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2008年03月01日

WATERKEEPER:水を守る流域市民の草の根運動 【AQUA194号】

カナダのセント・クレア川分水域(St. ClairWatershed)の水銀汚染に対し市民が告訴を起こし、河川流域の生態を復活させる運動を展開している。そしてカナダの法廷は米国領のエネルギー会社を相手にした告訴を認可する裁定を下した。オンタリオ州サリナの最高裁は1月16日に米国の「DTEエネルギー会社」(DTE Energy Company)が危険量の水銀でセント・クレア川(The St. Clair River)を汚染させているという告訴に対して出廷命令を出すよう一審裁判所に指令を出した。ミシガン州に本拠がある「DTEエネルギー会社」は水銀でセント・クレア川を汚染させているとしてずっと非難されてきていた。カナダの一市民であるスコット・エドワーズ(Scott Edwards)氏が去年訴訟を起こし、こう告発している:セント・クレア川沿岸にある「DTEエネルギー会社」の石炭を燃料とするエネルギー・プラント・コンプレックスがこれまで2年間カナダの漁業法令(Fisheries Act)に違反してきた。

「DTEエネルギー会社」は、「デトロイト・エジソン」(Detroit Edison)という100%の所有権を行使できる系列会社を持っている。この「デトロイト・エジソン」は東部ミシガンでセント・クレア川とベル川(The Belle River)で石炭燃料による発電プラント・コンプレックスを稼動させている。河川流域に設置されているモニタリング装置から出たデータはこれらの発電プラント・コンプレックスが毎年相当量の水銀を放出している事を明らかにしてきた。そしてそのプラント・コンプレックスからの水銀排出量の半分以上がカナダ領の河川流域に排出が拡大し、セント・クレア河の分水流域に到達している。この水銀がセント・クレア川に侵入してきている。そして水銀が「食物連鎖」を通過する中で棲息する魚群に有害な作用を及ぼして、人間が魚を食べる事が危険になっている。これは明らかにカナダ政府の漁業法律に違反するものである。水銀は、先進工業国でも、例えば日本の悪名高い水俣(水銀中毒)病のように、生物に残留、累積して、神経破壊をする事が明らかにされている高度危険毒物である。直接的因果関係が明らかな簡単な状況の検査で、1年間で1グラムの水銀が25エーカーの広さがある湖を汚染し周辺生物の命を脅かす水域に変えてしまう事が確認されている。現在のところでは、セント・クレア川のカナダ側と米国側の両方で水銀汚染レベルが高くなっているので、魚類消費については高度規制警戒勧告(highly restrictive fish consumption advisories)の発令を受けている。カナダ領の河川流域に沿って土着住民の集落が点在しているが、彼等は伝統的な生業である漁業に従事する権利を奪われている。それは水銀汚染された魚を食べることが原因になって胎児の発達に障害を起こしたり、幼児の成長で破滅的な神経障害を起こす恐れがあるからである。
前述したスコット・エドワーズ氏の市民運動の立場から起こされた水銀汚染告発は2007年3月に始められた。彼は当時を振り返ってこう述べている:「『DTEエネルギー社』はカナダの市民の安全とカナダの法律をあからさまに無視する行動を取っていた。私が希望している事は今度の告訴で『DTEエネルギー会社』が排出している水銀の大幅削減を実行させて、ずっと安全なセント・クレア川が回復して戻って来る事です」。カナダでは個人による起訴(Private prosecutions)は、刑事裁判所でカナダ市民なら誰でも、犯罪を独立して告訴する事が許されている。そして今回の市民訴訟で「DTEエネルギー会社」が漁業法(The Fisheries Act)に違反している事が結審されれば、同法に基づいて1日最高百万ドルまで罰金を課する事ができる。「この汚染事件でさらにいらだたしい事は、もし『DTEエネルギー会社』がそうすることを望んだなら、同社は明日にでも流域住民を水銀中毒させるのを止める事ができるという事です」とエドワーズ氏がその憤懣を述べている。というのは2004年に「米国エネルギー省」が支援した汚染をコントロールする技術テストが実施されていた。「DTEエネルギー会社」のセント・クレア発電プラントで実施されたこの技術テストでは水銀放出を94%減少させる事が判明した。この汚染防止技術は30日間テストされたが、この実施テストが終了すると、「DTEエネルギー会社」はこの水銀コントロール技術を採用しない事を決定した。そしてその後ずっと同社はその水銀排出を削減させないままで稼動を続けてきた。
今回の河川流域の水銀汚染に立ち上がったスコット・エドワーズ氏は市民の環境保護団体「Waterkeeper Alliance」(水の守り人連合)のリーガル・ディレクター(Legal Director)でもある。「Waterkeeper Alliance」は世界の172組織が参集して草の根運動を進めている環境保護団体の国際的な連合組織である。この組織は水銀汚染に関しては主導的な専門知識と経験を持つ権威が高い組織である。またエドワーズ氏が率先しているこの河川蘇生運動は「Waterkeeper Alliance」に協力している多くの市民活動家達の応援を受けている。汚染検査専門家でオンタリオ湖の水の守り人(Waterkeeper)マーク・マットソン(Mark Mattson)、フレイザー川の水守り人ダグ・チャップマン(Doug Chapman)、セント・クレア川の水流守り人(Channelkeeper)ダグ・マーツ(Doug Martz)、オンタリオ州に本拠を置く刑事専門弁護士クレイグ・パリ(Craig Parry)氏等がその主要な市民活動家達である。

参照資料ソースとコンタクト先:
Common Dreams NewsCenter(www.commondreams.org)
◎Citizen Prosecution Brought for Mercury Contamination of St. Clair
Watershed January 17, 2008
◎Waterkeeper Alliance:
US Energy Company to Face Prosecution for Cross-Border Pollution in Canada January 17, 2008
Scott Edwards, Informant(914-674-0622 ext.13)

Author 事務局 : 2008年03月01日 11:34

 
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