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2007年08月15日

世界の大河川がダムが干上がっている 【188号】

河川流域の危機:世界の大河川がダム、農地開発、船舶航行、気候変動で干上がっている

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世界最大級の河川の多くが人間が引き起こした問題のために、壊滅的な状況に直面している。この危機にはナイル川、ガンジス河、揚子江、ダニューブ河も含まれている。その主要な原因には河川や流水を利用する場合の放逸な姿勢と河川の保護施策が正しく行なわれていない事が指摘されている。その根底には、河川の生態的役割に関する理解不足があり、河川と流域の循環機能が悪化するのを許している。それは当然河川盆地に住んで来た人々の経験的知恵に由来している伝統的な暮らしを失わせたり、移転を余儀なくさせたり、生活破綻の脅威にさらしている。他方、行き詰まった河川流域の自然と生き方を取り戻し蘇生(RECLAIM)させようとする市民運動のイニシアティヴがあり、住民の参加を広げ、公的機関の政策決定に方向を与える先駆的胎動も見られる。

Worldwide Fund for Nature の河川調査報告

 WWF-UK(Worldwide Fund for Nature/ 世界自然保護基金- 英国)の淡水政策役員、トム・ル・クエスネ(Tom Le Quesne) はこう述べている:「我々は河川システムの完全な崩壊について話をする事になってしまいました。多くの川がひどく汚染されて、過剰な奪取を受けて、またダム建設で分断されてしまって、傷めつけられた川はもう川として本当には機能していないのです。また人類が遠からず大規模な気候変動に直面していき苦難の挑戦になるでしょう」この「WWF-UK」が今回世界の河川が直面している脅威に関して報告を発表した。この調査報告は、恒例になっている「世界水の日」(World Water Day) に先だって発表されたもので、世界が直面する河川の問題への注視を求めている。この報告には世界で最大級の10の河川が取り上げられている。その内の5つはアジアの川で、揚子江、メコン川、サルウィン川、ガンジス河、インダス河の問題の深刻さが指摘されている。「もしこれらの川が死滅すれば、何百万の人達が暮らしを失う事になるだろう、生物多様性は深刻なスケールで破壊され、真水が減少して、農業もできなくなり、食の保全が獲得しにくい結果になってくるでしょう」と、「WWFインド」のラヴィ・シン(Ravi Singh) 事務局長がデリー市での報告発表で述べた。河川は世界の真水の主要なソースであ
る、そして、「WWF」によれば、世界で供給されている水のほとんど半分が現在河川から取水されている。多くのダムは川を分断して流域の平原に水が満ちるのを止めている。そして河川流域の枯渇が生物の生息地を乾燥させて破壊している。WWFはさらにこう述べている:多様な魚類の棲息数が減少している。魚類は世界全体で何十万という共同体に主要なタンパク質を供給してきた。

ダニューブ川、ナイル川、揚子江の苦境

 このWWF の報告書はヨーロッパの大河ダニューブ川の問題も取り上げている。ダニューブ川はドイツから出てヨーロッパ東南部を抜けて、黒海に流れ込んでいる。ダニューブ川にはヨーロッパの全魚類の半分以上が棲息している。だが、多くのダムと航行を容易にする工事の結果として、河川湿地帯と満水平原(flood plains)の80%を失ってしまった事が報告書に述べられている。世界最長のナイル川は何千
年間も飲料水源泉の役割を果たしてきた。しかし、WWFによれば、ナイル川は2025年までには流水の枯渇に直面するだろう。揚子江の水系は、中国の急速な工業化のため世界中で最も汚染された川の1つなっている。WWFは中国河川の汚染を報告している。例えば世界最大の水力発電プロジェクトである三峡ダムが、山積するゴミの塊、船舶からの廃水、豚や動物の排泄物、工場や病院や鉱山からでる危険
な、また放射性物質さえも含む廃棄物が、貯水池の底や川底で深刻な汚染問題を抱え込んでいる事を明らかにしている。

リオグランデ河、ガンジス河の苦境

 合衆国とメキシコの国境に沿って流れているリオグランデ河には、世界中他のどこにも見い出されない69種類の魚が棲息しているが、主に農業のための過度な取水によって川としての存在が危機にさらされている。「合衆国で2番目に最長の川であるリオグランデ河の土手に人が立っても、そこには水がないのです。それはもう信じ難い事である。この事態は農作物を栽培するのにリオグランデの水に依存する農民に深刻な影響を与えている、さらにそれは流域の生態系を破滅させている」と「WWF-UK」のトム・ル・クエスネは報告している。インドでは、ガンジス河が生み出す流域平原はこの国の陸地の3分の1に及んで、12人に1人が漁業や農業で川の水に依存している。「WWF」によれば、ガンジス河に流れ込む多くの支流が干上がり始めている。これは多くの場所で潅漑のため水流が堰き止められたり、転向させられているからである。ル・クエスネ氏は、この「WWF」報告によって取り上げられた多くの問題は人間が作り出したものであると強調する。圧し掛かっている気候変動がさらに状況を酷くするだろう。ガンジス河の水の40%はヒマラヤ山脈の氷河から来ている、そして世界の温暖化が続けば、その氷河は後退していくだろう。「我々は皆水を当たり前にあるものとして考える事に慣れてきた。我々は水が無制限にある資源であると考えてきた。それはもうできないのです。それは賢く水を使って、そしてそれを管理する問題になっている。それは政治的意志の問題なのです」とトム・ル・クエスネ氏は述べる。

水が無くなっている世界上位10の河川の状況

1. サルウィン(Salween) 河、中国
  流域設備工事とダム建設によって被害を受けている
2. ダニューブ川、中央ヨーロッパ
  流域設備工事と船舶の航行によって被害を受けている
3. ラプラタ河(La Plata)南アメリカ
  流域設備工事とダムと船舶の航行によって被害を受けている
4. リオグランデ河- リオブラヴォ河(Rio Grande-Rio Bravo)、北アメリカ
  過度の水摂取によって枯渇被害を受けている
5. ガンジス河(Ganges)、インド
  過度の取水によって枯渇被害を受けている
6. インダス河(Indus)パキスタン
  気候変動によって枯渇被害を受けている
7. ナイル川(Nile)、ビクトリア湖(-Lake Victoria)、北アフリカ
  気候変動によって枯渇被害を受けている
8. マーレー川(Murray) ダーリング川(Darling)、オーストラリア
  侵入してくる生物種によって生態系破壊を受けている
9. メコン河 ランカン河(Mekong-Lancang)、東南アジア
  乱獲漁業によって生態系被害を受けている
10. 揚子江(Yangtze) 中国
  工場排水汚染によって循環機能の停滞や枯渇が起きている

河川の清浄と流域の蘇生が実現に向かっている

米国北東部を蛇行する汚染度D のチャールズ川

 チャールズ川(Charles River)は米国北東部のマサチューセッツ州で最長の川である。130キロ以上を大きく四方へ蛇行し多くの支流を生みながら、ボストン湾に流入する有名な川である。だがその長年の排水汚染はひどく水泳さえ危険である。マサチューセッツ州は別名「ベイ・ステイト」と呼ばれ歴史的な「ベイ」や「ポート」が多い。今回ポート・タバコ・リヴァー保護委員会(The Port Tobacco River Conservancy)が「チェサピーク・ベイ・トラスト」から、川を清浄化して流域を再生させる計画で援助金101,000ドルを勝ち取った。これは、流域市民が歴史的に有名だが汚染がひどい河川流域を復活させる事を提唱してその資金を勝ち取った最初の事例である。これで地元の環境保護活動家達が農民や学校と協力して川の清浄計画を実行できる事になった。この援助金は「嵐時回避水路システム(storm-water runoff systems)」を修復するのに使われ、さらには流域住民が川について受ける教育にも使われる。ポート・タバコ・リヴァー流域は、チャールズ郡の47 平方マイルに広がっているが、下水流出とバクテリア発生による汚染は悪名が高かった。ポート・タバコ川を清浄にするために、保護委員会は、「ポートタバコ川流域復元行動戦略/The Port Tobacco River Watershed Restoration Action Strategy」という計画草案を今年作り上げて発表した。保護委員会のデイビッド・C・ガーディナー(David C.Gardiner)技術部長はこう述べている:「この流域を回復させる「流域復元計画」を完成さして、私達が受け取るこれは最初の奨励金である」他方資金を与えた「チェサピーク・ベイ・トラスト」のデイビッド・オニール(David O'Neill)理事長は期待を込めてこう語った:「我々の組織が授与する資金はこの雄大な蘇生計画のため「触媒」を果たす基金になるだろう。この流域再生計画で興奮する事は、我々がこの流域回復の実行へ触媒点火をするだけではなく、我々はまた草の根運動の枠組みを作っている事である。それは今後もっと多くの行動を起こし、野生生物の環境改善とポート・タバコ川の流水域改善を引き起こす事を確かにするでしょう」

汚染解決と流域回復に市民参加を広げる

 ポート・タバコ・リヴァー保護委員会のデイビッド・C・ガーディナー技術部長はこう抱負を述べている:「この授与金のお陰で保護委員会が畜産農民や様々な学校の人達と汚染を解決するのに協力できるようになります。それはとても重要な事です。私達が教育関連のコミュニティや学校と共に活動できるからです。この1つの授与金から始まり、多くの地域の扉を実際に大きく開かせ、河川流域を回復させ、水質を改善するのに役立っていくでしょう」

 「チェサピーク・ベイ・トラスト」は、民間の非営利団体で、メリーランド州全体にわたって湾周辺復元プロジェクトの為に援助金を送っている。民間資金を意義ある社会的目的に寄与するこの財団はまた他の3本の水路(アンアランデル郡のサウス川とスパ渓谷、フレデリック郡のモノカシー川)を清浄化する事業にも援助金を与える事になっている。「これらの授与金では、我々は現場の回復プロジェクトに焦点を合わせています。このプロジェクトは有志の市民が参加を深めて、技術専門家達と協力するようになり、良い結果が生まれる事を目指しています。またこれから先、これらの河川流域でもっと広い実行と投資を引き出す触媒になる事を願っています」と、技術部長のオニール氏は述べている。

 ポート・タバコ保護委員会は、さらに「米国環境保護局」(The Environmental Protection Agency) からも河川清浄援助金を受け取れる進展がある。その援助金は議会多数派リーダーのメリーランド州民主党議員スタンリー・H ホイヤー(Steny H.Hoyer)の助力で獲得されたもので、地下水研究の資金にあてられるだろう。そしてその研究は成果が悪い汚水処理システムに対応する効果的な方法を見つけることにも貢献する事が期待されている。この河川流域は約157マイルの複数の川とチャールズ郡の中央部を流れている支流を含んでいる。流域周辺の研究によって、少なくても60の浸食箇所があり、魚が自由に動く事を妨害する63の障害が発見されている。ポート・タバコの町は川に沿って建てられて、かっては主要な貿易港であった。大きな船が川を上ってきて、イギリス向けの多量のタバコを積み込んでいた。この町は元の郡庁所在地であり、まだいまでも裁判所、教室一つの学校が昔の時代から生き残っている。


参考資料:
* Dams, farms, shipping and climate threaten to dry up world's
greatest rivers.
Alok Jha , science correspondent
March 21, 2007: The Guardian
* Cleanup Strategy For Charles River Wins Key Grant.
Port Tobacco Activists Plan To Work With Farmers, Schools.
By Philip Rucker Washington Post Staff Writer
June 3, 2007: Washington Post


HP

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Author 事務局 : 2007年08月15日 14:29

 
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