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2008年05月01日

自然学を実践する 「土と水の学校」報告 【AQUA196号】

~自然学を実践する~「土と水の学校」が、3月に東京と山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼで開催されました。
東京では初めての開催となった「土と水の学校」ですが、協会会員の生活クラブ連合会とBM技術協会との共催で、実施されました。
ファーマーズクラブ赤とんぼでは、同クラブの技術開発委員会が野菜の栽培を担う女性陣が企画する「かあちゃん集会」とのドッキングで、開催されています。また、2008年度の「土と水の学校」の企画内容や開催方法を検討する実務者会議も3月に東京で開催されました。これらの内容を報告します。

生活クラブ連合会・BM技術協会共催 ~自然学を実践する~「土と水の学校」in東京    
安定的な食糧確保に向けた循環型農業技術の確立を
生活クラブ連合会開発部 鵜沢義宏

 3月7日、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(以下、生活クラブ連合会)とBM技術協会の共催による~自然学を実践する~「土と水の学校」BMW技術研修会が、東京・外神田で、『BMW技術と有機栽培理論・初級編』と題して、開催されました。
 同研修会には、生活クラブ連合会から、米の主要六産地の生産者や関係者、組合員、職員合計38人、BM技術協会からは関東及び関東周辺の個人・法人会員15人の参加があり、総勢53人が研修会を受講しました。
 最初に、BM技術協会の礒田有治事務局長から、「BMW技術の概要と活用法」、「『土と水の学校』の目的と実践例」と題した講演が行われました。BMW技術は、自然の森をモデルに人工的に「生態系の土や水」を再現する技術であり、地域の未利用資源を有効活用し、耕・畜連携の循環型農業を構築できる技術であること等が解説されました。また、「土と水の学校」に取組む会員産地では、高収量・高品質の作物栽培実績が上がっていることも報告されました。
 続いて、「土と水の学校」講師の小祝政明氏から「BMW技術と有機栽培理論」(植物生理と土壌分析に基づく作物栽培とBMW技術)と題した講演が行われました。現在の野菜や果物は、50年前と比べ、著しく栄養価が下がっていること。栄養価があり高品質で多収穫栽培を行うためには、植物生理の仕組みをよく知り、正しい土壌分析と施肥設計が重要であること、有機物の液状化技術としてBMW技術は極めて有効であること等が、光合成によって、植物が生長していく仕組みを例に上げながら分かりやすく解説されました。
 ところで、2007年は、農政改革、米価格の大幅下落と日本の米生産にとっても、また、穀物の高騰からの食料品の値上げラッシュなど消費者にとっても、今後の食糧問題を考える上での大きなターニングポイントとなりました。8月からの市場相場は不落による米価引き下げが連鎖的に行われ、政府による緊急需給対策が行われた事で、米価は下げ止まったものの、米価下落からの生産基盤の弱体化は先延ばしにされたに過ぎません。
 一方で、世界の食糧事情は悪化の一途を辿っています。人口増加や、中国やインドの発展による穀物需要の高まりは、バイオ燃料の増産と共に穀物の高騰を招いています。既に、一部の農産物輸出国では輸出規制も行われており、日本の食糧生産基盤の弱体化が進めば、私達の生活が根本から揺るがされる事は間違いありません。
 このような情勢の中、私たち生活クラブ生協は、北海道、岩手、山形、栃木、千葉、長野に米の提携産地を形成し、「将来に渡る安定的な食の確保」を目的に様々な取り組みを行ってきました。食糧自給率を引き下げている要因の一つである、畜産飼料の国産化を進めるに当っては稲のホールクロップサイレージや飼料米の生産により水田機能の保全を目論んでいます。価格面など課題は大きいものの、「米の需要の拡大」という視点で見ても、今後の生産基盤の維持を図る大きな試みではないでしょうか。
-地域資源を生かした循環型農業と安定的な食糧生産に有効な技術-
 前置きが長くなりましたが、今回の「土と水の学校」BMW技術研修では、重要な二つの課題を頂いたように思います。一つは、地域資源の有効な活用ということ。これまで、減農薬、減化学肥料という言葉は安全・安心を志向する消費者に向けた言葉としての意味が大きかったと思います。しかし、前に触れたように、食糧に留まらず様々な資源が中国やインドに集まる中で、肥料、農薬の価格も上昇を続けています。この様な情勢の中で、将来に渡る安定的な食糧生産を支えるのは、地域資源の有効活用です。その意味でBMW技術の活用は非常に有効なものと思います。また、正しい土壌分析と植物生理に基づく栽培技術の推進は、外部からの資源に頼らない循環型農業による安定的な食糧生産にも有効なのではないのでしょうか。もう一つは、植物の健全な生長を図るということ。稲作農家には「生産過剰の中で、多収になったって・・・」という声もあるにはあります。しかし、何よりも健康で強い稲作りは、外部からの資源の浪費といえる「無駄な農薬」を使わない技術とも言えます。また、視点を変えれば、食糧問題が深刻化する中で、長期的には多収と言う技術は大きな意味を持っています。主食としての米に加え、家畜の餌、燃料など米の可能性は広がりつつあります。小麦を始めとした穀物の高騰と確保に向けた国際競争により、遠くない将来に米の多収は、強く求められていくものです。
既に、減農薬や環境保全という視点でインセンティブが働く市場状況ではなくなってきています。「食べ物は安くない」という消費者の理解と共に、地域資源の有効な活用による安定的な生産の確保という、生産者にとってもメリットを感じられる取り組みがますます重要になっていくのではないのでしょうか。その意味で今回の「土と水の学校」は非常に有意義な研修となりました。

~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座 
健康野菜栽培の基礎を学習   
山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼ 武田 和敏 

 3月13日(木)、山形県川西町の「ファーマーズクラブ赤とんぼ」事務所で、今年度初開催となる~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が行われ、32人の参加(米沢郷グループ女性部22名参加)があり、小祝政明先生を講師に開催しました。
 昨年度は、将来の野菜産地化を見据え、女性生産者を中心に、野菜栽培について基礎から勉強して取組みましたが、女性参加者から学習会の話が女性部内で広がり、今回は『かあちゃん集会』との共催による「土と水の学校」になりました。
 『かあちゃん集会』は、父ちゃんと一緒に農業をやっているかあちゃんたちも、米や野菜・環境問題等の新しい情報を得ながら、米沢郷グループの中で交流を深めるために開催しているもので、今年五年目を迎えました。
 今回の「土と水の学校」は、女性部の要望に加え、野菜栽培拡大に向けて有機栽培の基礎と、野菜栽培での多収穫と、高食味・高品質・栄養価について学習しました。参加したほとんどの女性が野菜を栽培しているため、小祝先生のわかり易い説明を熱心に聞きながらわからないところをその都度質問し確認しました。
 講義では、化学肥料使用の増加により、野菜の硝酸イオン値が高くなり胃ガンなどで亡くなる人の増加や若年性糖尿病発症の危険性があることに加え、硝酸イオン値の基準値として、ヨーロッパでは2000ppm以上は発ガン性が認められ制限されていることなど、健康に関わることから学習しました。野菜を栽培するために必要な条件として、初めに土壌の状態を考えた場合、作物は土中で必要とする酸素が充分に吸える状態なのか、団粒化するためにはどうすれば良いのかなど参加者に実際の栽培状況を思い浮かべてもらいながら、堆肥や肥料使用のほか微生物に関して学習しました。野菜栽培は、土づくりが基本で堆肥等のほかにミネラル分の必要性について、植物と人体に対しての働きに関する内容や50年前の栄養価との比較でビタミン・鉄分が激減していることなど女性にとってはとても関心ある内容でした。
 全体の質疑応答では、アスパラ栽培で、良いものを収穫するためには、収穫時期から逆算して施肥し、根に養分をためておくことや、収穫後余分な芽を摘むことなどや、ブロッコリーについては規格に合わせたつくり方をするなどのアドバイスをいただきました。たくさんの質問があり今後の栽培に対する意欲とかあちゃんパワーが感じられました。
 お昼は、各自農薬・化学肥料をほとんど使用しない食材を使った郷土料理を一品ずつ持ち寄った豪華な昼食会がありました。かあちゃんが安全な食材を使用し、思いを込め工夫された手料理はとても美味しく格別でした。この喜びを多くの人に広げていきたいと思います。
 
~自然学を実践する~「土と水の学校」 2008年度運営及び企画・開催等検討会議を開催

基礎講座と応用講座に分類、品目別・課題別開催を検討

 3月5日、東京・飯田橋で2008年度の~自然学を実践する~「土と水の学校」の運営や企画・開催を検討する会議がBM技術協会主催で開催されました。会議には、全国からこれまでに「土と水の学校」を開催している会員産地や地方協会、今後、開催を検討している会員団体等の担当者ら、11団体、15人が参加し、協議を行いました。
 会議では、冒頭、議長に伊藤幸蔵常任理事が推薦され、全員一致で承認され、事務局の礒田から「土と水の学校」のこれまでの経過と課題が報告されました。
 続いて、各参加団体から、これまでの成果や課題等の各地の現状報告や、「土と水の学校」に関する要望等について、報告が行われました。小祝政明氏を講師とする有機栽培講座については、これまでに取組んできたどの団体においても、収量や品質の向上、病気の抑制等で成果が上がっていることが確認されました。
 今後の展開については、「地域で新たな組織を形成して『土と水の学校』に取組みたい」、「BMW技術の考え方を統一していきたい」「新たな品目で取組みたい」「広く耕種農家を対象に開催したい」「農家の技術交流会を開催したい」等の様々な意見がありました。
 これらの報告、意見を受け、伊藤議長からは、「『土と水の学校』に小祝氏に関わっていただき、良かったと思っている。これまでのBMの取組みを再度検証してもらう良い機会になり、かつ小祝氏の技術とBMの技術は互いに補い合っていける。小祝氏の話を聞くとまた、BMW技術の話に戻ってくる。関心のあることなら、新たな講座をどんどん作っていけばよい」とのまとめがあり、今後の「土と水の学校」の開催方法について、提案が行われ、協議が行われました。
 その結果、講座を基礎講座と、応用講座に分類し、基礎講座は、①BMW技術理論②BMW技術活用(畜産・耕作)農法、③有機栽培講座等をテーマに、年に数回、東京等で開催。応用講座は、①各産地別に講師を派遣し、それぞれのテーマで開催②栽培品目別に各産地持ち回りで開催③各課題別に開催、という方向で整理し、検討することになりました。
 このうち、各産地持ち回り開催の品目別開催候補については、米、野菜、果樹が上げられ、課題別開催候補については、エコ・フィードが上げられており、今後、実施に向けて検討していくことになりました。  (報告:礒田有治)

Author 事務局 : 2008年05月01日 00:58

 
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