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2010年04月01日

【AQUA219号】山梨県・白州郷牧場 生活雑排水を原料にした新生物活性水プラント完成

山梨県・白州郷牧場 生活雑排水を原料にした新生物活性水プラント完成

報告 白州郷牧場 秋山 澄兄

 白州郷牧場(山梨県北杜市・椎名盛男代表)では去る二月、、研修センター施設内に、生活雑排水、加工場排水を原料にした新生物活性水プラントが完成、培養調整が開始されました。出来上がった生物活性水は、野菜栽培に有効活用され、プラントは、牧場で行っている子供達への教育活動施設としての利用も計画されています。
 完成した生物活性水プラントは、研修センターの台所の流し水、風呂・洗面所、トイレの排水、加工場(麹の製造を中心に、味噌、漬物などを製造)の容器等の洗い水、米磨ぎの水などが合併浄化槽に入り、一次処理された排水を原料に生物活性水をつくります。
 プラントは、コンクリート製の水槽で設置され、一槽約五トンの曝気槽(接触曝気槽、貯留槽含む)が六槽と、二槽の自然石槽で構成されています。生物活性水の製造量は、一日当り五〇〇リットル(排水の受け最大量も同じ)で、畑の潅水用、または液肥としての利用を考えています。
 白州郷牧場では、季節の子供自然体験学校「キララの学校」を開催していますが、研修センターは子供達の宿泊施設として利用され、生物活性水プラントは、学校期間中の子供達の教材としての利用も計画されています。自分たちが排出した『し尿(排水)』をBMW技術で処理し、畑に撒き、作物を栽培するといった、資源循環式農業の仕組みが子供達にダイレクトにわかりやすく伝えることができるのではないかと考えています。

 また、化学肥料の値上げの声を耳にしますが、有機堆肥、有機のミネラル資材なども同じで、決して安くはありません、むしろ化学肥料より高い場合もあります。
 世界の人口は、今後も増え続け、食料全体が不足することが明らかになっている中、食料を生産する肥料のほとんどを輸入に依存する日本では、いかに地域や身近にある資源を活用し、資源の循環を図ることが、重要な課題となっています。
 そこで個々の農家で、自分達が排出する生活雑排水を、有効利用する取り組みは、昨今の経済事情等なども考えるとかなり有効な取組みではないかと思います。昨年、茨城県で開催されたBMW技術全国交流会で発表された鉾田市の米川農園の家庭雑排水を原料に生物活性水をつくり、それを栽培に活用する取組みが良い例でしょう。
 施設導入の初期投資はありますが、日本の現状を理解し、長い目で未来を見据えて行った場合、結果的にどうなるかは一目瞭然ではないかと思います。


身近にプラントを持つことがBMの可能性を広げる

白州郷牧場 見田 由布子

 白州郷牧場には、日本で最初につくられたBMW生物活性水のプラントがあり、野菜栽培や養鶏などに利用してきました。十年ほど前から農場の耕作面積が拡大し、現状のプラントでは生物活性水の産出能力が足りなくなってきましたが、今年から新しいプラントが稼働すれば、もっと潤沢に生物活性水が使えるようになると思います。
 また以前のプラントは、スタッフが常駐する施設や加工所などから少し離れた位置にあるため、気軽に生物活性水を持ってこれませんでしたが、これからは距離が近くなることによって利用しやすくなると思います。

生物活性水はくらしの中で多彩に活用できる
 わたしは白州郷牧場の施設の掃除や、風呂にも生物活性水を使用しています。生物活性水を入れた風呂に入ると、あがってからも体が温かく湯冷めしません。生物活性水のミネラル分が温泉のような効果をもたらしているのだと思います。また、重曹入りの生物活性水を噴霧して掃除に利用しています。これはひどい油汚れなどをよく溶かしてくれます。石鹸で油汚れを掃除すると、あとでその石鹸を落とすのが大変ですが、重曹入り生物活性水の場合は、水やお湯ですっきりと流れていきます。
 その他にも、虫刺されや火傷、切り傷などの怪我に生物活性水を塗ると回復が早いことは、多くの人が体感しています。生物活性水は農業以外の利用法がまだまだあるのではないかと感じています。
 生物活性水を自家生成できるというのは大事なことだと思います。「買って使うもの」では利用がなかなか続きませんし、値段を気にしていてはふんだんには使えませんから。
 白州郷牧場には、麹、味噌、漬け物などをつくる加工所がありますが、そこからの廃物(昆布や漬け物の漬け汁など)を生物活性水プラントに入れたらどうなるのか今から興味津々です。たくさんのアミノ酸によってすごい生物活性水ができるかもしれません。また、麹づくりのとき、室に生物活性水を張ったり、米の浸漬に利用したり、といろいろな実験もしていきたいと思っています。
 白州郷牧場には、年間を通していろいろな人が訪れますが、炊事用の洗剤は石鹸を基本にしてやってきました。プラントの状態に悪影響を与えるため、今後はさらに個人のシャンプー、リンス類の持ち込み利用は禁止にしますが、実際どこまで排水に対する意識を高められるかはまだわかりません。

子供たちに伝えたいこと
 白州で二八年前から行っている自然学校「キララの学校」にやってきた子供たちに、都市における現状の下水処理について伝え、きちんと目で見て体験できる排水処理装置を作るべきだとは、長年思っていました。自分たちが排泄したものが水洗便所で流され、下水管を通り川を経て、処理施設で塩素殺菌されただけで飲用水になり、再利用され……最後は海に流れる。しかし、そのような処理とは別のやり方として白州のBMWプラントのような利用法もあるんだよ、ということは、子供たちに伝えていく必要があると思っています。とにかく今の現状を知らせないと変えようがありませんから。
 将来は、人糞も貴重な資源になると思います。新しいプラントには、牧場スタッフなど人間の糞尿を含めた生活雑排水も流れていきます。これは、あまり能力のない人間でも人糞をすれば他人の役に立てるというひとつの希望になるかもしれませんね(笑)。

気軽に生物活性水を使えることが大事
 微生物利用は、人間の長い歴史の中で、無理なく自然に利用されずっと継承されてきた、生活に根ざした技術ではないでしょうか。そのなかでもBMW技術は、特定の微生物だけを取り出すとか添加するということではなく、身の回りにある物を使って普通の状態で利用可能な技術だと思います。これからのBMW技術は、大規模な生産団体以外にも、家族経営の小規模農家などに生物活性水プラントがたくさん入っていくようなことで新しい可能性が開ける気がします。
 新しいプラントは位置的に白州横手地域の用水の上流にあります。たとえば、村の用水路に多量に生物活性水を流してみたりするといったいどうなるのか。よその田畑の作物が突然ものすごい収穫量になってしまったりするかもしれません…そういうイタズラも、これからはできますね(笑)。
 とにかくやってみなければわからないこともありますが、新しいプラントの稼働によって生物活性水がもっと身近なものになっていくと思います。

Author 事務局 : 2010年04月01日 11:45

 
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