WATERKEEPER:水を守る流域市民の草の根運動 【AQUA194号】

カナダのセント・クレア川分水域(St. ClairWatershed)の水銀汚染に対し市民が告訴を起こし、河川流域の生態を復活させる運動を展開している。そしてカナダの法廷は米国領のエネルギー会社を相手にした告訴を認可する裁定を下した。オンタリオ州サリナの最高裁は1月16日に米国の「DTEエネルギー会社」(DTE Energy Company)が危険量の水銀でセント・クレア川(The St. Clair River)を汚染させているという告訴に対して出廷命令を出すよう一審裁判所に指令を出した。ミシガン州に本拠がある「DTEエネルギー会社」は水銀でセント・クレア川を汚染させているとしてずっと非難されてきていた。カナダの一市民であるスコット・エドワーズ(Scott Edwards)氏が去年訴訟を起こし、こう告発している:セント・クレア川沿岸にある「DTEエネルギー会社」の石炭を燃料とするエネルギー・プラント・コンプレックスがこれまで2年間カナダの漁業法令(Fisheries Act)に違反してきた。

「DTEエネルギー会社」は、「デトロイト・エジソン」(Detroit Edison)という100%の所有権を行使できる系列会社を持っている。この「デトロイト・エジソン」は東部ミシガンでセント・クレア川とベル川(The Belle River)で石炭燃料による発電プラント・コンプレックスを稼動させている。河川流域に設置されているモニタリング装置から出たデータはこれらの発電プラント・コンプレックスが毎年相当量の水銀を放出している事を明らかにしてきた。そしてそのプラント・コンプレックスからの水銀排出量の半分以上がカナダ領の河川流域に排出が拡大し、セント・クレア河の分水流域に到達している。この水銀がセント・クレア川に侵入してきている。そして水銀が「食物連鎖」を通過する中で棲息する魚群に有害な作用を及ぼして、人間が魚を食べる事が危険になっている。これは明らかにカナダ政府の漁業法律に違反するものである。水銀は、先進工業国でも、例えば日本の悪名高い水俣(水銀中毒)病のように、生物に残留、累積して、神経破壊をする事が明らかにされている高度危険毒物である。直接的因果関係が明らかな簡単な状況の検査で、1年間で1グラムの水銀が25エーカーの広さがある湖を汚染し周辺生物の命を脅かす水域に変えてしまう事が確認されている。現在のところでは、セント・クレア川のカナダ側と米国側の両方で水銀汚染レベルが高くなっているので、魚類消費については高度規制警戒勧告(highly restrictive fish consumption advisories)の発令を受けている。カナダ領の河川流域に沿って土着住民の集落が点在しているが、彼等は伝統的な生業である漁業に従事する権利を奪われている。それは水銀汚染された魚を食べることが原因になって胎児の発達に障害を起こしたり、幼児の成長で破滅的な神経障害を起こす恐れがあるからである。
前述したスコット・エドワーズ氏の市民運動の立場から起こされた水銀汚染告発は2007年3月に始められた。彼は当時を振り返ってこう述べている:「『DTEエネルギー社』はカナダの市民の安全とカナダの法律をあからさまに無視する行動を取っていた。私が希望している事は今度の告訴で『DTEエネルギー会社』が排出している水銀の大幅削減を実行させて、ずっと安全なセント・クレア川が回復して戻って来る事です」。カナダでは個人による起訴(Private prosecutions)は、刑事裁判所でカナダ市民なら誰でも、犯罪を独立して告訴する事が許されている。そして今回の市民訴訟で「DTEエネルギー会社」が漁業法(The Fisheries Act)に違反している事が結審されれば、同法に基づいて1日最高百万ドルまで罰金を課する事ができる。「この汚染事件でさらにいらだたしい事は、もし『DTEエネルギー会社』がそうすることを望んだなら、同社は明日にでも流域住民を水銀中毒させるのを止める事ができるという事です」とエドワーズ氏がその憤懣を述べている。というのは2004年に「米国エネルギー省」が支援した汚染をコントロールする技術テストが実施されていた。「DTEエネルギー会社」のセント・クレア発電プラントで実施されたこの技術テストでは水銀放出を94%減少させる事が判明した。この汚染防止技術は30日間テストされたが、この実施テストが終了すると、「DTEエネルギー会社」はこの水銀コントロール技術を採用しない事を決定した。そしてその後ずっと同社はその水銀排出を削減させないままで稼動を続けてきた。
今回の河川流域の水銀汚染に立ち上がったスコット・エドワーズ氏は市民の環境保護団体「Waterkeeper Alliance」(水の守り人連合)のリーガル・ディレクター(Legal Director)でもある。「Waterkeeper Alliance」は世界の172組織が参集して草の根運動を進めている環境保護団体の国際的な連合組織である。この組織は水銀汚染に関しては主導的な専門知識と経験を持つ権威が高い組織である。またエドワーズ氏が率先しているこの河川蘇生運動は「Waterkeeper Alliance」に協力している多くの市民活動家達の応援を受けている。汚染検査専門家でオンタリオ湖の水の守り人(Waterkeeper)マーク・マットソン(Mark Mattson)、フレイザー川の水守り人ダグ・チャップマン(Doug Chapman)、セント・クレア川の水流守り人(Channelkeeper)ダグ・マーツ(Doug Martz)、オンタリオ州に本拠を置く刑事専門弁護士クレイグ・パリ(Craig Parry)氏等がその主要な市民活動家達である。

参照資料ソースとコンタクト先:
Common Dreams NewsCenter(www.commondreams.org)
◎Citizen Prosecution Brought for Mercury Contamination of St. Clair
Watershed January 17, 2008
◎Waterkeeper Alliance:
US Energy Company to Face Prosecution for Cross-Border Pollution in Canada January 17, 2008
Scott Edwards, Informant(914-674-0622 ext.13)

Author 事務局 : 2008年03月01日11:34

「有機認証取得がはじまりました。」第5回 【AQUA194号】

第5回 ㈲ファーマーズクラブ赤とんぼ
山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼ 御田伸一さん

有機認証取得日 二〇〇一年一一月
有機認証面積  五三・四アール
有機認証団体  ㈱アファス認証センター

 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。アクアでは、有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、どう捉えているかインタビューを行っています。第五回は、山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼの御田伸一さんです。     (まとめ:礒田有治)

 ――有機栽培をはじめられた経緯をお聞かせください。
御田 高畠町では、三五、六年前から和田地区で有機農業が始まり、各地域に広がっていきました。私は、米沢郷牧場ができた頃から、最初は、有機ではなかったけれど、果樹の農薬を減らすことから皆と一緒に始め、その後、田んぼへと進めてきました。自分なりのきっかけは、当時、空中散布や除草剤をやることによって、あらゆる生物が死んでしまったことです。カエルとか、イナゴとか、本当に虫一匹いなくなる。そんなものが本当に食べられるのかと思ったのが一つのきっかけだったと思います。農薬によって体調を悪くする人もいたので、農薬について考えさせられました。
――農家自身が健康を害していたということですね。
御田 自分が小学校や中学校の頃は、すごく効く農薬があって、それを撒くと、そこは立ち入り禁止になる。そういう農薬を農家が使っていました。農家の人が、五〇代くらいになってくると、脳卒中なんかを含めてだけど、倒れる人が多かった。あらゆる虫や生き物が死んでいく光景っていうのは、すごく恐ろしいと思いました。
――農薬を減らしてきて、水田の方はいつ頃から取組まれたのですか。
御田 除草剤とかを使わなくなったのは二〇年くらい前。有機栽培になったのは一〇年くらい前で、有機認証を取ったのは、二〇〇一年です。赤とんぼの生産者で、取得しようということで、認証を取りました。
――大手スーパー等が有機認証の生産物の取扱いを増やしていこうというと発表していますが、どう思われますか。
御田 大賛成ですね。基本的に食の安全とかが、毎日のように言われている中、そうしたことを農家がやっていくってことは、これからは当たり前になっていきます。JASを取る、取らないに関わらず、農薬を減らしたり、そういう努力をしていかなければならないと思います。農家にとって、特に果樹栽培では、農薬は、保険みたいなものです。県の防除基準があって、ラフランスが一七回、リンゴが一六回くらいの散布が防除基準になっていて、それくらい農薬をかけても大丈夫ですよって、県のお墨付きなのです。でも、本当にこんなに必要なのか。私の果樹だと、リンゴで五回くらいですみます。農薬散布というのは、消費者の安全もそうですが、むしろ、農薬をかける人と、かけた園地の周りに住んでいる人の安全を脅かすものです。かける本人は、直接あびる。周りの人も、農薬を吸い込む可能性があります。
――有機農業基本法ができて、県や市町村は計画を策定することになっていますが、高畠町や山形県では、どんな動きがありますか。
御田 高畠町では、まだ具体的には動きはありません。県の方でも、今の段階では、堆肥の補助がある程度と聞いています。
――行政に対しての具体的な要望や提案はありますか。
御田 ヨーロッパでは、有機農業に取組むと、ある程度の損失なんかを、国が補償するような制度があるみたいですね。例えば、高畠町で、もし、すべての田んぼを無農薬にしようとした場合、年齢的に六〇代や七〇代の人が多くなっているので、特に除草は難しい。だから紙マルチにして、そしてその紙マルチ代を行政が負担するからみんなで有機栽培をやりましょうというのはどうでしょうか。また、水田転作を利用して、全ての休耕田に水をはって、温暖化防止の役立てるのも面白いと思います。水田一〇アール当り、エアコン五〇台分くらいの地球を冷やす効果があるそうですから。
――御田さんは、学校給食や学校での環境教育に取組まれているとお聞きしましたが。
御田 現在、高畠町では、小学校が七校あって、給食は自校方式で実施しています。その内、屋代地区と和田地区の小学校で、農家が「自給野菜組合」をつくり、給食に使う野菜や果物を提供しています。私も屋代地区の組合に入っていますが、組合には、有機に携わっている人が多くて、自主基準を設けて、とにかく農薬が少ないものだとかを、子供たちに食べさせたいという思いでやっています。給食の野菜で六〇%、果物で九〇%を供給しています。
――給食の評判は、いかがですか。
御田 何より、朝採りの新鮮なものを提供しているので、食べ残しが少なくなりました。
 また、自給野菜組合が安く農産物を提供しているので、その差額で、例えば肉とか魚とかが冷凍ものから生のものを使えるようになり、子供たちや先生にも、とても好評です。
――環境教育の方は、どんなことをされているのですか。
御田 高畠町では環境政策が町の三本柱のひとつになっています。その一環で、環境にやさしい町づくり町民会議が組織されていて、町への提言を行っています。それを具体的に実行するために環境アドバイザー制度というのがあり、公募で色々な人が集まって、勉強会をしたり、学校で環境教育を行っています。私もその一人です。高畠第四中学校では、年間八〇時間の環境教育を行っていますが、この八〇時間を、先生でなく環境アドバイザーが授業をします。内容は、地球規模の温暖化の話だったり、水質調査や水生生物の話だったり、有機農業を含めた食の話だったり、様々です。子供たちの環境に関する関心は年々、高まってきています。
――最後に、有機農業の課題と、ご自身の抱負をお聞かせください。
御田 有機農業というより、このままいってしまうと日本では農業そのものが成り立たなくなってしまいます。温暖化の問題や、自給率の低さ、米の価格の低迷、高齢化の問題等、そういったものが、より進んでいったら、若い人が農業をやりたいと言っても、結局、そういう人たちもできなくなる。個人で経営の見直しとかを含めて、色々な努力をしていくことも必要ですが、やはり、国として、日本の農業について、自給率や、環境保全、温暖化などを含めて根本的に考えていかないと、どうにもならない。いかに自給率を高めて、安全な食を作るための手助けを、国がどれだけできるかだと思います。
 私たちは、環境を保全しながら、安全なものをつくり、そういうものを求めてくれる人々と良い関係を築いていきたいと思います。
 
――有機栽培をはじめられた経緯をお聞かせください。
御田 高畠町では、三五、六年前から和田地区で有機農業が始まり、各地域に広がっていきました。私は、米沢郷牧場ができた頃から、最初は、有機ではなかったけれど、果樹の農薬を減らすことから皆と一緒に始め、その後、田んぼへと進めてきました。自分なりのきっかけは、当時、空中散布や除草剤をやることによって、あらゆる生物が死んでしまったことです。カエルとか、イナゴとか、本当に虫一匹いなくなる。そんなものが本当に食べられるのかと思ったのが一つのきっかけだったと思います。農薬によって体調を悪くする人もいたので、農薬について考えさせられました。
――農家自身が健康を害していたということですね。
御田 自分が小学校や中学校の頃は、すごく効く農薬があって、それを撒くと、そこは立ち入り禁止になる。そういう農薬を農家が使っていました。農家の人が、五〇代くらいになってくると、脳卒中なんかを含めてだけど、倒れる人が多かった。あらゆる虫や生き物が死んでいく光景っていうのは、すごく恐ろしいと思いました。
――農薬を減らしてきて、水田の方はいつ頃から取組まれたのですか。
御田 除草剤とかを使わなくなったのは二〇年くらい前。有機栽培になったのは一〇年くらい前で、有機認証を取ったのは、二〇〇一年です。赤とんぼの生産者で、取得しようということで、認証を取りました。
――大手スーパー等が有機認証の生産物の取扱いを増やしていこうというと発表していますが、どう思われますか。
御田 大賛成ですね。基本的に食の安全とかが、毎日のように言われている中、そうしたことを農家がやっていくってことは、これからは当たり前になっていきます。JASを取る、取らないに関わらず、農薬を減らしたり、そういう努力をしていかなければならないと思います。農家にとって、特に果樹栽培では、農薬は、保険みたいなものです。県の防除基準があって、ラフランスが一七回、リンゴが一六回くらいの散布が防除基準になっていて、それくらい農薬をかけても大丈夫ですよって、県のお墨付きなのです。でも、本当にこんなに必要なのか。私の果樹だと、リンゴで五回くらいですみます。農薬散布というのは、消費者の安全もそうですが、むしろ、農薬をかける人と、かけた園地の周りに住んでいる人の安全を脅かすものです。かける本人は、直接あびる。周りの人も、農薬を吸い込む可能性があります。
――有機農業基本法ができて、県や市町村は計画を策定することになっていますが、高畠町や山形県では、どんな動きがありますか。
御田 高畠町では、まだ具体的には動きはありません。県の方でも、今の段階では、堆肥の補助がある程度と聞いています。
――行政に対しての具体的な要望や提案はありますか。
御田 ヨーロッパでは、有機農業に取組むと、ある程度の損失なんかを、国が補償するような制度があるみたいですね。例えば、高畠町で、もし、すべての田んぼを無農薬にしようとした場合、年齢的に六〇代や七〇代の人が多くなっているので、特に除草は難しい。だから紙マルチにして、そしてその紙マルチ代を行政が負担するからみんなで有機栽培をやりましょうというのはどうでしょうか。また、水田転作を利用して、全ての休耕田に水をはって、温暖化防止の役立てるのも面白いと思います。水田一〇アール当り、エアコン五〇台分くらいの地球を冷やす効果があるそうですから。
――御田さんは、学校給食や学校での環境教育に取組まれているとお聞きしましたが。
御田 現在、高畠町では、小学校が七校あって、給食は自校方式で実施しています。その内、屋代地区と和田地区の小学校で、農家が「自給野菜組合」をつくり、給食に使う野菜や果物を提供しています。私も屋代地区の組合に入っていますが、組合には、有機に携わっている人が多くて、自主基準を設けて、とにかく農薬が少ないものだとかを、子供たちに食べさせたいという思いでやっています。給食の野菜で六〇%、果物で九〇%を供給しています。
――給食の評判は、いかがですか。
御田 何より、朝採りの新鮮なものを提供しているので、食べ残しが少なくなりました。
 また、自給野菜組合が安く農産物を提供しているので、その差額で、例えば肉とか魚とかが冷凍ものから生のものを使えるようになり、子供たちや先生にも、とても好評です。
――環境教育の方は、どんなことをされているのですか。
御田 高畠町では環境政策が町の三本柱のひとつになっています。その一環で、環境にやさしい町づくり町民会議が組織されていて、町への提言を行っています。それを具体的に実行するために環境アドバイザー制度というのがあり、公募で色々な人が集まって、勉強会をしたり、学校で環境教育を行っています。私もその一人です。高畠第四中学校では、年間八〇時間の環境教育を行っていますが、この八〇時間を、先生でなく環境アドバイザーが授業をします。内容は、地球規模の温暖化の話だったり、水質調査や水生生物の話だったり、有機農業を含めた食の話だったり、様々です。子供たちの環境に関する関心は年々、高まってきています。
――最後に、有機農業の課題と、ご自身の抱負をお聞かせください。
御田 有機農業というより、このままいってしまうと日本では農業そのものが成り立たなくなってしまいます。温暖化の問題や、自給率の低さ、米の価格の低迷、高齢化の問題等、そういったものが、より進んでいったら、若い人が農業をやりたいと言っても、結局、そういう人たちもできなくなる。個人で経営の見直しとかを含めて、色々な努力をしていくことも必要ですが、やはり、国として、日本の農業について、自給率や、環境保全、温暖化などを含めて根本的に考えていかないと、どうにもならない。いかに自給率を高めて、安全な食を作るための手助けを、国がどれだけできるかだと思います。
 私たちは、環境を保全しながら、安全なものをつくり、そういうものを求めてくれる人々と良い関係を築いていきたいと思います。

Author 事務局 : 2008年03月01日11:30

韓国・全農忠南道連盟、日本視察研修報告 和郷園やパルミート等を視察研修 【AQUA194号】

 昨年の一二月二〇日~二四日、韓国の 「忠南道(県に当たる)」と「全国農民会忠南道連盟」が主管する「全農忠南道連盟二〇〇七年度海外研修 」が日本で行われました。研修の目的は、現在、韓国はグローバリゼーションによって農業、農村、食料、食品等に多くの問題がもたらされており、韓国の農業現場は日本の農業現場に似てはいるものの、農家の自立度がかなり低く、加工や流通などの効率もよくないということから、日本の先進的な農業の現場や加工、流通システムを見学し、研修することによって、自分たちの置かれている状況を克服するための代案を探すことでした。

 二〇日、成田空港に着いて、初めに向かったのは、㈱平野畜産が運営している直販店、大栄産直センターでした。畜産農家が直販しているお店ですが、畜産物だけでなく、地元特産のサツマイモやお米、地元農家のとれたての新鮮野菜、果物、といった様々な商品を産直で販売している点がとても興味深いものでした。次は、平野畜産が運営している平野加工場を訪れました。規模は大きくはありませんでしたが、とてもきれいに管理されていることがよく分かりました。むしろ規模が大きくないことから、帰ったら自分もつくってみようと喜ぶ畜産農家もいました。
翌二一日、最初の見学先は、千葉県銚子市で母豚千八百頭の一貫経営を行っている養豚場の小堀屋畜産、銚子農場でした。オガコ豚舎を一部導入していることで日本でも有名な農場で、豚舎に一・二メートルのオガコを入れてから豚を入れ、豚舎の中を定期的に撹拌することによって、豚舎内で糞尿処理ができるシステムでした。次に、農場全体の糞尿の処理施設も見学させていただきました。 投入される糞と尿に微生物を混合して曝気発酵させてからスクリーンコンベアを通せば、一次処理が完了されて液肥が生成される。もう一度スクリーンコンベアを通せば、透明な水と固形物が完全に分離され、糞尿が水道水のような透明な水になるとのことでした。最終的に処理された水は畜舎の洗い水として使われるそうなので、資源の循環という意味でも立派な施設だと思いました。ただし、処理に使用されている凝縮剤が生態系や命にいいものなのかどうかに関しては、また違う機会に教わりたいと思いました。
次に、BM技術協会会員の農事組合法人和郷園にお邪魔しました。最初に和郷園が運営している「バイオマス・BMWリサイクルセンター」を見学しました。バイオマス施設は、一日五トンの乳牛の糞尿と、和郷園から発生される野菜残さ、食品加工残さが、メタン発酵プラントに投入されて、いくつかの段階を通せば、質のいい液肥と土壌改良剤が生成されます。そして、メタン発酵プラントより発生されるバイオガスは、何段階の複雑なメタン燃料化の過程を通せば、付臭用LPGが生成されるそうでした。とくに現場で実際にメタンを燃料にするメタン自動車を見ることができてとても興味深かったですし、日本政府が運営している施設だけの、最新の設備と最新の技術を見るチャンスが得られ、研修団一同とても喜んでいました。BMWリサイクルセンターでは、BMWプラントの仕組みや生物活性水の用途について研修を受けました。続いて和郷園の本部会議室に移動し、向後武彦副代表(BM技術協会理事、千葉BM技術協会会長)から、和郷園の沿革、仕組み、運営方式、取り組みなどに関して詳しくご説明をいただきました。その後、旬の野菜の味と栄養をそのまま急速凍結させる冷凍加工工場の「さあや Sキッチン」を見学してから、和郷園メンバーの林農場で、キュウリ栽培の現場を見学しました。研修団の中にもキュウリの農家が二人いたので、栽培方法に関する色々な話が交わされました。
研修三日目の二二日は、畜産物の加工・流通の現場をご訪問しました。まず、午前中にお邪魔した匝瑳GPセンターは、六名の農家が出資してつくった、卵を洗浄・選別・パックする工場で、とても立派な施設でした。研修団の中に養鶏関係の農家はいませんでしたが、政府の補助を受けないで畜産農家同士でGPセンターを建て順調に運営されているということから、今後、自分たちの自立に対しても少し自信を持つようになったと思います。
午後は、BM技術協会会員の㈱パルミートをご訪問しました。パルミートは生産者と連携して、パルシステム生活協同組合連合会の会員生協組合員へ安全・安心でおいしい肉を届ける目的で設立された工場です。パルミートに到着後、研修団全員も中で働いている職員の方と同じように、厳しい作業着チェックを行い、その後も手洗いとアルコール消毒、靴下まで消毒してからやっと工場の中を見学することができました。工場の中は、全国のトップレベルの設備があり、HACCPに準じた厳格な衛生管理が行われていました。その後、会議室で説明を伺ってから、パルミートで加工しているハムとソーセージ、豚肉を試食する機会も提供されました。
今回の研修には、韓国の忠南道地域の畜産農家、耕作農家、生協の職員、農民運動家など、色々な分野の人たちが参加しましたが、全員の希望を満足させたと言えるほど、とても充実した研修になりました。今回の研修で学習したことがそれぞれの現場で何らかの形で役に立つと思います。
最後になりますが、今回の研修の受け入れや日程を組んでいただき、研修先まで自らご案内していただいた和郷園の木内博一代表(BM技術協会常任理事)に心からご感謝を申し上げます。木内代表とともに、研修団にお付き合いいただいたBM技術協会の椎名盛男常任理事、向後理事にもお礼を申し上げます。また、土曜日の午後遅い時間だったのにもかかわらず、工場の隅々まで視察できるようにご配慮してくださったパルシステム生協連合会とパルミートの皆様、匝瑳GPセンターの関係者の皆様、平野畜産と銚子農場の関係者の皆様、東京の道案内をして下さった㈱匠集団そらの秋山様にも心からご感謝を申し上げます。皆様、本当にどうもありがとうございました。

㈱そらインターナショナルコリア 代表取締役 ハ・ジョンヒ

Author 事務局 : 2008年03月01日11:26

韓国・済州島で、BMW技術導入10年記念行事を開催 【AQUA194号】

一月八日、韓国の済州島の済州ホテルで、韓国BMW技術導入十周年記念行事が韓国BMW技術協会主催、㈱そらインターナショナルコリアの協賛で開催されました。
当日は、地元済州島の会員や韓国本土からの会員及び関係者約五〇人が集まり、韓国の楊平郡に初めてBMW施設が導入されてから、十周年を記念する祝賀式典が行われました。日本からは、椎名盛男常任理事、生田善和常任理事、伊藤幸蔵常任理事と事務局の礒田、㈱匠集団そらから星加浩二氏、秋山澄兄氏、町田晃子氏の七人が参加しました。式典の翌日には、済州島内のBMW技術導入施設及び農場視察会が実施され、その活用状況を見学しました。

式典は、キム・ヤムフーン済州市長の「BMW技術導入十周年を記念する意味深い行事を済州市で開催することを、済州市民と共に心から歓迎し、お祝いいたします」との来賓挨拶に始まり、続いて、チョン・ホンギュー韓国BMW技術協会会長から「 BMW技術導入十周年に参加していただいた済州市長をはじめ、楊平郡の元郡守、日本からの参加者の皆様、韓国全国からの参加者の皆様に感謝を申し上げます。地球温暖化の時代に、特に遺伝子の組み換えが乱舞する今の時代に、BMW技術を通して韓国と日本、なお中国と北朝鮮が技術を交流して、畜産廃水の問題を解決し、農業の問題を解決し、食料や汚染の問題を解決することで、東北アジアの生命共同体をつくって平和を与える技術になることをお祈りいたします 」と歓迎の挨拶が行われました。
次いで、ミン・ビョンチェー元楊平郡郡守と慶南ハンサリム生産者代表のキム・ビョンチェー氏から祝辞が述べられました。
日本から参加した生田常任理事は「私は、日本の生活協同組合におよそ四〇年近く取組んできました。生活協同組合は、組合員の命と暮らしを守る取組みです。現代的に言うと、組合員の大きな課題は、健康と暮らし、そして自然環境を守ることです。暮らしと自然を守る取組みの柱は、農業との連携で、私達はその取組みを産直運動と呼んでいます。産直運動の基礎となるのは、人と人とのつながりでもあります。ものと金の動きだけではなく、生産者の生産物に対する意思でもあります。その産直運動での生産者の技術の中心がBMW技術であると確信しています。その技術が中心となって、私達の食の安全が守られていきますし、自然環境も保全されていきます。私達の産直運動の中心を担うBMW技術運動が、日本でも、さらに発展していくように我々は取組んでいきたいと思います。そして、この間、私は韓国で、色々なBMW技術の生産者の取組みを見せていただきました。その最初は楊平での、第一回アジアBMW技術交流会への参加でした。あの六年前の取組みの感動とともに、今このように、済州市長の参加もいただいた盛大な会に対し、感動しております。世界の資本主義の動きは、私達の生命と暮らしを脅かす状況にあります。ヨーロッパやアメリカと違うもう一つの文化を持っている東アジアにおける日本と韓国が、これからどのような世界をつくっていくのか、大きな力になると思います。有機農業の広がりが日本、そして、隣の同胞である韓国の社会で広がっていくのを非常にうれしく思います。三年前から、アルファコープおおさかと釜山生協との交流が始まり、お互いに行き来をしてまいりました。BMW技術が韓国の生協にも広がり、東アジアの新環境農業の拠点ができることを期待します」と祝辞を述べました。
続いて挨拶にたった伊藤常任理事は「本日は、十周年にお招きいただき、感謝しております。会長をはじめ、赤とんぼ、米沢郷牧場に視察に来ていただいた方のお顔を拝見できて、大変うれしく思います。今、農業、環境の状況は非常に難しい状況にあると思います。特に農業の問題は、自分達の努力だけでは解決できないことが、次々と起こっています。それは国と国との経済の話であったり、地球規模の環境の問題であったりします。それを解決するのは、人だと思っています。そういう意味でBMW技術のミネラルというのは、その土地の土であるし、Wの水は、命でもあります。バクテリアは、そこに住む人も含めたバクテリアです。これらの力を正しく、方向付けることによって、地域を変え、世の中を変え、世界を変えていく力を私たちは持ちたいと、思っています。BMW技術というのは、人を育てる技術であるとも思っています。その点で言えば、私も色々な方とお会いして育てていただきましたし、日本の農家や消費者の方にも理解をしてくれる若い仲間ができつつあります。韓国の皆さんとも今後とも交流をしながら仲間を増やして、よりよい地域、よりよい環境をつくるために努力していきたいと思います。一緒に頑張っていきましょう」と祝辞とともに、韓国の会員の方々にエールを送りました。
式典では、十周年を記念したケーキの入刀、そして、韓国BMW技術協会から、椎名常任理事に感謝のプレートが送られました。
最後にチョン会長から、㈱そらインターナショナルコリアのハ・ジョンヒ代表取締役とソ・ボフン氏が紹介され、これまでの韓国でのBMW技術普及への努力をたたえるとともに、「今後も、そらインターナショナルコリアが韓国のBMW技術普及の牽引車となってほしい」と、述べました。
これを受けてハ代表からは「この十年間、チョン会長や椎名常任理事、生田常任理事、他にも大勢の皆様のご協力のお陰で、韓国のBMW技術が今日まで続けられてきたと思います。特に本日、貴重なお時間をいただき、この十周年をお祝いするためにご参加いただきました皆様に、心から感謝を申し上げると共に、今後皆様にご恩返しをするためにももっと頑張りたいと思います。どうもありがとうございました」と、挨拶が行われました。

式典の翌日の九日には、済州島のBMW技術導入施設、農場の視察が行われました。最初に訪問したのは、「済州緑の命の共同体」の生物活性水施設です。養豚家とミカン農家等七人が中心となって施設をつくり、二〇〇〇年六月から稼動しています。生物活性水は七人で利用する他、会員制で販売も行われています。
続いて訪問したのが、前述の施設でつくられた生物活性水をミカン栽培に活用している「ウンモル農園」です。同農園では、六年前からミカンの無農薬栽培に取組み、昨年、有機認証を取得しています。農園主のキム・ビョンジュンさんは「ミカンの有機栽培に生物活性水は欠かせない」と話します。同農園のミカンは、一般栽培ミカンの約十倍の価格で取引されているとのお話でした。
最後に訪問したのは、養豚に飲水改善と簡易尿処理・生物活性水施設を導入した「ホチャン農場」です。視察当日、生物活性水施設の培養調整が終了し、できあがった生物活性水を初めて汲み上げるセレモニーが行われました。同農場は、ミカン栽培との複合経営が行われていますが、視察参加者も、今後の同農場でのBMW技術の活用に大いに期待を寄せていました。 (まとめ:礒田有治)

Author 事務局 : 2008年03月01日11:25

 
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