BMW技術で地域資源を活用する無農薬バナナ栽培へ 【AQUA201号】

生物活性水プラント(トゥンカーワット農園経営農民会)開所式を開催

パン・パシフィック・フーズ・コーポレーション㈱  小山 潤

 去る七月二九日、日本に無農薬バナナを輸出するタイ・トゥンカーワット農園経営農民会に建設されたBM生物活性水プラントの開所式が催され、日本からは、パルシステム生活協同組合のタイ訪問団一八名が出席し、BM技術協会からは、椎名盛男常任理事が出席しました。同プラントはすでにタイ政府の補助金で同農民会本部敷地内に建設されていた堆肥プラントの機能性を向上させることを目的に農民会が建設に踏み切ったもので、レインボー・パル基金の助成を受けて、設置されました。プラント建設に当っては、㈱匠集団そらが設計を行い、BM技術協会が指導を行いました。
 首都バンコクから南に約五百キロ、チュンポン県ラメー郡にトゥンカーワット農園経営農民会はあります。同農民会では、週に約二〇~四〇トンの無農薬バナナが生産され、PPFC(パン・パシフック・フーズ・コーポレーション㈱)を通じて、パルシステムを始めとする日本の生協に輸出されています。
 タイにおけるBM生物活性水プラントは、ペッブリー県バンラート農協管内に建設されたものに続いて二箇所目となります。バンラート地区では、すでにBM堆肥が常時製造され、バナナ栽培に活用されるなど、BMW技術は広い範囲で浸透しています。
 これまでは、トゥンカーワット農民会でも三百キロ離れたバンラートから、生物活性水やBM堆肥を取り寄せて利用してきました。しかし折からの石油価格高騰で輸送費が大幅に跳ね上がるなど、最近では様々な困難に直面、化学肥料の価格も倍増する中で、農家からは質の良い堆肥を適正価格で購入したいという強い要望が寄せられていました。
 現在、農民会ではすでに生物活性水を活用しての堆肥や液肥作りに着手しています。毎週出荷作業で発生する約四~五トンのバナナの残渣や、周辺地域で栽培されているパーム椰子の加工残渣に家畜の糞尿を混ぜたものに生物活性水を散布しながら、堆肥づくりを行っています。また、魚のアラ、カボチャ、バナナの実などを生物活性水と共に曝気しながら発酵させた液肥づくりに取組んでいます。これらは全て農民会会員のバナナ栽培に活用させていく方針です。
 世界的に温暖化の影響で異常気象が「通常化」する中で、ここタイでも近年は突風、旱魃、多雨など気象の異常が続いています。その影響はもちろんバナナ栽培にも及んでおり、生産を安定させていくことが益々困難になりつつあります。そうした中でBMW技術が生産の安定化に向けて果たす役割に、現地でも期待が高まっています。
 今回の開所式にはラメー郡行政当局から郡長やトゥンカーワット区長など、地元の主だった皆さんも顔を見せ、農民会が地域で重要な役割を担っていることが分かります。式は仏式でお坊さんがお経を上げて開所を祝いました。お経といえばお葬式でしかお目にかからない(?)日本人にとっては多少奇異な感じがしたかもしれません。
 ともあれ開所式は無事終了しました。今後は生物活性水を最大限に活用した農民会のバナナ栽培事業の展開に注目しています。

Author 事務局 : 2008年10月01日23:11

「土と水の学校」岩石と水講座、品目別講座「野菜・水稲・果樹編」 【AQUA201号】

 ~自然学を実践する~「土と水の学校」の公開講座が八月に開催されました。「岩石と水講座」、品目別講座の「野菜編」「水稲編」「果樹編」の四つの講座が開催されました。その内容を報告します。

岩石と水講座

 置賜地方の岩石を例に、地球規模のミネラル循環をテーマに
 ~自然学を実践する~「土と水の学校」岩石と水講座が、八月一八日に山形県置賜郡のファーマーズクラブ赤とんぼで開催されました。「白州キララの学校」で講師を務める岡山大学地球物質科学研究センター准教授の奥地拓生氏を講師に、七月に行われた置賜地方の岩石調査をもとに「日本列島の歴史と置賜地方の岩石、岩石に含まれるミネラル成分」と題して講座は行われました。講座にはファーマーズクラブ赤とんぼの生産者を中心に、会津うまいもの塾、みやぎBM技術協会などから一六人が参加しました。
 奥地氏は、米沢盆地のある置賜地方は、花崗岩、石灰岩、安山岩が存在する他にあまり例を見ない場所であり、七月の岩石調査で採取したそれぞれの岩石の由来を解説しました。石灰岩はサンゴが作り出すことから、置賜地方が二億年以上前は現在より遙か南にあり大陸の移動により現在の位置まで移動したこと、また安山岩は一千万年前の火山がまるごと吹き飛ぶような活発な火山活動の結果堆積した火山灰が固まってできたことなど、時間、空間ともにダイナミックな身近な岩石の由来について、参加者は興味深々の様子でした。
 地球規模での岩石の循環によるミネラル凝縮と命をはぐくむ水との関係、岩石中のミネラルと、人間の体内中のミネラルとの相関、農業生産に関わるミネラルなどについて、講座は展開されました。地球内部の橄欖岩が玄武岩や花崗岩、安山岩に姿を変え、その度にミネラルの濃縮が行われ、それらの岩石から水にミネラルが長い時間をかけて溶けて放出されていくことなど、岩石と水との関係、ミネラルの循環が説明されました。
 「BMWプラントでは、ミネラルは生物が吸収しやすいように錯体化されて水に溶け込んでおり、プラントで作られた生物活性水の中にはもとの水と比べると何倍もの、鉄、カルシウム、マグネシウムが含まれていることが確認されている。プラントの中に吊るされた花崗岩は一〇年で色が変わり、ハンマーでたたくと砕けるようになる。これは自然界では千年から一〇万年かけて起きる現象で、BMW技術は自然界での現象を、人工的に早め、ミネラルを取り出すスピードを増加させている技術である」との奥地氏の説明に参加者一同、BMW技術を再認識した講座となりました。(報告:長倉徳生)


品目別講座 野菜編

BMW技術の成果がインゲンに結実
 八月一一日から一二日の二日間、山梨県の北杜市白州郷牧場において~自然学を実践する~「土と水の学校」品目別講座野菜編が行われました。みやぎBM技術協会メンバー(大郷グリーンファーマーズ、あいコープみやぎ、迫ナチュラルファーム)と、有機栽培あゆみの会、静岡県村上園、関西BM技術協会、与論島担い手育成総合支援協議会、パルシステム千葉などから一七人が参加しました。
 午後から始まった講座は、まず白州郷牧場の池原謙介さんに大葉、ズッキーニ、水ナス、キュウリ、インゲンなどの圃場とBMWプラントを案内してもらい見学しました。参加者は皆、実を高密度につけるインゲンに驚いていました。講師の小祝政明氏からは「白州のキュウリ、インゲンで特徴的なことは、葉の大きさが、最初から最後まで揃っており、かつ鉄などの微量要素欠乏の症状が出ていないこと」と参加者に解説していました。
 その後、白州郷牧場の視聴覚ホールに場所を移し、椎名盛男協会常任理事(白州郷牧場代表)から白州郷牧場の成り立ちと取り組み、BMW技術の活用方法についてスライド写真を交えて説明がありました。椎名常任理事は「これからの有機農業は、システム化することが重要」と語りました。その後、池原謙介さんから、白州の圃場における施肥設計について解説があり、「石灰、苦土など、ミネラルの施肥設計については、施肥設計ソフトの上限値いっぱいに設計している」と説明しました。
 一一日の講座は、そこで終了し、夕方からは懇親会が開かれました。
 一二日午前は、白州郷牧場視聴覚ホールにて、講座参加者たちの各地での取り組みが紹介されました。みやぎBM技術協会でのキュウリ・トマト栽培、与論島でのインゲン栽培についてなど、生育状況の写真を投影しながら説明がありました。最後に講師の小祝政明氏が総括して野菜講座を締めくくりました。     (報告:井上忠彦)


品目別講座 水稲編

各産地の成果と課題テーマに技術交流
 八月一八日から一九日の二日間、~自然学を実践する~「土と水の学校」品目別講座の水稲編が山形県のファーマーズクラブ赤とんぼで、開催されました。地元の赤とんぼの生産者をはじめ、みやぎBM技術協会、新潟県の謙信の郷、福島県の会津うまいもの塾などから二九人が参加しました。
 初日は、赤とんぼの今野純さんが、「土と水の学校」での学習を基に、三年前から取組んだ水稲栽培について報告を行いました。今年の経過報告では、栽培途中に土壌分析を行い苦土が極端に減っていることが分かり速効性のある苦土を急きょ、追肥したことなどが報告され、現在の状況では茎数も多く、多くの収量が期待できるとのことでした。
 続いて、伊藤幸蔵協会常任理事からは、「肥料代の高騰が続いている今、地域で資源を循環することが重要になってきている、BMW技術を活かし地域の未利用資源を活用していくような技術を練り上げ、農業のあり方、地域を変えていくことを、みんなで模索していきたい」と、今後の技術活用の方向性が示されました。
 次に圃場研修として、赤とんぼ生産者の水田を巡回しました。取組み報告を行った今野さんの水田では、苦土が効いているため下葉の枯れはほとんどなく、茎も硬く、しっかり生育していました。各圃場では、稲を一株抜いて、株をばらし、茎の伸びを確認しました。こうすることによって、チッソ成分のきれ具合が分かるということです。
 二日目は、各産地からの取組み報告と現状の課題等について技術交流を行いました。
 最初に、赤とんぼの浅野厚司さんから、今年、自分たちで肥料や資材を作ることを目標に取組んだ水稲育苗培土づくりについて、報告が行われました。「米沢郷牧場の堆肥と米ぬか、腐葉土に生物活性水を混ぜてボカシ肥をつくり、土と混ぜて培土とした。これまで使用していた培土と比べて白く太い根がでて全体の成長も早く、コストもこれまでと比べ半分以下になった。今後は野菜の育苗用培土、田んぼの肥料も作っていきたい」と報告が行われました。
 謙信の郷の峯村正文さんからは、「秋のうちにミネラルを施肥し、PHを調整する等、二年前からの取組みで、稲の初期成育が良くなった。昨年からBM堆肥を使い自家性育苗培土を作っている。最近、イネミズゾウムシの被害が増えていること、現状では有効な対策としては、アイガモを導入する他ない」と報告がありました。
 みやぎBM技術協会会員の大郷グリーンファーマーズの郷右近秀俊さんからは、三年間の取組みで田んぼの土のPHの数値が年々上がり、石灰や苦土の施肥量も少なくてすむようになってきたと報告がありました。育苗では、昨年から育苗箱の底面に肥料を入れる底面施肥を行い、プール育苗で生物活性水を五百倍から千倍で流し込むと、非常に順調に苗が生育した等の報告が行なわれました。
 会津うまいもの塾の佐藤邦夫さんは、育苗段階で発生していた立ち枯れがプール育苗ででなくなったこと、肥切れが起きたときは肥料を水に溶かして与えることが有効であること等の報告がありました。
 小祝氏からは、各地の報告を受け、害虫対策として、ニームや除虫菊等の使用の検討や、病害虫に抵抗力のある硬いしっかりした苗を作るために、ケイ酸資材を使ってみてはどうかと提案がありました。ワラの秋処理については、バチルス菌がワラを分解するがこの菌が活発に活動するためには苦土が必要、そうした意味でも秋に苦土と石灰をまいていく事が大切と解説しました。
 今回の「土と水の学校」は、各産地の成果が交換され、またそれぞれが抱えている課題についても共有できたことは大変有意義であったと思います。        (報告:長倉徳生)


品目別講座 果樹編

施肥の方法とミネラルの働きを学習
 八月二〇日、山形県の天童市において~自然学を実践する~「土と水の学校」品目別講座果樹編が行われ、みやぎBM技術協会メンバーの天童果実同志会、大郷グリーンファーマーズ、あいコープみやぎ等と、ファーマーズクラブ赤とんぼから二一人が参加しました。
 講座は、天童果実同志会の生産者のリンゴとラ・フランス、サクランボ圃場視察から始まりました。同会の代表を務める片桐謙二さんのリンゴ畑では、礼肥の大切さを確認しました。落葉果樹は、木に栄養分を蓄え翌年の春に蓄えた栄養分で枝を伸ばすため、九月に与える礼肥が重要ということです。この畑では葉に鉄分が不足するとできる二~三ミリの色の薄い点が見られました。講師の小祝政明氏からは、苦土と石灰を施肥するようになると木が鉄をはじめ微量要素を多く吸収するようになるので、微量要素欠乏に注意しなければならないとの指摘がありました。片桐さんは、土壌分析に基づいて施肥設計を行ってから、ダニが減った、また葉も厚くなったように思う、と苦土と石灰を施肥してからの木の変化を報告しました。
 圃場視察後は、各産地の取組み報告と、果樹の施肥設計ポイントについて講義が行われました。
 最初にファーマーズクラブ赤とんぼの取組みについて、浅野厚司さんから報告が行われました。「現在、各生産者の圃場について一年を通じた土壌分析のデータを集めている。今後はデータに基づいた肥培管理が重要になってくる。また、サクランボについては、土壌分析に基づいたミネラルの施肥を続けた結果、味が良くなり糖度も上がり、隔年結果もなくなった、これからも栄養価の高い農産物を作っていきたい」と報告が行われました。
 青森県の八峰園の報告は、写真、施肥設計データをもとに、礒田有治BM技術協会事務局長が代わりに現状を報告しました。「土壌分析に基づいた施肥を行うようになり、昨年は樹勢も回復し秀品率も上がった。今年は収穫量もかなり上がりそうだ」と紹介されました。
 小祝氏からは、果樹栽培における施肥設計のポイントと有機肥料の内容や特徴について解説が行われ、果樹編のまとめとしました。
    (報告:長倉徳生)

Author 事務局 : 2008年10月01日23:10

茨城・田中一作邸、第3回「BMWシステム生きもの調査」を実施しました 【AQUA201号】

パルシステム生活協同組合連合会、BM技術協会、NPO生物多様性農業支援センター、生活協同組合パルシステム茨城、茨城BM自然塾 共同研究

 八月二二日、茨城県鉾田市の田中一作さんのお宅で「BMWシステムによる資源循環型水田の生物多様性調査及び研究」における「田んぼの生きもの調査」の第三回目の調査が行われました。これは、パルシステム生活協同組合連合会、BM技術協会、生活協同組合パルシステム茨城、NPO生物多様性農業支援センター、茨城BM自然塾の共同研究として実施しているものです。
 田中さんのお宅では、家庭から出る排水→浄化槽→BMWプラント→家庭菜園や田んぼや鶏舎→収穫した野菜や鶏卵→田中さん一家の食卓、そしてまた家庭から出る排水…というように、廃棄物を出さない循環型のシステムが整備されています。そんな田中さんのお宅の田んぼとその周辺にはどんな生きものが生息しているのかを明らかにするため、NPO法人田んぼの理事長、岩渕成紀さんの指導のもと、生きもの調査、田んぼの水質調査、土壌調査を行っていきます。
 第三回目となった今回は、物理学者で、熱物理学及び環境経済学が専門の槌田敦先生の視察訪問を受け、お話をお聞きする場も設けられました。
 八月というのに、やや肌寒い一日となったこの日、三〇人の参加者が集まりました。顔合わせとスケジュール確認ののち、分担して調査を開始しました。
 まず、浄化槽、生物活性水、田んぼ、田んぼ排水のBODとCOD調査用の採水を行い、それぞれの水質成分分析、水田の土壌成分分析を行います。また、水田の五つの地点の水温やECやORPは専用の測定機器で測定します。
 生きもの調査は、稲が育っているので田んぼの中には入らず、取っ手の長い網で稲の上をすくったり、田んぼの周辺を探したりして採取しました。網の中に目を凝らしてみると、小さい生きものがたくさん見えます。浄化槽、生物活性水の生きものも調査しました。肉眼では見えにくいので、ルーペを使って確認し、名前を記録しておきます。『ポケット版 田んぼの生きもの図鑑』が大活躍します。岩渕先生から、モノアラガイとサカマキガイの見分け方も教わりました。手際よく調査を進められたので、今回は植物も採取しました。
 その結果、三二種類の生きものと、二六種類の植物を確認できました。特筆すべきは、二か月前にはたくさんいたイトミミズが、今回は全くいなくなっていたことです。ほかの生きものに食べられてしまったことが主な原因と考えられます。
 午後からは場所を移し、まずこれまでの調査結果の確認を行いました。田んぼの土壌は、鉄分は安定しているものの、石灰が前回より大幅に増えたことがわかりました。水質調査では、田んぼの暗渠排水にだけ鉄が多く含まれているのがはっきりしています。それ以外の数値では、ほぼ安定しているようでした。
 それから、田中さんのお宅のシステムの設計者である協会常任理事の清水澄茨城BM自然塾塾長が「おいしいお米を、化学肥料を使わず安価に作るにはどうしたらいいか追究してきた結果、たどり着いたのがBMW技術」と熱く語りました。
 そして、今回視察に訪れた槌田先生から、エントロピーについて簡単な説明をお聞きしました。槌田先生は、「田中さんのお宅で活用されている生物活性水(BMW技術)の特徴は、動植物が利用できる形になっている『鉄』と、有機物を腐敗させない『放線菌』にあり、水田と糞尿をうまく活用し、生態系の中でエネルギーと廃棄物のやり取りを行うBMW技術は、エントロピー的に見ても理にかなっている。今後、大いに期待したい」と感想を述べられました。
 最後に、測定したデータへの質問や、試行錯誤してきた体験談など、活発な意見交換が行われました。「示唆に富んでおもしろかった」という感想も出され、短い時間でしたが、有意義な時間を過ごすことができました。
 得られたデータは、毎回まとめられ、今秋のBMW技術全国交流会で発表される予定です。

Author 事務局 : 2008年10月01日23:09

「土と水の学校」有機栽培実践講座報告 【AQUA201号】

高知県・(財)夢産地とさやま開発公社
 七月二一日、高知県高知市土佐山地区で「土と水の学校」有機栽培実践講座が開催され、(財)夢産地とさやま開発公社職員や地域の農業者など一四人が参加しました。講師には「土と水の学校」講師の小祝政明先生をお招きしました。
 当公社では,急峻な地形などから大規模な農業経営は望めない土地条件を踏まえ、土づくりによる安全・安心の農産物の生産拡大と流通の確保、地産地消の推進と交流の促進、地域特産物の生産振興などに取り組んでいます。
 公社がこれまで培ってきた栽培技術とともに科学的根拠に基づいた栽培方法を確立し、農家等へ普及促進を図って行くことが重要です。そのための力を公社自身が備える必要があり、「土と水の学校」もその一環として開催しています。
 午前中は、事前に土壌分析を行ったデータとともに公社及び農家の圃場を視察しました。
 最初に、公社の有機JAS基準で栽培している(認証は未だ取得していません)生姜畑を見ました。この畑は二年目ですが、昨年は予想以上の雑草の繁茂、二度の台風による倒伏、害虫の発生、水不足による乾燥などの影響で作柄は著しい不良となりました。
 今年は、昨年の失敗から、早くからの土作り、生物活性水の活用、施肥の工夫、初期からの虫捕り、ビニールマルチシートの試み等により、これまでのところほぼ順調に生育しているように見えました。
 土壌分析データではカリとリン酸が過剰、ミネラルと微量要素の欠乏を示しており、小祝先生も実際の生姜に触れ、葉の色むらや根の張りが浅いことなどから、特に鉄の欠乏が顕著であると指摘をされました。不足しているミネラルや微量要素の補給により、病害虫や乾燥に強い生姜に変えることができると小祝先生は説明しました。
 次に、シシトウとパプリカを栽培している農家、そしてパプリカ栽培農家と見て回りました。どちらの農家でもやはり鉄不足とのことで、新葉の色の薄さ等の症状を皆で確認しました。
 午後からは小祝先生の講義が行われ、初めて受講する者を含め、有機栽培のしくみやその科学性について学びました。
 今回の講座で特に印象深かったのは鉄の効能についてで、鉄は植物にとって重要な呼吸を司るミネラルであり、光合成や肥料の吸収には欠くことが出来ないものであるということ。また、施肥はミネラル先行でなければならないことなどを学びました。
 最後に生姜の土壌分析データを基に追肥の設計実習を行いました。
 公社では、今後とも「土と水の学校」を継続し、栽培技術の向上や自然循環型農業の確立を目指して行きたいと考えます。
報告:(財)夢産地とさやま開発公社    事務局長 杉本賢

㈲十和田湖高原ファーム・JAかづの
 八月二日、秋田県鹿角郡小坂町の(有)十和田湖高原ファームと鹿角市のJAかづの主催の「土と水の学校」有機栽培実践講座が総勢三〇名の出席により開催され、小祝政明先生を講師にキュウリに特化した実践応用を指導して頂きました。
 講座の内容については、最初に(有)十和田湖高原ファームとJAかづのキュウリ生産部会部会長の圃場において、肥培管理や生育状況を見て頂き、ご指導いただきました。その中で、昨年の課題であった微量要素の欠乏についてはクリアーしているとの言葉を頂きました。光合成に必要な苦土と窒素も十分に効いているし、石灰についてもきちんと吸収されていて、現状では多収穫が見こめるとの見解でした。ただ今後については、多収穫により肥料の激減が想定されるので、土壌分析により追肥のタイミングを逃さずに施肥をしなければならないことを助言頂きました。
 また、一部に水不足の症状が出ている畝があり、どの畝も同一の灌水でなく、状況にあわせた灌水が必要(西日の当たる所や北側の日光が当たらない所での水分蒸発の違いや圃場の水分浸透の違いを把握)との指導も頂きました。有機栽培に限らず、農産物の栽培に当たっては、水管理が重要であること、特にBM有機栽培においては、「水も肥料」ということを理解しなければならないことを強く教えていただきました。また、十和田湖高原ファーム圃場の一部には、マンガンの欠乏症とホウ素の過剰症が見られていたため、ミネラルのバランスを考慮した肥培管理を指導いただきました。
 圃場での講座修了後、場所をJAかづの会議室に移しての講義に入りました。本来は、キュウリに特化した実践応用の講義予定でしたが、どうしてもBMの「土と水の学校」に参加したいという生産者が多く、三〇名の参加中、半数の一五名が初参加で講義三時間のうち、二時間を初級編に急遽組み替えして頂きました。経験者は復習となり、初参加の受講者には「目からうろこ」状態だったように感じました。
 また、実践応用講義では、特にキュウリ栽培においてはケイ酸が必要で、キュウリの体内増強には欠かせない要素だということを教わりました。また、酵母菌・納豆菌・放線菌など菌の種類を上手く活用し、利用することによる病害虫の回避方法も伝授いただきました。
 今後、今回の講習会を生かした管理をして、結果を出せるようにと参加者全員で申し合わせをして、夕方の収穫作業に向かいました。
報告:㈲十和田湖高原ファーム  板橋一成

Author 事務局 : 2008年10月01日23:09

「キララの学校」 【AQUA201号】

「キララの学校」事務局長 秋山 澄兄

 八月三日~九日の期間、山梨県北杜市白州郷牧場において、キララ夏の学校が開校されました。
 キララの学校は、子供達に、豊かな自然や農業を、年間を通じて体験してもらう取組みで、白州郷牧場は、四半世紀にわたって教育農場としての歴史を重ねてきました。
 毎年、夏の学校では子供達のプログラムの中には自然を学ぶプログラムが導入されています。
 その中でも「土と水の学校」岩石と水講座でも講師をされている、奥地拓生氏による「白州と花崗岩と地球の誕生」は夏の学校に限らず毎回行われています。
 今回の夏の学校ではNPO法人たんぼ理事長の岩渕成紀氏を迎え、子供のために作られたビオトープ(セリ田)で、「生きもの・植生調査」も行われました。
 この他にも、毎日の農作業を軸に、大麦藁を使った蛍篭作り、食を学ぶプログラムとして、東京・自由が丘のイタリア料理店「バッポ・アンジェロ」のオーナーシェフ、コッツォリーノ・アンジェロ氏による料理教室なども行われました。

 キララの学校は、春・夏・秋・冬・田植え、稲刈りそして五月の連休と、年間七回開校しています。開校される「場」と、そこでの「生活」が、都会生活や公教育での学校生活とは異なります。そこに学校キララが開校する意味があります。
 「場」の第一は白州の自然です。日本有数の天然水と森に支えられた白州では、人と自然の関係を深く感じ考えることが出来ます。
 第二は白州郷牧場です。牧場には子どもたちが安心して作業や食べることができる完全無農薬循環農法の畑と水田、そして平飼の鶏、和牛がいます。
 第三は、世代・職業・感性等がそれぞれ違う多様なスタッフがいることです。幼稚園から大学までの教員、お店をやっている人、会社員、学生など、そして農場スタッフはもちろん、村の人も加わっています。
 「生活」は、働き・学び・遊ぶことです。年間を通して子どもたち自身が農作業をして植えた作物を、自分で収穫し、料理し、そして食べ、生ごみを土に返します。そして、自然や農・食に関係することを学び、技術を身につけることをします。また、森や川や野原の恵を受けての遊びを通じて、子どもたちの身体が開放されます。
 そして、白州の生産・生活のベースとなっているのが、BMW技術です。
 以前、子どもたちを育てるのは、家族・地域・学校でした。しかし、今はそれらが多かれ少なかれ崩壊し、力を喪失しつつあります。
 そのような中で、子どもと大人が一緒になって、人間の命を支えている「自然」と「食」、それを結ぶ「農」を具体的に体験し、学び、そして様々な人との出会いを通して、自分を発見し、自然と人間や自分と他人との関係を新しくつくりだしたい。
 これが私たちの学校キララの願いです。

Author 事務局 : 2008年10月01日23:07

 
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