« 田んぼの生きもの調査 開催スケジュール | メイン | 無農薬バナナ残渣でBM堆肥づくり 【AQUA199号】 »

2008年08月01日

有機認証取得がはじまりました!第9回 【AQUA199号】

第9回 新潟県・謙信の郷
秋山一男さん

 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。三年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。アクアでは、有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、どう捉えているかインタビューを行っています。第九回は、新潟県の謙信の郷で、稲作やシイタケに取組む秋山一男さんです。  (まとめ:井上忠彦)

―――昨年、有機農業基本法が成立しましたが、これについてどうお考えですか?
秋山 有機農業基本法をはじめ、世論としてはこれからもっと有機へっていわれているけど、行政側からの実質的な動きや取り組みってまだほとんどない。福島あたりじゃ有機JAS取得の費用を県が負担するとかになっているようだけど、新潟は遅れている。
―――有機で稲作する場合、一番大変なのはどういうことですか?
秋山 除草かな。しばらく止めていたんだけど去年から鴨を入れるようにした。今年は三百羽入れた。一反歩に十羽くらいの勘定だね。カラス対策には釣り糸を張っている。今年はすこしカラスが少ないかなぁという感じもするし、今のところ被害はあまりない。鴨の入れ方もいろいろあって、細切れに入れたりするとカラスにやられやすい。入れる時期もすごく大事。他には、米糠とくず大豆を入れている。うちの場合は田植えと同時に米糠一二〇キロくらい撒く。その後五日から一週間の間にペレットの米糠を一反歩に三、四〇キロ追肥。くず大豆は四、五〇キロくらいかな、それからまた一週間くらいして米糠、くず大豆。あとは除草機。ほんとにだめなら手除草もやる。結果はかなりでていると思う。でも土地柄かコナギはどうしてもでてしまうね。
 大変といえば有機の場合、肥料をはじめ、資材費がかなりかかる。有機の肥料は普通の三倍くらいかかるものね。
 農薬の飛散の問題は、ここの集落は有機でやってる人が多いから比較的いい。二十五戸のうち四戸くらいの割合で有機。上越市ではダントツに多いし、跡を継ぐ若い者も多い。でも若い人もこだわりと技術がともなっていかないとだめだね。
―――今後、有機栽培米の販売価格は変わるとお考えですか?
秋山 変わらないんじゃない。でも有機についてはうちもこだわりがあるし、それだけの需要もあるからね。うちのコシヒカリは評判がよくてもっと欲しいといわれるよ。コシヒカリBL(※注1)は使ってない。有機の連中はほとんどそうだよ。
 それから県の「減減栽培米」(※注2)っていうのは五割減でいいんだけど、われわれが出してる「減減栽培米」は九割減だからかぎりなく有機に近い。肥料にしても有機肥料を使うし、ほんとうに特殊な場合を除いて農薬も使わない。でもその特殊な場合に撒く除草剤ってのは、これは効くんだよ(笑)。すごいね。有機の米だとそれを撒けないからこの通り苦労してるんだけど。
―――有機JASの書類管理はどうされていますか?
秋山 息子がやっている。ありゃ大変だ。だいたいパソコンできないひとには有機JAS取得は無理でしょう。認証には費用もかかるし、本当の純利益って考えてみたらかなり低いんじゃないの。
―――シイタケで有機JASをとることも考えてらっしゃいますか?
秋山 方向としては有機になってきている。ただJASを取ってもそれだけのメリットがあるかどうか。シイタケも最近は燃料が高くなってるから大変。農機具にも使うし、暖房にも使うし。うちは冬期には灯油を三百リットルを使う。
―――石油価格はあがる一方ですね。
秋山 もうコストがぜんぜん変わってきた。包装資材のラップ類も上がるし。でも価格に転嫁できないからね。自由相場だから、需要と供給で販売価格が決まるわけで。われわれ生産者が十円もうけるのってかなり大変で努力が必要なんだけど、流通の方だとさくっと何十円も中間利益をとったりする。だいたい小売り・流通が儲け過ぎなんだよ。生産者なんて至って真面目にやってるのに、途中でラベルを勝手に張り替えたり、悪いことやって儲けてる(笑)。有機米は消費者の立場からすればやっぱり高いと思うんだろうけど、慣行米に比べて資材費や作業の手間を考えたら、むしろ安い。
―――行政に対してどんな要望がありますか。
秋山 米あまりといわれるけど、有機に変えるとどうしても減収するわけだから、その分を減反のカウントに反映させるとかしてほしい。
 有機関連団体の組織をもっと強くして、県なり国なりにもっと要望していくべきだと思う。それに三十代四十代の担い手をどう増やしていくか。将来の農業を真剣に考えていく組織が必要だね。農協みたいな営利団体じゃだめだよ。
―――有機農業の今後のあり方についてはどう思われますか?
秋山 昔は牛を飼ってたんだけど、本来、有機をやるような人は牛の三、四頭も飼って、田畑を刈った草をその牛にやって、糞を堆肥に使って、みたいなことをやるべきだと思っている。うちはシイタケの林に堆肥にやってるし、発酵鶏糞も自分でつくっている。あんまり近代的な設備・作業所でやってるのって都会の消費者の眼からすると有機のイメージと違うと思うかもしれない。牧畜を一緒にやる有畜複合農業も国レベルで推進したほうがいいと思う。

注1:コシヒカリBL ――― いもち病の抵抗性遺伝子を連続戻し交配し、抵抗性を持つように改良されたコシヒカリ。品種登録上はコシヒカリと別の品種。流通過程においてはコシヒカリと表示され販売される。
注2:減減栽培米 ――― 栽培期間中、化学合成農薬使用が慣行栽培の半分以下・化学肥料使用が慣行栽培の半分以下の栽培の米。

Author 事務局 : 2008年08月01日 12:12

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.