~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座報告 【AQUA195号】

 ~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が、一月、みやぎBM技術協会の主催により、小祝政明先生を講師に開催されました。開催内容を紹介します。

   
みやぎBM協会「土と水の学校」 in 山形県天童市 
                   みやぎBM協会会長  西塚 忠元  

みやぎBM技術協会
「土と水の学校」in 山形県天童市

 一月二〇日、例年よりも雪が少ない中、山形県天童温泉において二〇〇七年度、三回目の~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が開催されました。BM技術協会の礒田有治事務局長、小祝政明先生を講師に迎え、午前は「初めて取組む方々に」、午後は「水稲と野菜分野の今年の反省と課題」、最後に「落葉果樹のポイント」と、三つのテーマについて、講演いただきました。講演には地元天童の果樹栽培のメンバー一〇人、宮城からは水稲と野菜のメンバー一四人と、総勢三三人の参加となり、会議室もいっぱいになりました。
 午前中は初めての参加者もおり、もう一度原点に戻ろうと、礒田事務局長よりBM技術協会がなぜ「土と水の学校」を始めたかを説明していただき、みんなが流域の循環の中で暮らしていることが大切なのだとお話しをいただきました。次に、小祝先生より植物生理とミネラル、特にマグネシウムの働きについて勉強しました。初めての人には目からうろこが出る思い。二年目、三年目の人にも改めて感じるところがありました。
 昼食をはさみ、今年度の反省と課題をテーマに昨年の全国交流会で発表した品目について討議しました。キュウリではセンチュウ対策が課題でしたが、生産者の佐藤さんから夏場に、太陽熱消毒と放線菌堆肥を使った対策が発表され、五月に見たときと全く違った根になっていることが報告されました。日数が少し足りない感はありましたが、後半になっても樹が衰えず、二割ほど増収し、二~三本成りも見られるようになりました。小祝先生からは水の使い方を指導され、もっと多くの水が必要ではとの見解が示されました。
 トマトではかなりの改善が見られてきて、反当たり約六トンの収穫になりましたが、誘引などの管理方法の改革を求められました。通風等の改善と、少ない本数で長期取りのスタイルにすれば、病気等も防げるようです。
 水稲でもかなりの改善になり、一〇%ほど増収したようです。また、秋処理の徹底によるガス抜きの改善も大きなポイントとなったようです。しかしながら、食味は少し落ちたようで、追肥のタイミングを早められるよう、栽植密度や苗が課題になりました。
 礒田事務局長からは、水稲培土の研究についてお話いただき、BM鶏糞堆肥と用土だけでほぼ完全な培土が出来上がることが分かりました。また生物活性水の使い方を水稲のステージごとに説明していただき、ポイントを分かり易く説明していただきました。

落葉果樹での病害虫、貯蔵性等に課題
 最後に小祝先生に落葉果樹についてのポイントを講演していただきました。地元天童果実同志会は現在一〇名の会員で、リンゴ、サクランボ、ラ・フランス、モモ、ウメ、カキなど、落葉果樹全般を栽培しておりますが、温暖化による害虫発生や、病気が秋遅くまで出てきたり、リンゴにおいては、蜜入りリンゴとして貯蔵性が悪くなったりと多くの問題を抱えています。
 講演では、樹の生理についておさらいした後、窒素の働きがいつ切れるか、細胞先行か、炭水化物かと言った問題について徹底しました。降雪前のミネラル施肥と礼肥についてのポイントが分かり易く説明されました。新鞘の伸びがいつどこで止まるか、その後の実肥が適切なのかがポイントになるようでした。天童の片桐完一さんは、「今まではミネラルのバランス等についてはあまり考えず、土作りについてはいわゆる長年のカンに頼っていたところが大きい。これからは、土壌分析を導入し、きちんとした学習を通して今後の施肥設計に生かしていきたいと考えています」と感想を述べています。

取組み三年目を迎え、生物活性水等の応用を
 今年は、「土と水の学校」に取組んで、三年目を迎えます。栽培技術は、かなり改善してきたものの、初めての取組む人とベテランの人、会員の中で互いに協力しながら成果を挙げていきたいと考えております。また、基礎的な学習が終わった人から、生物活性水を利用した栽培方法の工夫や堆肥の研究、自給肥料等などに応用していきたいと考えております。
 最後にこの場をお借りしまして、昨年の松島における全国交流会において、多大なる応援、ご協力に感謝申し上げますとともに、会員皆様のますますのご発展を願い、挨拶に代えさせていただきます。

Author 事務局 : 2008年04月01日07:08

千葉県・和郷園で常任理事会を開催 【AQUA195号】

千葉県・和郷園で常任理事会を開催
リサイクルセンターや冷凍野菜工場、向後農場を視察

 二月六日~七日、千葉県の農事組合法人・和郷園で二月度BM技術協会常任理事会が開催されました。常任理事会は、協会の方針や活動及び会員の入退会等の審議を行っています。これまで、常任理事会は東京で開催されていましたが、昨年から、新たに常任理事に就任された方もおられ、今回から、各常任理事の地元で開催し、現場研修及び地元会員との交流も併せて行うことになりました。今回の常任理事会は、昨年常任理事に就任された木内博一常任理事が代表を務める和郷園を訪問し、会議の開催と視察研修を行いました。
 六日に行われた常任理事会では、事務局から、①韓国BMW技術導入十周年記念行事開催②~自然学を実践する~「土と水の学校」開催内容③千葉BM技術協会幹事会内容④パルシステム千葉及びNPO支援センターちば運営の「園芸福祉農園」へのBMW技術導入について、報告が行われました。
 また、①協会運営及び二〇〇八年度方針②第一八回BMW技術全国交流会開催について③国産種採卵鶏存続のための生活クラブ連合会からの提案④全国理事の増員について⑤「土と水の学校」有機栽培講座運営・開催検討会議の開催について⑥入退会申請について、等の協議が行われました。
 常任理事会には、今年度の全国交流会実行委員会を務める千葉BM技術協会から向後武彦会長が参加し、同実行委員会で協議されている全国交流会の開催場所、日程、概要等について説明が行われました。
 常任理事会終了後は、地元和郷園のスタッフや生産者との交流懇親会が開催され、翌七日は、和郷園の視察研修が行われました。
 視察研修では、①向後農場②和郷園リサイクルセンター③冷凍野菜工場を訪問しました。
向後農場
 千葉BM技術協会の向後会長が経営する向後農場は、面積三ヘクタール(ハウス面積八千三百坪)で、オオバ、キュウリ、トマト、サンチュ等を中心に栽培しています。BM堆肥を土づくりに使用し、向後農場に設置されている生物活性水と地下水改善のBMWシステムを利用して野菜が栽培されています。また、和郷園リサイクルセンターから、メタンガス発酵の副産物として、出る消化液を液肥として、利用しています。現在、石油が高騰しているため、「ハウス温度の低めの設定や二重カーテン、無加温作物の導入等により、暖房をなるべく使用しないように努めています」と向後会長は話していました。
和郷園リサイクルセンター
 和郷園リサイクルセンターは、地域の耕・畜連携及び生産者と取引先との連携による循環型農業の中核基地となっています。同センターは、生物活性水施設、堆肥施設、野菜残渣粉砕施設、メタン発酵バイオマスプラントから構成されています。同センターの隣にある越川牧場(※4~5ページBMの人々参照)から出る牛糞尿と野菜残渣が、堆肥や生物活性水、メタン発酵バイオガスづくりの原料になっています。
 野菜残渣粉砕施設は、和郷園の取引先の加工場等から出る野菜残渣(日量四~五トン)を粉砕して絞る一次処理施設です。液体の絞り汁は、バイオガスの原料に利用され、固形物は、堆肥原料となります。
 バイオマスプラントは、国が進めている「バイオマス・ニッポン総合戦略」の一環として取組まれている実証研究施設です。前述の牛糞尿と野菜残渣の絞り汁を原料にメタン発酵施設から、メタンガスを製造しています。このメタンガスを燃料に、軽トラックを改造した試験車両がありましたが、燃料満タンで約七〇キロ程度走行するそうです。メタンガスを取り出した後の牛糞尿と野菜残渣の絞り汁の消化液は、アンモニア等の肥料成分を持っているため、和郷園では、この消化液を液肥として生産者が利用しています。
 堆肥施設では、越川牧場の牛糞を原料した堆肥と、野菜残渣を原料にした堆肥が製造されています。生物活性水施設は、牛糞堆肥を原料に製造され、それぞれ、和郷園の生産者が利用しています。
冷凍野菜工場
 冷凍野菜工場は、二〇〇三年に稼動し、現在、年間千トンの冷凍野菜をパルシステム生活協同組合連合会をはじめとする生協や、学校給食、外食産業等に供給しています。ホウレンソウ、コマツナ、エダマメ、ブロッコリー、ササガキゴボウ、ヤマノイモの六品目が年間を通して供給され、供給量の六〇%がホウレンソウとなっています。原料となる野菜は生産者との契約栽培となっており、それぞれ旬の時期に収穫した野菜を製品化しています。野菜が栽培される圃場の土壌分析や施肥設計は、工場で行い、品質やトレーサビリティーの管理が行われています。現在、どの製品もおいしいと好評で、需要に供給が追いついていない状況のため、この秋には、冷凍ラインを増設し、一・五倍の生産量にすることになっています。
 次回、常任理事会は四月に山梨県で開催され、やまなし自然塾の取組みを視察することになっています。     (報告:礒田有治)

Author 事務局 : 2008年04月01日07:07

ウエル&グリーン・ファームのだ(千葉県野田市)でBMWシステムが起動 【AQUA195号】

~福祉と環境の循環型農場をめざして~
ウエル&グリーン・ファームのだ(千葉県野田市)でBMWシステムが起動
パル千葉、NPO支援センターちば、ボランティアの参加で生物活性水づくり

 二月二日、千葉県野田市船形地区でBMWシステム(生物活性水施設)の起動式が行われました。昨秋、(有)千葉自然学研究所の好意で未稼働の生物活性水施設をこの地区で有効活用できないかという情報が寄せられ、その申し出を受けることになりました。このBMWシステムを利用する農場は、生活協同組合パルシステム千葉及びNPO支援センターちばが、地域の障がい者や市民とともに「園芸福祉」を遂行する場として運営している「ウエル&グリーン・ファームのだ」(※注1)です。
 晩秋から千葉県東庄町にあった施設を野田市船形の生産者、古谷さんの敷地に移設を始め、基礎工事から移設終了まで三ヶ月ほどかかりましたが、一月二六日に移設を終了しました。生物活性水施設は、六槽式の二列配置となっており、日産で五〇〇リットルの生産能力があります。
 早速、この地でBMWシステムを稼動させるべく準備を進め、二月二日にシステムの起動を開始するため、「生物活性水」の培養を始めました。
 当日は、この移設を心待ちにした野田市の生産者、「園芸福祉農場」のボランティアや指導者、パルシステム千葉の役職員など約二〇人が参加し、BM技術協会の礒田有治さん、㈱匠集団そらの星加浩二さん、秋山澄兄さんの指導の下、システム起動に向けて作業を開始しました。
 参加者は、設置場所の古谷さん宅に隣接する地域の自治会館に集合し、自己紹介のあと、設置に協力したパルシステム千葉の渋澤温之専務理事(千葉BM技術協会副会長)から、設置の経過と地域で活用していただきたい旨、挨拶が行われました。続いて礒田さんからBMW技術の解説、BM技術協会の役割などの説明が行われ、星加さんと秋山さんからBMWシステムの構造や仕組みについて参加者に説明があり、システム稼動のための作業に入りました。
 事前に古谷さん宅には、「生物活性水」づくりに必要な資材、BM活性堆肥や花崗岩が届けられ、当日は星加さん、秋山さんが軽石を運んできました。第一槽目のタンクには、地下水が注水され、システム起動のための作業は、説明会参加者がそれぞれ分担し、網袋に資材を測り分けました。全員作業に参加したため作業ははかどり、一時間ほどで小分け作業が終了しました。その後、小分けしたBM活性堆肥、花崗岩、軽石を生物活性水設置場所に搬入し、第一槽目のタンクにBM活性堆肥と軽石、二槽目に軽石、三槽目に軽石と花崗岩、四槽~六槽目に花崗岩をそれぞれ吊るし、第一槽目にBMWリアクターを投入しました。一槽目のエアレーションが始まると、堆肥の色がにじみ出し濃い麦茶のように水が染まってきました。エアレーションによって微生物が活動し始め、泡が吹き出し、第一日目の起動(培養)の作業は終了しました。
 作業終了後、再度自治会館に戻り、BMW技術の理論や植物の生理、技術の使用法などについて参加者と話し合いを行いました。
 システムを稼動させるための作業を参加者全員で行ったためシステム起動の工程は、一時間半ほどで、終了しました。「生物活性水」が出来上がるためには、約一週間ごとにタンクを工程順に移動させるため、最終工程までは約六週間かかり、三月中旬に完成する見込みです。その間、システム設置場所の古谷さんにタンクへの水の注入や管理をお願いしていますが、匠集団そらから技術指導を含めメンテナンスが二回ほど行われます。
 また、「生物活性水」を使用するための技術講習会を活性水の完成に合わせて、当面は古谷さんなど地域の生産者と「園芸福祉農場」に関わる皆さんを対象に、三回ほど使用に向けた講習会を開催します。
 さらに、地域での使用を広げる中で、「生物活性水」を利用して、市民や子どもたちの環境教育のカリキュラムづくりも進め、コミニュティ・ビジネスを考える生産者と市民で「ウエル&グリーン・ファーム」を拠点とする地域の土と水の再生や自然保護の活動も進め、優良な有機堆肥づくりのための人材育成・域内循環システムなどの技術支援を行います。
 
※注1:「ウエル&グリーン・ファームのだ」
 「ウエル&グリーン・ファームのだ」は、生活者の視点から農業へアプローチし、「農のあるまちづくり=田園都市構想」をテーマとし、二〇〇四年から野田市で、障がい者団体を始め行政・市民が参加し、「園芸福祉」を基軸とする畑と水田約五〇アールで農業モデルを実践してきました。今後は、地域資源循環型農業に活動の輪を広げていくため、BMW技術を導入しました。

Author 事務局 : 2008年04月01日07:06

秋田県・ポークランドグループが新たな養豚施設「ファームランド」を開場 【AQUA195号】

BMW技術を活かした資源循環型地域構想に着手
(有)ポークランド 代表取締役 豊下 勝彦(BM技術協会常任理事)

 ポークランドグループは、平成七年に、(有)ポークランドの操業を開始し、次いで平成九年に(有)十和田湖高原ファームの操業を開始しました。現在、年間七万五千頭の銘柄豚『桃豚』を出荷しています。当グループでは、今年、新たに「ファームランド」(母豚千六百頭)を開場し、年間三万五千頭の出荷を計画しています。BMW技術による飲水改善施設がすでに稼動し、六月から初出荷を予定しています。
 「ファームランド」は、昨今の食に対する安全の追求がクローズアップされる中、生産履歴JAS、抗生物質・合成抗菌剤不使用の豚(現在、BMW技術を活用して、生産している『桃豚』)の需要拡大と安定供給、併せて自分達が考える集大成の農場を実現することを目的に建設しました。
 「ファームランド」では、従来のBMW技術による飲水改善及び生物活性水添加に加え、マイクロバブルを発生させる装置を追加設置し、溶存酸素を増加させた飲水づくりを行っています。また豚舎では、尿処理水を使用したバイオフィルターによる微生物脱臭や、アニマルウェルフェア(動物福祉)対応の四百頭の柵無し飼育(従来一八~二〇頭で仕切っていた柵を排除)、オートソーティングシステムによるICタグ個体管理等が行われます(肥育豚では世界初)。
 現在、畜産飼料を巡る状況は、米国における穀物由来のエタノール増産を契機とした急激な穀物需要の増大や、新興国の穀物需要拡大、異常気象による各国輸入量増大、株式市場から商品先物市場への投機資金流入等によって、価格の高騰が続いています。今月、アメリカ産トウモロコシは、一ブッシェル五ドルを超え、一昨年と比較して、倍以上の高値となっています。世界中で穀物価格が高騰し、第一次石油危機以来の食糧危機を迎えている状況と言えます。日本では、飼料価格補填金も底をつき、今後は国内自給、エコ・フィードも含めた対策が急務となっています。
 ポークランドグループでは、こうした状況を踏まえつつ、資源循環型地域の構築と地域貢献を柱とし、若年層と団塊の世代の農業への取込みによる就農人口の拡大、生業としての農を確立していく事を目的とし、今回の「ファームランド」開場を機に、今後、左記の取組みに着手する予定です。

●平成二八年までにグループ全体で、年間一五万頭出荷
●BMW技術を活用した百ヘクタールの野菜団地 (ベジタブルランド)づくり
●地域へBMW技術普及を開始(無農薬・無化学肥料栽培野菜づくり)
●大豆・トウモロコシ、菜種等自給飼料の栽培実験開始
●菜種油カス・大豆カス等エコ・フィードの活用
●飼料用米の実験飼養開始と実証
●バイオベッド(菌床)による飼養実証(素人でも取組める養豚の開発)によって、フランチャイズ制によるグループ職員や地域の若手による養豚経営
●アニマルウェルフェアに基づいた、繁殖(一貫豚舎)実験
●小坂町と連携し、菜種油の有効活用と廃油のBDF(バイオディーゼル燃料)化による化石代替燃料への切替(現在、小坂町では役場の公用車や公共バスにBDFを利用)
●廃校を利用した、有機農業学校の設立(新規就農支援・有機栽培学習・食育施設整備・地域コミュニティー機能)

 ポークランドグループは、地域の人々や、共感していただける流通や都市の方々と連携し、これらを一つ一つ具体化することによって、地域に根ざした循環型社会を創造していきたいと考えています。

Author 事務局 : 2008年04月01日07:03

「有機認証取得がはじまりました。」第6回 【AQUA195号】

第6回 (有)ファーマーズクラブ赤とんぼ
    山形県・高畠町  森谷 安兵衛さん

有機認証所得日 2006年7月
有機認証面積  32.2アール
有機認証団体  ㈱アファス認証センター

――有機栽培を始められたきっかけをお聞かせください。
森谷 高畠町には、ファーマーズクラブ赤とんぼを始め、有機農業の生産団体が多くあります。そういう方々の影響も大きかったと思います。うちの田んぼの上に、高畠町の田んぼの水源地になっているため池があります。そのため池から最初に水が入るのが、うちの田んぼです。赤とんぼのメンバーは、どちらかというと高畠町の下流域でやっているので、やっぱり上流の人が水を汚してはいけない。下の人も田んぼを作っているのだから環境をよくしていくことが大事ということに気づき、私もしないといけないと思って、有機栽培を始めました。
――赤とんぼには、いつ加入されたのですか。
森谷 二〇〇四年からです。赤とんぼの事務局の武田和敏さんと私の父が、山の仕事で関係があって、それから、やってみないかと誘いがありました。私も、赤とんぼメンバーの斎藤寛之さんらの知り合いもいました。みんな熱い、若い衆がいっぱいいたので、ちょくちょく顔を出すようになって、加入しました。赤とんぼに入ったときは、すでに無農薬で、米は栽培していました。
――赤とんぼに入って、有機栽培でやってみて、最初、大変だったことは。
森谷 最初の一、二年は、残痕していた肥料か何かで、まずまず収穫できていました。しかし、三年目くらいからは、考えてやらなければいけないと思いました。草取りとかも大変ですし、今は、育苗が大事だと思います。
――有機栽培に取組んで、何か変わったと思えることはありますか。
森谷 自分の面ですと、「土と水の学校」とかで習っていることもあるのですが、土がいかに大事かってことです。表面でなく、やっぱり土がね。環境面では、うちでは、泥あげしながらドジョウをとるのですけど、とても大きいし、いっぱいいる。生き物がいるってことは環境が良くなった証拠かなって思います。青サギとか鳥も増えました。生き物がいる、環境が良くなっているってことは、土の状態も良くなってきているのだと思います。
――そういう光景を見て、どう感じました。
森谷 やっぱり気持ちいいですね。うちの田んぼのあるところは、町場と違って、沢に囲まれて独特な雰囲気がある場所なので、そういうところに青サギが飛んでくるって、けっこう綺麗ですけど、私の田んぼに入ってくると、あぁーまた入ってきたー。苗の補植だぁーって‥‥。
――有機認証を取得したきっかけは。
森谷 JAS有機を取ると、まず、赤とんぼ内での米の格付けがA1(※注1)になります。また、せっかく有機で米を作っているのですから、きちんと有機としても認められたいと思いました。そうした形での付加価値をつけられるので、JAS有機をとりました。
――実際に有機認証を取得してみての感想はいかがですか。
森谷 有機認証の検査員が毎年、田んぼに来るので、自分で、今日は何やったとか日記にきちんと記帳するようになったし、最初は面倒くさいと思ったのだけど、他の第三者から見て、指摘されると、やはり改善点とかが色々あります。検査員が来てくれると身がひきしまるというか、やりがいがあります。
――大手スーパー等が有機認証の生産物の取扱いを増やしていこうというと発表していますが、どう思われますか。
森谷 赤とんぼでは毎年、生き物観察会等で、生産者と消費者とのつながりがあり、有機栽培などにより生き物が増加しているところや、草取りとか大変な部分を理解してもらって、それを食べてもらっています。スーパー等で、有機栽培のものが単に体に良いということで、販売するのではなく、私たち栽培者や環境のことも考えてもらえるような販売ならよいと思います。
――自分たちの活動とか、そういうのを含めた形で情報提供されないと意味がないということですか。
森谷 そうですね。ただ単に、付加価値をつけて、無農薬イコール健康みたいのじゃなくて、やはりそれだけ、作るときに大変な思いをして、この値段になるのだってことを理解してもらいたい。金を出せば、良いものが買えるっていうのではなく、ちゃんと思いを伝えたいということです。
――行政に対しての具体的な要望や提案はありますか。
森谷 JAS有機認証をしている生産者には、減反政策免除とかはどうでしょう。でもおかしいですよね。減反って。浅はかな発言かもしれないけど、農家だけですよね、自分が生産して悪いって言われるのは。他の商売じゃないですよね。それを何で言われているのかって疑問に思います。ほかは、民営化とかが進んで、やれやれっていわれているのに、何で農家だけ、やるなやるなって言われるのでしょう。
――価格維持という大儀があったのだけど、価格も崩れてきてしまっていますね。
森谷 価格も崩れていて、農家をする担い手も減っています。それでも全国の作付けをみると、米が一番主体ですからね、その田んぼが全部、荒れ放題になったら、地域の姿は、ひどいことになってしまうと思います。だからこそ、今、農業をする担い手が一致団結し農業の維持、価格の維持、地域の姿の維持を真剣に考え農業に従事していかなければならないと思います。

※注1:ファーマーズクラブ赤とんぼの米の格付け。A1は有機、A2は転換期、A3は無農薬

Author 事務局 : 2008年04月01日07:02

 
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