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2009年08月01日

【AQUA211号】北海道根釧地区で牧草の硝酸イオン濃度と土壌成分調査を実施

~牛の健康によい草、よい土とは~

 六月一八日~二〇日、――牛にとって、よい牧草と、よい牧草を育てる土とは、どのようなものか、実際に牧草と牧草採草地の土を調査してみよう――と、北海道厚岸町、別海町、中標津町で、牧草の硝酸イオン濃度調査と牧草採草地の土壌分析調査等が実施されました。この調査は、パルシステム生活協同組合連合会からの委託によりBM技術協会が――パルシステム連合会提携産地について、「土と水の再生の取組み」及びBMW技術活用に関する調査・研究、学習活動を行う――取組みの一環として行われたもの。北海道根釧地区の「牛の健康と環境を考える会」(石澤元勝代表:石澤牧場代表)の協力を得て実施されました。
 取組みの目的は、パルシステムの「こんせん72」牛乳を生産する北海道根釧地区で①酪農からの糞尿による環境汚染対策及び土と水の再生に寄与する生産方法の確立②地域資源を活かした資源循環型の農業生産方法の確立③根釧湿原の水を守り、生態系の保全及び回復という価値観に基づいた農業・漁業等の生産環境の構築に寄与する活動の展開等――について、調査・研究や学習活動を行っていくものです。
 昨年、「こんせん72」牛乳の生産牧場となっている厚岸町の石澤牧場にレインボー・パル基金助成活動により、BMプラントが設置されたことをきっかけに、今年四月、パルシステム生活協同組合連合会とBM技術協会と根釧地区の酪農家有志による「牛の健康と環境を考える会」の共催により、「牛の健康は、よい土、よい草、よい水から」と題して、学習会が厚岸町で開催されました。流域の土と水を再生し、健全な生産環境をつくる学習会活動の第一歩として開催されたもので、この流れを踏まえて、今回の調査活動もはじまりました(アクア二〇九号記事参照)。
 今回の調査は、①石澤牧場等で取り組まれている「マイペース酪農」(注1)の生産牧場(主として牧草の採草地には、堆肥を散布または、無肥料)の採草地、②大規模酪農等で一般的に行われている糞尿スラリー(牛糞と牛尿が混合された液状のもの)を散布及び化学肥料散布採草地、③有機肥料を散布採草地――によって、それぞれ牧草の硝酸イオン濃度は、どう変化するのか、また土壌成分はどうなっているのかをまず、調査し、検証していくものです。
 調査に当たっては、「牛の健康と環境を考える会」の石澤代表が取組んでいるマイペース酪農に取組む生産者の方々の協力をいただき、調査当日に開催されていたマイペース酪農交流会でも、実際に牧草の硝酸イオン濃度調査を実施しました。今回の調査結果は、八月に現地検証会で発表し、今後の調査・研究や活動内容を検討していくことを予定しています。
 北海道根釧地区の主な水源地は、雄阿寒岳、雌阿寒岳の麓の標茶町にあります。阿寒岳に降った雨が、地層を通り、標茶町で、泉となって湧き出し、河川となって、一方は、別海町や中標津町を通ってオホーツク海へと注ぎます。もう一方は、厚岸町や浜中町を通って、太平洋へと注いでいます。今回、「牛の健康と環境を考える会」の高橋昭夫事務局長の案内で、標茶町から別海町、中標津町に流れる西別川の水源地の視察を行いました。
 泉が湧く取水地周辺では、川の中に、梅花藻(ばいかも)が多く繁茂していました。梅花藻はキンポウゲ科の水生多年草で、初夏から晩秋に長さ五センチほどの花を水上に伸ばし梅に似た白い花を咲かせます。大雨や洪水で川の環境が激変しても、汚れのない河川や沢では短期間で再び繁茂できる生命力がありますが、水質汚染などの人工的な汚れに弱く、清流でしか育ちません。そのため河川環境を示す指標にもなっています。
 北海道では、大規模酪農化が進んでいますが、大規模化の中で、現在すすめられている牛舎構造では牛糞と牛尿が混合されたスラリー状の糞尿が大量にでる構造になっています。このスラリー状の糞尿は、堆肥化や液肥化することも難しいため、生糞尿として牧草地に散布することにより、牧草の肥料として吸わせていますが、牧草が吸収しきれない窒素やリン等の成分によって河川が汚染され、沿岸漁業にも深刻な影響を与えているそうです。
 視察した西別川の水源地から五キロ下流に行くと、川の汚染により、もう梅花藻がみられなくなっていました。
 流域全体で、水と土を保全し、健全な生産環境を再生すること、そのためにBMW技術をどう活用するか、今後、大きな課題となりますが、今回の調査を手始めに、今後の調査・研究や、取組みが、課題解決に向けての第一歩となることを期待します。(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年08月01日 20:23

 
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