自然学を実践する 「土と水の学校」報告 【AQUA196号】

~自然学を実践する~「土と水の学校」が、3月に東京と山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼで開催されました。
東京では初めての開催となった「土と水の学校」ですが、協会会員の生活クラブ連合会とBM技術協会との共催で、実施されました。
ファーマーズクラブ赤とんぼでは、同クラブの技術開発委員会が野菜の栽培を担う女性陣が企画する「かあちゃん集会」とのドッキングで、開催されています。また、2008年度の「土と水の学校」の企画内容や開催方法を検討する実務者会議も3月に東京で開催されました。これらの内容を報告します。

生活クラブ連合会・BM技術協会共催 ~自然学を実践する~「土と水の学校」in東京    
安定的な食糧確保に向けた循環型農業技術の確立を
生活クラブ連合会開発部 鵜沢義宏

 3月7日、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(以下、生活クラブ連合会)とBM技術協会の共催による~自然学を実践する~「土と水の学校」BMW技術研修会が、東京・外神田で、『BMW技術と有機栽培理論・初級編』と題して、開催されました。
 同研修会には、生活クラブ連合会から、米の主要六産地の生産者や関係者、組合員、職員合計38人、BM技術協会からは関東及び関東周辺の個人・法人会員15人の参加があり、総勢53人が研修会を受講しました。
 最初に、BM技術協会の礒田有治事務局長から、「BMW技術の概要と活用法」、「『土と水の学校』の目的と実践例」と題した講演が行われました。BMW技術は、自然の森をモデルに人工的に「生態系の土や水」を再現する技術であり、地域の未利用資源を有効活用し、耕・畜連携の循環型農業を構築できる技術であること等が解説されました。また、「土と水の学校」に取組む会員産地では、高収量・高品質の作物栽培実績が上がっていることも報告されました。
 続いて、「土と水の学校」講師の小祝政明氏から「BMW技術と有機栽培理論」(植物生理と土壌分析に基づく作物栽培とBMW技術)と題した講演が行われました。現在の野菜や果物は、50年前と比べ、著しく栄養価が下がっていること。栄養価があり高品質で多収穫栽培を行うためには、植物生理の仕組みをよく知り、正しい土壌分析と施肥設計が重要であること、有機物の液状化技術としてBMW技術は極めて有効であること等が、光合成によって、植物が生長していく仕組みを例に上げながら分かりやすく解説されました。
 ところで、2007年は、農政改革、米価格の大幅下落と日本の米生産にとっても、また、穀物の高騰からの食料品の値上げラッシュなど消費者にとっても、今後の食糧問題を考える上での大きなターニングポイントとなりました。8月からの市場相場は不落による米価引き下げが連鎖的に行われ、政府による緊急需給対策が行われた事で、米価は下げ止まったものの、米価下落からの生産基盤の弱体化は先延ばしにされたに過ぎません。
 一方で、世界の食糧事情は悪化の一途を辿っています。人口増加や、中国やインドの発展による穀物需要の高まりは、バイオ燃料の増産と共に穀物の高騰を招いています。既に、一部の農産物輸出国では輸出規制も行われており、日本の食糧生産基盤の弱体化が進めば、私達の生活が根本から揺るがされる事は間違いありません。
 このような情勢の中、私たち生活クラブ生協は、北海道、岩手、山形、栃木、千葉、長野に米の提携産地を形成し、「将来に渡る安定的な食の確保」を目的に様々な取り組みを行ってきました。食糧自給率を引き下げている要因の一つである、畜産飼料の国産化を進めるに当っては稲のホールクロップサイレージや飼料米の生産により水田機能の保全を目論んでいます。価格面など課題は大きいものの、「米の需要の拡大」という視点で見ても、今後の生産基盤の維持を図る大きな試みではないでしょうか。
-地域資源を生かした循環型農業と安定的な食糧生産に有効な技術-
 前置きが長くなりましたが、今回の「土と水の学校」BMW技術研修では、重要な二つの課題を頂いたように思います。一つは、地域資源の有効な活用ということ。これまで、減農薬、減化学肥料という言葉は安全・安心を志向する消費者に向けた言葉としての意味が大きかったと思います。しかし、前に触れたように、食糧に留まらず様々な資源が中国やインドに集まる中で、肥料、農薬の価格も上昇を続けています。この様な情勢の中で、将来に渡る安定的な食糧生産を支えるのは、地域資源の有効活用です。その意味でBMW技術の活用は非常に有効なものと思います。また、正しい土壌分析と植物生理に基づく栽培技術の推進は、外部からの資源に頼らない循環型農業による安定的な食糧生産にも有効なのではないのでしょうか。もう一つは、植物の健全な生長を図るということ。稲作農家には「生産過剰の中で、多収になったって・・・」という声もあるにはあります。しかし、何よりも健康で強い稲作りは、外部からの資源の浪費といえる「無駄な農薬」を使わない技術とも言えます。また、視点を変えれば、食糧問題が深刻化する中で、長期的には多収と言う技術は大きな意味を持っています。主食としての米に加え、家畜の餌、燃料など米の可能性は広がりつつあります。小麦を始めとした穀物の高騰と確保に向けた国際競争により、遠くない将来に米の多収は、強く求められていくものです。
既に、減農薬や環境保全という視点でインセンティブが働く市場状況ではなくなってきています。「食べ物は安くない」という消費者の理解と共に、地域資源の有効な活用による安定的な生産の確保という、生産者にとってもメリットを感じられる取り組みがますます重要になっていくのではないのでしょうか。その意味で今回の「土と水の学校」は非常に有意義な研修となりました。

~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座 
健康野菜栽培の基礎を学習   
山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼ 武田 和敏 

 3月13日(木)、山形県川西町の「ファーマーズクラブ赤とんぼ」事務所で、今年度初開催となる~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が行われ、32人の参加(米沢郷グループ女性部22名参加)があり、小祝政明先生を講師に開催しました。
 昨年度は、将来の野菜産地化を見据え、女性生産者を中心に、野菜栽培について基礎から勉強して取組みましたが、女性参加者から学習会の話が女性部内で広がり、今回は『かあちゃん集会』との共催による「土と水の学校」になりました。
 『かあちゃん集会』は、父ちゃんと一緒に農業をやっているかあちゃんたちも、米や野菜・環境問題等の新しい情報を得ながら、米沢郷グループの中で交流を深めるために開催しているもので、今年五年目を迎えました。
 今回の「土と水の学校」は、女性部の要望に加え、野菜栽培拡大に向けて有機栽培の基礎と、野菜栽培での多収穫と、高食味・高品質・栄養価について学習しました。参加したほとんどの女性が野菜を栽培しているため、小祝先生のわかり易い説明を熱心に聞きながらわからないところをその都度質問し確認しました。
 講義では、化学肥料使用の増加により、野菜の硝酸イオン値が高くなり胃ガンなどで亡くなる人の増加や若年性糖尿病発症の危険性があることに加え、硝酸イオン値の基準値として、ヨーロッパでは2000ppm以上は発ガン性が認められ制限されていることなど、健康に関わることから学習しました。野菜を栽培するために必要な条件として、初めに土壌の状態を考えた場合、作物は土中で必要とする酸素が充分に吸える状態なのか、団粒化するためにはどうすれば良いのかなど参加者に実際の栽培状況を思い浮かべてもらいながら、堆肥や肥料使用のほか微生物に関して学習しました。野菜栽培は、土づくりが基本で堆肥等のほかにミネラル分の必要性について、植物と人体に対しての働きに関する内容や50年前の栄養価との比較でビタミン・鉄分が激減していることなど女性にとってはとても関心ある内容でした。
 全体の質疑応答では、アスパラ栽培で、良いものを収穫するためには、収穫時期から逆算して施肥し、根に養分をためておくことや、収穫後余分な芽を摘むことなどや、ブロッコリーについては規格に合わせたつくり方をするなどのアドバイスをいただきました。たくさんの質問があり今後の栽培に対する意欲とかあちゃんパワーが感じられました。
 お昼は、各自農薬・化学肥料をほとんど使用しない食材を使った郷土料理を一品ずつ持ち寄った豪華な昼食会がありました。かあちゃんが安全な食材を使用し、思いを込め工夫された手料理はとても美味しく格別でした。この喜びを多くの人に広げていきたいと思います。
 
~自然学を実践する~「土と水の学校」 2008年度運営及び企画・開催等検討会議を開催

基礎講座と応用講座に分類、品目別・課題別開催を検討

 3月5日、東京・飯田橋で2008年度の~自然学を実践する~「土と水の学校」の運営や企画・開催を検討する会議がBM技術協会主催で開催されました。会議には、全国からこれまでに「土と水の学校」を開催している会員産地や地方協会、今後、開催を検討している会員団体等の担当者ら、11団体、15人が参加し、協議を行いました。
 会議では、冒頭、議長に伊藤幸蔵常任理事が推薦され、全員一致で承認され、事務局の礒田から「土と水の学校」のこれまでの経過と課題が報告されました。
 続いて、各参加団体から、これまでの成果や課題等の各地の現状報告や、「土と水の学校」に関する要望等について、報告が行われました。小祝政明氏を講師とする有機栽培講座については、これまでに取組んできたどの団体においても、収量や品質の向上、病気の抑制等で成果が上がっていることが確認されました。
 今後の展開については、「地域で新たな組織を形成して『土と水の学校』に取組みたい」、「BMW技術の考え方を統一していきたい」「新たな品目で取組みたい」「広く耕種農家を対象に開催したい」「農家の技術交流会を開催したい」等の様々な意見がありました。
 これらの報告、意見を受け、伊藤議長からは、「『土と水の学校』に小祝氏に関わっていただき、良かったと思っている。これまでのBMの取組みを再度検証してもらう良い機会になり、かつ小祝氏の技術とBMの技術は互いに補い合っていける。小祝氏の話を聞くとまた、BMW技術の話に戻ってくる。関心のあることなら、新たな講座をどんどん作っていけばよい」とのまとめがあり、今後の「土と水の学校」の開催方法について、提案が行われ、協議が行われました。
 その結果、講座を基礎講座と、応用講座に分類し、基礎講座は、①BMW技術理論②BMW技術活用(畜産・耕作)農法、③有機栽培講座等をテーマに、年に数回、東京等で開催。応用講座は、①各産地別に講師を派遣し、それぞれのテーマで開催②栽培品目別に各産地持ち回りで開催③各課題別に開催、という方向で整理し、検討することになりました。
 このうち、各産地持ち回り開催の品目別開催候補については、米、野菜、果樹が上げられ、課題別開催候補については、エコ・フィードが上げられており、今後、実施に向けて検討していくことになりました。  (報告:礒田有治)

Author 事務局 : 2008年05月01日00:58

「有機認証取得がはじまりました。」第7回 【AQUA196号】

山形県米沢市  遠藤保彦さん

 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。アクアでは、有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、どう捉えているかインタビューを行っています。第七回は、山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼで稲作に取組む遠藤保彦さんです。 (まとめ:礒田有治)

 ――はじめに稲作で、有機栽培を始めたきっかけをお聞かせください。
遠藤 動機は、安全、安心です。地域の環境的な問題はもちろん、安全は、ちゃんとした生産の履歴とか、ちゃんとした農産物であるということを第三者機関によってきちんと認証をしてもらい、それを食べる人に伝えるということです。
 農薬を使用すれば、七〇年とか八〇年とか人が生きていく中で、何万分の一の確率であっても、食べる人や自分の体に、何らかの形で影響が出る可能性があります。安全性とは、そういう食べ物をつくってはいけないということです。栽培者自身も、農薬を散布することによって、自分の体がダメになります。慣行栽培で栽培面積が大きければ、農薬の使用量も余計になり、生産者の体にも大きな影響がでると思います。
 安心というのは、自分のつくった農産物を、あの人のものだったら、安心して買えるという、安心と信頼です。なおかつ、自分の名前で生産履歴を出して、JAS有機の認証を取得していれば、消費者の方、栽培者の顔が見えるように思えます。地域環境、食べる人、生産者という関係性の中でやはり、安心・安全を掲げて有機のものをつくろうと思ったのがきっかけです。
――いつ頃から取組み始めたのですか。
遠藤 減農薬・減化学肥料栽培は、父がすでに取組んでいましたので、分かりませんが、自分は一四、一五年くらい前から、減農薬減化学肥料から始め、赤とんぼで言うA4基準(※注1参照)の除草剤一回栽培を経て、無農薬A3から有機A1へと、徐々にステップアップしていきました。無農薬にしたのは一〇年くらい前だったと思います。ちょうど、赤とんぼの設立と同じくらいだと思います。その時、無農薬米を本当につくれた時の自信というか、今も本当につくれたときの嬉しさの感激が、忘れられません。無農薬栽培最初の年の収量は六俵でしたが、本当にできたという自信が持てました。無農薬栽培では、当然、苗も無農薬でつくれなければいけない。その苗をつくることができたということがうれしかった。今でも課題はありますが、とりあえず本田に植えられるだけのものはできるようになりました。
――有機栽培をやっていて、どんな点に難しさを感じますか。
遠藤 やっぱり親父みたいに、熟練して、能力や技術があっても、長年、農薬を使ってやってきた人には有機栽培は無理だと思います。これから無農薬を始めるというのは、多分、技術的にも考え方としても難しいのではないか。かえって何もわからない人、新規加入で、まず農業を全然知らない人の方が、やれるのではないかと思います。チャレンジが出来るし、新しいこともできると思う。親父のようにやってきた人には農薬を使わなければ、つくれないっていう頭があるから、色々な人に勧めても、俺は出来ないって言われます。
――有機認証を取る上で苦労や難しさはどんな点ですか
遠藤 認証は、赤とんぼに、ご指導ご協力をいただいたおかげで、できたと思っています。多分、個人では出来なかったと思います。赤とんぼでは、専用の農業機械を生産者に貸し出したり、様々な面で生産者をサポートしてくれています。例えば、温湯による種子消毒や種まき等も、農家同士と職員とが共同で行ったり、培土づくりも赤とんぼでやっています。私はポット育苗も行っていますが、有機栽培専用の種まきの機械や、紙マルチとポット用の田植え機も、すべて赤とんぼに、借りています。それらを個人で揃えるのは経済的に難しいし、サポート体制があったから、認証がとれたと思います。
 また、普通の田植え機で無農薬栽培を行っている水田もありますが、それだと、横の株間は、機械では除草できません。しかし、ポットで栽培した苗で一坪当り三八株植えにすると、株間を縦横、除草機が使用できるので作業が楽になります。
――そういう栽培技術についても、赤とんぼでサポートしてくれるのですか。
遠藤 そうですね。マニュアル書があるので、一定に技術は確立しています。あと肥料や土壌改良剤も全部ではありませんが、統一になっていて、だいたい皆、同じような米ができると思います。
――有機栽培では、どんな点にやりがいがありますか。
遠藤 サッカーとかバレーボールとか陸上駅伝とか、色々なスポーツを見ていますが、何にでも、頂点ってあるじゃないですか。私の頂点は、有機栽培で、自分が納得するくらいの収量と食味があるのが自分の頂点だと思うので、そこを目指しています。まだ技術が足りない部分がかなりありますし、毎年、天候にも左右されるので、その辺を色々考えながら、自分の目指すところを極めたいと思います。そういう意味では、とてもやりがいがあります。
――課題はどんな点ですか。
遠藤 課題は山積みです。昔の人は苗半作と言いましたが、育苗が課題です。やはり、苗がいいと活着がいいし、田んぼの土壌の状態がある程度悪いところでも、そこそこ、よく育ってくれます。苗と、土壌の状態が良くないと、最初の出足がよくなくて、うまくいきません。土づくりも課題です。調子の悪い田んぼは、前年度の秋から堆肥をまいたりして、秋耕するように心がけてやっています。有機肥料もコントロールが難しく、肥料をまいても、すぐには効いてきません。すぐに効いてこないので、施肥量を増やすと、今度は多すぎたりしてしまいます。その辺が、なかなか難しい。
――田んぼの状態は変わってきましたか。例えば何か、生きものが増えてきたとか。
遠藤 カブトエビですね。五、六年前から住み着かないかなと、堆肥が沢山入っている田んぼにカブトエビを三〇匹くらい放しました。でも、その放した田んぼの反対側の田んぼに、どんどん跳ねていって、そっちの方で二、三倍に増えていました。去年あたりから田んぼのあちこちで見えるようになってきて、今年はかなり増えてきています。赤とんぼは大発生しています。その他にトノサマガエルやツチガエル、ドジョウ、フナ、コイ、カジカもたまに見かけます。マムシ、ヤマカカシの等の蛇もいます。
――大手量販店で有機農産物取扱い拡大の動きがありますがどう思われますか。
遠藤 量販店で、果たして、自分達の思いや苦労が伝わるのか疑問です。でも、きちんと情報が伝わり、評価して買ってもらえるなら良いと思います。やっている農家の人たちは皆、本当に草取りとか、苗を作る段階とかで、辛い思いしていると思います。それを評価してもらい、それに見合った価格でなければ、農家の人たちは、たぶんつくらないと思います。
――県とか行政とかに対しては、要望はありますか。
遠藤 米沢市では、減反のカウントに際して、特別栽培は書類がなくても認めてもらえますが、無農薬については、書類を提出しなければ認めてもらえません。また、土づくりには堆肥が必要ですが、堆肥を購入し散布すれば、ダンプや散布の手配にも、かなりの経費がかかります。できれば堆肥を散布する人に対して、補助制度ができないのか、また、耕作面積に対する補助制度があれば、様々な面で、活用できるとは思います。
 しかし、何でも農家に補助金を出すのはダメだと思います。米の値段も安くて、補助金が打ち切られたら、みんな終わりになります。国は、方針がコロコロ変わるから、自分は、補助金に余り頼りたくない。むしろ、補助金制度より、米の価格を、最低限の見合った価格、昔で言えば、生かさず殺さずの価格くらいに設定してもらえばよいと思います。国は一〇町歩くらい米を生産している普通の農家の実態と、声を聞くべきですね。成功していない人がほとんどだから。農政は、補助金を出すので無く、平等に米の価格を配分するべきだと思います。
 (注1:)ファーマーズクラブ赤とんぼの米の格付け。A1は有機、A2は転換期、A3は無農薬、A4は除草剤1回

Author 事務局 : 2008年05月01日00:56

西日本BM技術協会と大分BM技術協会共催のBM研修会を開催 【AQUA196号】

九州の岩石と水の関係、やまなし自然塾の発酵飼料づくり等を研修

 3月14日、西日本BM技術協会、大分BM技術協会共催による研修会が熊本県阿蘇町の内牧温泉・阿蘇プランザホテルにて開催されました。
 当日は、両協会会員の生産者や生協関係者など35人が参加しました。今回の研修会は、岡山大学地球物質科学研究センター准教授の奥地拓生氏による「日本列島の形成と九州地方の岩石と水」、協会常任理事の(株)山梨自然学研究所代表取締役・向山茂徳氏による「農と環境―土と水と食を考える」・「生物活性水によるクロレラの培養と養鶏飼料化実験~クロレラを鶏の飼料にする研究~」と題した講演が行われました。研修会は、はじめに協会常任理事で西日本BM技術協会の荒木隆太郎会長から研修会開催の挨拶の後、両氏の講演がありました。

講演「日本列島の形成と九州地方の岩石と水」
岡山大学地球物質科学研究センター 准教授 奥地 拓生 氏

 岡山大学の奥地准教授からは、「九州の阿蘇山の火山活動により九州全土だけでなく山口県、愛媛県まで噴火により飛ばされてカルデラができた。新しい地質時代に九州全域の土は阿蘇の石があることにより農業生産が支えられている」「九州山地にある石灰岩は、はるか南の温かい浅い海でつくられたものが、大陸移動により現在の九州まで運ばれてきた。」「カンラン岩が溶けてかたまって玄武岩になり、それが溶けて花崗岩、安山岩に変わっていく。このときミネラル成分の濃縮が起こる」「阿蘇の周辺には湧水がたくさん有る場所でもある」「阿蘇が火山灰と水を供給する山である。阿蘇の地下で生きものが使える水が作られている」――等、阿蘇の火山活動と岩石の関係が、九州の土と水をつくってきたこと、BMW技術は、こうした自然界の営みを人工的に再現しているとの講演をいただきました。

講演「農と環境―土と水と食を考える」

「生物活性水によるクロレラの培養と養鶏飼料化実験~クロレラを鶏の飼料にする研究~」

(株)山梨自然学研究所 代表取締役 向山 茂徳 氏

 (株)山梨自然学研究所の向山代表取締役からは、BMW技術と活動について、「BMに取り組んで約20年になる。最初に山梨県で、今日の全国交流会のもとになる拡大幹事会が開催された。私が経営する採卵養鶏の黒富士農場は、最初は量産型の鶏舎だったがBMW技術と出会ってからは平飼いに移行してきた。農場の財産は場内を流れる沢水。農場を磨くのは感性が必要。卵をおいしく食べてもらうためには、食べる人が農場の風景を思い浮かべられるような農場にしたい」「山梨県内でのBM技術活動は、やまなし自然塾というブランドで塾活動を始めた。最近は農を中心に食文化、医、教育などにかかわる活動をしている。小学校の社会科の授業で、農場で子供たちを、鶏と触れさせて、その体温を感じてもらっている」「会員の奥さんたちにも活動に参加してもらっている」――等の報告がありました。
 また、現在、畜産で課題となっている飼料については、「5年くらい前から発酵飼料作りに取り組んでいる。生物活性水をベースに使って、オカラ、正油の絞りカス、オキアミ、味噌の押し出し、菜種油の廃油など、地域にある未利用資源を使って作っている。ヨーグルトや納豆菌を利用して発酵させている」「クロレラの培養は二酸化炭素と太陽光と生物活性水を原料に作っている。発酵飼料も栄養分析や菌、アミノ酸のデータをとっている。乳酸菌、納豆菌はサルモネラに対して有効」――等の実践研究報告が行われました。
 BMW技術に早くから取り組んできたやまなし自然塾の活動は、農畜産物の生産だけではなく、農を取りまく文化にも活動のはばを広げてきたことが分かりました。
 研修会の翌日は、奥地氏の講演を受けて、阿蘇のカルデラを見学に行きました。カルデラを一望に見渡せる大観望では、カルデラの形成の仕組みなどを、奥地氏から丁寧に説明を受け、改めて阿蘇の雄大な自然に驚きました。 (報告:星加浩二)

Author 事務局 : 2008年05月01日00:54

BMW技術で実現する 水の浄化、自給自足の定年帰農生活、高品質作物生産 【AQUA196号】

~千葉BM技術協会主催、茨城BM自然塾視察研修会報告~

 去る二月二三日、千葉BM技術協会主催による茨城BM自然塾視察研修会が開催され、酪農や水田、産業廃棄物の堆肥化、定年後の自給生活、耕作農業等にBMW技術を活用している四つの現場の視察研修と会員間の交流が行われました。この視察研修会は、千葉BM技術協会が、協会会員の先進的な取組みを研修する目的で開催されたもの。今回は、①BMW技術による水田の多目的利用②クリーンエネルギーと家庭雑排水を利用した循環型「農のあるくらし」③BM堆肥と家庭雑排水を原料にした生物活性水利用の有機・高品質サツマイモ生産――等を主な視察テーマに実施されました。
 研修会開催に当っては、茨城BM自然塾、BM技術協会、㈱匠集団そらの協力をいただき、千葉BM技術協会会員をはじめ、協会会員関係者、地元の茨城BM自然塾関係者ら、総勢六二人が参加する視察研修会となりました。
 当日は、最初の視察先、茨城町の清水牧場に参加者が集合し、向後武彦千葉BM技術協会会長、協会常任理事の清水澄茨城BM自然塾々長、石澤直士BM技術協会理事長、鈴木孝雄前千葉BM技術協会会長、濱口廣孝㈱ジーピーエス相談役が挨拶に立ち、研修会がスタートしました。
●茨城町・清水牧場
地元・涸沼の浄化への取組みや、エコ・フィードのつくり方を研修
 清水牧場では、まず、清水裕一氏から、同牧場の概要が説明されました。続いて、清水塾長から、シジミの産地でもある地元茨城町の涸沼の水と生き物資源を守るために、地域の人々に呼びかけ、具体的な活動に取組むことや、清水塾長が実験してきたBMW技術を活用した水田の浄化機能等が肥沼の浄化に活かせることが説明されました。
 また、飼料自給の取組みとして、地域ででるカット野菜の残渣を利用した発酵飼料づくりの実践事例(ジャガイモのサイレージづくり)が参加者に披露されました。清水熟長からは、野菜を原料にしたサイレージづくりの方法が具体的に説明され、参加者は、手に取って、臭いをかいだり、「どのような材料なら可能か」「つくり方のポイントは」等の質問を行っていました。清水牧場では、今後、本格的にこのカット野菜残渣を利用したサイレージづくりに取組むため、製造場所の整備等、準備が進められていました。
●水戸市・エコファクトリー
~悪臭防止と良質堆肥づくり~野菜残渣の堆肥化に生物活性水を利用
 続いて、水戸市の廃棄物処理場の㈱エコファクトリーを訪問しました。食品残渣等の中間処理場として野菜クズ等の堆肥化を昨年から行っていますが、堆肥化処理過程で悪臭が発生し、県から指導を受け、この対策として昨年一〇月に生物活性水施設を導入し、堆肥づくりに利用するようになったそうです。現在は、県の指導をクリアし、悪臭もなく、良質な堆肥づくり生産が行われ、堆肥は、ゴルフ場等に活用される予定です。
●会員間の交流が行われた昼食会
 エコファクトリー視察後は、涸沼湖畔で、昼食交流会が行われました。千葉BM技術協会の渋澤温之副会長(生活協同組合パルシステム千葉専務理事)が「今日の視察研修内容を、今年、千葉で開催される第一八回BMW技術全国交流会に生かしたい」と挨拶し、その後、参加者全員の自己紹介が行われ、千葉BM技術協会と茨城BM自然塾、BM技術協会会員・関係者の交流が行われました。
●鉾田町・田中一作邸
定年帰農の生態系と一体化した自給自足生活
 昼食後は、鉾田町の田中一作さん宅を訪問しました。田中さんは、一九九五年に長年勤めた会社を早期退職し、理想としていた自給自足生活を奥さんと二人で始めました。茨城BM自然塾の農産物を通じて、清水塾長と知り合うことになった田中さんは、清水塾長の話を聞く中で、BMW技術にほれ込み、翌九六年に、家庭雑排水を原料にした生物活性水づくりに着手しました。同時に、清水塾長の指導で、生物活性水が流れ込む一〇坪の水田づくりや、水田で浄化された水で採卵鶏を飼い、家庭菜園にも生物活性水を利用する循環型の自給生活に取組み始めました。水田には、フナやドジョウなどが大量に増え、時々、田中さんの食卓にも昇るそうです。生物活性水が流れ込む水田には、モチ米が毎年栽培され、「毎年、約三〇キロの収穫がある(反当換算で、一三~一四俵)立派な稲が育ちます」と田中さんは話していました。採卵鶏は、七〇羽ほどで、卵は自家消費以外の卵は、知人等に販売されているそうです。現在三年ほど飼育している鶏は、参加したプロの養鶏家も驚くほど、非常に若々しい鶏でした。
 生物活性水の原料となる生活雑排水が流れ込む浄化槽を見ると、完成した生物活性水の一部が戻されているため、臭いも汚泥もなく、槽内には巻貝がびっしりと生息していました。
 田中さん宅では、現在、太陽光発電が導入され、オール電化住宅となっていました。このため、ガスの使用もなく、二酸化炭素を発生させないクリーンな生活が実現されています。エネルギーや、土地の水や土、微生物を含めた生き物が織り成す生態系の循環の中に人のくらしが溶け込んだ田中さんご夫妻の生き方に、参加者一同、感心するばかりでした。
●鉾田町・米川農場
 BM堆肥と家庭雑排水原料の生物活性水で、高品質サツマイモ生産
 田中さん宅を後に、次に同じ鉾田町で、サツマイモやニンジンを生産する米川農場に向かいました。農場主の米川修さん宅にも、生活雑排水を原料にした生物活性水施設が設置されていました。米川さんからは、「清水牧場で生産されるBM堆肥と生物活性水、二年前から協会で取組んでいる『土と水の学校』で習得した施肥設計を活用したサツマイモやニンジン栽培を五町歩ほど取組んでいます」との説明がありました。この栽培に取組んだ結果、サツマイモやニンジンの大きさが揃い、出荷率が非常に向上しているそうです。
 参加者には、米川農場産のサツマイモで、「焼き芋」が振舞われましたが、「とても甘くておいしい」「お菓子そのものを食べているみたい」と、大好評でした。一方、千葉BM技術協会会員生産者の方々は、米川さんに、その栽培方法を詳しく質問していました。
 この日、午後からは、春一番が吹き、米川農場に到着した時には、砂煙で前が見えなくなるほどでしたが、参加者一同、熱心に、米川さんの説明に聞き入っていました。
 最後に、向後千葉BM技術協会会長から、今回の視察を受け入れてくれた茨城BM自然塾に、お礼の挨拶が行われ、視察研修会を締めくくりました。
(報告:千葉BM技術協会副会長 礒田有治)

Author 事務局 : 2008年05月01日00:49

 
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