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2012年03月01日

【AQUA240号】「さよなら原発1000万人アクション」

東京・代々木公園に12000名が参加

 二月一一日、東京、代々木公園のイベント広場で「さよなら原発一〇〇〇万人アクション・全国一斉行動」が開催され、一二〇〇〇名の参加者で会場が埋め尽くされました。
 当日は、一一日の前後を含めドイツでは一五一の地域、日本国内では、新潟上越市、高崎市、米子市、松江市、神戸市、高松市、釧路市、宇部市、松山市、佐賀市など数十か所を会場に「全国一斉行動」も取り組まれました。

 昨年、三月一一日の東日本大震災から一一か月。政府の「原発事故収束宣言」にもかかわらず、福島第一原子力発電所の事故は「収束なんかしていない!」と、東京では一二〇〇〇名の参加者が反・脱原発を願って集会とパレードを行いました。今回は集会で登壇した人々の声を拾ってみました。

 呼びかけ人の一人である大江健三郎さんは、福島県の農漁民の苦悩を宮沢賢治の詩を引用し、「静かに怒りを燃やす姿を、私たちの声として生かしていこう」とアピールしました。そして「原発を一掃することは、もっとも大きく根本的な人間の倫理だ。原発を止めるという決意を、子どもたちにはっきり言うことが希望の灯である」と語ったのでした。

 作家の澤地久枝さんは「五月には日本のすべての原発が止まる。私たちのアピールの力でこの日を迎える」「政府は自分で引き起こした事故すら収束できないくせに、外国に原発を売ろうとしているが、世界の人々は嫌がっている。これこそ国籍を超えた市民の意思だ」と強く語りました。

 東京で避難生活を送る被災者の発言は、多くの参加者の涙を誘いました。増子理香さんは事故後、避難者のネットワーク団体で活動。「福島県民ははかない一艘の小舟のようだ。どこに流されるのかわからない」としたうえで、転校を繰り返す子どもたちに「これ以上悲しい思いをさせないでほしい。過ちを繰り返さないで」と悲痛な声を発していました。

 福島で有機農業を続ける菅野正寿さんは、「原発事故後、農業は大きな打撃を受けたが、福島県産農産物への放射性物質の移行は少ないのに、メディアは自分たちをまるで加害者のように描いている」と怒る。それでも菅野さんは「福島の再生を通じて、持続可能な社会の実現をめざしていく」と希望を忘れていません。

 いまや反原発集会では欠かせない発言者となった藤波心さん(中学三年生)は「五四基の原発は、この国の繁栄の象徴などではなく、ただの時限爆弾」、「何も知らされない私たちが原発を支えていた。いつ爆発するかもわからない原発と一緒に暮らすのはもうイヤだ」と訴え、アカペラで「ふるさと」を参加者と一緒に歌いました。
 パレードは二つのコースに分かれ、すっかりお馴染みになった俳優の山本太郎さんや作家の落合恵子さんは宣伝カーから降りて、参加者と一緒に歩き、声を上げました。

「経産省前テントひろば」は、
 いまや全国の脱原発の交流の場
 二.一一さよなら原発集会の参加者のほとんどは、経済産業省前のテント前(東京・霞が関)ひろばで交流を重ねてきた人々です。経産省の敷地の一角にテントが三つ。福島のお母さんたちのグループや市民団体、若者たちのグループがその運営を担っています。東電とともに原発推進の加害者である経産省に二四時間座り込みで抗議するための場でもあります。

 脱原発運動の拠点でもあるこの「ひろば」に対して、「ただちに健康に影響はありません」で有名な枝野幸男経産大臣より、先月一月二四日「退去命令」が出されました。しかし、退去期限である一月二七日には、テントを守るために急きょ集まった一〇〇〇名近い市民の力で警察による排除は実施されていません。(二月一五日現在)敷地は国有地であり国民の財産ですから、世界のマスコミも注目するこのテントひろばには、警察も経産省も簡単には手を出せない状態です。しかし、最近は、一部右翼団体を使って排除しようする経産省の動きもあって、予断を許さない状況でもあります。多くの市民の力が求められています。


「事故の収束」にほど遠い福島第一原発

 最近の報道によると、福島第一原発二号機で、原子炉圧力容器の底部の温度計の数値が異常に上昇した問題で、東京電力は、二月一四日、他の温度計の点検を進め、圧力容器に四一個ある温度計のうち八個に異常がみられると発表しました。
 一時、四〇〇度を超えた温度計一個のほか、二個に温度計に異常が見つかり、残りの五個は故障と判断、東電は残る三三個の温度計を今後も監視するとしています。温度計の故障という判断については、原発に批判的な学者からも「故障判断は妥当」との声も聞こえますが、いっぽうで、原子炉圧力容器内の状態を探る手だてが、不確かな温度計しかないというのは異常なことと言わざるを得ません。当事者である東電には、原子炉内の核燃料の位置を知るすべすらもっていません。それが何故「冷温停止状態」といえるのか、不思議としか思えません。
 さらに、最近では、こんな報道も飛び込んできました。「福島原発直下で地震の恐れも」(東京新聞二月一四日付)の見出しの下、震度六弱の地震が起きた福島県いわき市の地下と同じように近くの活断層が滑って直下型地震が起こりやすいとの調査結果が、東北大の趙大鵬教授(地震学)らにより、欧州の雑誌で発表されたという記事です。
 今、福島第一原発で一番心配されている事態は、四号機にある使用済み核燃料プールの土台構造の崩壊です。仮に地震などで四号機の使用済核燃料プールを支える土台が崩壊し、大量の使用済核燃料が落下した場合、核燃料の冷却はストップし、大量の放射性物質がこれまでにない規模でまき散らされる可能性があるといわれています。
 東京電力は昨年、応急手当で修復工事を実施したとしていますが、その修復工事が高線量の中の危険な環境で、どのような工事が行われたのか。その結果も公表されていません。仮に今後、福島原発で直下型地震が起きた場合、使用済み燃料は、原子炉など構造物で防御する施設から露出しているだけに、首都圏を含む広範囲な地域が汚染されることが懸念されます。これは京大の小出裕章さんらが何度も指摘してきた通りです。また、直下型地震に限らず、今後も起こる可能性の高い余震でも、四号機の燃料プールから、少しでも燃料の一部が漏れた場合でもその危険性は測り知れないといわれています。小出氏によれば、四号機の使用済み燃料を移す作業が必要との指摘ですが、それについても数年はかかる危険な工事だといわれています。
 もともと「冷温停止状態」なる「造語」で事態の収拾をはかろうとする政府・東京電力の綱渡りにメディアはもちろん、市民の執拗な監視が依然として求められているのです。

    (報告: BMW技術協会事務局 大田次郎)

Author 事務局 : 2012年03月01日 22:06

 
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