある愛知県豊川市内で、在来ナタネとGMナタネの交雑種、西洋カラシナとの交雑種を、また、三重県津市内の空き地でブロッコリーとの交雑種と見られる株を採取している。こうした雑種は、はじめのF1個体は稔性が悪く、結実の度合いも低いが、その種子が発芽し成長してもとの親(西洋カラシナ、在来ナタネ、ブロッコリー)と再び交配するようなことが起これば、組換え遺伝子は安定化し、急速に周辺への遺伝子汚染を拡散させることになろう。これは、交配による品種改良では良く使われる手段で「もどし交配」という、導入遺伝子を安定化させる手段である。

(六)野生植物の遺伝子汚染
~新たな展開
 二〇〇九年以降、三重県の国道二三号線沿いで、西洋ナタネとはまったく様相がことなるにも関わらず、ラウンドアップ耐性とバスタ耐性をもつ植物がみられるようになった。多くは中央分離帯で、その近辺には野生雑草であるハタザオガラシ(Sisymbrium altissimum)が自生している。ハタザオガラシもアブラナ科植物ではあるが種は違う。雑種とみられるGM個体が見られる時期にはハタザオガラシの多くはすでに枯死している。この雑種(?)は、多くの場合不稔性で実は付いていないが、中には西洋ナタネと同じ大きな実鞘をつけているものもある。RR(+)のものもLL(+)、あるいは両方耐性のものもある。この雑種(?)はRR又はLL遺伝子をもつことから、一方の親はGM西洋ナタネであることは明らかである。相手がハタザオガラシであることが事実であれば、属間雑種(SisymbriumとBrassica)ということになり、ハタザオガラシが九州から北海道にまで広く分布する外来雑草であることから、これまでの栽培作物との交雑とは次元の違う問題で、生物多様性にとっての大きな懸念材料である。文献調査によればこれまで世界的に西洋ナタネとハタザオガラシとの属間雑種の例は見当たらない。

(七)GM汚染は農業と環境に大きな影響
 これまで述べてきたように、自生GMナタネの問題は、我々の予想を越えて広がりつつある。GMナタネの商業栽培が始まったのは一九九六年だが、カナダやアメリカ、日本などGM輸出国も輸入国も、栽培は人間の管理下で畑で行われるものであり、他の栽培作物や野生植物への遺伝子汚染は問題視していなかった。日本の農水省は現在もGMナタネの自生が危険だと考えていない。しかし、世界的にはカルタヘナ議定書が二〇〇〇年に成立し、生物多様性の中で遺伝子組換え生物を特別な取扱い対象とすることになった。二〇一〇年には名古屋でCOP10(第一〇回生物多様性条約締約国会議)とMOP5(第五回カルタヘナ議定書締約国会議)が開かれ、日本でのGMナタネ自生は世界の参加者の注目を浴びた。そうしたさなか、三重県はそれまで県内で栽培するナバナ等ナタネの種子の自家採取をやめ、種子を県外(国外?)から調達すると発表した。これは、MOP5で焦点になった「GM作物による損害」の国内最初の事例である。GM作物の世界的な拡散は世界各地にすでに多数の損害をもたらしており、この九月~一〇月にかけてインドで行われるCOP11/MOP6でも大きな争点になるだろう。日本政府はGM汚染問題に関しきわめて後ろ向きで、GM汚染による被害の対象に栽培作物を含めない、としており、また環境省は野生生物のGM汚染は一〇〇年以上前から国内に自生していた植物のみを対象とする、とする時代遅れの政策をとっている。一方、日本の農家はこれまで国が栽培認可しているすべてのGM作物(GMナタネも含む)を栽培していない。これは消費者と生産者のこれまでの活動の成果であり、GM汚染がさらに深刻な段階に進まないように今後も連携していかなければならない。

Author 事務局 : 2013年01月01日15:27

【AQUA249号】第22回BMW技術全国交流会が開催されました

 第二二回BMW技術全国交流会が、一一月一六日(金)から一八日(日)の三日間、高知県高知市で開催されました。交流会は、夢産地とさやま開発公社を中心に、大川村、津野町、四万十町、BMW技術協会で構成される実行委員会で運営されました。今年のテーマは「食の安全と安定を求めて~生産者と消費者をつなぐBMW技術」。日本全国、さらに、韓国、中国からの参加も含めて、のべ二〇〇人以上の参加者が集いました。また来年の全国交流会は、新潟県での開催が決まりました。
 一日目は朝倉実行委員長の開会の挨拶にはじまり、来賓挨拶などの開会セレモニーが行われ、基調報告、基調講演、そして特別講演と行われました。司会進行は山本優作全国交流会事務局長です。

①開会宣言  朝倉慧全国交流会実行委員長
 ここに第二二回BMW技術全国交流会が開催できましたことを、まずもって皆様にお礼を申し上げます。全国各地からBMW技術を愛し、実践する皆様にお集まりいただき、ありがとうございます。「只今より第二二回BMW技術全国交流会の開会を宣言いたします。」よろしくお願いします。

②開会の挨拶    伊藤 幸蔵 理事長
 皆さん、こんにちは。高知での開催は一九九八年以来、今回は二回目ということになります。準備をしていただいた、実行委員会の皆さん、お疲れ様でした。来賓の皆さん、ありがとうございます。また全国、アジアからの参加者の皆さんに会えてとても嬉しいです。今回は高知の地質の特徴から地球のこと、遺伝子組み換えの問題など、私達が農業をやる上で次世代につなげることや、また自分達に降りかかってくる問題などの重さを学べるのではないかと思います。今回学んだことを吸収して、自分の地域、そして自分の活動に活かしてもらえればと思います。有意義な時間となるように真剣に勉強し、それを活かして下さい。

③来賓挨拶  高知県知事 尾﨑 正直
 本日は第二二回BMW技術全国交流会をここ高知県で開催していただきましてありがとうございます。おおいに活発な議論を深めていただきたいと思います。BMW技術は大川村で朝倉実行委員長から実際に見させていただきました。自然の循環を意図的に作りだす技術、まさに理にかなったものだと思います。
 どうやって安心・安全の食を守っていくのか、今後はさらに大きな問題になっていくことだと思います。高知県では持続可能な農業への取り組みを応援する形で進めています。BMW技術は有機農業の先端を行くものだと思います、またご指導のほどお願いいたしたい次第であります。みなさんの技術、意見の交換等にとどまらずに是非、高知県を大好きになって帰って下さい。ありがとうございます。

④来賓挨拶   高知市長 岡﨑 誠也
 第二二回BMW技術全国交流会を高知で開催していただきまして、ありがとうございます。平成の大合併において三、一三三あった市町村は一八〇〇の市町村になりました。約八〇〇が市、そのほかが町や村になっています。私達、高知市もまさに土佐山村など七つの町村と合併をいたしました。高知市は高知県の三四市町村の中で農業生産高がトップです。鏡川の流域を守る取り組みを含め、水が一番の基本だということ、土作りが非常に大事な事は高知市としても土佐山から学んできました。人間として大切な「食」をテーマに有意義な大会になることを願っています。

◆基調報告 伊藤 幸蔵理事長
 今回の基調報告は初めてBMW技術に関る方や、明日の事例報告発表に備えて、おさらいという意味も含めてBMW技術って何なのかというところから話をさせていただきます。
 地域生態系における、自然浄化作用の仕組み(循環系:物質循環)に学び、その仕組みを人工的に再現する技術。バクテリア(B)とミネラル(M)と水(W)の働き、その関係性に注目し、地域生態系の自然循環機能が正常に働く環境をBMW自然循環システムと呼び、そこに人が関って作っていくのがBMW技術。自然の浄化能力の限界を人間が壊してきた、それをもう一度見直して自分達の手で再生して行こうということが基本にあります。健康な農水産物は健全な土と水で育つ、健全な土と水は農薬や有害化学物質や有機系廃棄物に汚染されていない生態系本来の機能を持った土や水、そしてその土と水は自然浄化(物質循環)機能がスムーズに働くということで、自然生態系の土や水の汚染防止と再生を、そしてこれらを地域で広げ、次世代につなげていこうということが大きなテーマとなっています。
 BMW技術は、はじめに畜産での悪臭・公害対策からはじまりした。臭いやハエの問題を解決していくことです。さらに畜産糞尿を資源に変え、地域循環型農業を展開し良質な堆肥と生物活性水の製造による畜産と耕作の連携を進めてきました。また、水源、流域の土と水を守り、再生することにも力を注いできています。生物活性水については色々な特徴があります。主に発酵の促進、有機物を腐敗させずに発酵の方向へ進めていくことができることなどですが、土壌環境の改善や生育促進、病気の予防、悪臭防止、飼育環境の改善、飲水改善と併用することによる腸内細菌が整えられ、家畜が健康に育つなどです。原料は堆肥や家畜尿、家畜処理水、家庭雑排水等など様々です。原料によって成分が大きく変わる場合もあります。それらの有機物を精製したものが生物活性水ですが、わからないこともまだまだあります、例えばこれは海外での発表でしたが、生物活性水には成長ホルモンが検出されないのですが、生物活性水を使用して栽培した野菜からを活発な成長ホルモンが検出されるなどという例がありました。もうひとつの特徴は岩石を使うと言うことです。地域の岩石を用いたりしますが、重要なミネラルを岩石から得ると言うことが特徴です。
 昨年一〇月にBM技術協会は一般社団法人BMW技術協会へと法人化しました。法人化後の約一年の活動を皆さんに報告させていただきます。二〇一一年一〇月五日に一般社団法人として法人化。BMW技術の普及、拡大だけにとどまらず、農業や社会が抱える問題へのアプローチ、消費者との交流、若手を中心とした技術、意識の底上げ、持続可能な社会、環境、そして農業を守るために課題は多いが活動していきます。全国のプラントの巡回点検も始めました。その中でいくつかの課題も見えてきました。プラントの管理方法であったり、生物活性水のできの違いであったりと、あらためてこの辺りは指導させていただくような形を作っていかなければなりません。二月と九月にはBMW技術基礎セミナーを開催しました。二〇年の歴史の中で生物活性水の作り方も深化している部分があります。そう言ったところを含めて、あらためてBMW技術の基礎を学ぼうと言う取り組みと、私達の身の回りで起こっている社会問題などをテーマ、課題として学習をしてきました。若手の農家だけではなく、消費者の皆さんにも参加していただきたいと思っております。BMW技術、農業技術だけでなく、社会の中の矛盾であったり、問題だったりを皆さんで共有して行くことができればと思っています。また、各地方においてそれぞれの課題を設けた学習会を開催してきました。この学習会は、皆さんからの提案をお待ちしています。また、今年新設されたプラントは八ヶ所です。まだ建設中のもの、今後予定されているものもあります。
 今後はBMW技術協会の目指すところとして、培ってきた歴史・技術・ネットワーク~次世代への継承、個々の技術のレベルアップ~若手の育成、広い視野を持ち、問題意識を高めていく、BMW技術運動を通して、環境・農業・生活を地域から変えていく。そしてやはり技術と理念は両輪であり、技術のない活動や理念のない運動は目的を達成できないということを意識していかなければなりません。私達がBMを選んだ理由を、何を目的とするか、何を達成したいかと言うこと含め、もっと真剣に考えていかなければなりません。広い視野を持ち、地域を作っていくことをしていかなければなりません。北海道から九州、そしてアジアでのネットワークを活かし、このような交流会を続けることにより皆で技術、そして理念を高めていくことができればと願っています。

基調講演「地球、生命、日本列島の歴史とBMW技術」
岡山大学 地球物質科学研究センター
  准教授 奥地 拓生
 「BMW技術の深さと将来性をできるだけ深く理解していただけるように」ということで始まった奥地先生の基調講演、八月に高知県で行った岩石調査を中心に、岩石に含まれる「鉱物=ミネラル」を主な主題とし、地球の誕生、生命、日本列島の歴史と壮大なスケールの中に私達が生まれ、生きているということ。ミネラルの大循環は海から陸へ、陸から川へ、川から土へと地球の中で大きく循環している、BMW技術はまさにこの大きな巡回にならった、小さな循環であるとともにこの壮大なスケールを背負っているということ。

特別講演「遺伝子組み換えの問題について」
 元名古屋大学教授・チェルノブイリ救援中部理事  河田 昌東
 「本来は人間がいじってはいけないものをいじってしまった、という技術の奢りがひき起こしてしまった問題、これは遺伝子組み換えと放射能の問題では同じことが言える。」との冒頭から、遺伝子組み換えがどういうものなのか、そしてどういう問題をひき起こしているのかという現状を説明されました。日本では遺伝子組み換え作物はまだ栽培されていませんが、輸入ナタネの輸送途中や積み下ろしの際にこぼれた種が自生しているということなどは、多くの人達に知られていない事実だと思います。講演の主旨を正確にお伝えするために、今号の六ページに河田先生の講演につかわれた資料の一部を掲載させていただきました。

全国交流会 二日目
 二日目はBMW技術を実践される現場からの事例報告、実験報告発表となりました。
①大川村におけるBMW技術の活用について ~土佐はちきん地鶏と農業への利用~
高知県大川村 長瀬憲章
むらびと本舗 近藤 篤
 人口四四四人の日本で一番小さな自治体である大川村です。「土佐はちきん地鶏」へのBMW技術の利用は、飲水改善プラント、そして生物活性水プラントを導入。生物活性水は飲水へ一〇〇倍希釈で利用。堆肥作りにも使用しているが、昨年は一時、生物活性水施設から堆肥センターへ生物活性水を送るホースが破損し、生物活性水が堆肥に散布できないことがあり、堆肥からかなり悪臭がした。生物活性水の散布は臭い対策において、かなりの効果を発揮していると感じました。今後は村内において「BMいきいきプラン」を実践して行きます。BMW技術に学び、村内全体で有機廃棄物をトータルに資源化し、一般家庭・耕作農家・畜産農家から出る有機廃棄物を、堆肥センターに総合的に結びつけて、村内全体のリサイクルシステムを確立します。村内循環型有機農業を推進することにより、地域の水、自然環境を守っていく。有機農業の活性化により、安全な食品を地域内に供給し、健康増進を図る。生態系の自然浄化作用をモデルとし環境への負荷をできる限り軽減します。

②BMW技術「ピーマン栽培における実践報告」高知県土佐市
 約四九アールで、ビニルハウス二箇所での施設農業、栽培作物はピーマンです。BMW技術導入のきっかけですが、約八年前に土佐市のピーマン農家の紹介で知人のメロン農家が生物活性水を使用して、瀕死の状態だったメロンが回復して収穫までできたとの話を聞き、当時土佐山村の山本優作さんを紹介してもらいました。そこで、収量の増加を狙って生物活性水を使用してみようと思いました。
 生物活性水を使用して、かわらなかったことは収量、使用して良かったことは根の状態がよくなり(木が強くなり)樹勢をコントロールすること(着花率の向上)に効果があることがわかり現在は結果的に収量が増加しました。生物活性水の使用をする中で,いいものやいい状態のものをさらに良くするということよりも、状況が悪いものを改善させることに効果があるように思います。

③雪月花の取り組みとBMW技術の実践
北海道ファーマーズクラブ雪月花 市川 智
     田村昌之
 ファーマーズ・クラブ雪月花は「北海道農業を守ろう」を合言葉に、次代を見据え地域に根差した環境保全型の農業振興と地域の活性化に取り組み、安全で安心な作り手の見える農業を目指す目的で作られました。
 水稲(一五四ha)を中心に花卉、小麦、玉ねぎなどの栽培農家の集まりです。平成二三年の三月一一日に生物活性水プラントを花卉農家の田村農園に導入しました。生物活性水は主に育苗で実験をはじめ、一~三年目は苗の追肥の時にだけ五〇〇~七〇〇倍で潅水利用、大きな違いは見られなかった。四年目は追肥以外にも、潅水毎に五〇〇~七〇〇倍で利用したところ、根張りなどに大きな違いを見ることができてきました。水稲栽培における、その「効果」は根張りの違い等で確認できたが、まだまだわからないことが多い。さらに期待できる効果として、幼穂形成期に葉面散布を行うなどして、一穂粒数を上げるなど、食味を含めた品質の向上、丈夫な稲穂を作ることができるのではないかと確信している。引き続き、生物活性水を利用し続け、その効果と結果を記録していきたい。

④四万十川源流の町~津野町の農業とBMW技術の活用法
高知県津野町 豊田 庄二
 平成一三年にBMW技術が導入されました。生物活性水プラントと堆肥センターがあり、生物活性水を利用し良質な堆肥の生産ができています。堆肥の原料は牛糞、オガ粉です。この堆肥と生物活性水を使った米茄子の栽培の事例を報告します。堆肥は一〇aあたり三t施肥します。生物活性水は五〇〇倍希釈で潅水時に毎回使用しています。秀品率は八三%でこれは農協の平均値を上回っています。土作りの実践として良質な完熟堆肥の製造・施用、生物活性水を有効活用することで、高品質(秀品率の向上)、多収穫を期待できると思っています。

⑤夢産地とさやま
~二〇年の歩みとこれから
高知県夢産地とさやま開発公社  門田 憲晃
 BMW技術は約二〇年前に導入されました。以来、土づくりセンターでの堆肥製造をはじめ、BMW技術の取り組みを実践してきました。鏡川水源を守ること、有機農業を中心に持続可能な農業を通して地域をつくり、つないでいくという活動をしています。生物活性水は堆肥作り(発酵促進、水分調整)の他に生姜、柚、葉菜類などの潅水や病害予防、種子浸漬などに利用し、安心・安全な農産物の生産に努めています。夢産地とさやま開発公社は公益法人として活動してきましたが、来年から一般法人として再スタートをする予定です。行政から独立した組織としてBMW技術の技術そのものと理念を基礎に地域農家と共にさらなる発展を目指し、担い手の育成、耕作放棄地を解消し中山間地域の活性化にむけて大きく前進して行きます。

⑥ポークランドにおけるBMW技術の活用秋田県ポークランドグループ代表 豊下 勝彦
 現在七つの組織をひとつとしてポークランドグループとしています。従業員は一三四名、平均年齢は三四歳です。ほとんどの従業員が私を含め、養豚未経験者です。BMW技術との出会いは、この事業を始める前に全国各地を回っている時に出会いました。まさに「これだ」と思う技術でした。SPF技術とBMW技術をコラボレーションさせることでの相乗効果を考えています。当初は両方から不安視される声を多くもらいました。批判もありましたが、いまではそれが確立しつつあると思っています。SPF技術は滅菌と殺菌、BMW技術は活菌・有用菌の活用と相反するものと考えられますが、実際には豚舎内の環境の維持(消毒はしない)、腸内細菌を良好な様態に保ち、豚を体内から健康にするため病気にかかりにくい。よって薬品使用を抑制できることになりました。
 また豚舎をバイオベットにしていくことで、より環境のよい状態で豚を飼うことを実践し、健康な豚を育てることができる取り組みを進めていきます。

⑦二〇一二年米沢郷牧場青果(さくらんぼ、   ラ・フランス、りんご)の取り組み
山形県米沢郷グループ 横山 裕一
 昨年も九州で発表させてもらいました。さくらんぼとラ・フランス、リンゴでの取り組みですが、開花前に生物活性水を散布して花(交配効率など含む)の充実、その結果として果実の肥大・着色・糖度アップを目指すためにこの取り組みを続けています。今年は糖度のアップ等を狙ってアルギンゴールドを溶かしこんだ自家製生物活性水の実験もしたのですが、ほとんど効果が見られずに失敗に終わったのではないかと思っています。リンゴの種は生物活性水を散布したところと、そうでないところを比べると種の実入りが明確に違いました。このことと生物活性水の散布の関係性は見当がつかないので、これがいいことなのか、そうでないのかなどを含めて突き詰めていきたいと思っています。

⑧涸沼生態系再生プロジェクト始動報告  ~涸沼が甦れば地域は元気になる
茨城県茨城BM自然塾 市丸 滋幸
 二〇〇九年に開催された第一九回BMW技術全国交流会においてテーマにもなった「涸沼」の生態系再生に向けたプロジェクトが形になりはじめ「涸沼生態系再生プロジェクト」ということで、活動を開始しました。涸沼湖岸にBMW技術の実験プラントを導入し、水の浄化をすることで藻の繁殖を促進させて、藻場の再生で生き物(生態系)の復活をさせることが狙いです。この活動を通して、涸沼の生態系の再生を目標としながら、流域に暮らす人々が地域資源を活かす流域共同体づくりができるようになることを望んでいます。

⑨畜産農業と耕種農業の連携
   熊本県熊本愛農会野菜部 渡辺 洋一
 清村養豚場にてBMW技術で処理した豚尿の処理水を液肥として使っています。またそれを二次処理して葉面散布や追肥のように使用しています。処理水は反あたり五~六トン、日持ちが良く、苦みが少なく美味しいと好評を得ています。畑に棒を刺すと一.三mほど深く突き刺さります。JAS認証を取得し、完全無農薬の生産を目指すことを目的に、その思いだけでBMW技術を利用してきた結果がこうなったということなのです。

⑩生物活性水を使ったコマツナの発芽実験報告
熊本県南阿蘇村    工藤 眞巳
 南阿蘇村の有機肥料生産センターに生物活性水プラントを導入し、堆肥作りに活用しています。生物活性水をもっと広く農家の人達にも使ってもらうためにどうすればいいかと考え、わかりやすく認識してもらうためにコマツナでの発芽実験をすることにしました。ポットに一〇粒ずつ種を撒き、生物活性水と井戸水での生育の違い、またそれぞれに堆肥を種類と堆肥なしのものを加えた六区に分けて実験しました。草丈、葉数、全重、茎葉重、根重を比べた結果、生物活性水を使用したものの方が数値が良く、生育を促進する傾向があるとわかりました。今後は実際に畑や田を利用して試験をして行く必要があると思います。

⑪韓国BM技術協会が歩む道
韓国BM技術協会会長 鄭相黙(ジョン・サンムク)
 通訳:韓国BM水代表 河 姃希(ハ・ジョンヒ)
 今年の四月に韓国BM技術協会の第二代目の会長に任命されました。韓国BM技術協会の機能を大きくわけて二つと考えています。一つ目はBMW技術をすべての大衆に積極的に広報し、BMW技術を必要とされるところへの支援を積極的に行っていくことです。二つ目は多くの会員と一緒に環境正義を貫くことに大きく貢献できる団体になることです。そのために五つの具体的な活動計画があります。①人間の生活にBMW技術を活用していくこと、②行政との積極的な協力体系の構築、③BMW技術の学術化、④BMW技術の体験学校の運営、⑤一村一校を結ぶ運動、これらを目標として進もうとしています。

⑫生物活性水の活用事例
務安夢灘( ムアンモンタン) 黄金韓牛営農組合法人
代表 高 奉錫( ゴ・ボンソク)
 BMW技術との出会いは楊平郡にあるダンノモ農場でした。まず、四年以上も牛舎の糞を出していないのに、農場主が靴を履いて牛舎に入って説明しているすがたにびっくりしました。また、牛のお尻に糞がついていないことにも驚きました。BMW技術の導入までには色々な事を勉強し、他の農場などにも見学に行きましたがBMW技術の導入に踏み切りました。一日に二トン生産できる生物活性水プラントを二〇一一年に導入しました。二五〇倍に稀釈した飲水を牛が飲用できるように、七二の農家にミックスライト(点滴稀釈器)を導入しました。牛の糞の量が半分ぐらいに減ってきていて、さらに堆肥化したものには放線菌の増殖が見ることができています。玉ねぎの生産にも使用しています。今後は親環境農業資材としての品質認証の取得や、循環農業の触媒としての使用、使用マニュアルの作成などが必要と考えています。

⑬BMW技術普及状況
  BMW技術協会 事務局長  秋山 澄兄
 二〇一二年に新しく導入されたプラントは一四プラントです。千葉県の北見畜産をはじめ、はじめてインドネシアでも導入されます。生物活性水プラントは一槽が一トンサイズのコンパクトタイプのものが導入されたことがひとつのポイントとなっています。コストを抑えることと、場所を大きく取らないという利点があります。
 アジアでの展開としては今年のインドネシアでの初の取り組みに加えて、上海でも新しいプラントを導入する計画を進めています。これまで以上に韓国やタイ、フィリピンとも連絡をとり連携を深めていきます。

懇親会
 一日目の懇親会は「奥地氏の講演にあったような地球の壮大なスケールを背負っているのはまさにBMW技術。そのことを自覚しながら先を見据えて進んで行かなければいけない。」と長崎浩BMW技術協会顧問の挨拶に始まりました。料理の食材はそのほとんどがBMW技術を実践する産地、高知県内で有機栽培実践されている方達のものが使用されました。お米から肉、野菜、果物、お茶、コーヒーにいたるまで安心・安全の食を美味しくいただくことができました。また、高知県名物の「よさこい」を高知中央高校の生徒さん達の指導の元に皆で踊るなどして盛り上がりました。
 二日目の懇親会は、和田知士大川村村長の挨拶ではじまりました。土佐名物「サワチ料理」をメインに、一日目と違って座敷ということもあり、ゆったりとした懇親会となりました。

視察
 三日目に行われた視察は、①土佐山②大川村③津野町④室戸ジオパークと四つのコースにわかれて行われました。各コースともに講演や事例発表などで学んだことの復習を含め、BMW技術を深めることができたのではないかと思います。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年01月01日15:25

 
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