【AQUA219号】山梨県・白州郷牧場 生活雑排水を原料にした新生物活性水プラント完成

山梨県・白州郷牧場 生活雑排水を原料にした新生物活性水プラント完成

報告 白州郷牧場 秋山 澄兄

 白州郷牧場(山梨県北杜市・椎名盛男代表)では去る二月、、研修センター施設内に、生活雑排水、加工場排水を原料にした新生物活性水プラントが完成、培養調整が開始されました。出来上がった生物活性水は、野菜栽培に有効活用され、プラントは、牧場で行っている子供達への教育活動施設としての利用も計画されています。
 完成した生物活性水プラントは、研修センターの台所の流し水、風呂・洗面所、トイレの排水、加工場(麹の製造を中心に、味噌、漬物などを製造)の容器等の洗い水、米磨ぎの水などが合併浄化槽に入り、一次処理された排水を原料に生物活性水をつくります。
 プラントは、コンクリート製の水槽で設置され、一槽約五トンの曝気槽(接触曝気槽、貯留槽含む)が六槽と、二槽の自然石槽で構成されています。生物活性水の製造量は、一日当り五〇〇リットル(排水の受け最大量も同じ)で、畑の潅水用、または液肥としての利用を考えています。
 白州郷牧場では、季節の子供自然体験学校「キララの学校」を開催していますが、研修センターは子供達の宿泊施設として利用され、生物活性水プラントは、学校期間中の子供達の教材としての利用も計画されています。自分たちが排出した『し尿(排水)』をBMW技術で処理し、畑に撒き、作物を栽培するといった、資源循環式農業の仕組みが子供達にダイレクトにわかりやすく伝えることができるのではないかと考えています。

 また、化学肥料の値上げの声を耳にしますが、有機堆肥、有機のミネラル資材なども同じで、決して安くはありません、むしろ化学肥料より高い場合もあります。
 世界の人口は、今後も増え続け、食料全体が不足することが明らかになっている中、食料を生産する肥料のほとんどを輸入に依存する日本では、いかに地域や身近にある資源を活用し、資源の循環を図ることが、重要な課題となっています。
 そこで個々の農家で、自分達が排出する生活雑排水を、有効利用する取り組みは、昨今の経済事情等なども考えるとかなり有効な取組みではないかと思います。昨年、茨城県で開催されたBMW技術全国交流会で発表された鉾田市の米川農園の家庭雑排水を原料に生物活性水をつくり、それを栽培に活用する取組みが良い例でしょう。
 施設導入の初期投資はありますが、日本の現状を理解し、長い目で未来を見据えて行った場合、結果的にどうなるかは一目瞭然ではないかと思います。


身近にプラントを持つことがBMの可能性を広げる

白州郷牧場 見田 由布子

 白州郷牧場には、日本で最初につくられたBMW生物活性水のプラントがあり、野菜栽培や養鶏などに利用してきました。十年ほど前から農場の耕作面積が拡大し、現状のプラントでは生物活性水の産出能力が足りなくなってきましたが、今年から新しいプラントが稼働すれば、もっと潤沢に生物活性水が使えるようになると思います。
 また以前のプラントは、スタッフが常駐する施設や加工所などから少し離れた位置にあるため、気軽に生物活性水を持ってこれませんでしたが、これからは距離が近くなることによって利用しやすくなると思います。

生物活性水はくらしの中で多彩に活用できる
 わたしは白州郷牧場の施設の掃除や、風呂にも生物活性水を使用しています。生物活性水を入れた風呂に入ると、あがってからも体が温かく湯冷めしません。生物活性水のミネラル分が温泉のような効果をもたらしているのだと思います。また、重曹入りの生物活性水を噴霧して掃除に利用しています。これはひどい油汚れなどをよく溶かしてくれます。石鹸で油汚れを掃除すると、あとでその石鹸を落とすのが大変ですが、重曹入り生物活性水の場合は、水やお湯ですっきりと流れていきます。
 その他にも、虫刺されや火傷、切り傷などの怪我に生物活性水を塗ると回復が早いことは、多くの人が体感しています。生物活性水は農業以外の利用法がまだまだあるのではないかと感じています。
 生物活性水を自家生成できるというのは大事なことだと思います。「買って使うもの」では利用がなかなか続きませんし、値段を気にしていてはふんだんには使えませんから。
 白州郷牧場には、麹、味噌、漬け物などをつくる加工所がありますが、そこからの廃物(昆布や漬け物の漬け汁など)を生物活性水プラントに入れたらどうなるのか今から興味津々です。たくさんのアミノ酸によってすごい生物活性水ができるかもしれません。また、麹づくりのとき、室に生物活性水を張ったり、米の浸漬に利用したり、といろいろな実験もしていきたいと思っています。
 白州郷牧場には、年間を通していろいろな人が訪れますが、炊事用の洗剤は石鹸を基本にしてやってきました。プラントの状態に悪影響を与えるため、今後はさらに個人のシャンプー、リンス類の持ち込み利用は禁止にしますが、実際どこまで排水に対する意識を高められるかはまだわかりません。

子供たちに伝えたいこと
 白州で二八年前から行っている自然学校「キララの学校」にやってきた子供たちに、都市における現状の下水処理について伝え、きちんと目で見て体験できる排水処理装置を作るべきだとは、長年思っていました。自分たちが排泄したものが水洗便所で流され、下水管を通り川を経て、処理施設で塩素殺菌されただけで飲用水になり、再利用され……最後は海に流れる。しかし、そのような処理とは別のやり方として白州のBMWプラントのような利用法もあるんだよ、ということは、子供たちに伝えていく必要があると思っています。とにかく今の現状を知らせないと変えようがありませんから。
 将来は、人糞も貴重な資源になると思います。新しいプラントには、牧場スタッフなど人間の糞尿を含めた生活雑排水も流れていきます。これは、あまり能力のない人間でも人糞をすれば他人の役に立てるというひとつの希望になるかもしれませんね(笑)。

気軽に生物活性水を使えることが大事
 微生物利用は、人間の長い歴史の中で、無理なく自然に利用されずっと継承されてきた、生活に根ざした技術ではないでしょうか。そのなかでもBMW技術は、特定の微生物だけを取り出すとか添加するということではなく、身の回りにある物を使って普通の状態で利用可能な技術だと思います。これからのBMW技術は、大規模な生産団体以外にも、家族経営の小規模農家などに生物活性水プラントがたくさん入っていくようなことで新しい可能性が開ける気がします。
 新しいプラントは位置的に白州横手地域の用水の上流にあります。たとえば、村の用水路に多量に生物活性水を流してみたりするといったいどうなるのか。よその田畑の作物が突然ものすごい収穫量になってしまったりするかもしれません…そういうイタズラも、これからはできますね(笑)。
 とにかくやってみなければわからないこともありますが、新しいプラントの稼働によって生物活性水がもっと身近なものになっていくと思います。

Author 事務局 : 2010年04月01日11:45

【AQUA219号】「BMファーマーズマーケット」第3回山梨県FarmShopたまご村

BMファーマーズマーケット」第3回山梨県FarmShopたまご村


 生産者が、農産物を地元で供給するという直売所やレストラン出店等の展開が全国各地で進められ、協会会員産地でも様々な取組みが行われています。そこで、協会会員産地が進めている直売所等の取組みを「BMファーマーズマーケット」と題してご紹介していきます。第三回は、山梨県「FarmShopたまご村」です。黒富士農場の向山茂徳代表(BM技術協会常任理事)にお話をうかがいました。


「たまご村」敷島店店舗情報
所在地:山梨県甲斐市島上条3103|2
電 話:055(230)9053
定休日:元日より3日間休業(それ以外は無休)
営業時間:午前9時~午後6時
(10月21日~3月20日は午前9時~午後5時)
販売品目:卵、加工品など
 http://www.kurofuji.com/


 もともと、父の代から塩山に卵の直売所はありましたが、九五年から名前を「FarmShopたまご村」に変えました。現在は甲州市の塩山、甲府市の小瀬、甲斐市の敷島、の三店舗に増え、合わせて年間一億七千万円くらいの売り上げです。店舗面積は、敷島店が約五〇平米、他二店もだいたい同じです。黒富士農場の三分の一強の卵が、このたまご村で販売されています。各店舗売り上げの七〇%は卵で、その他はケーキ類などの加工品や野菜。卵は放牧とゲージ飼、半々くらいの販売量ですが、単価が違うので売り上げでは放牧卵の方が大きくなっています。
 お店は通常、販売担当が二人、ケーキチームが二人のスタッフで運営しています。年中無休でひとつのお店で十人くらいのチームで回っています。お客さんはほとんどが地元の人で、使用目的も主にホームユース。店舗の場所もすこしひっこんだところだし最初から卵を買いに来る人しか来ません。だから、盆暮れの時期とかは多少違いますが、年間を通じてほとんど販売量がぶれない。安定して売れています。三軒の店もそれぞれ個性があって、あえて統一したカラーを出そうとも思っていません。
 宣伝も一度もしたことがありません。最初は、店の隣近所に卵を配っただけでのゼロスタート。たまご村は、卵を売るだけが仕事ではなく、農場で普段やっていることをお客さんに伝える、表現する場所として開設しています。黒富士農場がイメージできるように写真を飾ったり、お茶を飲んでもらったり、卵の試食をしてもらったり…。農場を知ってもらって、なおかつそれで売れればいいや、というスタンスです。そういう方がお客さんも安心して買っていってくれます。スーパーみたいに特売をやったりしないで、農家が農家らしくやっていたほうがいいわけだから。あえてイベントなどはしないのがうちのやり方かもしれない。店舗もお茶を飲むテーブルを増設したくらいで変えていません。卵は卵でしかないんだから、小手先の売り方でどうかなるかっていってもどうにもならない。うちは農場を磨くしかない。あくまで農場がベース、核なんです。
 卵のつくりかたに共鳴して安全性をメインで選んでくれる人もいれば、卵の味、おいしさで選んでくれる人もいる。味に甘みがあるとはよくいわれます。餌に砂糖を使っているんですか?と冗談もいわれる。発酵飼料を使っているから甘みが出てくるのはあると思うし、発酵飼料のノウハウは蓄積されている。
 でも餌をおいしくつくるなんて誰でもやっていることで、それを売りにしているわけではありません。背後にある、黒富士の森だとか水だとか、それを守る農業形態があっての価値だから。環境に関わって農業をやっていくのがBMW技術のいいところでしょう。
 農家が安心して食べられる卵をつくっている、近所の農家がそういうものをつくっているという安心感もあるのかな。そういったいくつかのファクターにお客さんが共鳴してくれていると思います。
 黒富士農場のバウムクーヘンは二〇年くらい前からつくっていたロングセラー商品ですが、甲府店をつくるときにケーキ工房「ヴィラ・ドッフ」もいっしょにつくりました。黒富士農場のロゴや字体は、農場の近所に住んでいたデザイナーの土器典美さんにつくってもらいました。
 黒富士農場での卵生産のほうでは、飼料米を飼料とした卵を始めています。方向とすればわざわざアメリカから買わないで済むならそれが一番。飼料の国内自給、最後はそこだろうと思います。

Author 事務局 : 2010年04月01日11:44

【AQUA219号】北海道「根釧みどりの会」会員3牧場に飲水改善施設が完成

北海道「根釧みどりの会」会員3牧場に飲水改善施設が完成
いずれの牧場でも牛糞の状態が改善

 北海道・根釧地区の「根釧みどりの会」(石澤元勝代表)会員酪農家の三牧場にBMW飲水改善プラントが一月に完成した。導入した牧場では、いずれの牧場でも、「牛の糞の状態が改善している」との報告があり、さらに搾乳時間が短くなった等との報告も寄せられている。今後「根釧みどりの会」では、導入後のデータ等を収集しながら、BMW技術の普及を進めていく予定だ。
 今回、飲水改善施設が導入されたのは、別海町の岩崎牧場、中標津町の三友牧場、標茶町の渡辺牧場の三牧場。いずれの牧場もマイペース酪農交流会(注1)の生産者を中心に、牛の健康とより良い環境を考える――を目的に、昨年組織された「根釧みどりの会」の会員が経営する牧場だ。同会設立の経過は(注2)の通り。
 岩崎和雄さんが経営する岩崎牧場は、飼育頭数五〇頭、草地面積六〇ha。BMW飲水改善システム導入後、「牛の糞の状態が明らかに変わってきている。以前より糞がふんわりとした感じになった」と岩崎さんは話す。
 三友盛行さんが経営する三友牧場(飼育頭数五〇頭、草地面積五〇ha)でも、飲水改善施設導入後、牛の糞の状態が変化している。三友さんは「牛の糞が『カルメ焼き』のような感じになってきた。BMW飲水改善システムによって、牛の胃の状態が良くなっていることは、間違いないだろう」と話す。
 今後の展開について、三友さんは「生物活性水づくりや堆肥づくりなど、BMW技術が体験学習できる施設があったら面白い。施設の設置を検討していきたい」と、話している。
 三友牧場では、一九九七年に、牧場の牛乳を原料に、チーズを製造する「三友チーズ工房」をオープンしている。奥さんの由美子さん手作りのチーズは、口コミやインターネット等で販売され、非常に人気が高い。由美子さんは、「春になり、青草を食べ、沢水を再現したBMWの水を飲んだ牛の牛乳で、チーズをつくることを楽しみにしている」と、飲水改善導入後の牛乳に期待を膨らませている。
 渡辺定之さんの経営する渡辺牧場は、飼育頭数八〇頭、草地面積は八〇ヘクタール。BMW飲水改善施設導入後、約二ヵ月が経った現在、同牧場では、前述の二牧場と同様に、糞の質が改善した他、搾乳時間が短縮されたことが確認されている。渡辺さんは「牛の乳の出が良くなったようだ。一頭当りの搾乳時間が平均三〇秒短くなったので、朝夕の搾乳時間が合計二〇分短縮した。これは酪農家にとっては、かなり大きなことだ」と話している。

(注1)マイペース酪農:「土・草・牛・自然の循環」を重視した酪農のあり方で、草地面積に応じた適正規模(一ヘクタールに親牛一頭)の経営を基本に、放牧を利用し、糞尿は完熟堆肥などにして草地に還元することで、環境や牛、人間に負荷をなるべく与えないようにする酪農スタイル。酪農の大規模化や配合飼料の多給などによって、牛の健康に負担をかけないようにする酪農スタイル。推進主体は「マイペース酪農交流会」で、月例の交流会などを行い、現在、一〇〇以上の生産者が交流している。

(注2)「根釧みどりの会」:一昨年、パルシステム生活協同組合連合会の「こんせん72牛乳」生産牧場である厚岸町の石澤牧場に、同連合会のレインボー・パル基金助成活動のよって、飲水改善施設が導入され、導入後、乳房炎の発生が減少し、発生しても、回復が早くなる等の効果が見られた。これをきっかけに石澤牧場を経営する石澤元勝氏が会員となっているマイペース酪農交流会の酪農家などにBMW技術に対する関心が高まり、生産者、BM技術協会、パルシステム連合会の三者で学習活動を展開することになった。昨年四月には、三者共催による「牛の健康と環境を考える学習会」を厚岸町で開催し、六月には、牧草の硝酸イオン濃度調査及び土壌分析調査を実施、このほかBMW技術に関する学習活動を随時行った。こうした学習活動を継続していくために、「飲水改善で、牛を健康に」「よりよい堆肥・液肥で、よい土を」「環境を守って、暮らしよい農村を」をスローガンに昨年一〇月に、「根釧みどりの会」が結成された。代表は石澤元勝氏、事務局長は、高橋昭夫氏。昨年一一月、茨城で開催されたBMW技術全国交流会で、石澤代表から「根釧地区での環境保全型酪農~マイペース酪農とBMW技術の取組み~」と題して、講演が行われた。

根釧みどりの会+パルシステム+BM技術協会+匠集団そら
   産直牛乳や酪農の課題、BMW技術の普及等、多岐にわたり意見交換


 二月二五日、パルシステム生活協同組合の那須豊産直開発課長と、㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部長、協会の礒田が、新たにBMW飲水改善施設が導入された別海町の岩崎牧場を訪問し、「根釧みどりの会」の石澤代表、高橋事務局長、会員の三友氏、岩崎氏らと、意見交換を行った。意見交換の内容は、こんせん牛乳開発の経過説明やパルシステム生協の産直活動内容、その課題と今後の方向性、酪農現場での大規模化による課題、牛乳の適正価格に関する意見、生産現場でのBMW技術活用内容や今後の普及等、多岐にわたった。
 パルシステムの那須課長からは、「昨年来、牛乳の産直を強化するため、マイペース酪農やBMW技術等について、勉強させていただいた。自給率向上を図るパルシステムの取組みの中で、マイペース酪農も含めた北海道本来の草地型酪農について、もう一度見直し、生産者との見える関係をきちんと築いていきたい。その中で、新たな商品開発も検討していきたい」と、今後の産直牛乳についての方向性が示された。併せて那須課長からは、パルシステムの新農業委員会で、マイペース酪農についての拡大学習会を実施したい意向が示され、「根釧みどりの会」への講師派遣が要請された。
 BMW技術については、「根釧みどりの会」で、今後、さらに普及していくこととなり、協会からは、乳房炎の発生率や、乳量等についてのデータ収集協力を「根釧みどりの会」に要請した。
 石澤代表からは、「今後も生協や消費者との交流や意見交換を行っていきたい。BMW技術については、まず、飲水改善を中心に普及し、ワンステップずつ階段を上っていきたい」との意向が示された。
(報告:礒田有治)

Author 事務局 : 2010年04月01日11:42

 
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