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2007年11月01日

韓国・山(サン)自然学校を訪ねて 【AQUA191号】

韓国・山(サン)自然学校を訪ねて

自然・環境・生態系を日常的に体験する代案学校
BMW技術を教材に、自然の循環システムを学ぶ
㈱匠集団そら 秋山 澄兄

 一〇月六日~九日の四日間、韓国のBMW技術導入現場を視察しました。今回は、慶北永川市の山(サン)自然学校について報告します。
 山自然学校(旧梧山自然学校)は、釜山国際空港から車で北東へ二時間余り、東テグと言う地方都市から車で三〇分ぐらいの山逢いの静かな村の中にあります。そこでは廃校になった小学校を利用して二〇〇二年に、前身の梧山(オサン)自然学校が設立され、三日から四日のキャンプを通して、自然体験等を通じた教育を行っていました。
 設立当初は、山梨県・白州郷牧場の「キララの学校」をモデルに、自然とその生態系を学ぶ子供の為の学校として運営が始まり、現在では自然の生態体験を日常的な暮らしの実践として持続可能にする代案学校(注1)として、二〇〇七年から、新たに全寮制の山自然学校として開校されました。
 小学生の生徒数二二名、常勤講師五名で生活を共にし、通常の教育課程に加え、宇宙の授業や調理実習など、すべての授業に自然・環境・生態系との関わりや取り組みを織り交ぜながらの教育がなされています。
 また従来のショートキャンプの受け入れも続けられており、夏休みなどに近郊の都市のテグ、釜山、ソウルなどから年間三千名の子供達が訪れるとのことで、常勤講師と数十名の非常勤講師やボランティアスタッフにより運営されています。子供だけの学校でなく親子教室などもあり、自然・環境・生態系はもちろんのこと、音楽や工作、付近の様々な場所で色々と学ぶことのできるプログラムなどが導入されています。近くには青鷺の繁殖地もあり、野外活動においても自然の生態系・環境などに触れ学ぶことができます。
 自然・環境・生態系を学ぶ為の施設として注目すべきものは二つあり、一つ目はBMW技術が導入されているということ。大きな食堂の厨房排水はBMで処理されています。処理水はビオトープ(観察用池)に利用され、その中の生態系を学ぶことができます。池の中に浮草、鯉、蛙、タニシ、その他の水中生物を観察できるようになっていて、さらに校庭にある便所の排水を利用した生物活性水施設があり、そこでは自分達の尿や糞が生物活性水となり、圃場還元などされ、循環されていることを学ぶこともできます。
 もう一つはエネルギー。ここでのエネルギー源は主に太陽光エネルギーを利用し、風力発電を合わせ百パーセントの電力がまかなわれています。さらに余電力は電力会社に売っているとのことで写真にある太陽光パネルで約三キロワットの電力供給ができ、風力と合わせ約四キロワットの発蓄電が可能ということでした。次号で紹介するプルム農学校や済州島でも同じ光景を目にしたのですが、韓国では自然エネルギーに対する考え方・取り組みが日本より進んでいて、正にそれを実感することができました。
 これから石油がなくなっていくことがわかり始めた今、日本も見習うべきことであり、またBMW技術を利用する者としても避けては通れない課題点でもあると思いました。現在のBMW技術は大きな意味で生産・消費の面で大きく役立っていますが、そこに偏ってしまっているような気もします。
 もちろん自然の循環に沿った技術であり、豊かな環境(農地や畜舎)作りと言った点の貢献は多大なるものだとは思います。ですがBMW技術に直接ふれることができるのは、農業従事者を中心に自然との関りを営む大人が中心であるような感じが私の中では否めません。間接的には子供達の役には立っているけれど、山自然学校のように教育現場の中で直接BMW技術にふれながら、子供達が自然・環境、そしてエネルギーを学ぶことのできる環境は素晴らしく思えたのです。そしてさらに、BMW技術が利用される現場としてこのようなスタイルがこの先必要不可欠なのではないかと実感しました。
 BMW技術はありとあらゆる可能性をまだまだ秘めています。これからは自然・環境に対してだけでなく、子供の教育といった点でこれからの社会・教育にも向き合っていく方法があるのだと考えさせられました。

(注1)代案学校(だいあんがっこう)
韓国では、フリースクールやオルタナティブ・スクールを代案学校という。一二年ほど前に、大学受験に偏重した既存の教育に疑問を投げかける代案教育運動から生まれた。小規模で都会から離れた自然豊かな場所で、寄宿生活を伴う事例が多い。山自然学校は国の認可は受けていないため、中学校にあがるためには学歴取得の試験が卒業時に必要になる。無認可の代案学校に入った子供達のほとんどは中・高学校も代案学校を選び、高校課程卒業時に日本で言う大検のようなものを受け合格すると小学校から高校までが学歴として認められる。

Author 事務局 : 2007年11月01日 14:45

 
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