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2012年04月01日

【AQUA241号】第4回「BMW技術基礎セミナー」が開催

BMW技術理論、TPP問題、福島の現状について学習

  〜未来をひらく後継者・若手対象〜第四回「BMW技術基礎セミナー」が、二月一七日、一八日に開催されました。BMW技術協会会員の生産者団体、生活協同組合、流通団体、個人会員など、今後の協会活動を担っていく若手や後継者、六〇名以上が全国から参加し、BMW技術の基礎理論、応用技術から、TPP問題、福島の現状などについて学び、また、今後のネットワークづくりのための交流が行われました。

講演①「TPPについて」
特別講師:大野 和興氏(農業ジャーナリスト)

 現在、ギリシャ問題をはじめ、ヨーロッパ経済が大変な状況になっています。世界恐慌に入りつつあります。アメリカのサブプライムローン問題もそうですが、カジノ資本主義が世界中に浸透し、ギリシャ国債が投機の対象になったからです。つまり、グローバル資本主義がギリシャを発端に、世界を壊しはじめている。
 TPPは、自由貿易の推進のようにみえますが、実は、経済のブロック化、マーケットの囲い込みに外なりません。第二次世界大戦が起こった原因は、市場の囲い込みでした。その反省から、GATT、IMF、WTOなどができたわけですが、九〇年代から社会主義と資本主義が一体化してグローバル資本主義化が進みました。世界経済のブロック化は軍事化を伴います。武器と遺伝子組み換え食品がアメリカの二大戦略商品。これをどう売り込むかが、今回のTPPにおけるアメリカの思惑でしょう。
 農業生産物は、基本的には内需向け商品です。TPPによってチャンスが増えるという農家もいますが、アジアの富裕層に、日本の農産物がたいして売れるわけではない。中国やインドの富裕層が増えていくという実態もありません。
 TPPは好機と予想する人もいますが、その前に日本農業の基盤がなくなっていく。地方から、日本の社会全体の構造が崩れていく。日本の農家が大規模化してもアメリカの数百ヘクタール規模、オーストラリアの数千ヘクタール規模の農業にかなうわけがない。
 そもそも農業は経済の競争原理には不向きな分野です。だから農業保護政策が必要になる。農業保護政策は農民人口が多い時代には治安維持政策も兼ねていました。農民を保護することで治安が保たれた。しかし、農民は減り、現在、農業は保護されなくなってきている。
 もう世界恐慌に入っていると思われますが、日本はまずデフレを脱却しなくてはならない。「雇用不安」「消えた年金」など社会不安のためにお金を使わないデフレ状況になっている。政府は、TPPより、デフレと国内マーケットの縮小対策にこそ、手を打たなければならない。
 また、TPPのISD(投資家対国家間の紛争解決)条項は、人権や環境や倫理など関係なく、自由な貿易、投資を阻害したかどうかだけで判断されるものです。そうなると、法的に強い資本が弱者からむしり放題になる。医薬品もアメリカの大きな産業ですが、非関税障壁という名目で日本の企業や病院がやられる可能性がある。
 地域の独立した農業こそがTPPに対抗しうるし、また生産者の国際連携もこれから必要になるでしょう。
   (報告:BMW技術協会事務局 井上 忠彦)

講演②「放射能に汚染された村」
特別講師:伊藤 延由 氏(いいたてふぁーむ管理人)

飯舘村の概要
 飯舘村は、福島県相馬郡(浜通り)に位置し、福島第一原子力発電所から南部の一部は三〇㎞圏内にあります。標高は四〜五〇〇メートル(阿武隈山系北部)ほどで、七五%が山林、原発事故以前の人口は六〇〇〇人ほどの美しい村です。
 年平均気温は一〇℃。村の九〇%の世帯ではクーラー不要の清々しい気候です。「いいたてふぁーむ」のある野手神地区は、一三世帯、うち農家一軒、新規入植者が二件で、いわゆる限界集落といわれる地域です。いいたてふぁーむは二〇一〇年三月、IT企業である㈱エム・オー・シーの農業研修施設として開所しました。私はその管理人です。私自身、日本の農業の現状について危機感を持っていて、農業をはじめることができてとてもうれしかった。だから二〇一〇年の開設から一年間は、私にとって最も幸せな農業体験の日々でした。

順調だった農業
 いいたてふぁーむの開設一年目は、水稲の作付面積が二・二h、品種はあきたこまち、こしひかり(三五a)、二〇一〇年度実績で平均反収六俵で、一三六俵。野菜は、じゃがいも、インゲン、トウモロコシ、玉ねぎ、白菜、野沢菜、トマト、ナス、ほうれん草、小松菜など、果樹はブルーベリーやサクランボの植付を行いました。この地域は山菜も豊富で、ふきのとう、タラの芽、山ウド、タケノコなども採取し、営業促進に利用しました。

福島第一原発の事故
 最初から順調に農業ができたのは、いわばビギナーズラックだったのかもしれません。二〇一一年度は、近隣の農地四haを借り、水田、野菜のほか、果樹の栽培を含めて規模拡大をはかる予定でワクワクしていたのです。
 そんな頃、三月一一日を迎えました。強い揺れを感じましたが、飯舘村はもともと御影石の岩盤の上に位置し、地震に強い地域です。幸い、家屋の損害は軽微でした。大きな棚は、転倒を防ぐ器具を取り付けていたこともあり、室内の損害もたいしたことはありませんでした。その後の経緯は、時系列で記録してあります。

地震発生後の経過
・二日後の三月一三日一八時まで停電、その後も電話不通、外部との連絡不能(三月一五日まで)
・三月一四日、一五日、放射性物質のプルームが飯舘村を覆う→午後降雨、一五日夜半から雪、一六日雪(吹雪、積雪は一〇㎝ほど)
・原発からの放射能を避ける双葉郡住民の避難は、三月一二日からはじまり、一七日には避難者の第二陣が飯舘村に到着
・三月一九日には飯舘村から住民の一部自主避難がはじまり、栃木県鹿沼市体育館へ避難。
・三月二一日、飯舘村の簡易水道からヨウ素検出(九六五Bqの放射性ヨウ素)→二二日から飲料水配布。
・四月七日、飯舘村の広報で「作付はもう少しお待ちください」の指示。
・四月一二日、飯舘村、作付制限発令
・四月一二日、計画的避難区域発令
・四月二二日、計画的避難区域受諾→一次避難がはじまり、六月末をリミットに避難開始。

原発事故について
 これまで原発について、とくに関心をもっていませんでした。毎年、夏休みには孫たちを連れて、私の故郷である新潟に行くと、新潟・柏崎刈羽原発のPRセンターに見物に行ったものでした。
 このたびの福島第一原子力発電所の大事故は、原発の恐ろしさ、被害の大きさに唖然とさせられています。安全とされた原発は、まさに神話だったことが証明されたのです。飯舘村は南端の一部が福島原発から三〇キロ圏内、私の住むいいたてふぁーむは、原発から三五キロに位置しています。当初は、「屋内退避圏外」とされ、「計画的避難区域」として避難指示が出る四月末から六月まで避難が遅くなりました。その間、村民や子どもたちは放射線量の最も高い時期に放置されたのです。
 今回の事故で明らかになった飯舘村のような状況は、日本中のどこにでも起きる可能性があるということです。今回たまたま風向きが飯館村に向いていました。そしてそのとき雨が降ったということです。地震国であるこの日本に原発が五四基もあります。地震や津波は必ず起きる。この原発事故も起こるべくして起こった。それはどの地域にも当てはまるということだと思います。

飯舘村の現状
 現在の飯舘村の被ばく量を見てみましょう。私の住むいいたてふぁーむの被ばく量です。八時間戸外で活動し、一週間滞在したとします。一日当たりの被ばく量が八〇μシーベルトになり、一週間(八〇×七日)で五六〇μシーベルト、一年間を通算すると八〇μシーベルト×三六五日=二九.二ミリシーベルトです。国の法律では、一般の人が被ばくする限界を一ミリシーベルトと定めているわけですから、極めて線量は高い状況です。
 しかし、飯舘村役場にある文科省のモニタリングポストは、〇.六三μシーベルト/毎時。対外発表の数字は、実態とはかけ離れています。政府・東電の作為的な情報操作を感じます。原発事故では、政府・東電の情報隠しがおこなわれてきました。SPEEDIデータは、米軍には提供しましたが、国民には知らせなかった。原発敷地内で検出されたプルトニウムについても、プルトニウムは重いので拡散しないといいながら、実際には飯舘村でも検出されています。こうした国と東電の対応には飯舘村の人々は本当に怒っています。今後、私自身、農業を継続するのか、移転するのかはまだ決めていませんが、いまは、飯舘村のために、避難所から通ってでも飯舘村を守る活動を続けていくつもりです。 (報告:BMW技術協会事務局 大田次郎)

講演③「耕作におけるBMW技術活用法」
  講師: BMW技術協会理事 礒田 有治 氏

 礒田有治氏より約一時間半にわたり、資料に基づいた丁寧な講演がありました。その内容を簡単にまとめて報告します。
 BMW技術の始まりは、主に畜産の糞尿処理に活用された。生物活性水の活用により良質な堆肥が作られ、耕作現場での有機栽培農場等で広く活用されるようになり、現在ではその活用方法がさまざまな場面で利用され応用されている。植物栽培の基礎とBMW技術では、森、河川、海の生態系の水の循環、微生物の働き、腐植の形成、キレート化したミネラル(フルボ酸鉄)などによる自然界の流れ、BMW技術はこうした生態系におけるミネラルのキレート化生成過程を人工的に再現している。その仕組みを、BMW技術のかなめであるBMWバイオリアクタ―、BMW飲水改善・潅水改善施設、BMW生物活性水施設について図を用いて説明があり、生物活性水の成分特徴について水質調査表を用いて、使用する原料やプラントによって異なるとのこと。
 生物活性水中の微生物について細菌類、糸状菌類、酵母類、バチルス菌類、放線菌類等が確認されているが、これらの微生物の働きをどのように活用するかを考えれば、色々な場面で応用する事が出来る。生物活性水を堆肥の原料に加えることにより微生物の活動が活発化し、発酵が促進される。植物栽培にBMW技術を有効に活用するには、利用目的、堆肥・生物活性水の特性、利用方法を考慮しながらどのような堆肥づくり、生物活性水づくりをするのかが重要である。
 韓国霊南大学校の金教授の研究結果では「生物活性水(BMW)を応用した微細藻類の培養研究」でクロレラ培養に必要な培地に生物活性水三%溶液を加えると、細胞成長率は三倍、光合成率は一.三倍、機能性をもった分析物質(アミノ酸、色素など)の光合成率が最高五〇〇%まで増加するとなっている。この培地を農業における土壌に置き換えてみると植物の生育環境を整え、生育に必要な栄養素やミネラル成分を調整する施肥設計を行った上で、生物活性水を活用すると同様な現象が起きうるということが、理論的に成り立つ。また、韓国・BMW天然キレーティング剤の効果研究におけるDOC(溶存有機炭素)に関する発表から、BMW生物活性水は処理前の原水に比べDOCが増加する。生物活性水には、植物に吸収されやすい液状化した炭水化物が存在する。これに注目することによって、多収穫・高品質栽培が可能になる。
 まとめますと、①植物栽培には、水の質が重要。②植物は、液体(液状化した物質)で吸収する。③堆肥・ぼかし肥料づくりの基本は、加水分解。④堆肥・生物活性水は、原料によって成分が異なる。⑤堆肥・生物活性水の微生物相は、製造過程・原料によって、変化する。⑥耕作農業では、栽培環境、栽培品目によって、必要とする堆肥・生物活性水を自らつくる。

 簡単にまとめましたが以上が講義の内容でした。私も、改めてBMW技術の奥深さや幅広さを感じました。私たちもBMWプラントを導入して一七年目になります。導入当初は今回の講義の内容のような説明もなかったのと栽培技術もなかったので色々と試行錯誤したのを思い出します。生物活性水を利用した野菜の栽培事例をBMW技術全国交流会で何度か発表もしました。この間、野菜の残渣を堆肥化するリサイクルセンターやバイオマスプラント事業の取り組み、またプラントから作られる液肥の畑での使用により購入肥料の削減など、BMW技術の取り組みを色々な場面で応用してきました。今回の基礎セミナーで後継者、若手、新規会員の皆さんもBMW技術の仕組みやメカニズムなどを学べたかと思います。今後も農業現場や生活環境などで幅広くこのBMW技術を活用し、発展させて頂きたいと思います。
(報告:BMW技術協会常任理事
     〈農事組合法人 和郷園〉木内克則)

視察:埼玉県小川町「霜里農場」
(視察参加者は三七名)

 日本における有機農業のパイオニアとして四〇年以上のキャリアを持つ金子美登氏。埼玉県小川町下里に金子さんが経営する霜里農場があった。事前に霜里農場についての予備知識を入れてこなかった私は、今回、有機農業についての技術や経営方法を少しでも習得できればと簡単に考えていた。しかし、それはあらゆる意味で裏切られた。そこは、私にはまるで有機農業のテーマパークのように感じられたのだ。
 野菜圃場や堆肥置場、牛舎、イチゴのハウス、薪ストーブ、更にはSVO(注)やバイオガスプラントという、言わば様々なアトラクションが存在し、その説明についても一つ一つ丁寧にわかりやすい説明を受けた。テーマパークやアトラクションなどと言ってしまうと金子さんに対して大変失礼になってしまうかと思うのだが、私の率直な感想であり、一番わかりやすい表現だと自分では思う。またアトラクションという言葉を和訳すると「魅力」という意味になる。まさに、一つ一つそれぞれが魅力的であったという事をご理解頂きたい。
 牛の糞をかき集めてバイオガスプラントに投入すると、メタンガスが発生し生活のエネルギーとなる。またその副産物として液肥ができ、それを堆肥に混入して圃場に施肥する。圃場の雑草や野菜から出てしまう生ごみを牛が食べ、そしてまた排泄される。そのサイクルは永遠に続いていく。また、その生産物の出荷先の飲食店や豆腐屋から廃油を集め、SVOというディーゼル燃料を使ったトラクターで圃場を耕作する。
 この農場は、有機農業の現場というだけでなく、有機的生活を行っている場なのだと感じた。有機的とは「多くの部分が集まって一つの全体を構成し、その各部分が密接に結びついて互いに影響を及ぼし合っているさま(三省堂 大辞林より抜粋)。」の事を言う。おそらく、この霜里農場には無駄なアトラクションは一つもない。逆に言えば、どれかが無くなると不都合が出てしまうのではないかと思うほどだ。お互いが密接に関係を持つことによって、農場全体が形作られ、保たれているのではないだろうか。ここでは有機物の持続的循環が確立されていた。
 下里地区では二〇〇一年より集落全体が大豆の生産方法を有機栽培に変え、その全量を地元の豆腐屋と契約し、有機大豆の豆腐として加工・販売されている。また、二〇〇三年からは小麦、二〇〇九年からは米が集落全体で有機栽培に転換した。米については地元の酒屋に卸して清酒になっているだけでなく、一般企業(リフォームの会社)とも取引をしており、その有機米は社員の給料の一部として支給されるということである。金子さんは「こういった有機農産物における価値を自覚した企業が増えて欲しい」とおっしゃられていた。確かに消費者は、有機農産物が体に良いとか、環境に優しいとか、そういった事をわかってきているのだが、それが個人としてだけではなく、更に社会における組織、企業といったレベルで考え方が変わっていかないと有機農業を根底から支えることは難しいのかもしれない。やはり、そういった考え方が広がる事は私たち生産者の成果に直結する事だと思うし、そのための努力は、私たちが先頭に立って行うべき事であると思う。
 霜里農場を訪れて感じたのは、有機農業の基本は、物質の循環であるということ。またそれが農場の現場だけでなく、社会企業まで続いているということ。さらに、時代背景も関連するが、エネルギーの確保も視野に入れて生活していかなければならないこと。BMW技術も基本は自然の水やミネラルの循環であると考えられるし、これらを有効利用していく技術はまだまだある。今回、有機農業の可能性を考えさせられ、私自身も農業に対する更なるチャレンジを誘起させられた。
  (報告:山梨県萩原フルーツ農園 萩原貴司)

注:SVO:Straight Vegetable Oil ストレート ベジタブル オイル。植物由来の廃食油SVOを処理して活用するシステムは、環境負荷が少ない。ゴミとして出る油かすも、農業堆肥として活用できる。

Author 事務局 : 2012年04月01日 22:15

 
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